第Ⅲ部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~
心不全治療薬
平山篤志
1
1大阪警察病院循環器内科・特別顧問
pp.409-413
発行日 2019年1月31日
Published Date 2019/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201913409
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循環器疾患の死因は,急性心筋梗塞によるものが一位であったが,数自体は増加していない。一方,心不全による死亡数は増加しており,やがては第一位になるであろう。この心不全増加の最大の要因は,高齢心不全患者,つまり収縮機能の保持された心不全(HFpEF)の増加である。治療に伴う心不全の問題は,死亡率が高いことと,再入院が多いために医療費が増大することである。これらを解決するような新薬の登場が期待されていたものの,残念ながらこの十年間は新薬が出なかった。しかし,ここ数年で欧米ではイバブラジン(ivabradine),サクビトリル/バルサルタン(sacubitril/valsartan)(ARNI)などの心不全に有効なエビデンスのある薬剤が開発され,使用されるようになった。わが国においても臨床試験後に使用できるようになるであろう。また,糖尿病治療薬として開発されたSGLT(sodium glucose cotransporter)-2阻害薬が,糖尿病に限定されているものの,心不全の予後を改善させる薬剤であることが大規模臨床試験で示された。今後,SGLT-2阻害薬が心不全治療薬となる可能性もある。