臨床眼科 50巻7号 (1996年7月)

連載 今月の話題

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 超音波生体顕微鏡(ultrasound biomicroscope:UBM)は前眼部組織の精密な描出にすぐれている。本装置の緑内障眼への応用の例として,狭隅角眼,濾過胞,色素緑内障,脈絡膜剥離,悪性緑内障,虹彩毛様体嚢腫のUBM所見について述べる。

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緒言

 アカントアメーバ角膜炎の臨床病期分類は本邦では石橋ら1),塩田ら2)により試みられているが,病像が完成期に至った後の経過については従来ほとんど報告されていない2)。また,その「末期」の存在については議論の分かれるところである。今回,私たちは「末期像を呈した」ともいうべき重症のアカントアメーバ角膜炎を経験したので報告する。

連載 眼の組織・病理アトラス・117

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 穿孔性眼外傷後に起こる交感性眼炎は,角膜輪部損傷によることが多い。この場合,穿孔創は水晶体に達し,水晶体起因性眼内炎を併発している可能性がある。多数例の病理組織学的検討によると,約30〜50%に両疾患の合併が認められている。穿孔性眼外傷で他眼に炎症が生じた場合,それが交感性眼炎であるか,水晶体起因性眼内炎であるか,あるいは両者の合併であるかを臨床的に正しく診断することは難しい。

 交感性眼炎と水晶体起因性眼内炎の合併例を病理組織学的に検査すると(図1),角膜輪部の穿孔によって水晶体嚢が破綻し,水晶体の周囲に多形核白血球,マクロファージ,類上皮細胞または多核巨細胞が浸潤して,水晶体を中心とした肉芽腫性炎症すなわち水晶体起因性眼内炎の特徴的な病像を示す(図2)。同時にぶどう膜には,リンパ球がび漫性に浸潤し,ぶどう膜のメラニン顆粒を貧食したマクロファージ,類上皮細胞,多核巨細胞がみられ,ぶどう膜の肉芽腫性炎症すなわち交感性眼炎としての特徴的な病像を示す(図3)。ときには,破嚢した水晶体の周囲や虹彩,さらに脈絡膜に夥しい数のエオジン好性多形核白血球(好酸球)の浸潤がみられることもある(図4)。

連載 眼科手術のテクニック・91

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6.DCRにおけるN-ST

 DCR鼻外法・鼻内法においてもN-STは有用であるが,このときはN-ST2本を上下涙点から総涙小管,涙嚢,骨窓を経て鼻腔に挿入する(図11)。鼻腔に内視鏡を挿入するとrhinostomyから直径1mmのN-STの太い部分4本が出ているのが観察できる。One flap DCRのときは,N-STは内視鏡でrhinostomyの部分の肉芽腫の発生をチェックしながら2〜12週間留置する。DCRwithout flapsのときは平均4か月間留置したほうがよいといわれている。

連載 新しい抗菌薬の上手な使い方・3

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3)セフジニル

  cefdinir (CFDN),商品名:セフゾン

  眼科適応:眼瞼炎,麦粒腫,瞼板腺炎

今月の表紙

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 本症は先天性の動静脈吻合が基礎病変で母斑症のひとつ。患者は42歳のタクシー運転手であることが示すように,格別の視力障害はなかった。稀有の疾患ではあるが,広角螢光造影で観察するとき,盗血現象の結果として網膜の大血管が狭細化している。また,静脈圧が上昇しているので,周辺部眼底で毛細血管の拡張と二次的な動静脈吻合が生じ,最周辺部は無血管化。この眼には,のちに網膜中心静脈閉塞症様の出血が起こった。拡張している動静脈吻合部へのキセノン光凝固が著効を呈した。

特集 第49回日本臨床眼科学会

特別講演

眼内レンズの基礎と臨床 馬嶋 慶直
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 眼内レンズ(intraocular lens:IOL)挿入後の前嚢混濁を中心に水晶体上皮細胞(lens epithelialcell:LEC)の挙動を免疫組織化学酵素抗体法で観察すると,LECの偽化生とこれに伴う各種コラーゲン(II型以外),細胞骨格蛋白質(アクチンなど)を認めた。これらは嚢収縮因子の1つとも考えられる。IOL材質の特性を比較するため,細胞生物学的手法を用い,polymethyl methacrylate, soft acrylate光学部上でLECを培養し両者を比較したところ,α,γクリスタリンの存在に差のあることを認めた。また臨床上疑義のあるとされる多焦点IOLについて検討した。その適応は,理論的には若年者がよいが,若年者に多いアトピー白内障では,ときに硝子体基底部網膜裂孔などの併発もあり,その選択には留意が必要である。症例によりコンタクトレンズのmonovisionテクニックによる視力矯正も一定程度の成績を得た。

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 水晶体後嚢が自然断裂し核が硝子体腔へ落下した1例を経験した。症例は68歳男性で,4年前から左眼の網膜静脈分枝閉塞症のため硝子体出血を繰り返し,白内障も進行したため手術目的で当科を紹介された。初診時,左眼視力は20cm指数弁であり成熟白内障のため眼底は透見不能であった。超音波検査では硝子体腔に異常を認めなかった。1か月後の細隙灯顕微鏡検査で後嚢の断裂と核の消失が疑われ,超音波検査で硝子体腔に可動性のある陰影がみられた.経毛様体扁平部から残存した水晶体を切除し,混濁した前部硝子体を切除したところ,硝子体腔に落下している核を確認し,これを除去した。今回の症例は白内障の進行に伴い後嚢の断裂を生じて核が落下したものと推測された。

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 走査レーザー検眼鏡を用いたスコトメトリー装置は,眼底観察下に任意の部位の網膜感度の測定が可能である。本装置により黄斑円孔例の暗点測定を行った。黄斑円孔10例11眼の全例に円孔部の絶対暗点と,円孔周囲のfluid cuff部に比較暗点がみられ,比較暗点の領域内でも,固視点の部の網膜感度は比較的良好に保たれていた。硝子体手術により円孔が完全に閉鎖した7例7眼の全例で,円孔部の絶対暗点は消失した。偽黄斑円孔6例6眼全例においては,円孔部に絶対暗点はなかった。本装置は,黄斑円孔と偽黄斑円孔との鑑別,黄斑円孔の病態および手術効果の評価の上で有用と考える。

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 眼窩に限局して発生したアミロイドーシスの1症例を報告した。症例は72歳の女性,左眼眼球突出を訴えて受診した。初診時,左眼眼球突出は著明であった。左眼窩に弾性硬,表面平滑な腫瘤を触れた。CTにより高密度,均一な腫瘍陰影中高密度の顆粒状陰影を伴った像が左眼窩内に描出された。また,MRI検査ではT1強調画像で外眼筋とほぼ等信号強度の均一の腫瘍が左眼窩内,外眼筋に描出された。病理組織学的所見はヘマトキシリン・エオジン染色でやや紫色に染まり,コンゴーレッド染色で無構造部が赤色から橙色に染った。電子顕微鏡にて毛細血管内皮細胞内,外にアミロイド細線維の集積を確認した。また,その細線維が内皮細胞内から外に出る像がみられ,アミロイド細線維は毛細血管から産生されると考えられた。全身検査,血液生化学的,免疫学的検査結果はすべて正常であった。血清アミロイドA蛋白も正常であった。以上の所見から,限局性眼窩アミロイドーシスと診断した。

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 左眼乳頭耳側縁に網膜血管腫を生じた57歳女性の1例を経験した。中心暗点を主訴に受診し,3年間に血管腫は2/3乳頭径から1.5乳頭径に増大し,乳頭耳側縁に半月状となった。眼底後極部に滲出性網膜剥離と硬性白斑沈着が増加し,矯正視力は0.8から0.3に低下した。血管腫に対し光凝固を行ったが,凝固中に著しい黄白色の網膜下滲出液を生じ,眼底後極部の網膜剥離,硬性白斑沈着が増加した。約1か月間隔で光凝固をさらに4回繰り返したところ,初診から15か月後に血管腫は乳頭耳側縁に三日月状に残存するのみとなり,滲出性網膜剥離,硬性白斑は消失した。しかし乳頭黄斑線維束は萎縮し視力は0.02になった。

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 片眼性の網膜色素変性で,10年後に健眼にも発症した40歳女性の1例を経験した。したがって片眼性の網膜色素変性様の病変をみたときには長期(少なくとも10年以上)にわたり健眼の経過観察が必要と考えられた。

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 膠様滴状角膜変性症患者が装用していたソフトコンタクトレンズ表面への沈着物の組織学的検討を行った。患者は3年前に表層角膜移植術および角膜上皮形成術後に治療用ソフトコンタクトレンズを連続装用しており,細隙灯顕微鏡検査では明らかな再発がみられなかった。レンズ表面の沈着物は,コンゴーレッド染色陽性で,アミロイド陽性所見を示した。一見鎮静化したと考えられる上皮における,subclinicalなアミロイドの産生が確認された。

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 4歳女児に発生した眼窩横紋筋肉腫の1例を経験した。患者は眼瞼腫脹に続く眼球突出を主訴に来院し,術前視力は両眼1.2,眼球運動障害による複視を訴えた。CTで眼窩鼻側後方に腫瘍が存在した。Combined lateral and medial orbitotomyを施行し,腫瘍を一塊に摘出した。組織的に横紋筋肉腫の胎児型と診断され,顕微鏡的に摘出断端に腫瘍細胞がみられたためIntergroup RhabdomyosarcomaStudy分類のgroup IIaと考えられ,術後,化学療法,放射線療法を併用した。術後15か月を経過して,視力は両眼とも1.2,眼球運動障害は改善し,複視も消失した。

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 過去30か月の間に,2か月以上にわたり調節訓練を行った40代の老視20例の調節力,屈折値および自覚症状の変化を検討した。屈折値は変化しなかったが,調節力は2か月間の訓練後に,対照群と比較して有意に増加していた。また,老視の自覚症状は20例中15例で改善した。今回の結果から,この方法は初期の老視の患者に対して,最初の眼鏡を作る前にまず試してみる価値のあるものと思われた。

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 下斜筋過動症患者44例を対象に,下斜筋切除後転術を施行した。片眼のみ手術を行った群(26例),両眼等量の手術を行った群(10例),両眼不等量の手術を行った群(8例)に分け,効果の検討を行った。手術眼の効果は,全群において有効であった。片眼のみの手術例では,非手術眼に下斜筋過動の出現や増大が手術後54%にみられ,手術眼の下斜筋過動の改善が良好なものほど対側眼の下斜筋過動の出現や増大が高率であった。両眼等量手術群では,左右眼でほぼ同等に下斜筋過動が改善し,両眼不等量手術群では,手術量が少ない眼においても良好な手術効果が得られた。以上から,わずかでも両眼に下斜筋過動が存在する場合には両眼同時手術を選択すべきと考えた。

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 慢性活動性C型肝炎患者に対しインターフェロン(IFN)を投与し,眼科で定期的に観察した15例をもとに,IFN網膜症の発症の要因を検討した。15例中8例に網膜症をみた。網膜症発症群の1例を除いて,10%以上の血小板減少をみたが,発症群と非発症群間で血小板減少率に有意差をみなかった。全例,IFN投与中血清トランスアミナーゼの低下,および抗ウイルス効果発現の指標となる2’5’—オリゴアデニル酸合成酵素の持続する上昇がみられたことから,網膜症の発症には抗IFN抗体の関与は少ないと考えられた。

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 サルコイドーシスと診断された22歳女性の右眼視神経乳頭部に著明な新生血管を認めた。網膜血管の閉塞はほとんどみられず,螢光造影では網膜血管全域から螢光漏出を,また乳頭部新生血管からは旺盛な色素漏出を示した。しかし硝子体剥離がすすむにつれ,視神経乳頭部に癒着していた新生血管膜は硝子体牽引により自然に網膜面から遊離しはじめ,初診時から約1か月後には完全に新生血管膜は乳頭部から離断した。これは網膜剥離を起こすことなく,乳頭面で強い硝子体牽引が発生したためと考えられた。

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 69歳男性の右上顎洞癌に対して,総量50Gyのライナック照射を行い,2年3か月後に右眼の放射線網膜症が生じた。著明な視神経乳頭浮腫,網膜出血,軟性白斑を伴う網膜下鼻側動脈の閉塞があった。網膜光凝固,副腎皮質ステロイド投与などの治療を行ったが初診から6か月後には硝子体出血をきたし,血管新生緑内障へと進展した。

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 裂孔原性網膜剥離880眼への強膜内陥術後に,脈絡膜剥離が66眼7.5%に生じた。高齢の男性の深部弁状裂孔による胞状網膜剥離に対して輪状締結術を行った場合に脈絡膜剥離が発生しやすく,強膜内陥材料による渦静脈の圧迫が原因と思われた。脈絡膜剥離は術後約3日目に発生し,約8日続いて自然消退したが,副腎皮質ステロイド薬の内服が脈絡膜剥離の消退に有効であった。網膜の復位には複数回の手術を要したが,退院時の網膜剥離復位が全例で得られた。脈絡膜剥離が生じた眼では,これがない眼に比べて,増殖性硝子体網膜症や黄斑皺襞形成などの眼内増殖性変化,および毛様体剥離による浅前房から続発閉塞隅角緑内障の合併が多かった。

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 内科で1週間前にベーチェット病と診断された40歳の女性が,両眼異物感を主訴として受診した。両眼の球結膜に充血を伴う潰瘍がみられた。前眼部と眼底には炎症所見はなかった。生検で,潰瘍底に好中球とリンパ球などの炎症細胞の浸潤と血管炎があった。抗生物質の点眼は無効であり,副腎皮質ステロイド薬の点眼の併用後に結膜潰瘍が改善した。結膜潰瘍と口腔内アフタが同時期に出現したことと,ステロイド薬の点眼で改善したことから,ベーチェット病による結膜潰瘍と診断した。本邦での報告はないが,結膜潰瘍の原因としてベーチェット病の可能性が考慮されるべきである。

眼科の控室

健眼が先
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 眼科の診療で左右をとり違えることは大きな恥であり,常に警戒していただきたいのです。このため,診療では「右が先・左が後」という原則が勧められますが,例外があります。

 網膜剥離がよい例ですが,普通は「悪いほう」から先に診たくなるものです。ところが,実際には健眼から先に診ていただきたいのです。

米国の眼科レジデントプログラム

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 眼科レジデントプログラムの中にアメリカ眼科アカデミーの教材や総会のことがよく出てくるが,それらはレジデントのみならずアメリカの眼科医の生涯教育の中心的役割を果たしている。今回,最終回は眼科レジデントプログラムと密接に関係しているアメリカ眼科アカデミー総会(Annual Meeting of AmericanAcademy of Ophthalmology:AAO)について紹介する。

基本情報

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臨床眼科
50巻7号 (1996年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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