臨床眼科 57巻4号 (2003年4月)

特集 第56回日本臨床眼科学会講演集 (3)

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要約 3人の女児が急性視神経炎と診断され,その後の検査で多発性硬化症が発見された。年齢はそれぞれ6歳,8歳,9歳であり,2例では両眼発症である。3例ともに感冒とウイルス感染症が前駆症状としてあった。視力低下が高度で,3眼では0,1眼で0.02,1眼で0.15であった。測定可能な罹患眼すべてに視野狭窄があった。視神経病変は,3眼が乳頭炎,2眼が球後視神経炎であった。多発性硬化症の診断には,磁気共鳴画像(MRI)による脳内プラークの検出が有用であった。全例に発病早期に副腎皮質ステロイド薬のパルス療法を行った。視力と視野はすみやかに改善し,3眼では治療開始から10日以内,2眼では6週以内で正常化した。小児の多発性硬化症に併発した視神経炎に副腎皮質ステロイド薬のパルス療法が奏効した症例群である。

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要約 5名の女性に発症したレーベル遺伝性視神経症の臨床像を検索した。全例にミトコンドリア点変異が検出され,診断が確定した。年齢はそれぞれ7歳,28歳,53歳,66歳,66歳であり,全例が両眼性の発症であった。3例では視力に明らかな左右差があり,4例では視野にも明らかな左右差があった。66歳で発症した2例では,それぞれヘルペス性ぶどう膜炎とエタンブトール投与の誘因があった。今回の症例群は,レーベル遺伝性視神経症が女性に発症した場合には,男性に比べて少なくとも片眼は症状が軽い可能性があることと,感染または薬剤投与などが女性発症者での発症のきっかけになりうることを示している。

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要約 視神経乳頭出血を発症した3例を経験した。全例が女性であり,年齢は,14歳,16歳,22歳であった。2例が片眼,1例が両眼に発症した。全例に-2.5Dから-6.25Dの近視があった。初発症状は,飛蚊症または霧視であった。出血は,乳頭上,乳頭鼻側の網膜下,および軽度の硝子体出血の形であった。蛍光眼底造影で,網膜・脈絡膜血管ともに異常はなかった。出血は全例で視機能障害を残さずに自然寛解した。健眼を含む全6眼に輪状の灰色コーヌスがあった。網膜下出血があった部位には強膜が透見する白色コーヌスがあった。乳頭は小さく,境界不鮮明で,偽乳頭炎に類似していた。白色コーヌスが形成される過程で,乳頭を栄養する乳頭周囲脈絡膜血管(peripapillary choroidal vessel)が牽引され,破綻することが乳頭出血の原因であると推定した。

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要約 眼脂培養で同定した572株の細菌の薬剤感受性を検討した。検体は某病院に入院中の全科の入院患者で眼脂のある338人から採取した。男性は115人で平均年齢80.2歳,女性は223人で平均年齢83.9歳であった。Coagulase negative Staphylococcus(CNS)130株の薬剤耐性率は,セフメノキシム(cefmenoxime)とクロラムフェニコール(chloramphenicol)に対して約30%,オフロキサシン(Ofloxacin)には63%であった。Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)111株では,バンコマイシン(vancomycin)に対して0%,クロムフェニコールに対して6.3%,オキシテトラサイクリン(oxytetracycline)には25.2%であった。グラム陽性菌全体での薬剤耐性率は,セフメノキシムには35.4%,クロムフェニコールには18.1%,オフロキサシンには60.4%であり,グラム陰性菌全体では,セフメノキシムには28.9%,クロムフェニコールには50.5%,オフロキサシンには19.6%であった。術前の抗菌点眼薬としては,結膜囊に多く存在するグラム陽性菌に高い感受性があるセフメノキシムとクロムフェニコールが適していることが上記の結果から結論される。

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要約 マイトマイシンC併用非穿孔性線維柱帯切除術を行った20眼での中期結果を検討した。対象は原発開放隅角緑内障10眼,正常眼圧緑内障10眼であった。術後の観察期間は平均12か月であった。全20眼の術前の平均眼圧は19.0±5.6mmHgで,術後12か月の平均眼圧は11.6±3.0mmHgであり,有意な眼圧下降が得られた(p<0.05)。合併症として周辺虹彩前癒着が12眼に認められ,レーザーによる隅角穿孔や隅角形成術が必要であった。

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要約 66歳女性に高熱が突発し,17日後に肝膿瘍に続発した敗血症として内科に入院した。その10日前から右眼視力低下があり,当眼科に紹介された。右眼視力は光覚弁で,前眼部炎症が強く,硝子体混濁のため眼底透見不能であった。血液から肺炎桿菌Klebsiella pneumoniaeが検出された。内因性眼内炎と診断し,全身的・眼科的に治療した。前眼部炎症と硝子体混濁は改善したが,初診から3か月後に牽引性網膜剝離が生じた。硝子体手術を行ったところ,増殖膜と硝子体が炎症細胞とフィブリンを含んでいた。経過は良好で,視力は最終的に0.1に回復した。肝膿瘍に続発した肺炎桿菌による転移性眼内炎は予後不良であるとされているが,本症例は硝子体手術が有効でありうることを示している。

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要約 先天性上斜筋麻痺44例に手術を行った。著しい下斜筋過動がある28例には下斜筋を後転し,その他の16例には患眼の上直筋または健眼の下直筋を後転した。磁気共鳴画像(MRI)で,患眼の上斜筋の筋腹萎縮の有無を検索した。手術効果は,正面位と頭部患側傾斜位の上下偏位と,Hess赤緑試験で判定した。下斜筋手術群では,非萎縮群のほうが正面位と頭部患側傾斜位の上下偏位の改善率が有意に高く(p<0.05),萎縮群では下方視での上下偏位の矯正が不十分であった。上・下直筋手術では,萎縮の有無による手術効果の有意差はなかった。著しい下斜筋過動を伴う筋腹萎縮例では,下斜筋手術のみでは不十分であり,他の術式を追加または併用する必要があると結論される。

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要約 1998年までの10年間に当科で手術を行った乳児内斜視37例と20歳未満の間歇性外斜視31例の経過を検索した。手術時の年齢は,乳児内斜視では0~68(平均34)か月,間歇性外斜視では1~17(平均10.5)歳である。術後2年以上の時点での治癒度を,日本弱視斜視学会の「斜視の治癒基準」で判定した。乳児内斜視では治癒度IからIVまでの累計が84.4%,間歇性外斜視では74.3%であった。術後の両眼視機能は,乳児内斜視では11%で,間歇性外斜視では84%で得られた。

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要約 両眼発症の原田病19例の赤外蛍光造影所見と治療経過を検索した。赤外蛍光造影では,脈絡膜中大血管の不明瞭化と数の減少,低蛍光斑の散在,脈絡膜血管透過性亢進による過蛍光などが特徴的であった。これらの所見は,フルオレセイン蛍光造影では診断が困難な症例でもみられ,診断に有用であった。治療によって漿液性網膜剝離が消失し,フルオレセイン蛍光造影所見がほぼ正常化している時期でも,赤外蛍光造影では脈絡膜循環不全を示す所見が得られた。赤外蛍光造影による所見をもとに治療を行った症例は良好な経過を示した。原田病の詳細な病態の把握,診断,治療の評価に赤外蛍光造影が有用な補助手段であると結論される。

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要約 65歳男性の右眼角膜が毛虫の毒針毛で刺された。受傷から20か月後に眼痛と視力低下で紹介され受診した。右眼視力は手動弁で,眼圧は47mmHgであった。右眼に瞳孔ブロック,虹彩ルベオーシス,白内障があり,眼底は透見不能であった。虹彩切除などで眼圧は正常化したが,薬物治療にもかかわらず眼内炎は増悪と寛解を繰り返し,前房畜膿が反復して起こった。初診から16か月後に水晶体摘出術を行い,これに続く硝子体切除術の際に硝子体腔から毒針毛を摘出した。眼内炎は消退し,手術から1年経過した現在,0.3の右眼視力を維持している。

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要約 目的:炭酸ガスレーザーと化学療法で治療した結膜と眼瞼の悪性黒色腫の症例報告。症例:77歳女性の左眼球結膜上方に黒褐色腫瘤が3年前に生じた。下方球結膜と下眼瞼にも同様な腫瘤が出現し,次第に拡大して受診した。小児期より左眼下眼瞼に母斑様の黒色腫瘤があった。所見と経過:左眼の下眼瞼縁に黒褐色腫瘤,球結膜上方の輪部に沿う扁平な黒色斑,下円蓋に隆起性の黒褐色腫瘤,上下の瞼結膜に黒色の色素斑の散在があった。球結膜と眼瞼縁腫瘤を切除し,悪性黒色腫と組織診断した。球結膜と瞼結膜の色素斑に炭酸ガスレーザーを照射した。マイトマイシンCの点眼,抗癌薬の全身投与,インターフェロン-βの結膜下注入を行った。下眼瞼縁の再発に対して再切除と,瞼球癒着などに対して形成手術を行った。初回治療から1年間,これ以外の再発はない。結論:球結膜の悪性黒色腫に,炭酸ガスレーザー照射と局所化学療法が奏効した。

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要約 正常人8例の片眼にラタノプロストを午後9時に1回点眼し,眼圧,眼灌流圧,視神経乳頭および黄斑部血流量を1,3,6時間後に測定した。他眼には同様の検査のみを行い,対照とした。血流量の測定にはレーザースペックルフローグラフィを用い,血流速度の相対値であるSBR値(square blur rate)を指標とした。点眼6時間後に眼圧は26%下降した。これは日内変動を超えた下降率であったが,眼灌流圧には影響しなかった。視神経乳頭と黄斑部の血流量には変化がなかった。正常眼へのラタノプロスト点眼には優れた眼圧下降作用があるが,視神経乳頭での血流には影響しないと結論される。

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要約 抗緑内障薬マレイン酸チモロール(チマバック(R))を含む点眼瓶の汚染の可能性を検索した。21名の高眼圧症または緑内障患者に2種類の点眼薬をそれぞれ1週間使用させた。防腐剤を含まないチマバック(R)点眼薬と,防腐剤である塩化ベンザルコニウムを含むマレイン酸チモロール点眼薬である。回収した点眼瓶口付着物の培養を行った。それぞれ21検体中,前者からの8検体,後者からの12検体に細菌が検出された。両群の検出率に有意差はなかった。分離された細菌について,塩化ベンザルコニウムを付加したときの最小発育濃度(MIC)を評価した。グラム陽性菌に対するMICは低く,陰性菌に対しては高かった。以上の結果から,チマバック(R)点眼瓶の汚染は少なく,グラム陰性菌への塩化ベンザルコニウムの抗菌力は弱いと結論される。

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要約 生後1か月の女児の左眼虹彩が赤いことに母親が気づき,その1か月後に来院した。在胎40週の正常分娩で,出生時体重は2,900gであった。左眼下方の虹彩に2×4mmの淡赤色の腫瘤があり,表面が平滑で境界明瞭であった。全身に異常はなかった。超音波生体顕微鏡検査(UBM)で,虹彩根部にある充実性の腫瘤であった。1か月後に腫瘤は4×6mmに増大し,緑内障が続発したので,虹彩隅角毛様体切除術を施行した。組織病理診断は毛細血管腫であった。

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要約 過去5年間に加療した眼内炎36例36眼につき,原因,治療法,予後を中心に検索した。男性20例,女性16例であり,年齢は15歳から85歳,平均62歳であった。原因は,角膜潰瘍18眼,外傷7眼,手術6眼,内因性1眼であり,4眼では不明であった。治療は,薬剤投与のみ18眼,前房洗浄3眼,硝子体手術8眼,眼球摘出または内容除去7眼であった。多変量解析で,感染の範囲と発症から治療までの間隔が視力の転帰に有意な影響を与えると判断された。

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要約 眼科手術での術後感染防止対策について,記名式アンケート調査をした。対象は全国の大学病院106施設と一般病院296施設の合計402施設であり,187施設(46.5%)から回答が得られた。21%では手術ごとに術衣の交換はせず,29%では手洗いを毎回せずに手袋の交換だけをしていた。術後の感染防止のために,点眼薬としてニューキノロンが86%で用いられ,7日以上が51%で行われていた。静注薬としてセフェム系薬が81%で使用され,その内訳は,第1世代23%,第2世代20%,第3世代38%であり,52%が術後3日間だけ使用していた。経口薬としてセフェム系薬が87%で使用され,56%が術後4~6日間であった。

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要約 草刈り中の65歳男性の左眼に異物が飛入し,眼痛が生じた。受傷から24時間後に受診した。左眼視力は手動弁で,眼球突出と眼瞼腫脹があった。左眼角膜に異物刺入創があり,眼内異物と眼内炎と診断した。手術までの数時間中に角膜混濁が急速に進行した。摘出した水晶体内に鉄片異物があり,前部硝子体を切除した。手術で得られた眼内組織からBacillus cereusが検出された。バンコマイシンなどの抗生物質を投与し12日後に眼内炎は寛解したが,低眼圧になり,最終視力は15cm手動弁であった。グラム陽性捍菌であるBacillus cereusによる眼内炎が急速に増悪した症例である。

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要約 糖尿病網膜症がある67歳男性の左眼に硝子体出血が発症し,これに対して硝子体手術を行った。7か月前に超音波水晶体乳化吸引術と眼内レンズ挿入術による白内障手術が施行されている。今回の経扁平部硝子体手術では,散瞳が不良なので虹彩レトラクターを併用した。術翌日に虹彩蓄膿を伴う眼内炎が生じ,抗生物質を添加した灌流液で硝子体腔を洗浄した。前房水と硝子体から細菌は検出されなかったが,臨床像から細菌性眼内炎と診断した。その5日後に網膜剝離が疑われ手術を行ったが,網膜剝離はなく,網膜血管炎は鎮静化していた。摘出した眼内レンズから細菌は検出されなかった。糖尿病網膜症への硝子体手術で前房内操作を併用するときには,通常の閉鎖式経扁平部硝子体手術よりも術後眼内炎の危険が増す可能性があり,注意が必要である。

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要約  過去6年間に硝子体手術にシリコーンオイル充填術を併用した193眼のうち,17眼(8.8%)では,以下の理由によりこれを抜去しなかった。7眼は低眼圧であり,抜去による眼球瘻に至る可能性が高かった。4眼には術後に強い増殖性硝子体網膜症(PVR)と網膜剝離が生じ,抜去により全網膜剝離になる可能性が高かった。PVRの他の1眼は,抜去に続いてガスタンポナーデが必要であったが,術後の安静が不可能であった。5眼では眼球瘻がすでに発症していた。シリコーンオイルを抜去できない症例は,視機能のいかんにかかわらず,経過観察が必要である。

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要約 過去62か月間に経験したダウン症候群を除く知的障害児103例の眼所見をまとめた。初診時年齢は11か月から12歳7か月,平均4歳10か月であった。知的障害の原疾患は,染色体異常11例,脳性麻痺8例,その他18例,不明66例であった。調節麻痺下で,+4D以上の遠視が18例(17.5%),-4D以上の近視が10例(9.7%)にあった。2D以上の乱視が51例(49.5%)にあり,90.6%が直乱視であった。不同視が16例(15.5%)にあった。眼鏡は77例(74.8%)に必要であった。水平斜視が49例(47.6%),上下斜視が21例(20.4%)にあり,10例(20.4%)が手術適応であった。知的障害児は検査が困難なので放置されている例が多いが,屈折異常と斜視の合併が多いために,視覚感受性期間内に積極的な治療が望まれる。

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要約 先天色覚異常者における,白,赤,黄,緑,青の5色の色チョークで黒板上に書かれた文字色の見え方について検討する目的で,色覚正常者5名と先天色覚異常者51名に対し,シミュレーション検査を施行した。その結果,色覚正常者では誤答はみられなかった。先天色覚異常者では51名中37名(72.5%)に誤答がみられた。先天色覚異常者では黒板上に色チョークで書かれた文字色の色弁別が困難な場合があることが示されたことから,色チョークを用いる際には,先天色覚異常者においても容易に見分けられるような色以外の情報を要するものと思われた。

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要約 Shaken baby syndromeが疑われる2例を経験した。1例は生後7か月の男児で硬膜下血腫があり,両眼に網膜出血斑が散在している。他の1例は生後2か月の男児で硬膜下液貯留と硬膜下血腫があり,左眼に網膜出血斑と黄斑部色調不良,右眼に円孔に類似する赤色黄斑があった。これら黄斑部の異常所見はその後不明瞭化した。虐待や強い揺さぶりの既往を両親は否定したが,眼底所見と画像検査などからshaken baby syndromeが推定された。本症候群の診断とその後の再発を防ぐ上で,眼科医が果たす役割は大きい。

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要約 健常者46例92眼について,中心窩の深さと視力との関係を検索した。年齢は23歳から31歳,平均24歳である。屈折は+6Dから-13Dの範囲にあり,7眼を除き正視から-8Dの範囲にあった。屈折異常以外に眼科的に問題がある例と,2D以上の乱視眼はあらかじめ除外した。光干渉断層計(optical coherence tomograph:OCT)で中心窩を通る水平面で眼底を走査し,中心窩と傍中心窩の厚さの比を「中心窩の深さ」と定義した。視力はランドルト環で測定し,距離は5mに限定しなかった。裸眼視力は0.01から2.6の範囲,最良矯正視力は1眼を除き1.2から2.6の範囲にあった。近視の度数が強いほど中心窩が有意に深く(r=0.264,p=0.011),裸眼視力が不良であるほど中心窩が深かった(r=0.238,p=0.022)。中心窩の深さと矯正視力の間には有意な相関がなかった(r=0.007,p=0.950)。

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要約 25歳女性が両眼霧視を契機としてぶどう膜炎と診断され,当科に紹介され受診した。両眼の前房に多数の炎症細胞,後極部に滲出性網膜剝離があり,原田病と診断した。副腎皮質ステロイドの全身投与で病状が改善し,4週後に網膜剝離は消失した。発症から4か月後に眼底は夕焼け状になり,頭部に白髪と多発性の銭形の脱毛が生じた。皮膚の白斑はなかった。生検で毛根破壊はなく,毛根周囲にリンパ球浸潤があった。脱毛部に外用ステロイド剤の塗布を開始した。その1か月後から毛髪の再生が始まり,3か月後に毛髪の密度は発病前の状態に回復した。原田病に続発した頭部脱毛に外用ステロイド剤の塗布が有効であったと判断される。

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要約 急性後部多発性小板状色素上皮症(APMPPE)の黄白色滲出斑を蛍光眼底造影と光干渉断層計(OCT)で検索した。症例は20歳男性で,1眼のみに発症し,病状自覚1週後から18か月後までの経過を追った。眼底の滲出斑は,フルオレセイン蛍光眼底造影では早期に低蛍光,後期に過蛍光の逆転現象を示し,インドシアニングリーン蛍光眼底造影では全経過中,低蛍光であった。OCTでは,滲出斑は網膜色素上皮またはその前方に隆起する高反射帯として観察され,寛解期には消失した。滲出斑は網膜色素上皮の肥厚またはその前方の滲出物と考えられ,蛋白濃度が高い漿液性網膜剝離が黄斑部にあった。滲出病巣に一致して脈絡毛細血管板の閉塞があった。経過中に再発性の角膜上皮下浸潤が両眼に生じたが,副腎皮質ステロイドの点眼で消退した。

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要約 23歳女性に発熱と霧視が突発した。以前は正視で,両眼とも1.5の視力があったという。内科で腎盂腎炎と診断され,抗生物質の投与を受けた。霧視が続いたために,発症から8日後に受診した。両眼に浅前房があり,約-4.5Dの近視があった。眼圧と眼底はほぼ正常であった。その4日後に左右眼の屈折は約-5.5Dになり,前房深度は右1.85mm,左1.69mmであった。超音波生体顕微鏡(UBM)で,毛様体浮腫があった。全身検査で抗核抗体などが陽性であり,全身性エリテマトーデス(SLE)の診断が確定した。副腎皮質ステロイド薬などの全身投与で,近視,浅前房,毛様体浮腫は約1か月で消失した。SLEによる毛様体浮腫で水晶体が前進したことが近視化の原因であると推定した。

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要約 48歳男性が右眼視力低下で受診した。8日前に木を伐採中,右眼を拭った腕に毛虫が付着していた。同日某医で右瞼結膜に刺入した数本の毛を除去されたが,その後視力が低下し,眼内炎が指摘されていた。右眼は矯正視力0.01で,前房蓄膿と硝子体混濁があった。前房洗浄と硝子体切除術を行った。術中に採取した眼内組織からの細菌と真菌培養は陰性であった。薬物療法で炎症は軽快し,右眼視力は0.6に改善した。2か月後に眼内炎が再発し,視力が0.04に低下した。薬物投与で硝子体混濁が軽快したときに,小さな線状の硝子体混濁が2個発見された。再度の硝子体切除術中に,硝子体内に2本の毒針毛と毛様体扁平部に1本の毒針毛を発見し,摘出した。以後経過は良好で,1.2の視力を維持している。前房蓄膿を伴う眼内炎で,毛虫と接触した既往がある際には毒針毛による可能性があり,線状の硝子体混濁の存在が診断確定に有用であることを示す症例である。

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要約 61歳男性が1週間前からの右眼視力障害で受診した。矯正視力は右0.6であった。眼底に乳頭周囲の軟性白斑と桜実紅斑があった。蛍光眼底造影で右眼の網膜と脈絡膜全体の造影遅延があった。左眼は正常であった。磁気共鳴画像法による脳血管撮像で内頸動脈と眼動脈の狭窄は証明されなかったが,これでは確認できないレベルでの眼動脈末梢の循環障害が推定された。ウロキナーゼの点滴を開始し,徐々に眼底所見は改善し,治療開始10日目には視力が1.2に回復した。蛍光眼底造影所見もこれとともに改善した。眼動脈の循環障害が疑われ,視力低下が軽度であるときは,ウロキナーゼ点滴も有効な治療法の1つと考えた。

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要約 62歳男性が3週間前からの左眼霧視で受診した。糖尿病の既往があり,3年前に両眼に白内障手術を受けている。矯正視力は右0.8,左0.4であり,眼圧は右22mmHg,左26mmHgであった。左眼の虹彩と隅角に新生血管があり,両眼の眼底周辺部に無血管野があった。蛍光眼底造影による腕-網膜循環時間が約25秒と延長していた。脳血管造影で両側の内頸動脈に軽度の狭窄があった。これらの所見から,眼虚血症候群が疑われた。眼病変と視力はいったん改善したが,初診から5か月後に右眼隅角に新生血管が生じ,眼圧が上昇した。両眼の汎網膜光凝固を行い,以後の1年間,眼病変は寛解している。内頸動脈狭窄症が眼虚血症候群と血管新生緑内障の原因であった症例である。

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要約 27歳女性が右眼の眼痛,変視症と傍中心暗点で受診した。17か月前に副鼻腔炎で両側上顎洞手術を受けていた。矯正視力は右0.8,左1.2であり,右眼に視神経乳頭の発赤,黄斑部網膜に皺襞,黄斑部下方に網膜浮腫があった。左眼は正常であった。フルオレセイン蛍光眼底造影で乳頭からの色素漏出と網膜浮腫部に滲出性網膜剝離を示す所見があった。赤外蛍光造影で後極部の脈絡膜毛細血管の充盈遅延,低蛍光点,斑状の脈絡膜過蛍光領域,脈絡膜血管の拡張があった。CTと超音波検査で右眼強膜に肥厚があり,特発性後部強膜炎と診断した。副腎皮質ステロイド薬の全身投与で,傍中心暗点,網膜剝離,赤外蛍光造影での脈絡膜過蛍光,脈絡膜血管拡張が消失し,これらの変化が活動性が高い部位の消炎を示すと判断された。強膜肥厚,乳頭からの色素漏出,赤外蛍光造影での脈絡膜毛細血管の充盈遅延,低蛍光点は遷延し,後部強膜炎がなお残存していることが疑われた。

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要約 22歳男性が自転車を運転中に転倒し,右眼を強打して即日受診した。矯正視力は右0.04,左1.5であり,右眼に前房出血と黄斑部にニボー形成を伴う網膜前出血があった。保存的に治療した結果,2週間後に網膜前出血は融解して後部硝子体後方に移動し,のちに拡散した。硝子体混濁は次第に薄くなり,視力は受傷4か月後に0.1,6か月後に0.9に改善し,眼底が透見可能になった。若年者の外傷性網膜前出血では,出血混濁に比べて視力が良好な場合には自然吸収しうることを示す症例である。

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要約 73歳女性が5か月前からの緩慢な視力低下で受診した。視力は両眼とも手動弁で,右眼に視神経萎縮,左眼に軽度の視神経乳頭浮腫があった。画像診断で視神経鞘を含む視神経周囲組織に腫脹があった。血液検査で,抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)が陽性であり,ANCA関連血管炎に合併した視神経周囲炎と診断した。副腎皮質ステロイドのパルス療法と免疫抑制剤による治療を行い,左眼視力はその翌日に0.2に改善した。以後,視力に動揺があったが,9か月後に左眼視力は0.7に回復した。しかし求心性視野狭窄が残った。右眼視力には変化がなかった。本症例での再発性視神経障害の発症と,炎症の再燃・寛解にp-ANCAが関与している可能性がある。

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要約 36歳男性が2か月前からの右眼の視力低下と視野異常で来院した。矯正視力は右30cm指数,左0.7で,右眼に視神経萎縮があり,RAPD(relative afferent pupillary defect)が陽性であった。脳血管造影などで30×25mm大の右側巨大内頸動脈瘤があった。まず総頸動脈結紮術,ついで内頸動脈結紮術を行い,動脈瘤は縮小した。これとともに,視力と視野は改善し,初診から27か月の現在,右0.09,左1.2の視力を得ている。経過中に,両眼の視力と視野に経時的な変動があった。これは,巨大動脈瘤による視神経圧迫のほかに,微小循環障害や視神経の栄養血管の虚血性障害の関与があるためと推定した。

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要約 視交叉近傍病変の3症例を経験した。すべて女性であり,年齢は,67歳,80歳,61歳であった。1例は正常眼圧緑内障として4年間治療した後に,磁気共鳴画像検査(MRI)で鞍結節髄膜腫が発見された。1例は左眼の視力低下と視野異常で受診し,左眼に視神経萎縮と下鼻側半盲,両眼に傍中心暗点があり,MRIで左蝶形骨縁髄膜腫が発見された。1例は左視力低下で初発し,視神経炎として治療されたが改善せず,当科を受診した。連合暗点があり,CTとMRIなどで鞍上部の左内頸動脈瘤が発見された。視交叉近傍病変が緑内障または視神経炎に類似することを示す症例群であり,MRIを含む画像診断が診断確定に有用であった。

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要約 SRK/T式を使って実施した白内障手術で,眼内レンズ挿入直前に灌流液で前房を満たして測定した光学的眼軸長(A)と,その直後に粘弾性物質で前房を満たしたときの光学的眼軸長(B)の予測精度を超音波眼軸長(C)と比較した。乳化吸引術を行い,眼内レンズを囊内挿入した342眼を対象とした。A,B,Cの予測屈折度と3者の平均値を求め,術後屈折度との差(術後屈折度-予測屈折度)を比較した。予測屈折度は,A:-1.30±0.76,B:-1.20±0.73,C:-1.87±0.92であり,3者の平均予測誤差は-1.46±0.68であった。Cによる予測誤差は他よりもばらつきが大きく(p<0.001),3者の平均予測誤差が最もばらつきが小さかった。以上の結果から,SRK/T式に光学的眼軸長を適用することと,3法による眼軸長値の平均を用いることが有用であると結論される。

専門別研究会

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 平成14(2002)年9月26日に,地域予防眼科研究会がホテルメトロポリタン盛岡(第56回日本臨床眼科学会)において行われた。本年は一般口演が6題で,各演題とも質疑が活発に行われた。

 演題1・2は小暮文雄(日本失明予防協会)が,演題3・4は赤松恒彦(赤松眼科)が座長を務めた。

連載 今月の話題

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 慢性化,重症化したアレルギー性結膜疾患を,反復するアレルギー炎症による上皮傷害が異常修復した「リモデリング」として捉えることができる。このような病態の治療には抗アレルギー作用だけでなく,抗炎症作用,抗線維化作用を組み入れる必要があり,治療薬をリリーバ,コントローラとして理解することも重要である。

連載 眼の遺伝病 44

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 今回はPAX遺伝子568delG変異をもつ無虹彩症の1家系を報告する。http://pax6.hgu.mrc.ac.uk/では,今までに報告されているPAX6遺伝子変異を確認することができる。今回我々が述べる症例は,今までに報告のない新規568delG変異をもっていた。この変異はヌクレオチドナンバー568番から570番までの連続するグアニン(G)のうち,ひとつのGの欠失がヘテロ接合体で生じていた。この変異により27塩基下流に終止コドンのTAGを生じていた(図1)。

連載 日常みる角膜疾患 [新連載]

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 このたび「日常みる角膜疾患」という連載を開始することになりました。ここでは,実際に私たちが経験した症例を最初に呈示し,その症例での問題点をご一緒に検討していきたく思います。いわば誌上症例検討会のようなものです。基本的に,山口大学での臨床カンファランスの症例を中心にお届けしますので,読者の先生方にとってはあたりまえの症例もあるかもしれません。先生方の知識のリフレッシュにお役に立てばと思います。

 角膜の主な機能は,光を眼内に導入することと網膜に焦点を合わせることの2つです。したがって,角膜が原因で視機能が低下するときには,(1)角膜形状の異常と(2)角膜透明性の喪失に大きく分類して考えることができます。前者は,角膜が透明でありながら適切な焦点を結ばないことによる視力低下であり,後者は角膜が混濁し外界の光が眼内に入らない状態です。角膜形状異常には,円錐角膜や瘢痕などで角膜の形状が全体的に変化している場合や,点状表層角膜症(SPK)などで角膜表面の平滑さが失われている場合があります。一方,角膜が不透明である状態も,注意深く観察しますと,(1)角膜内皮機能不全,上皮欠損や高眼圧などにより上皮あるいは内皮細胞のバリア機能が低下して角膜実質や上皮下に生じている浮腫,(2)免疫反応や感染症の活動期にみられる炎症性細胞などの浸潤,(3)角膜疾患が治癒した後にコラーゲン線維やプロテオグリカンが新しく合成され,いわゆる瘢痕治癒している状態,(4)角膜ジストロフィなどの遺伝性疾患での異常タンパク質や,新生血管から漏出した脂質などの沈着などがあります(図1)。これらの大きな分類は,1つの角膜の中でさまざまに組み合わされている例も多く認められます。したがって,単に角膜全体として透明性がなくなっている角膜白斑と診断するのみでは不十分で,角膜の部位ごとに,浮腫,浸潤,瘢痕,あるいは沈着などと鑑別して所見をとることが必要です。的確に鑑別診断を行い適切な治療法を選択するためには,実際の臨床では,原因疾患が同定できず角膜白斑と診断せざるを得ない症例もたくさんありますが,可能な限り所見を鑑別してとることにより,原因となる疾患を推定することができます。角膜疾患の診断名がしばしば所見名であり,病理学的な病因に基づく疾患名でない例があることに注意が必要です。

連載 日常みる角膜疾患 1

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症例

 患者:69歳,男性

 主訴:両眼の眼痛と視力低下,羞明

 現病歴:4か月前に右眼に泥が飛入し,右眼の充血および眼痛が生じたため近医を受診し,点眼治療を受けたが改善しなかった。徐々に左眼にも同様の症状が出現したため,他医を受診し,抗生物質,抗真菌薬,抗ウイルス薬の投与および治療用ソフトコンタクトレンズの装用が行われたが,症状が増悪したため,山口大学医学部附属病院眼科に紹介され受診した。

 既往歴・家族歴:特記すべきことはない。

 初診時所見:視力は右0.02(0.15),左0.15(0.3)で,両眼の角膜は浮腫状で,角膜辺縁部に全周性の下掘れ状の角膜潰瘍を認め,特に右眼で潰瘍部の菲薄化が著明であった。両眼に強い球結膜充血と粘稠な眼脂がみられ,右眼では12時および9時の角膜潰瘍部に血管侵入が認められた(図1,2)。中間透光体および眼底に異常はなかった。CRP 0.28mg/dl(正常値0.0~0.25mg/dl),リウマトイド因子は陰性,ANAは陰性,C-ANCAなどその他の自己免疫抗体も陰性であった。

 治療および経過:即日入院のうえ,リンデロン(R)点眼,タリビッド(R)点眼をそれぞれ1日4回と,ネオメドロール(R)眼軟膏を就眠前に1回の投与を開始した。3日後から眼脂の減少と球結膜充血および角膜浮腫の軽減と眼痛などの自覚症状の改善がみられたが,右眼は潰瘍の菲薄化が入院時よりすでに著明であったため,入院後4日目に右眼の結膜切除術と潰瘍底掻爬術を施行した。手術ではマイクロ剪刀で角膜輪部から3mmの切除範囲で結膜を全周性にわたり切除した後,潰瘍底の掻爬および結膜下組織の剝離を施行した。術中摘出結膜組織標本には好中球および形質細胞の浸潤が認められた(図3)。術翌日から右眼の島状に残った角膜上皮が脱落し,術後3日目には広範囲にわたる上皮欠損が出現したため,上皮の再被覆を促進する目的でフィブロネクチン点眼を右眼に1日4回で開始した。術後10日目に潰瘍部は上皮の再被覆が得られた。入院後3週間目には左眼にも同様に結膜切除術を施行した。手術では,9時から11時までの輪部から1.5mmの切除範囲で,6時から9時までの輪部から3mmの切除範囲で結膜を切除した。術後,左眼も右眼と同様に島状に残った角膜上皮が脱落したが,フィブロネクチン点眼と治療用ソフトコンタクトレンズの装用により潰瘍は鎮静化し(図4,5),入院後50日で両眼とも角膜上皮の再被覆が完了した。

連載 あのころ あのとき 28

自己表現の日々 湖崎 克
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明治は遠くになりにけり

 昔の日本男子は,あまりしゃべらないことを美徳としていた。明治生まれの父に,「お前はおしゃべりである。男は黙っているものだ」とよく叱られた覚えがある。そういえば“男は黙って○○する”という言葉が流行ったような気がする。ところが戦後アメリカ映画がどっと入ってきて,向こうの男性がよくしゃべり,大袈裟な身振りをすることに,日本男性の多くはカルチャーショックを受けたものである。あの表現でなければ自分の主張が通せないのか,女性を口説けないのかということで明治の人からみれば全く驚きであり,ひんしゅくものであったろう。しかし,今から考えても愛をうち明けるのに,黙って感じてくれ,というのでは勝手な話であるし,いかにもまだるっこく,本当に通じたかどうかわからない。やはり言葉で,適切なボキャブラリーを使って,時には身振りも入れて訴えるべきであろう。シラノ・ド・ベルジュラックやイタリア男のようにはいかなくとも,である。そこで「明治は遠くなりにけり」となる。

連載 他科との連携

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 医療における他部門との連携が昨今重要視されるようになりましたが,われわれの施設ではその連携が欠かせない再生医療の分野での研究を進めています。『再生医療』とは“ティッシュ・エンジニアリング”の技術を用いてさまざまな臓器・組織を細胞と人工材料を組み合わせて再構築を行い患者に移植し治療するといった新しい医療の分野です。眼科領域においても角膜上皮,角膜内皮,さらには網膜色素上皮といった細胞の培養が可能となり,一部にはすでに臨床応用され良好な治療成績を収めている技術もあります。また骨,皮膚,神経といったさまざまな組織の再生が試みられ,大学などの研究施設だけでなくたくさんの企業が再生医療の分野に参入してきており,目覚ましい発展を遂げています。われわれの施設でも,この再生医療の技術を用いて角膜熱傷による角膜上皮幹細胞不全の患者に自己培養角膜上皮移植を実施する機会がありました。

 “自己培養角膜上皮移植”は,健常な角膜輪部組織より角膜上皮幹細胞を含む非常にわずかな組織を採取し,その組織から細胞の単離・培養を行い何十倍,何百倍にも増幅し,作製した角膜上皮シートを患眼に移植し,オキュラーサーフィスを再建する治療法です。ほんの2~3mmの角膜輪部組織より単離できる細胞から,眼の表面を十分に覆うに足りる角膜上皮シートを得ることができます。しかしながら,この細胞培養技術,自前で始めていたら大変な時間とお金と労力が必要でしたが,幸いなことにこの再生医療の分野で先行する名古屋大学口腔外科学講座,組織工学講座の先生方の協力により,非常にスムーズに臨床までこぎつけることができました。

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要約 69歳女性の両眼で,膨化白内障化した水晶体が硝子体腔に完全脱臼した。これの摘出を全身麻酔下で右眼に対して行った。まず硝子体切除を行い,低分子量分散型粘弾性物質(VISCOAT(R))を水晶体後方に注入して浮上させ,輪匙で強角膜切開創から摘出した。注入した粘弾性物質を吸引除去し,眼内レンズを挿入,縫着して手術を終わった。術中または術後に合併症はなかった。脱臼水晶体の摘出に本法は有用かつ安全であった。

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要約 16歳女性に右上下肢のしびれが突発し,外眼筋麻痺,運動失調,深部腱反射の消失を伴っていた。磁気共鳴画像検査(MRI)で中枢神経系に異常がなく,Fisher症候群が疑われた。発症の2日後に眼科を受診した。矯正視力は右0.8,左0.5であり,両眼の輻輳反応が消失していた。両眼とも垂直方向での運動障害はなく,右眼に内転障害,左眼に内外転障害があり,いわゆるone-and-a-half症候群を呈していた。再度のMRIで左側の橋背側部に高信号域があった。当初のFisher症候群ではなく,多発性硬化症が強く疑われた。副腎皮質ステロイド薬のパルスと漸減療法で眼球運動は改善し,橋の病巣が縮小した。

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要約 画角120度のデジタル眼底カメラを用い,乳幼児10例に全身麻酔下での蛍光眼底造影検査を計25回行った。年齢は生後3か月から6歳であり,疾患の内訳は,網膜芽細胞腫4例,コーツ病3例,家族性滲出性硝子体網膜症2例,網膜血管病変1例である。所見は静止画または動画として記録した。モニタ画面で得られた画像を参考にして,症例によっては引き続いて光凝固を行った。使用した装置(RetCam 120(R))は,操作が簡便,広画角なので短時間で撮影が可能,造影所見がただちに得られる,複数の医師による観察が可能,過去の画像との比較が容易,眼底写真との比較対比が可能などの利点がある。これらの特徴から,本装置は小児の眼底疾患に対して特に有用であると評価される。

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要約 サルコイドーシスの診断基準を再評価するために,サルコイドーシスの診断が確定したぶどう膜炎90例の臨床所見と検査データを検索し,他の肉芽腫性ぶどう膜炎125例のそれと比較した。評価には赤池の情報量基準(Akaike Information Criterion:AIC)を用いた。その結果,最も診断的価値が高い項目は,胸部X線異常所見(肺門部または肺野部),アンギオテンシン変換酵素(ACE)値の上昇,67Gaシンチグラム異常,ツベルクリン反応陰性化,両側肺門リンパ節腫脹(bilateral hilar lymphadenopathy:BHL)の5項目であった。現在の診断基準はγグロブリンとリゾチーム値上昇を含み,胸部X線異常所見とBHLを含んでいない。この後者2項目はサルコイドーシスの診断確定に必要である。

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要約 新しい視野測定法であるSITA-fast(SITA-F)とSITA-standard(SITA-S)のどちらが集団検診に適しているかを検討した。過去に視野検査を受けたことがない正常者80例80眼を対象とし,ハンフリー視野計のプログラム30-2を,対象の半数はSITA-Fで,残りの半数はSITA-Sで測定した。SITA-Fによる測定時間はSITA-Sによる測定時間の54%であった。信頼性の高いデータはSITA-F群の95%,SITA-S群の90%にみられた。Andersonの異常判定基準を用いた場合の特異度はSITA-Fが89%,SITA-Sが94%であり,統計学的有意差はなかった。以上のことから,正常者の多い集団検診ではSITA-FはSITA-Sよりも有用であると結論した。

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 症例は,57歳の男性。右眼視力低下と夜盲を主訴に来院した。初診時の視力は,右0.01(n.c),左0.4(0.7)であった。前眼部中間透光体は正常。両眼底ともに境界鮮明な無数の白点および動脈ループを有し,右眼黄斑部には2乳頭径大の網脈絡膜萎縮病変を伴っていた。全視野刺激網膜電位図では,20分暗順応後の記録に比べ,長時間暗順応後に杆体系ERGの著しい増大を認めた。錐体系ERGは減弱していた。ゴールドマン視野計による動的視野検査では,右眼に中心暗点を認め,両眼ともに非定型の色覚異常を示した。蛍光眼底所見では,右眼萎縮性病変に一致して脈絡膜毛細血管の造影欠損を認めた。同症例の妹も軽度の夜盲を自覚し上記検査を行ったところ,黄斑部変性は認められなかったが,兄と同様に眼底白点症と錐体機能不全に一致した検査結果を得た。撮影は,CANON社製CF-60UV眼底カメラ,フィルムは富士写真フイルム社sensiaII(ISO100)を用いた。この眼底カメラの画角は60度と広角であるため,乳頭部と周辺の白点が比較的余裕をもって同画角内に収められたと思われる。

やさしい目で きびしい目で 40

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 子供はほめて育てろとよくいいます。犬の訓練もできたときにほめてやってご褒美をあげるとうまくいくそうです。また部下の上手なほめ方などという本が売られていたりと,他人からほめられたり評価されたりするほうが作業効率がよくなるようです。誰だってほめられれば嬉しくて気持ちのいいものです。私も横浜市に小院を開業してそろそろ2年になりますが,患者さんに「こんな近くにいい先生が来てくれてほんとうに幸せです」とか,「知り合いにいい先生だからぜひ行ってみなさいと言われて来ました」なんて言っていただくと本当に嬉しくて,明日の診療もがんばろう,などと思い一日の疲れも吹き飛んでしまいます。

 一方,患者さんも同様にほめられると嬉しいようです。糖尿病網膜症や緑内障などは,患者さんも眼科医も双方一生懸命治療に取り組んでいるのに,症状があまり改善しないので辛い疾患です。それでも「血糖が下がりだいぶよくなりましたね」「出血が引いてとてもきれいになりました」とか,「眼圧は11です。低くて大変いいです」「視野の悪化がなくてとてもうまくいっていますね」などと言いますと,「先生にほめられるとすごく嬉しいです」とおっしゃる方がいます。そして,そういう患者さんはますます治療に熱心になり病状も安定するように思います。「ああ,そうなんだ。患者さんもほめられると嬉しいものなんだ」とわかりちょっと驚きでした。

ことば・ことば・ことば

誤訳
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 ショパンのピアノ曲は大好きなのですが,ずっと不思議に思っていたことがあります。ピアノソナタの多くが「練習曲」となっている理由についてです。最近になってその根拠が理解できました。「練習曲」はetudeの翻訳だからです。英語だとstudyなので,「習作」とするべき単語であるのを誤訳したらしいのです。

 絵画にもetudeがあります。人に見せるための完成した画ではなく,デッサンなどの意味で,これはちゃんと「習作」と呼ぶことになっています。

基本情報

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臨床眼科
57巻4号 (2003年4月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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