連載 他科との連携
『再生医療』と『医療再生』
鬼頭 和裕
1
1名古屋大学眼科学教室
pp.601-603
発行日 2003年4月15日
Published Date 2003/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410101204
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医療における他部門との連携が昨今重要視されるようになりましたが,われわれの施設ではその連携が欠かせない再生医療の分野での研究を進めています。『再生医療』とは“ティッシュ・エンジニアリング”の技術を用いてさまざまな臓器・組織を細胞と人工材料を組み合わせて再構築を行い患者に移植し治療するといった新しい医療の分野です。眼科領域においても角膜上皮,角膜内皮,さらには網膜色素上皮といった細胞の培養が可能となり,一部にはすでに臨床応用され良好な治療成績を収めている技術もあります。また骨,皮膚,神経といったさまざまな組織の再生が試みられ,大学などの研究施設だけでなくたくさんの企業が再生医療の分野に参入してきており,目覚ましい発展を遂げています。われわれの施設でも,この再生医療の技術を用いて角膜熱傷による角膜上皮幹細胞不全の患者に自己培養角膜上皮移植を実施する機会がありました。
“自己培養角膜上皮移植”は,健常な角膜輪部組織より角膜上皮幹細胞を含む非常にわずかな組織を採取し,その組織から細胞の単離・培養を行い何十倍,何百倍にも増幅し,作製した角膜上皮シートを患眼に移植し,オキュラーサーフィスを再建する治療法です。ほんの2~3mmの角膜輪部組織より単離できる細胞から,眼の表面を十分に覆うに足りる角膜上皮シートを得ることができます。しかしながら,この細胞培養技術,自前で始めていたら大変な時間とお金と労力が必要でしたが,幸いなことにこの再生医療の分野で先行する名古屋大学口腔外科学講座,組織工学講座の先生方の協力により,非常にスムーズに臨床までこぎつけることができました。
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