臨牀消化器内科 33巻7号 (2018年5月)

膵癌update

本扉

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序文 杉山 政則
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わが国における膵癌の罹患者数は年々増加の傾向にあり,現在では年間4 万人に届こうとしている.膵癌の死亡者数は癌のなかで4 番目となっている.膵癌が難治性癌の代表であると長らくいわれてきているが,今もそれは変わらない.癌が相当に進行した段階まで症状が現れにくく,癌の発見時にはすでに切除不能となっている症例が多い.また切除例でも長期生存を得ることが難しい.

目次

Ⅰ 扉

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膵癌診療ガイドラインの初版2006年版は2004年の中山健夫 著「EBMを用いた診療ガイドライン作成・活用ガイド」に準拠して作成され,第2版(2009年版),第3版(2013年版)はMinds診療ガイドライン選定部会 監「Minds診療ガイドライン作成の手引き2007」に準拠して作成された.第4版(2016年版)は福井次矢,山口直人 監「Minds診療ガイドライン作成の手引き2014」に準拠して作成された.2014年版手引きは世界的にガイドライン作成のツールとなっているTheGrading of Recommendations Assessment,Development and Evaluation(GRADE)システムに準拠しているため,第4版(2016年版)膵癌診療ガイドラインもGRADEシステムに準拠する形式で作成された.エビデンス重視の姿勢は変わりないが,GRADEシステムは利益や不利益,医療費,医療状況など実診療にも配慮するため,今回はタイトルより“科学的根拠に基づく”を削除し,「膵癌診療ガイドライン2016年版」と変更した.GRADEシステムに準じて改訂された「膵癌診療ガイドライン2016年版」の改訂点・修正点をおもに内科に関係する事柄につき概説した.

Ⅰ 疫学・基礎 ②疫学 窪田 賢輔
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膵癌は予後不良である.ここでは国立がんセンターの統計データをもとに,がん全体のデータも含めた膵癌の疫学を示し,国内,欧米の動向,さらに早期膵癌の疫学についても言及する.

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膵癌は進行するまで自覚症状に乏しいことから,診断時に切除不能であることが多く,予後不良である.膵癌治療においてはいかに早期発見をするかが重要になるが,標準的なスクリーニング方法は未だ確立されていない.しかし,膵癌のハイリスク患者を認識して,画像検査を行うことが早期発見に結びつく可能性がある.「膵癌診療ガイドライン2016年版」でも,とくに複数の危険因子を有する場合には検査施行を提案することが推奨されている.本稿では膵癌の危険因子について述べる.

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わが国における膵癌患者の死亡者数は増加し続けており,年間3万人を超え日本の臓器別癌死亡数の第4位である.化学療法は進歩しているが,最近話題の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の恩恵に乏しく,相変わらず消化器癌のうちの最難治癌である状況に変わりはない.さらに,危険因子が明らかでないため早期発見が難しく,進行癌に至るまでに診断されにくいこともその一因である.乏しい手がかりではあるが,最新版の膵癌ガイドラインに記載されているリスクファクターは,① 遺伝性膵炎やPeutz‒Jeghars症候群などの遺伝性疾患,② 家族性膵癌,③ 合併疾患として慢性膵炎,膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN),膵囊胞,糖尿病,肥満,④ 嗜好としての喫煙,大量飲酒,⑤ 職業として塩素化炭化水素曝露に関わる職業である.このうち,実際にある程度リスクが高くて対象が多い膵癌高危険群は,IPMN・膵囊胞であり,ガイドラインには“膵管内乳頭粘液性腫瘍と膵囊胞は膵癌の前癌病変として,慎重な経過観察を行うことを提案する”と記載されている.

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糖尿病は高血糖を主徴とするきわめて多面的な疾患である.自己免疫が主たる原因でインスリン分泌が低下消失する1型糖尿病,肥満やインスリン抵抗性を背景にした複雑な病態を示す2型糖尿病,単一遺伝子の異常や他の疾患が原因である二次性糖尿病(3型糖尿病)さらに妊娠時の耐糖能障害である妊娠糖尿病に分類される.平成28年の国民健康・栄養調査(厚生労働省)ではわが国の「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」の合計は推計2,000万人であり,年齢が高くなるにつれて有病率も上昇する.

 糖尿病は膵癌の高危険群とされ,新規の糖尿病発症や血糖コントロールの増悪が膵癌発見の契機になることもしばしば経験される.

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わが国では年間33,000人以上が膵癌で死亡しているが,そのうち2,000人以上は家族性に発生した膵癌によると考えられている.そこで家族性に膵癌を発症する家系において,高リスク群として検診を行い,早期診断を実現する努力が続けられている.本稿では,家族性膵癌の臨床像と併せて,日本で行われている家族性膵癌登録制度について述べる.また,家族性膵癌に関連した早期診断のためのスクリーニング検診などについて概説する.

Ⅰ 疫学・基礎 ⑦病理 福嶋 敬宜
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腫瘍の病理学的組織分類は,国内では「膵癌取扱い規約」(以下,規約)が,国際的には「WHOの腫瘍分類」および「AFIP分類」が実際によく参照され使われているが,全体の傾向としては,WHO分類を中心にして,ほかは,概ねそれに沿った分類や概念に少しずつ軌道修正されてきているというのが実情である.ただし,規約では,日本国内で培われてきた内容については,整合性を示しつつ,独自に規定している部分もある(表).

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膵癌発生過程は,Hrubanらによる膵上皮内腫瘍性病変(pancreatic intraepithelial neoplasia;PanIN)の段階的な異型の変化を経て発生するとするprogression modelがよく知られている.しかし,最近,それに疑義を示すデータが発表された.本稿ではこれまでの膵発癌過程の研究の動向を記す.

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膵癌の予後不良の主たる理由は,早期発見が困難で,浸潤・転移能が高く,化学療法の効果が限定的であることである.膵癌の病理学的特徴として高度な線維性間質(desmoplasia)があり,線維性間質が膵癌の予後不良に深く関与することが知られている.膵癌の浸潤・転移には上皮間葉形質転換,線維性組織,微小環境などのさまざまな機序が関連する.本稿ではこれらの最近の知見について述べたい.

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現在,日常臨床で膵癌に対し用いられている分子診断としては腫瘍マーカーのCA19‒9やDUPAN‒2,さらにゲノム検査としてKRAS遺伝子検査が挙げられる.KRAS変異は膵癌の90%近くに認めることはよく知られているが,大腸癌や肺癌,乳癌など,他の固形がんでも高頻度に認められるため膵癌特異性は低く,2016年膵癌診療ガイドラインでも補助診断として位置づけられており,実際に日常臨床で用いられるケースも限られているのではないかと推測される.一方,CA19‒9が最初に報告されたのは1979年に遡るが,未だ膵癌においてCA19‒9を凌駕する分子マーカーは開発されておらず,現在も術後の予後予測や化学療法の治療効果予測における有用性についてさまざまな研究が行われている.

 本稿ではCA19‒9の臨床的有用性を中心に,現在活発に研究が進められているがん細胞から放出された血中cellfreeDNA(cfDNA,遊離DNA)を利用したゲノム解析技術についても紹介する.

Ⅱ 扉

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膵癌は加齢とともに増加し,40歳代から急に増え始め,60~70歳代が罹患年齢のピークとなっている.膵癌の年別罹患者数は2009年に3万人を超え,高齢化の影響もありそれ以降も増加の一途をたどっている.

 また,本邦における癌の死因の第4位であり,男性では5位,2016年は女性でついに胃癌を抜いて第3位となっている.2016年における膵悪性新生物による死亡者数は33,475人(男性17,060人,女性16,415人)と悪性新生物による全死亡者数384,460人の8.7%を占めていた.このとおり,膵癌は罹患者数と死亡者数がほぼ同等であり,国立がん研究センターから発表された臓器部位別がん5年相対生存率では男性が7.9%,女性が7.5%とともに全癌腫のなかで最低であった.この厳しい予後の一因として,膵癌は診断の時点で約6割が切除不能進行癌であり早期発見が非常に困難である現状が挙げられる.

 治療成績を向上させるためには,腫瘍を早期に発見・診断することが必須である.昨今では,画像診断における検査装置や撮像法の向上により,存在診断,質的診断,進展度診断の精度が飛躍的に向上している.臨床徴候や膵癌危険因子の有無を評価して膵癌高リスク群を抽出し,各種画像検査を適切に用いることでより効率的な診断ができてくると思われる.さらに膵癌においては病変の進展範囲を正確に診断することが,resectabilityの決定と術式立案のために重要である.膵の悪性腫瘍のうち,組織学的に通常型膵癌が約9割を占めることから本稿では一般的な通常型膵癌の診断手順について概説する.

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近年,膵癌は化学療法の選択肢が増え,効果もある程度期待できるようになってきた.しかし,早期発見はまだ難しく,予後は依然として不良である.膵癌診療ガイドライン2016年版でも膵癌の診断法の一つとして腫瘍マーカーや血中膵酵素の測定が挙げられている.現在の膵癌の診断に用いられているおもな腫瘍マーカー,血中膵酵素などを表1に挙げる.そのなかで使用される頻度の高い腫瘍マーカーのカットオフ値と陽性率をまとめたものを表₂に示す.しかし,陽性率が高いCA19‒9であっても2cm未満の膵癌においては50%程度の陽性率しかなく,診断やフォローアップには推奨されても,早期発見の手段としては満足のいくものではない.

 本稿では,現在使用されているおもな腫瘍マーカー,および血中膵酵素などについて概説する.

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膵病変の診断において経腹壁超音波検査(TUS)は簡便で非侵襲的な検査として,外来診療や検診において有用である.また最近では超音波造影剤の登場によりリアルタイムに血流動態を評価することが可能となり,超音波検査の診断能は飛躍的に向上した.本稿では,膵癌の大半を占める浸潤性膵管癌(invasiveductal carcinoma)の診断における超音波所見を中心に解説する.

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現在,超音波内視鏡(endoscopic ultrasonography;EUS)は,膵疾患の画像診断において重要な役割を担っている.2010 年4 月から超音波内視鏡ガイド下吸引細胞診(EUS‒guided fine‒needle aspiration;EUS‒FNA)が保険収載され,膵癌診療において必要不可欠な検査手技となっている.また,超音波を用いた組織弾性評価法の一つである超音波内視鏡エラストグラフィー(EUS‒elastography;EUS‒EG)や,保険収載はされていないが第二世代超音波造影剤であるペルフルブタン(ソナゾイド®)を使用した造影超音波内視鏡(contrast enhanced EUS;CE‒EUS)などが可能となり,その進歩は目覚ましい.

 本稿では,EUS・CE‒EUS・EUS‒EG の画像診断およびその方法,EUS‒FNA の手技および偶発症について概説する.

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膵癌は95%が腺管癌(adenocarcinoma)であり,線維性間質に富み浸潤性発育を示す.膵外浸潤を示すような大きな膵癌は単純CTでも腫瘤を同定できることもある.しかし,手術適応となるような比較的小さな腫瘍を単純CTのみで指摘することはまず不可能であるといわざるをえない.膵癌が主膵管を閉塞させると,尾側の膵管拡張と膵萎縮いわゆる随伴性慢性膵炎が生じる.したがって,単純CTを読影する際には腫瘍自体を同定することより,膵管拡張やアンバランスな膵実質の萎縮などに注意を向ける必要がある.また,膵癌による膵管閉塞に伴って急性膵炎を発症する場合がある.膵周囲の脂肪織濃度上昇や滲出液貯留,前腎筋膜肥厚などの急性膵炎を示唆する所見は単純CTでも指摘可能である.しかしながら,急性膵炎の原因となる膵癌自体の早期発見には単純CTでは不十分であり,ヨード造影剤の急速静注によるダイナミックCTが必須である(図1).

 近年,CT装置は64~320列の多列CT(multidetector row CT;MDCT)が標準である.しかしながら,膵癌の精査のためのCT検査においては従来の撮影方法のままでは,MDCTの能力を十分活かすことができない.膵癌の検出能や進展度診断能を向上させるには,十分量の高濃度ヨード造影剤を急速に静注し,薄いスライス厚で,多相のダイナミックCTを行う必要がある.

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近年,化学療法や放射線療法をはじめとする癌治療技術の進歩は著しいものがあるが,このような時代においても,膵癌の唯一の根治的治療は手術である.予後も依然として非常に厳しく,5年生存率は5%未満で,本邦では死因の第4位である.予後不良の原因としては,第一に切除率が低いことが挙げられる.

 本稿では,一般的な膵癌のMRI所見に加え,いわゆる早期膵癌の画像所見についても言及する.

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膵癌診療におけるERCPの役割は診断と治療に分けられる.治療は,おもに閉塞性黄疸に対するドレナージ治療としての内視鏡的胆管ステント留置術あるいは内視鏡的経鼻胆管ドレナージなどが行われるが,これらについては本誌他稿に詳細に記されているため,本稿では診断について解説する.

Ⅱ 診断 ⑧PET 村上 康二
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FDG‒PET検査は2002年に保険適応となった比較的新しい画像診断法である.撮像機器が高額であること,使用する薬剤には時間的・地理的な制限があることから未だにアクセスの点で不便さは残るものの,現在では国内の400カ所を超える施設で検査が実施されており,以前に比べると利便性は格段に向上した.

 PETの有用性は悪性腫瘍の生物学的特性や治療戦略などさまざまな要因によって異なり,膵癌の場合には決して有用性が秀でている領域ではない.しかしながら診断目的を明確にすれば非常に有用性の高い情報をもたらしてくれるモダリティーである.以下,膵癌診療におけるFDG‒PETの現状を「膵癌診療ガイドライン2016年版」(以下,膵癌ガイドライン)に基づきながら概説する.

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膵癌の罹患率は年々増加傾向にある.国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によれば,膵癌の罹患者数は2013年には34,837人にのぼり,大腸癌,胃癌,肺癌,肝臓癌に次ぐ5位となっている.一方で膵癌による死亡者数は2016年には33,475人にのぼり,肺癌,大腸癌,胃癌に次いで4位となっている.このように,膵癌の死亡者数と罹患者数の差が小さいことがうかがわれ,膵癌は非常に予後不良であることがわかる.予後不良の要因として多くの膵癌が進行期で発見されることが挙げられる.したがって,膵癌の予後改善のためには早期診断は不可欠であり,その戦略について述べる.

Ⅲ 扉

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「膵癌取扱い規約」第7版では,標準的手術により肉眼的および組織学的にR0切除が可能かどうかという視点から,dynamic CTという客観的な画像診断に基づいて,切除可能性を切除可能(R),切除可能境界(BR:門脈系への浸潤のみBR‒PV,動脈系への浸潤を伴うBR‒Aに亜分類),切除不能(UR:遠隔転移を伴わないUR‒LA,遠隔転移を伴うUR‒Mに亜分類)に分類している.「膵癌診療ガイドライン」2016年版では,この切除可能性分類ごとに膵癌の治療戦略を提唱しており,内科医・外科医・放射線科医・病理医が共通の指標のもとで治療方針を議論し決定できるという点で非常に有用である.しかし,RやBR膵癌における術前治療の位置づけや,BRやUR膵癌における化学療法/化学放射線療法の至適レジメンやその後の根治を目指した手術療法の適応などについては,一定の見解はない.また,NCCN(National ComprehensiveCancer Network)ガイドライン(Version 3.2017)においても切除可能性分類ごとに治療アルゴリズムが提示されており,その基盤となる切除可能性分類は「膵癌取扱い規約」の定義するものとは大きくは異ならない.

 本稿では,「膵癌診療ガイドライン」とNCCNガイドラインについて概説し,当科における手術を前提とした化学放射線療法(CRTS)の臨床成績を示すことで,今後の治療成績向上を目指した治療戦略につき述べる.

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膵癌は数多ある悪性腫瘍のなかでも最難治の腫瘍であり,日進月歩の医療技術で多くの腫瘍の治療成績が改善してきたが膵癌は少々取り残された感が数年前まであった.近年は有効性のある化学療法開発が進み,治療成績改善が得られるようになっているが膵癌に対してもっとも有効で根治性のある治療法は外科手術のみであることに変わりはない.手術と化学(放射線)療法を組み合わせた集学的治療により今後ますます膵癌治療の成績改善が期待される.

 本稿では,膵癌に対する手術適応,術式(拡大切除としての血管合併切除も含めて),conversion surgeryについて概説する.

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腹腔鏡下手術は,腹腔内臓器・後腹膜臓器に対して広く行われるようになってきており,胃癌や大腸癌などの悪性腫瘍に対してもその適応は広がっている.日本内視鏡外科学会が行っているアンケート調査によれば,大腸癌においてはその72%が腹腔鏡下に切除されている.

 2016 年春の診療報酬改定で「腹腔鏡下膵体尾部腫瘍切除術」に対する「原則としてリンパ節郭清を伴わないもの」という限定条件が削除され,膵体尾部の膵癌に対する腹腔鏡下手術が保険診療として行えるようになった.一方で,同時に保険収載された「腹腔鏡下膵頭十二指腸切除術」は,「原則として脈管の合併切除およびリンパ節郭清を伴わないもの」という限定条件が設けられており,膵頭部癌に対する腹腔鏡下手術は保険適用外である.この項では,膵癌に対する腹腔鏡下手術の開腹手術との文献的比較,本邦における位置づけ,ならびに手術手技について概説する.

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膵癌は根治切除後も短期間で高頻度に再発するため,手術だけで長期生存を得るのは困難である.術後補助化学療法により,無再発生存期間が延長し,生存率が向上することが示されている.2007年に報告されたCONKO‒001試験では,術後半年間のゲムシタビン療法により,切除単独に比べ生存率・生存期間が有意に改善した.さらにJASPAC 01試験では,術後半年間のS‒1療法により,術後ゲムシタビン療法に比べ,生存率・生存期間が有意に改善することが報告された.欧州では,ESPAC‒4試験で,術後半年間のゲムシタビン+カペシタビン併用療法が,術後ゲムシタビン療法に比べ,生存率・生存期間が有意に改善することが報告されている.適切な術後補助療法を実施することで,切除された膵癌の予後は近年明らかに改善しており,現在の切除企図膵癌の標準治療は,切除先行+術後補助化学療法と考えられている.

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膵癌に対する根治的な治療法は手術のみであるが,切除の対象となる症例は20~30%にとどまる.また,仮に肉眼的に癌遺残なく切除できても,手術単独治療ではその5年生存率は10%程度である.外科的切除後の生存成績向上のためにさまざまな手術の工夫がされてきたが,徹底したリンパ節郭清,神経叢郭清を含む広範な後腹膜郭清の有効性は複数の臨床試験により否定された.一方で,術後補助化学療法は切除後の治療成績を大きく向上させた.とりわけ,ドイツを中心に行われた手術単独療法に対するゲムシタビン(Gemcitabine;GEM)による術後補助療法の有効性を検証したCharité Onkologie(CONKO)‒001試験(2007年,2013年)と,本邦で行われた膵癌術後補助療法におけるGEMとS‒1を比較した第Ⅲ相無作為化比較試験(Japan Adjuvant Study Group of PancreaticCancer 01;JASPAC 01試験)の二つは,わが国の膵癌外科治療に大切な影響を与えた.本稿では,膵癌術後補助療法の歴史を述べつつ,現在の術後補助療法における標準治療について概説する.

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膵癌は2030年にはがん死亡原因の第2位になると予想されている.本邦の膵癌診療ガイドライン2016年版において,転移性膵癌の治療法は化学療法が推奨されている.しかし,近年における強力な化学療法レジメンの導入により,遠隔転移を認めても,長期間少数の転移巣に変化を認めない場合や,消失を認める症例の報告が増加してきている.その場合に転移巣の切除をどうするか,というクリニカルクエスチョンは,まだガイドラインに示されていない.臨床現場では転移性膵癌に対する外科治療の方針決定は,日常的問題になりつつある.このような現状に基づき,本稿では,近い将来にConversion手術の治療指針が作成されるときに参考となる切除不能膵癌や術後孤立性再発の外科治療成績を紹介し,遠隔転移を伴う切除不能膵癌の治療アルゴリズムを提案する.

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膵癌は21世紀に残された消化器癌といわれ,その治療法の開発に多くの研究者の労力が注がれている.その労力に呼応するように21世紀に入ってから,化学療法からステント療法まで治療法の進化も目を見張るものがある.1990年代は非切除例の生存期間の中央値が4.3カ月であったのと比較して,現在もっとも効果の高い化学療法のレジメンであるFOLFIRINOXでは11.1カ月と実に約2.5倍も延長している.膵頭部癌による閉塞性黄疸に対するステント療法に関しても,1990年代初頭,それまでプラスチックステント(PS)が主流であったが,内視鏡下に留置するuncovered金属ステント(SEMS)が実用化されることにより黄疸のコントロールが飛躍的に進歩した.2000年代に入り,covered SEMSの有用性が証明されることにより,さらにステントの開存期間が延長し,化学療法の安定的な施行や患者のQOLの上昇につながった.膵癌の治療法は毎年のように進化しており,それを反映して「膵癌診療ガイドライン」も2006年の初版から最新の2016年版までの約10年間で3回も主改訂を重ねている.

Ⅲ 治療 ⑧化学療法 古瀬 純司
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膵癌においては切除手術が唯一治癒の期待できる治療であるが,切除可能例は2~30%程度とされ,根治切除後もほとんどの患者で再発を認めている.したがって,膵癌患者の予後の改善には化学療法が必須であり,有効な化学療法の開発と適切な実施が必要である.

 膵癌の化学療法は,1990年代後半,ゲムシタビン(GEM)による切除不能膵癌患者の臨床症状の改善と生存期間の延長が証明され,GEMによる標準治療が確立した.その後,GEM+エルロチニブ,S‒1が選択肢に加えられ,さらに2010年以降,遠隔転移を伴う膵癌に対して海外でFOLFIRINOX〔5‒FU+ロイコボリン®(LV)+イリノテカン(CPT 11)+オキサリプラチン(L‒CHP)併用〕療法やGEM+ナブパクリタキセル併用(GnP)療法の新しい治療法が開発された.現在,切除不能膵癌に対する化学療法は選択肢が増え,患者の状態に応じた治療選択が可能となっている.

Ⅲ 治療 ⑨放射線療法 伊藤 芳紀
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膵癌は,局所進行切除不能と診断された場合でも治療開始後早期に肝転移や腹膜播種などの遠隔転移をきたす割合が他の癌腫よりも高く,また,腸管などの周囲正常組織の耐容線量のために腫瘍に高線量投与ができないこともあり,局所療法としての放射線治療の意義が問われてきた.しかし,新規抗癌剤を併用した化学放射線療法の開発により局所進行切除不能膵癌の治療成績は向上し,中長期的な生存も期待できる報告が出てきている.また,最新の機器や照射技術を用いた高精度放射線治療により,有害事象を軽減させつつ,従来よりも腫瘍に高線量を投与することで治療成績の向上が期待されてきている.

 本稿では,局所進行切除不能膵癌に対する化学放射線療法の標準治療と治療開発の状況について概説する.

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膵癌は難治癌である.近年,根治切除不能膵癌に対してFOLFIRINOX〔5‒FU+ロイコボリン®(LV)+イリノテカン(CPT11)+オキサリプラチン(L‒CHP)併用〕療法,ゲムシタビン+ナブパクリタキセル療法が登場し,その治療成績は少しずつ向上しているとはいえ,生存期間は1 年に満たないことが多く,満足できる状況ではない.薬物療法のさらなる改善が必要であり,多くの基礎的,臨床的な研究が進められている.本稿ではそのなかで注目すべき治療法についてスポットを当てた.

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日常診療で遭遇する膵癌患者は,遠位胆管への癌浸潤から容易に閉塞性黄疸をきたす.閉塞性黄疸の持続は,肝機能の低下や凝固異常,細菌感染による胆管炎・敗血症をも生じ,膵癌に対する治療自体に多大な影響を及ぼす.それゆえ,円滑な膵癌診療の遂行には,悪性遠位胆管狭窄による閉塞性黄疸に対する適切な「対処」が求められる.この「対処」こそが,胆管ドレナージである.胆膵内視鏡医は各種胆管ドレナージ法を理解し,患者の病態に沿った適切なドレナージ戦略を練らねばならない.ここでは,膵癌悪性遠位胆管狭窄に対する胆管ドレナージについて概説する.

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悪性疾患における胃・十二指腸狭窄(gastricoutlet obstruction;GOO)は,経口摂取量の低下という軽症から持続性嘔吐による脱水など高度なものまであり,栄養状態悪化やquality of life(QOL)の低下をもたらす.膵癌においては,とくに膵頭部癌で十二指腸球部から2nd portionに浸潤・狭窄をきたすことが多いが,体尾部癌においても十二指腸水平部へ浸潤・狭窄をきたすことがある.その頻度は10~20%程度とされているが,近年の化学療法の進歩によって切除不能膵癌の予後が延長し,治療経過中に合併する頻度が増えているという報告もある.上部消化管狭窄による症状の評価にはGOOSS(gastric outletobstruction scoring system)が広く用いられている(表₁).GOOに対する治療法としては,外科的胆管空腸吻合術と内視鏡的十二指腸ステント留置術が挙げられる.また膵癌における十二指腸狭窄症例では,高頻度に合併する胆管狭窄を同時に治療する機会も多いことにも留意が必要である.

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緩和ケアは,がん対策基本法において,「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的もしくは精神的な苦痛または社会生活上の不安を緩和することにより,その療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療,看護その他の行為」(第十五条)と定義されている.また,癌患者の療養生活の質の維持向上のために必要な施策として,「緩和ケアが診断時から適切に提供されること」(第十七条)と明記されており,治療初期段階から緩和ケアを実施することの重要性が近年認識されつつある(図1).緩和ケアの早期導入の有用性についてはあまり検討されてこなかったが,2010年切除不能非小細胞肺がん患者を対象にした無作為化試験において,通常治療群に対し,早期から緩和ケア介入を行った群のほうが,QOL,抑うつ症状,疾患理解が改善されることが報告されている.すべての癌腫において早期からの緩和ケアが有用であるかどうか,またそのように介入することの費用対効果やマンパワーの問題などは今後さらなる検討が必要と思われるが,少なくとも早期から緩和ケアを導入し,終末期に向けての話し合いや精神的ケアを行っていくことには大きな意義があると考えられる.

 本稿では,膵癌患者における緩和ケアについて,おもに精神ケア・疼痛管理・栄養管理の面から概説する.

Ⅳ 扉

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慢性膵炎はアルコール性が多く,膵の持続する炎症と線維化が進行し,最終的には膵が荒廃する疾患である.慢性膵炎の長期予後として悪性腫瘍の合併がある.2006年の全国追跡調査によれば,慢性膵炎の死因で悪性新生物が43.1%と最多であり,その内訳では膵癌が24%を占めている.

 しかし膵癌は早期の段階では自覚症状が出にくく,健診での腫瘍マーカーや腹部超音波によるスクリーニング検査で発見された時点で,すでに手術不能進行膵癌であることが多い.そのためそのリスクファクターや前癌病変を明らかにすることは臨床上も非常に重要である.本稿では慢性膵炎と膵癌との鑑別について述べる.

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膵臓に腫瘤を形成する腫瘤形成性膵炎は,しばしば膵癌の診断で切除されてきた.切除された腫瘤形成性膵炎の病理組織学的検討より,Kawaguchiらは1991年に,密なリンパ球と形質細胞の浸潤と線維化から成る特殊な膵炎をlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)として報告した.Yoshidaらは,1995年に発症に自己免疫が関与しステロイドが奏効する膵炎を自己免疫性膵炎と称して報告した.その後2001年に,自己免疫性膵炎患者では高率に血中IgG4値が上昇することが発見された.自己免疫性膵炎患者ではしばしば胆管狭窄や唾液腺腫大などが合併するので,われわれは自己免疫性膵炎患者の膵臓,胆管や唾液腺などの諸臓器の病理組織像と抗IgG4抗体を用いた免疫組織染色の検索を行った.自己免疫性膵炎の膵臓には高度の線維化,多数のIgG4陽性形質細胞とリンパ球の浸潤と閉塞性静脈炎を認め,また合併するほかの膵外病変も同様の病理組織像を呈した.さらにリンパ節や消化管などの全身諸臓器に多数のTリンパ球とIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めたので,われわれはIgG4関連硬化性疾患という新しい全身性疾患の概念を2003年に提唱し,自己免疫性膵炎はこの膵病変であると考えた.現在,この概念はIgG4関連疾患(IgG4‒related disease)の名称で,世界的に認められている.

 一方,欧米では膵管上皮内へ好中球の浸潤(granulocytic epithelial lesion;GEL)を認めるidiopathic duct‒centric chronic pancreatitis(IDCP)の病理像を呈する自己免疫性膵炎が注目され,現在LPSPを呈する自己免疫性膵炎は1型と,IDCPは2型と呼ばれている.本稿では,本邦における自己免疫性膵炎のほとんどを占める1型について,膵癌との鑑別点を中心に概説する.

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膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrinetumor;P‒NET)は内分泌細胞や神経細胞から発生する腫瘍であり,膵管上皮より発生する通常型膵癌(浸潤型膵菅癌)とは発生母地が異なる.膵悪性腫瘍のうちP‒NETは3.7%を占めている.P‒NETはホルモン分泌能の有無や組織学的分化度の相違により腫瘍の性質が異なるため,多彩な臨床症状や検査所見を呈する.P‒NETは通常型膵癌と比較して治療法や予後が大きく異なるため的確な診断が求められる.本稿では,P‒NETの病態および通常型膵癌との鑑別に関して概説する.

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膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillarymucinous neoplasm of the pancreas;IPMN)は,豊富な粘液産生と膵管内乳頭状増殖を特徴とする膵腫瘍である.1982年に大橋らによって粘液産生膵癌として初めて報告され,その後に名称や分類に関する変遷を経て,国際的にIPMNの疾患概念が確立された.2006年に初めてのIPMN国際診療ガイドライン2006(International consensus guideline2006;ICG 2006)が作成され,2012年には改訂版であるICG 2012が発刊された.そして2017年には,エビデンスの追加など若干の修正が加えられたICG 2017が最新版として発表されている.

 IPMNはadenoma‒carcinoma sequenceとして知られる癌化リスクを有する膵腫瘍である.一方,そのようなIPMN自体の癌化リスクとは別に,IPMNを有する膵には,同一膵内に通常型膵癌を併存するリスクの高いことが明らかにされ,国際的にも大きな関心を集めている.本稿では膵癌up to dateに関連する疾患として,IPMNの理解に必要な基礎的事項と臨床的対応の要点について概説する.

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膵臓の囊胞性疾患には,仮性囊胞,真性囊胞,囊胞性腫瘍,壊死性腫瘍など多くの種類があり,CTやMRIなどのモダリティの進歩により偶発的にみつかることも少なくない.原因によって悪性度や予後が異なり,治療方針が大きく変わるため,その診断は非常に重要であるが,鑑別診断が困難であることから,症例によっては外科切除による診断的治療が行われているのも現状である.

 1978年にCompagnoとOertelは,膵囊胞性腫瘍が良性より悪性へと連続する粘液囊胞性腫瘍と完全に良性の漿液性囊胞腺腫の2系統に分類できることを報告した.その後,1982年に大橋らが今でいう膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinousneoplasm;IPMN)を予後の良い膵癌として“粘液産生膵癌”と名づけ,その疾患概念を初めて報告した.1996年にWHOは粘液産生囊胞性膵腫瘍を粘液囊胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm;MCN)とIPMNの二つに明確に区分し,MCNは間質にovarian‒type stroma(OS)が存在する腫瘍であることを定義した.本稿では,日常診療において診断に苦慮することも多い粘液囊胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm;MCN),漿液性囊胞腫瘍(serous cystic neoplasm;SCN),充実性偽乳頭状腫瘍(solid pseudopapillary tumor;SPN)を中心に非典型例の症例提示を交えて解説する.

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膵腫瘍は充実性と囊胞性に大きく分けられる.充実性腫瘍の代表としては,膵癌,神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm;NEN),solid‒pseudopapillary neoplasm(SPN),転移性腫瘍が挙げられる.このうちもっとも頻度の高いのは膵癌であり,その多くは高~低分化型の浸潤性膵管癌(通常型膵癌)である.

 膵癌の典型的な画像所見としては,造影CTの膵実質相では乏血性の腫瘤として認められ,遅延性に濃染する.超音波(US・EUS)では比較的境界明瞭な低エコー腫瘤であり,輪郭は結節状あるいは不整である.主膵管狭窄・閉塞を呈し,尾側膵管や分枝の拡張を認めることが多い.しかし,時に通常型膵癌としては非典型的な画像所見を呈する例がある.これらのなかには,低分化型主体の癌や膵癌と膵炎の併存,膵癌による貯留囊胞や仮性囊胞形成例があるが,このほかに,腺扁平上皮癌,退形成癌,粘液癌,腺房細胞癌など のまれな組織型もみられる.

 本稿では,「膵癌取扱い規約」第7版に分類されている浸潤性膵管癌のうち,腺癌(おもに管状腺癌)以外の腺扁平上皮癌,退形成癌,粘液癌,腺房細胞癌を特殊型膵癌として扱い,加えて転移性膵腫瘍のCT,MRI(MRCP),US・EUSの画像所見および鑑別ポイントについて述べる.

Ⅴ 扉

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膵癌実験モデルとしては,従来,ヒト膵癌細胞株を用いたさまざまな実験が行われてきた.in vitroの実験系をはじめ,in vivoにおいても免疫不全マウスの皮下や膵臓への移植,脾臓への注入による肝転移モデル,また腹腔内注入による腹膜播種モデルなど,その簡便性から汎用されてきた.しかし,膵癌の実臨床との相違点も以前より指摘されてきた.とくに,細胞株を皮下や膵臓へ移植したモデルでは,臨床の膵癌の「豊富な間質・線維化を伴う腺癌」という組織学的特徴の再現が困難であった.

 近年では,膵癌の臨床的な特徴をよく再現できるモデルとして,腫瘍の微小環境がインタクトなままに発癌する遺伝子改変モデルや,膵癌患者の腫瘍組織を免疫不全マウスに移植するpatient‒derived xenograft(PDX)モデル,また膵癌患者の腫瘍組織片から三次元構造体オルガノイドを樹立するモデルが用いられるようになってきた.ここでは,とくに遺伝子改変マウスの膵発癌モデルを中心に概説する.

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日本内視鏡外科学会の2016年度調査では腹部外科領域の腹腔鏡下手術は約1,027,756件が行われていた.手術手技およびデバイスの進歩により,腹腔鏡下手術は今後も右肩上がりに増加していくであろう.膵臓領域に関しては,2012年に腹腔鏡下尾側膵切除術が保険収載され,各施設で行われるようになった.2016年には膵頭十二指腸切除術が保険収載され,膵臓内視鏡外科研究会によると,現在本邦では膵切除術は年間約400例が行われている.

 一方,膵癌の治療は術前術後の補助化学療法が導入され,予後が向上した.切除可能膵癌に対しては外科的治療が推奨されている.また,Borderline resectable膵癌に対する術前治療は外科的切除の切除率およびR0率を向上し,予後向上に繫がる可能性がある.本稿では膵癌に対する腹腔鏡下膵切除術のうちロボット膵切除術につき述べる.

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遠隔転移膵癌の治療成績は,最近の大規模臨床試験の結果からFOLFIRINOX,ゲムシタビン(GEM)+nab–パクリタキセル(PTX)などの新規レジメンによる生存期間の延長〔生存期間中央値(MST)8~11カ月〕が報告されてきた.腹膜転移膵癌は,多彩な癌随伴症状を呈し,従来の全身化学療法の効果が乏しく,その予後は6~7週間と報告されている.一方で化学療法剤の腹腔内投与は腹膜播種性病変,腹腔内遊離癌細胞ならびに原発巣に対しての治療効果が期待される.

 われわれは,胃癌領域で良好な治療成績が報告されているS–1+PTX経静脈・腹腔内投与(i.v.╱i.p. PTX)併用療法を腹膜転移膵癌患者に導入してきた.多施設研究で得られた知見とわれわれの経験をもとに,腹膜転移膵癌に対する当該治療の臨床的効果と今後の展望について概説する.

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近年,膵癌などの上腹部悪性腫瘍に伴う癌性疼痛の治療法として超音波内視鏡(endoscopicultrasonography;EUS)を用いた神経ブロックの有用性が報告されてきており,癌性疼痛治療の治療選択肢となってきている.本稿では,癌性疼痛のコントロール目的に施行されるEUSガイド下神経ブロックの手技や治療成績について,近年の報告を交えて概説する.

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高齢化社会の進展とともに,癌患者数は増加の一途をたどっている.膵癌罹患数も増加し,現在,癌関連死亡主因の一つとなっている.また近年,さまざまな癌腫で死亡率が低下している一方で,日本の膵癌による死亡数は欧米と同様に増加している.未だ手術が治癒の期待できる唯一の方法であるが,膵癌治療においてはさまざまな臨床課題が未解決のままである.なかでも,80歳を超す高齢者膵癌に対する適切な治療方針は未だ確立しておらず,治療適応や予後因子の解明は,日常診療においても重要な課題の一つである.また,化学療法においても,近年,いくつかの大規模臨床試験で膵癌予後に対するさまざまな新規化学療法の有用性を示す結果が報告された.しかしながら,高齢患者はそのような臨床試験の適格基準から除外されるか,適格であっても登録症例全体のなかでは少数例であることが多いため,高齢者膵癌における化学療法各々の治療効果は不明である.

 本稿では80歳以上の高齢者膵癌に対する外科手術ならびに化学療法の現況を概説し,今後の展開に関して考察する.

索引

奥付

基本情報

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臨牀消化器内科
33巻7号 (2018年5月)
電子版ISSN:2433-2488 印刷版ISSN:0911-601X 日本メディカルセンター

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