作業療法ジャーナル 53巻8号 (2019年7月)

増刊号 スポーツがもつ可能性—作業療法への期待

刊行にあたって 上 梓
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 2011年(平成23年)8月施行の「スポーツ基本法」において,障害者の自主的かつ積極的なスポーツを推進するとの理念が掲げられた.また,障害者スポーツに関する施策を福祉の観点のみならず,スポーツ振興の観点からも一層推進していく必要性が高まったこともあり,2014年度(平成26年度)より一部の障害者スポーツ事業は厚生労働省から文部科学省に移管され,その後スポーツ庁が設置された.これらの変化は障害者スポーツに携わる人々の間では非常に大きな進歩として捉えられた.なお,障害者の社会参加やリハにかかわる障害者スポーツ事業については引き続き厚生労働省が所管しており,2020年東京パラリンピック競技大会を見据えた地域の障害者スポーツ環境の整備に向けて,OTやPTを含む医療福祉従事者に対しても期待が高まっているのが現状である.

 居住・職場環境によっては,障害者スポーツにかかわりたくてもかかわれないOTも多いと感じる.私自身,オーストラリアでOTの資格を取得し,障害者スポーツの世界でOTとして働く機会を模索した過去があるが,PTやビジネス・マネジメント系の資格や経験なしに障害者スポーツにかかわる機会は得られなかった.2000年にシドニーパラリンピック競技大会を開催したオーストラリアでさえも,日常業務と両立しながら障害者スポーツ領域にかかわるOTはきわめて少なく,障害者アスリートの支援は趣味やボランティアで行う域を出ていなかった.

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今回の協会長対談のお相手は,スポーツをテーマにした増刊号にふさわしく,為末 大さんです.陸上競技選手として世界のトップレベルで戦い,引退後も事業の立ち上げ,後進の育成と,活躍のフィールドを広げ続けている為末さん.「身体論」を足がかりに,中村会長と語り合っていただきました.(編集室)

第1章 総論

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はじめに

 今,テレビをはじめとした種々のメディアでは,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて,多くのスポーツシーンが取り上げられている.それらの報道を見ていると,障害のある方たち,パラリンピアンが多く取り上げられていることに気づく.これだけメディアで障害者スポーツが取り上げられ,その知名度が高まり,周知されていくことは,日本がオリンピック・パラリンピックを招致した成果の一つといえるかもしれない.

 広く周知されたこの機会に,障害者スポーツと作業療法との距離感を考えたいというのが,今回の企画の趣旨であろうと理解する.

 障害者スポーツの一つの頂点にあるといえるのが,パラリンピックであろう.そこで競技に挑むパラリンピアンは,プロフェッショナルに競技スポーツを突き詰めてたどり着いた,いわばトップアスリートである.作業療法という専門性,もしくはOTという専門職は,このトップアスリートの集いであるパラリンピックに対して,どんな貢献ができるのだろうか.本稿ではこの点を取っかかりとして考えていきたいと思う.

 少し結論を先取りすると,作業療法という専門性からみたときには,トップアスリートが競技として挑むシーンだけがスポーツではなく,スポーツを巡る広範囲な場面や状況を視野に収めることができるし,多くのOTが何らかのかたちで関与することが可能であろうし,これまでも関与してきたであろうことを確認することになるだろう.

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 日本作業療法士協会(以下,OT協会)では,2020年に東京2020パラリンピック競技大会が開催されることをきっかけとして,2018年4月〜2021年3月の期間限定の特設委員会を設けた.名称を「障害のある人のスポーツ参加支援推進委員会」という.

 パラリンピックまでの日にちが迫ってきて,全容が見えてくるにしたがって,多くの会員の方が“OT協会は何かやるのかな?”,“OTとしてできることはないのかな?”という思いを抱えているのではないかと思う.当委員会は正に,会員の皆さんのそういった声に応えるために設置された.

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はじめに

 東京2020オリンピック・パラリンピックを目の前にして,各方面で開催の準備が進められる一方で,片方ではさまざまなスポーツ施策が実行されている.今回,スポーツ施策について調べる機会をいただいたので,施策を紹介するとともに,作業療法とスポーツのかかわり方を一緒に考えていただければと思う.

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はじめに

 1964年(昭和39年)11月の東京パラリンピックから今年で55年.いよいよ来年2020年には,再び東京で夏季オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される.55年前の東京パラリンピック開催に尽力したのが,「太陽の家」創設者である中村 裕博士だ.「日本の障がい者スポーツの父」と称される中村博士の取り組みと,太陽の家でのスポーツ活動や現状についてまとめる.

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はじめに

 筆者は,神戸市にある認知症専門病院のデイケアに勤務しているOTである.幼少期に交通事故に遭い,左片麻痺の障害がある.筆者は障害者卓球の選手でもあり,試合に出ている.2019年(令和元年)10月12〜14日に開催される第19回全国障害者スポーツ大会(いきいき茨城ゆめ大会)の神戸市代表選手(卓球)に選ばれ出場予定である.それと併行して選手たちのケアもしている.つまり,OT,当事者,卓球選手,トレーナーという側面がある.また,当事者セラピストとして自身の当事者性と専門性を相互活用した活動に力を入れている.

 活動の実際としては,日本肢体不自由者卓球協会の強化委員会に所属し,主にパラ卓球ナショナルチーム選手の合宿でのケア,トレーニングに従事している.

 また,地元の兵庫県では全国障害者スポーツ大会での卓球選手団への帯同,マルチサポート事業(卓球と知的水泳の講義・実技)を担当している.

 さらに2019年度からは,日本作業療法士協会での「障害のある人のスポーツ参加支援推進委員会(特設委員会)」の委員になり,地域における運動・スポーツへの参画支援にも参加している.

 本稿ではまず国内外の主要なスポーツ大会について,概観する.次に筆者のパラ卓球,障害者卓球とのかかわりや経験を基に,OTが障害者スポーツにかかわる実際と今後への提案をしたい.

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はじめに

 障害のある人のスポーツ活動(以下,障害者スポーツ)は,2011年(平成23年)の「スポーツ基本法」の制定,東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に向けた機運の醸成等により認知度は増加している.その一方で,障害者自身のスポーツへの関心度は高くなっているとはいえず,スポーツ実施率が向上しない理由の一つとなっている.

 本稿では,障害者のスポーツ実施率の向上に向けて,障害者と密接な関係があり,今後,障害者スポーツ振興に協働していただきたいOTの方々に,多様である障害者スポーツへの理解を深めていただければ幸いである.まず,これまで障害者スポーツ振興の中心を担ってきた障害者スポーツセンターの設置状況を説明し,次に東京都障害者総合スポーツセンターの事業概要を述べる.

第2章 身体障害とスポーツ

1 身体障害とスポーツ 千葉 登
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はじめに

 「スポーツ振興法」〔1961年(昭和36年)制定〕は,50年を経て,「スポーツ基本法」〔2011年(平成23年)8月施行〕に改定された.この間,スポーツを取り巻く環境,特に障害者のスポーツ環境は大きく変わってきた.スポーツ基本法では,障害者の自主的かつ積極的なスポーツを推進するとの基本理念が掲げられており,障害の有無を問わず広くスポーツに参画できるように障害者スポーツに関する事業が厚生労動省から文部科学省のスポーツ庁に移管された.これまでの障害者スポーツはリハの一環として行われてきたが,これからは,スポーツを生活の一部として取り組む「生涯スポーツ」の時代を迎える1)

 スポーツ基本法に基づき,「スポーツ基本計画」が作成され,現在,第2期スポーツ基本計画(2017年4月〜2022年3月の5カ年計画)2)が実施されている.その中では成人障害者の週1回以上のスポーツ実施率を19.2%から40.0%へ引き上げる数値目標を掲げている.具体的な取り組みとして,特別支援学校を地域の障害者スポーツの拠点にすることや,学校における障害児のスポーツ環境を充実させること,障害者スポーツを総合的に振興する体制の整備,障害者スポーツ団体の組織体制の整備の支援等が行われている.また,障害者スポーツの直接観戦経験者を4.7%から20.0%へ増加させる数値目標も掲げており,国と地方公共団体が協力し,障害者スポーツ体験会を通した理解促進を図っている.

 また,近年,障害者スポーツの名称も「障害者スポーツ」から「アダプテッド・スポーツ」3),そして「パラスポーツ」へと,名称だけでなくその意味合いも変化してきており,障害者スポーツの社会的見方も変化してきている.

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パラトライアスロンとの出会い

 私は,障がい者トライアスロン(パラトライアスロン)の選手です.これまでの体験を交えながらパラトライアスロンを紹介したいと思います.

 私のパラトライアスロンとの出会いは,2011年(平成23年)8月に山形県身体障害者福祉協会青壮年部のバーベーキュー企画に参加した際,障がい者スポーツ指導員の女性(後のチーム代表)から「リオパラリンピックからトライアスロンが正式種目になるので,チャレンジしてみないか」との打診を受けたことに始まります.その当時,私は右片麻痺の障害〔2007年(平成19年)に脳出血を発症〕があり,リハをかねてスポーツジムに通っていました.走ること,自転車に乗ることはできそうなイメージはありました.しかし,泳ぐことに関しては,発症前は泳ぐことはできましたが,障がいをもってからは泳いだことがなく,不安はかなりありました.そのような不安がありがながら,リハの延長という思いや,新しいことへチャレンジしてみたい気持ちもあり,トライアスロンに挑戦することに決めました.

2 障害者ゴルフの可能性 永野 亮太
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はじめに

 ゴルフ愛好者の中には,会社の付き合いで始めたが,広大な敷地とグリーンの映える芝を目の前にした開放感から,その魅力に夢中になる人も多いことだろう.また.他のスポーツと比較して,高齢になっても長い期間プレーできることもゴルフの楽しみの一つかもしれない.そしてゴルフは,歩く運動が多く,幅広い年代で行うことができる生涯スポーツの代表格といわれることが多い.

 しかし,『レジャー白書2018』1)によると,近年,ゴルファー人口は減少傾向にある.北らの調査2)でも,ゴルフを行う人は若年層から70代までと幅広い年齢層となっているが,徐々にゴルフ離れが進んでいる.その理由として,経済的理由,退職を機に人間関係が変わる,ゴルフ仲間がいなくなる等,定年を迎えた後のライフスタイルの変化が大きな要因に挙げられる.また,健康を害してゴルフをやめる人の割合が70代に多い2)ことも注目すべき点である.

 歩く運動が多く,人と人とのつながりがつくれる等,健康と幸福感の獲得が期待できるゴルフであるが,今後「人生100歳時代」を迎え,余暇を過ごす時間が増える日本において,その有用性に着目しない手はないだろう.無論,ゴルフの恩恵は高齢者だけでなく,障害者でも受けることができる.そこで以下に当地域で行われている障害者ゴルフの取り組みを紹介し,障害者ゴルフの今後の可能性について整理する.

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被災地での聞き取りの中で感じた地域支援の重要性

 2011年(平成23年)3月11日に発災した東日本大震災により,障害者スポーツに関する事業はすべて中止となった.当時は,全国から集まってくる支援物資を避難所等へ届ける活動が中心となっていた.最初はとにかく物資の運搬が優先であったが,次第に不必要な物資も数多くあることが問題となり,そのため避難所を訪問しては,障害のある方々へのニーズ調査を行い,併せて生活をするうえでの困りごと等の聞き取りも行った.

 この活動の中で,物資へのニーズとともにスポーツ等の余暇活動への要望も数多くいただいた.具体的には,「大会等のイベントを中止にしないでもらいたい」との要望であった.しかし,その時点で震災からまだ2カ月しか経過しておらず,イベントの開催などできる状況ではなく,残念ながらその要望には応えることはできなかった.

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はじめに

 スポーツはルールを遵守し競技を行う.それは共通の条件を守って活動する社会的行動にもつながる.障害者支援施設にじでは,障害者の就労や地域生活の自立を支援する障害福祉サービスを実践している.訓練に導入しているスポーツは,身体機能への効果が得られるだけでなく,スポーツ参加をきっかけとした外出練習,社会生活に必要なルールの遵守や対人交流を練習する機会となっている.本稿では単一の障害者支援施設で実践するスポーツ訓練と,スポーツを通した外出支援の内容と成果を述べる.

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頸髄損傷者のチェアスキー参加の可能性

 障害者スポーツはさまざまな種類があり,1960年からはパラリンピック(第9回国際ストーク・マンデビル大会を,後に第1回パラリンピック大会とした)が開催されるようになった.今回取り上げる障害者スポーツは,パラリンピックの冬季種目にもなっているチェアスキーである.チェアスキーは,脊髄損傷者(以下,脊損者)が中心で,頸髄損傷者(以下,頸損者)は困難とされてきた.しかし,近年,頸損者からのチェアスキーに対する需要が高まっている.頸損者がチェアスキーを行うにはさまざまな障害がある.その障害を克服するために,チェアスキーのモデルが改良され,身体機能を代償する装具が開発された.

 一般的に頸損者や第5胸髄以上を損傷した脊損者は,交感神経障害によって体温調節機能が障害され,寒冷環境下では核心温度を維持することができず,低体温に陥る危険性があるといわれている.そのため,用具等の改良に加えて,低体温にならずに安全で,より効果的に体温を維持できる方法を提案する必要がある.

6 車いす競技 池田 恭敏
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はじめに

 東京2020パラリンピックでは,22の競技が実施される1).その中で,車いすのみの独立した競技としては,車いすバスケットボール,車いすテニス,車いすラグビー,車いすフェンシングの4競技がある.また,競技種目の中に車いすクラスのあるものとして,アーチェリー,陸上競技,バドミントン,ボッチャ,射撃,卓球がある.

 本稿では,車いすのみの独立した4競技のうち,競技人口の比較的多い,車いすバスケットボール,車いすテニス,車いすラグビーについて概説する.

7 eスポーツとOT 田中 栄一
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eスポーツって?

 メディアでの露出が増え,「eスポーツ」という言葉を耳にすることが多くなった.

 eスポーツとは「エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)」の略である.団体によって“e-sports”,“パラeスポーツ”等と,呼び名の統一には至っていないが,複数のプレーヤーで対戦するコンピュータゲーム(ビデオゲーム)をスポーツ競技として捉えている.本稿では,eスポーツという表記を用いる.

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はじめに

 欧米では,上肢欠損児に運動・スポーツや習い事のためにさまざまな作業用義手を製作している.また,彼らがそれを使用することで活動範囲が広がり,義手が社会参加の拡大やQOLの向上に寄与していることが報告されている1)

 日本では,2014年(平成26年)に「障害者の権利に関する条約」2)が批准され,2016年(平成28年)年4月1日より「障害者差別解消法」3)が施行された.これにより,学校では,障害のある児童生徒等の性別,年齢および障害の状態に応じ,社会的障壁の排除のために,必要かつ合理的な配慮を提供することが義務となった.さらに,2017年(平成29年)より,厚生労働省が定める補装具費の支給基準4)では,障害者総合支援法の完成用部品の作業用手先具の中に,マット用(TRS SHROOMシュルーム タンブラー)や鉄棒用(TRS SWINGERスウィンガーTD)が追加された.

 これらにより,上肢欠損児を取り巻く環境では,小児筋電義手や,学校体育で使用する運動・スポーツ用の作業用義手の特例補装具費支給の可否に注目が集まり,有識者の間で検討がなされている.

 本稿では,これらの現状にOTとして応えていくために,主に先天性上肢欠損児が身体を動かす遊びや体育,習い事等,運動・スポーツ支援を行ううえでの基本事項と支援について紹介する.

【COLUMN③】超人スポーツ 石原 茂和
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超人スポーツとは何か

 OTの皆様は,すでに障害者スポーツに親しまれていると思われる.障害者スポーツの領域にはさまざまな競技があり,アクティビティも高く,またリハ,機能維持としての効果も高い.それに対して,「超人スポーツ」という新しい領域とその考え方はどういうものであるのか,そこから得られるアイデアは何かという観点から解説してみる.

 超人スポーツは,特定のスポーツ競技を指すのではなく,今ある技術を活用して,スポーツがどのように拡張できるのか,いつでもどこでも誰でも楽しめる新しいスポーツを開拓しようという“考え方”である.

第3章 知的障害,発達障害とスポーツ

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はじめに

 2017年(平成29年)3月,スポーツ庁は第2期スポーツ基本計画1)を策定した.計画の策定に当たったスポーツ審議会,およびスポーツ基本計画部会のメンバーには,多くの障害者スポーツ関係者が名を連ね,計画では「スポーツを通じた共生社会等の実現」に向け,障害児・者の週1回以上のスポーツ実施率を成人は19.2%から40%,7〜19歳は31.5%から50%にする目標を掲げた.計画には,以下の目標も示されている.

 ・障害のある人とない人が一緒に親しめるスポーツ,レクリエーションの推進

 ・すべての特別支援学校が地域の障害スポーツの拠点となることの支援

 ・活動する場がない障害者スポーツ指導者を半減(13.7%→7%)

 ・すべての学校種の教員に対する理解促進,学校における障害児のスポーツ環境の充実

 これらの動きは,特別支援学校,特別支援学級の幼児児童生徒のスポーツ環境にも徐々に変化をもたらしている.

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体育が苦手な子ども

 筆者は各校の特別支援教育コーディネーターから依頼を受けて,日程調整し小学校通常学級を訪問している.これまで学校生活に焦点を当て,学校という場における作業療法を展開してきた.本稿では体育授業における教師との連携を目指した作業療法の実践を報告し,OTの役割について考えてみたい.訪問時の大まかな流れとしては,体育館,グラウンド,プール等で授業中の各運動課題を通して評価し,長所・改善点を抽出する.授業終了後,今後の授業指導に向けて担当教師へコンサルテーションしている.

 小学体育の授業内容は,低学年(第1,2学年),中学年(第3,4学年),高学年(第5,6学年)の2学年ごとに特徴があり,低学年では「遊び」の面が重視され,中学年では「運動」の面が増加し,高学年では「体力」の面が強調されており,子どもの成長に合わせ,段階的に運動へ取り組めるよう設定されている.三木1)は,運動の楽しさは「できる」ことにあるとし,このような能力を高めるにはどうしても技術や体力,知識等を学習する必要性が出てくると述べている.一方で中村2)は,体力低下やけがの増加と,動きの不器用さ,生活習慣病と肥満,アレルギーと体温異常等,現代の子どもの身体のおかしさを指摘し,子どもの身体は自然に育ってはいかなくなっていると述べている.さらに通常学級においても,自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如・多動症(ADHD),学習障害(LD),発達性協調運動障害(DCD)で不器用さがある子どもたちへの具体的な指導は困難となることが予想される.

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 本稿では主に学校教育,とりわけ特別支援学校(肢体不自由/知的障害),特別支援学級において,筆者がどのように体育の授業や生活場面等に参画しているのかについて,具体例を交えて述べる.

 始めに,教員が実践する体育の見学場面を基に,支援者として大事にしたい発達的観点について示す.次に,特別支援教育の中で,OTがどんな形態で業務に当たっていたのかをまとめ,教員とOTの役割分担を明確にする.最後に,OTがどのように学校教育の中で教員と協働しているのかの具体例を記す.

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はじめに

 発達障害児にみられる感覚・運動の問題や,医学的診断としての発達性協調運動障害(developmental coordination disorder:DCD)が,近年,注目されてきており,発達障害の支援に取り組む現場では,感覚統合療法の視点を活かした感覚運動遊びのプログラムが実施されていることが多い.感覚統合療法とは,発達障害に対する治療介入モデルであり,米国のOTであるAyresにより神経科学を基盤とする理論として構築された.現在,発達障害に対する作業療法において,広く一般的に用いられている治療モデルの一つである.

 感覚統合とは「人間が自分の身体や環境からの感覚情報を整える神経学的過程であり,環境の中で自分の身体を有効に使うのを可能にすること」であり,この機能の障害は,環境に対する適切な行動,運動,学習等を妨げると考えられており,感覚過敏等の「感覚調整障害」,身体の不器用さ等の「行為機能障害」という枠組みにて整理されている.

 感覚統合療法は,人と環境の相互作用の中で適切な感覚情報処理が促通されるような遊び活動の提供によって実施されることが多い.したがって感覚統合療法の実施場面は,一見ただ遊んでいるように見えるが,治療者は対象児の詳細な感覚統合機能評価結果に基づき,治療的な遊び活動を設定し提供している.このような遊び経験によって対象児の感覚情報処理機能が改善され,環境への能動的な携わりが促され,そして対象児の達成感,有能感へとつながる.

 本稿では,筆者が運営する児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「プレイジム」等で実践している感覚統合理論を活用した支援の考え方や遊びの具体例等について説明する.

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はじめに

 筆者は普段,OTとして障害者入所施設に勤務しながら,NPO法人スペシャルオリンピックス日本・大阪(以下,SON・大阪)サッカープログラムのコーチとして,プログラムの企画・運営に携わっている.

 SON・大阪では2016年(平成28年)からサッカープログラムが開始され今年で4年目となり,知的障害のある方(以下,アスリート)と知的障害のない方(以下,パートナー)が共にサッカープログラムに参加し,競技会への出場を目指すユニファイドスポーツ形式でのプログラムを実施している.サッカープログラムに参加しているアスリートは特例子会社に勤務する方がほとんどであり,プログラム開始当初から継続して参加しているアスリートも多い.

 今回,SON・大阪でのサッカープログラムに継続して参加したことによるアスリートの変化,またスペシャルオリンピックスに関連する活動として,筆者自身がスペシャルオリンピックス世界大会に参加して感じたことを述べたいと思う.

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はじめに

 近年,共生社会の実現へ向けた取り組みが注目されている.教育現場では,2012年(平成24年)に「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」1)が中央教育審議会から示された.スポーツ分野では,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の基本コンセプトに“世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し,共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする”2)とある.われわれOTも,治療者が患者を治す従来の治療者-患者関係に加え,今後は共生社会を実現すべく多様性のあり方を相互に認め合うような関係づくりが求められるだろう.しかし,この共生社会の定義を言葉で示すのは簡単だが,これからのOTを目指すために実感させることは難しい.

 筆者は以前,視覚障害者陸上選手の合宿に帯同した.そこで選手と伴走者との関係をみて,「これだ!」と目から鱗が落ちた.また障害者スポーツで活躍するPT,OTへインタビューをした際に,障害者スポーツの魅力について,「一緒に楽しめ成長できる活動」,「スポーツの世界では機能障害は障害にならない」,「一緒に目標ができる,友だちができる,生活が広がる」,「一緒に活動することで障害があることを忘れてしまう」,「支援者としてのモチベーションが上がる」,「何をしても承認され,お互いやるだけでハッピーになる」等と語られ3),障害者スポーツはまさに共生社会の体験ができる場だと思った.

 そこで,OTが障害者スポーツを学習できるカリキュラムを検討した.カリキュラムの開発と養成校で活用した取り組みを紹介し,共生社会の体験に注目した効果について考察する.

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動物を介在させた活動

 「動物介在介入(animal assisted intervention)」の中に,馬を使った活動がある.治療,療法としての意味が含まれ,ホースセラピー(horse therapy),EAT(equine-assisted therapy),治療的乗馬(therapeutic riding),乗馬療育,乗馬療法(hippotherapy)等の言い方が存在する.日本ではこれらの言葉の使い方は曖昧であり,定義もはっきりしていないのが実状である.海外では,特に乗馬療法(hippotherapy)は医療として捉えられ,スタッフには通常,医療従事者が含まれている.国により若干の違いはあるが,米国ではOT,PT,STがかかわっている.

【COLUMN④】パラリンピックを目指す
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 前田龍佑さん(18)は水泳期待の選手だ.「ドバイ2017アジアユースパラ競技大会」でも,日本知的障害者水泳連盟の派遣推薦選手として,金メダルを含む3つのメダルを獲得している.2020東京パラリンピックを目指して練習に励む龍佑さん,それを支える母親の慶子さんにお話をうかがった.(編集室)

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 スペシャルオリンピックスは,知的障害のある人が選手として活躍する世界的な競技会である.オリンピックやパラリンピックと同様に4年ごとに夏季・冬季の世界大会が行われている.2018年3月にアブダビで実施されたスペシャルオリンピックス中東・北アフリカ大会に,スーダン共和国(以下,スーダン)は初めて選手選抜を行い,選手団というかたちで出場することとなった.

 現在私は青年海外協力隊の作業療法士隊員として,北アフリカのスーダンで活動を行っている.配属先は首都ハルツームにある障害児・者通所施設で,主に知的障害や発達障害のある児童とかかわっている.スーダンはイスラム教徒が多く,神から授かった身体と能力をありのまま受け入れるという意識が強く,リハを行って能力を向上させるという考え方が薄い印象を受けている.活動を行う中で,知的障害のある人への偏見を目にすることもあり,障害があっても素晴らしい能力をもっていることをスーダンの人々に伝えたいと思うようになった.そこで,知的障害のある人の社会参加の促進を図りたいと思い,関係者に働きかけを続けた結果,スペシャルオリンピックススーダンという組織の活動にかかわるようになった.

第4章 精神障害とスポーツ

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作業療法とスポーツのかかわりの変遷

 紀元前,ヒポクラテスは,運動療法は精神機能の改善に効果があると述べている.戦後,精神科病院が多く設立され,1960年代には入院患者に対して運動会等が行われる等,わが国ではOTが誕生する前から精神科病院で入院患者を対象に,卓球,ソフトボール,バレーボール等が行われていた.1966年(昭和41年)にOTが誕生し,1975年(昭和50年)に精神科作業療法診療報酬制度が点数化され,現在ではほとんどの精神科病院で精神科作業療法が行われ,また多くの精神科デイケアでOTが活躍している.1980年代からは,各都道府県および地区単位でのスポーツ大会が盛んに行われるようになった.この時代の大会は,技術を競うことよりもレクリエーションや作業療法としての治療的要素,親睦の意味が大きかった.現在は,精神医療が入院治療中心から地域精神医療に移行していくとともに,平均在院日数が減少し,入院患者のスポーツ大会は縮小している.一方で,地域で生活している精神障害者の増加に伴い地域の精神障害者スポーツ活動が盛んになってきており,都道府県レベルの大会にとどまらず,ブロック大会,全国大会,世界大会と広がってきている.また,地域に精神障害者スポーツクラブが誕生し,OTがかかわるようになった.

 2011年(平成23年)に「スポーツ基本法」が施行されたことに伴い,障害者スポーツに関する施策を,福祉の観点に加え,スポーツ振興の観点からも一層推進していく必要性が高まり,障害者スポーツに関する主な事業が2014年度(平成26年度)に厚生労働省から文部科学省に移管された.スポーツ基本法前文には,“スポーツは,世界共通の人類の文化である.(中略)個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動であり(中略)心身ともに健康で文化的な生活を営む上で不可欠”と記されている.また,障害者スポーツについては,“障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるよう,障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない”としている.運動・スポーツは,精神科の治療,作業療法・デイケアの活動の一つとして行われてきた.最近では,体力面等の身体面の効果よりも,精神症状の改善,認知機能の改善,対人関係の改善についての報告が多く,さらに,就労等の社会参加,QOLの向上,自己効力感の向上,レジリエンスの向上等,治療から予防までさまざまな実践報告がある.

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 精神障害のある人のスポーツとして,ソフトバレーボール,フットサル,バスケットボールの大きく3種のスポーツが公式競技として認知され,各地で実施されている.筆者はそのうちフットサルとバスケットボールについて紹介させていただく.ここでいう「公式」とは,全国障害者スポーツ大会の公式種目であったり,競技団体(NPO法人日本ソーシャルフットボール協会1),NPO法人日本ドリームバスケットボール協会2))が存在するものとしている〔2019年度(令和元年)から全国障害者スポーツ大会の卓球競技へ精神障害区分が導入される予定である〕.

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はじめに

 認知機能障害は統合失調症における中核的な障害であり,患者の就労継続能力や社会転帰に深く影響すると報告されている1〜3)

 本邦では2004年(平成16年)に厚生労働省精神保健福祉対策本部による「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で「入院医療から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の基本的な方策が示され,統合失調症患者を含む精神障害者が,入院医療中心の生活から地域での生活へ移行し,ゆくゆくは就労を目指すという施策が展開されてきた.しかし,薬物療法により症状が軽減・消失しても,地域で安定した社会生活を送ることや就労継続に困難をきたす患者が多く存在している.これは,生活の障害が陽性症状や,陰性症状ではなく認知機能障害によるものだと考えられている.また近年では,統合失調症のみならず,さまざまな精神疾患で認知機能障害の存在が指摘されるようになってきた.

 しかし認知機能障害に対する薬物療法の効果には限界があることが報告されており4),心理社会的治療法として認知機能改善療法(cognitive remediation therapy:CRT)に注目が集まっている.

 本号のテーマが「スポーツがもつ可能性—作業療法への期待」であるため,CRTについては概説のみとさせていただく.本稿では統合失調症患者の認知機能障害に着目しつつ,スポーツがもつ力や要素をどのように利用すればCRTと応用できるのか,筆者の勤務する施設での実践も踏まえて論考していきたい.

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精神障がい者とソフトバレーボール

 1990年代まで,精神障がい者がスポーツをする機会といえば,入院患者のレクリエーション作業療法として実施・提供されるものが多かった.しかし近年では,外来通院患者やデイケア利用者,また,障害福祉サービス事業所の通所者において,障がい者地域スポーツとして参加できる機会が増加している.

 日本精神保健福祉連盟は「精神障害者スポーツ推進委員会」を中心に,1999年(平成11年)より精神障害者スポーツの振興事業を行っており,全国精神障害者スポーツ大会・ブロック大会の開催や,都道府県レベルでの精神障害者スポーツ推進協議会等の組織づくり等に取り組んでいる.

第5章 高齢者とスポーツ

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はじめに:ロボットと人工知能

 現在,人工知能(artificial intelligence:AI)やロボットが,その人が好む好まないにかかわらず,家電製品や自動車,各種サービスシステム等,人の生活の中に急速に入りこんでいる.直接目にするものではなくても,間接的にはその恩恵を受けており,もはや生活から切り離して考えることはできない.ロボットは政府の施策もあり,すでに本邦の基幹産業として確立されている.たとえば,政府は「改革2020」プロジェクトにおいて「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」(プロジェクト3)を目指すとし,①台場および青海地域,②市街地等の日常環境をはじめとする公共空間,③海外からわが国を訪れる大多数が利用する各地の空港の3地域を活用し,先端ロボット技術の社会実装に向けて準備がなされている.医療・福祉分野においては,「高品質な日本式医療サービス・技術の国際展開」(プロジェクト4)を掲げ,AIやロボットを活用した医療サービスが展開され,2020年には“実装している”見込みである.今後はこのようなハイテク技術を活用したインフラストラクチャーや,ソフトウエア面での日本式医療・ケアの輸出,医療観光(medical tourism)の一環として外国人に対する医療・ケアサービスを展開する時代がきており,日本のリハ医療,作業療法もこの波を受けることになるだろう.

 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の『NEDOロボット白書2014』1)では,ロボットを“センサー,知能・制御系,駆動系の3つの要素技術を有する,知能化した機械システム”としたロボット政策研究会2)の定義を紹介したうえで,ロボットの役割を,産業用ロボットのような「生産環境における人の作業の代替」,無人システムのような「危機環境下での作業代行」,それに日常生活の中での家事支援や介護支援等の「日常生活支援」に大別している.この分類では「医療」は明記されていないが,「日常生活支援」に医療・福祉系のロボットは含まれるかもしれない.また,ロボットの定義は時代や産業の状態等により柔軟に変更されてきた歴史があり,今後も変化していく可能性がある.一方,AIとは「知能をもつ機械」のことであり,人間の(あるいは人間を超える)ような知能をもつAIと,知能があるようにもみえる,人間の知的な活動の一部と同じようなことをするAIとがある3).圧倒的に後者の研究が多いが,AIとロボットの関係性を単純に説明するならば,AIと機械工学等の融合により生まれたものがロボットと理解できる.ロボットにも実用的な製品が増え,すでに作業療法支援の一手段として活用できる時代となった.今回はコミュニケーション・ロボットを活用したレクリエーション(以下,レク)で,主に認知症の高齢者の場合に焦点を絞り解説する.なお,この稿では,ロボットを活用したレクをロボット・レクと呼ぶ.

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はじめに

 風船バレーボールとは,バレーボールのボールを風船に置き換え,2つのチームがコートの中央に設けられたネットを挟んで互いに風船を打ち合って得点を争う活動をいう.

 本稿で紹介する「リハビリテーション風船バレーボール」は,スポーツ競技的な立場と社会参加の視点を取り入れ,さまざまな障害があっても,誰もが楽しむことができるものであり,しかも安全に個々の能力を最大限に発揮できるものである.

 その開発の経緯・歴史,作業療法上の狙いと留意点について紹介する.

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組織として活動すること

 障がい者スポーツに限らず,あらゆる事業は組織として活動することで効率的でビジョンや目標に沿った運営ができる.組織としてスポーツ事業を運営する仕組みをつくることで,継続的な活動が可能となる.スポーツ事業に関与する人たちが,ボランティアや,個々の資源や資金の持ち出しではなく,仕事としてかかわる「仕組み」となる組織をつくることが重要になってくる.

 筆者らは事業を運営する組織として特定非営利活動法人(以下,当法人)を設立し,障がい者スポーツ事業を運営している.当法人では,「障がいがある方々に,スポーツを通して社会参加することを支援する」を理念として活動している.

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はじめに

 2018年(平成30年)11月4日(日)に兵庫県作業療法士会主催,認知症の人と家族の会(兵庫県支部)後援で開催した「HOTカフェ & オレンジ運動会」のイベントを報告する.この活動は,認知症の人やその家族,地域住民,介護や福祉等の専門家等が気軽に集い,情報交換や相談,また,障害の有無や年齢等に関係なく,みんなでスポーツを通じて交流しながら認知症の理解を深める場として開催された.

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はじめに

 2018年10月7〜13日に,英国の認知症ケアを視察する機会を得た.今回の渡英の目的は,地域包括ケアの視点から,地域社会での高齢者支援,特に認知症の方への支援について,実践者から具体的な取り組みを聴取することであった.現地では,OT,精神科看護師,行政の高齢者施策の担当者,ボランティア,介護施設の長などから話をうかがうことができた.

 もちろん,英国社会は文化的背景や医療・保険制度,チャリティの取り組み等,あらゆることが日本とは違い,単純に比較したり,取り入れたりすることは難しいかもしれない.しかし,日本の医療・介護・福祉が目指している地域包括ケアを考えるうえで参考になることが大いにあった.今回の視察より,スポーツに着目し,認知症の方への支援を紹介する.

第6章 アスリートとOT

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はじめに

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を目前に,障害者スポーツの中で競技スポーツがより注目されている.スポーツに取り組む障害者の約40%が健康の維持・増進のために行っており1),QOL向上の側面からもスポーツによって得られるものへの期待は大きいと考えられる.そこでOTが障害者スポーツの中で,どのようにかかわることができるのか事例を通して説明していく.

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 2009年(平成21年)5月12日,私は21歳で脳梗塞になった.当時の私は全身麻痺で,何もできなかった.

 そして現在,31歳になった私は,左半身麻痺が残るなか,仕事と自転車競技をしながら懸命に生きている.いや,生かされているのかもしれない.図 1の私は1人で座ることもできなかったので,家族に支えられながら兄(マスクをしています)のお誕生日を病室で祝ったのだ.

2 OTの可能性 徳若 雅之
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はじめに

 2020年の東京パラリンピックに向け日本では障害者スポーツへの関心も高まり,障害者スポーツアスリートや愛好者を取り巻く周囲の理解も急速に進んでいる.障害者スポーツと一言でいっても,競技大会において好成績を目指す競技としての側面や,健康増進や他者交流を目的とした生涯スポーツやレクリエーション・趣味活動としての側面等,活動する者によって多様に捉えることのできる自由度の高い作業だといえる.

 筆者は現在,養成校でOTを目指す学生の教育に従事するかたわら,障害者スポーツにかかわる活動に携わっている.筆者自身,養成校を卒業し臨床の門を叩いた当時,まさかOTとしてスポーツにかかわることになろうとは夢にも思っていなかった.しかし,今では多くの方との出会いや,成功・失敗体験からOTという職業の大きな可能性を感じている.

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 OTはアスリート支援をどのように行えるだろうか? OTがクラシファイアやコーチとして車いすバスケットボール(以下,車いすバスケ)にかかわる強みと可能性を述べる.

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はじめに

 私は5年前,本誌の「提言」欄に「障害者野球日本代表を経験して」1)という題目で寄稿させていただいた.今回,障害者スポーツについて,OT,選手の両方の視点から意見を述べてほしいとの依頼がきて驚いた.パラリンピアンでもない私が選手としての意見を書いていいのだろうかと悩んだが,せっかくいただいた貴重な機会なので,OTとしての見解も交え,障害者である私にしか経験できなかったこと,障害者スポーツの現状と問題点等を述べたいと思う.本稿により,少しでも多くのOTが障害者スポーツに興味をもち,現場でサポートをしたいと思っていただけると幸いである.

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はじめに

 私はOTであり,そしてC7の頸髄損傷者です.四肢麻痺でOTの国家試験を受けたのは,日本では私が初めてです.

 しかし,はじめから車いすのOTを目指していたわけではありません.私は大阪府立大学総合リハビリテーション学部作業療法学科2回生の夏,プールの飛び込みで頸髄損傷になりました.受傷後,約半年の入院生活と約1年半のリハ施設の入所を経験し,大学に復学しました.簡単なことではありませんでしたが,大学の先生や実習地の先生方のご配慮のおかげでOTの資格を取得することができました.そして現在は,入所施設で始めた水泳で,パラアスリートとして活動しています.

 今回は,いかに私が恵まれた環境であったか,そしてどのように障害者スポーツとかかわってきたのか,実際に障害者スポーツをして感じることを書きたいと思います.

第7章 未来に向けた展望

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はじめに

 近年,障害者のスポーツは,リハビリテーションという狭義のものから,レクリエーション,生涯スポーツ,競技スポーツ等,障害のない人々のスポーツと同様に,その参加目的も多様化してきている.身体活動は「安静時よりも多くのエネルギー消費をきたす骨格筋の収縮活動によりもたらされるあらゆる身体的な動き」と定義されているが,神経系疾患患者等にとっては,エネルギー消費はまた異なる意味をもつだろう1,2).非常に微細な動作であっても,身体を動かすことは,体力の向上,エネルギー消費量の増加以外にも,リラクセーション,他者との交流,自己形成等の効果をもたらす2).Barclayら3)は,障害者の社会や地域への参加を左右する要因として,「社会的資源の有無と環境アクセシビリティ」,「地域コミュニティへの参加に影響を与える他者の存在」,「社会参加を妨げる健康課題」の3つを挙げている.また,障害者の社会参加の促進要因として「金銭的支援」,「社会的支援(家族,友人,仲間等)」,阻害要因として「身体的環境」,「社会の理解不足」,「精神疾患」としている3).OTは,運動を用いたリハの観点,「作業」を用いた社会参加機会の創出を目的とした生涯スポーツの観点,アスリートのコンディショニング等の競技スポーツの観点を有しており,障害者のスポーツ振興に大きく寄与する可能性を秘めているといえる.しかし,多岐にわたる領域・職域で活躍するOTだが,OTと障害者スポーツやパラリンピック競技大会(以下,パラリンピック)に関する研究や資料は,国内・国外を問わず乏しいのが現実である.

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はじめに

 2017年度(平成29年度)日本作業療法士協会会員統計資料1)によると,2018年(平成30年)3月31日現在,会員5万7,960人の72.2%(休業中と非有効データの人数を除いて算出した領域別割合)が病院に勤務している.しかし,いわゆる公共に比較的広く知られている車いすバスケットボール,ブラインドサッカー等の「障害者スポーツ」種目は,時間的・環境的制約から多くのOTが所属する病院等の施設では実施することが難しく,病院等の限られたスペースと用具で実施できる種目があまり知られていないのも,OTが障害者スポーツにかかわるうえでの障壁の一つである.障害がある人にとっての運動・スポーツへの参加目的は,心身機能の維持・向上を目指すリハとして,運動・スポーツそのものをできるようになりたい等,その人の状況によってさまざまであるが,どのような目的・理由にしろ,運動そのものを好きになり,運動ができる環境が整うことが望ましい.

 本稿では,「する」,「みる」,「ささえる」という視点から,OTによる障害者スポーツへの多様なかかわり方とその意義について考察し,OTの障害者スポーツへの具体的なかかわりとして障がい者スポーツ指導員資格や重度障害者のスポーツについても紹介する.

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目次

次号予告

編集後記 澤 俊二
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 いよいよ2020年の東京オリンピック,東京パラリンピックの開催が迫ってきた.世界中の優れたアスリートたちが日本に喜び勇んで集ってくる.

 この時期に『スポーツがもつ可能性—作業療法への期待』と題して増刊号を刊行できたことを率直に喜びたい.

基本情報

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作業療法ジャーナル
53巻8号 (2019年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0915-1354 三輪書店

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