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はじめに:研究を始められないあなたへ
「研究ですか? 興味はありますけど,何から手をつけていいのか,さっぱりわかりません……」
「日々の業務で手いっぱいなのに,自分に研究なんてできるのでしょうか」
「養成校で卒論がなかったので,研究論文どころか研究計画書も書いたことがありません……」
読者の中には,このような漠然とした不安や戸惑いを感じている者が少なからずいるはずだ.実のところ,その気持ちは,痛いほどよくわかる.私自身も,駆け出しのころは同じような問題で悩んだことがあるからだ.研究とは,一部の特別な人間だけが行うものであり,自分には難しいし,縁遠い活動だと思い込んでいた.
しかし,今は違う.研究は一部の選ばれし者が行うものでは,決してない.研究の出発点は,最新設備が整った研究機関のみでもない.それは,あなたが日々,対象者と向き合っている現場(例:臨床や教育,企業,起業,地域社会,家庭等)にも数多に存在する.
本連載は,あなた自身の現場経験という独自の資源から「問い」を発見し,「研究計画書」(研究の背景や目的,手順等を記した企画書)へと体系的に構築する思考と技術の習得を支援するプログラムである.研究計画書は「発想→探索→設計→執筆→仕上げ」という流れで書き進める.本連載はこのプロセスに沿って読者のスキル獲得を目指す.なお,拙著『この一冊でわかる! セラピストのための研究論文の書き方ガイド』1)と併せて読んでいただけると,研究論文の執筆に必要なライティングスキルを併せて学習できる.
さて,記念すべき第1回では,研究計画書を書けるようになるために,以下の2つのスキルを身につけることを目指す.
1.自身の現場経験の中から,研究につながる可能性のある問いを複数抽出できる.
2.漠然とした問いを,研究が可能な具体的なリサーチ・クエスチョンとして言語化できる.
これらの目的を達成するために,本連載は読者が能動的に取り組むことを想定している.ただ単に読むだけでなく(読んでくれるだけでありがたいのだけど),ぜひワークに取り組んでほしい.

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