増刊号 スポーツがもつ可能性—作業療法への期待
第3章 知的障害,発達障害とスポーツ
6 共生社会を学習するために地域を巻き込んだ障害のある子どもたちとのスポーツの取り組み
足立 一
1,2
Hajime Adachi
1,2
1大阪保健医療大学
2NPO法人 障がい者スポーツFriendly Action
pp.835-840
発行日 2019年7月20日
Published Date 2019/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201795
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はじめに
近年,共生社会の実現へ向けた取り組みが注目されている.教育現場では,2012年(平成24年)に「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」1)が中央教育審議会から示された.スポーツ分野では,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の基本コンセプトに“世界中の人々が多様性と調和の重要性を改めて認識し,共生社会をはぐくむ契機となるような大会とする”2)とある.われわれOTも,治療者が患者を治す従来の治療者-患者関係に加え,今後は共生社会を実現すべく多様性のあり方を相互に認め合うような関係づくりが求められるだろう.しかし,この共生社会の定義を言葉で示すのは簡単だが,これからのOTを目指すために実感させることは難しい.
筆者は以前,視覚障害者陸上選手の合宿に帯同した.そこで選手と伴走者との関係をみて,「これだ!」と目から鱗が落ちた.また障害者スポーツで活躍するPT,OTへインタビューをした際に,障害者スポーツの魅力について,「一緒に楽しめ成長できる活動」,「スポーツの世界では機能障害は障害にならない」,「一緒に目標ができる,友だちができる,生活が広がる」,「一緒に活動することで障害があることを忘れてしまう」,「支援者としてのモチベーションが上がる」,「何をしても承認され,お互いやるだけでハッピーになる」等と語られ3),障害者スポーツはまさに共生社会の体験ができる場だと思った.
そこで,OTが障害者スポーツを学習できるカリキュラムを検討した.カリキュラムの開発と養成校で活用した取り組みを紹介し,共生社会の体験に注目した効果について考察する.
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