増刊号 スポーツがもつ可能性—作業療法への期待
第7章 未来に向けた展望
1 諸外国のOT(協会)による障害者スポーツへの取り組み
上 梓
1
Azusa Kami
1
1日本作業療法士協会
pp.930-935
発行日 2019年7月20日
Published Date 2019/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201818
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はじめに
近年,障害者のスポーツは,リハビリテーションという狭義のものから,レクリエーション,生涯スポーツ,競技スポーツ等,障害のない人々のスポーツと同様に,その参加目的も多様化してきている.身体活動は「安静時よりも多くのエネルギー消費をきたす骨格筋の収縮活動によりもたらされるあらゆる身体的な動き」と定義されているが,神経系疾患患者等にとっては,エネルギー消費はまた異なる意味をもつだろう1,2).非常に微細な動作であっても,身体を動かすことは,体力の向上,エネルギー消費量の増加以外にも,リラクセーション,他者との交流,自己形成等の効果をもたらす2).Barclayら3)は,障害者の社会や地域への参加を左右する要因として,「社会的資源の有無と環境アクセシビリティ」,「地域コミュニティへの参加に影響を与える他者の存在」,「社会参加を妨げる健康課題」の3つを挙げている.また,障害者の社会参加の促進要因として「金銭的支援」,「社会的支援(家族,友人,仲間等)」,阻害要因として「身体的環境」,「社会の理解不足」,「精神疾患」としている3).OTは,運動を用いたリハの観点,「作業」を用いた社会参加機会の創出を目的とした生涯スポーツの観点,アスリートのコンディショニング等の競技スポーツの観点を有しており,障害者のスポーツ振興に大きく寄与する可能性を秘めているといえる.しかし,多岐にわたる領域・職域で活躍するOTだが,OTと障害者スポーツやパラリンピック競技大会(以下,パラリンピック)に関する研究や資料は,国内・国外を問わず乏しいのが現実である.
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