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はじめに:ロボットと人工知能
現在,人工知能(artificial intelligence:AI)やロボットが,その人が好む好まないにかかわらず,家電製品や自動車,各種サービスシステム等,人の生活の中に急速に入りこんでいる.直接目にするものではなくても,間接的にはその恩恵を受けており,もはや生活から切り離して考えることはできない.ロボットは政府の施策もあり,すでに本邦の基幹産業として確立されている.たとえば,政府は「改革2020」プロジェクトにおいて「先端ロボット技術によるユニバーサル未来社会の実現」(プロジェクト3)を目指すとし,①台場および青海地域,②市街地等の日常環境をはじめとする公共空間,③海外からわが国を訪れる大多数が利用する各地の空港の3地域を活用し,先端ロボット技術の社会実装に向けて準備がなされている.医療・福祉分野においては,「高品質な日本式医療サービス・技術の国際展開」(プロジェクト4)を掲げ,AIやロボットを活用した医療サービスが展開され,2020年には“実装している”見込みである.今後はこのようなハイテク技術を活用したインフラストラクチャーや,ソフトウエア面での日本式医療・ケアの輸出,医療観光(medical tourism)の一環として外国人に対する医療・ケアサービスを展開する時代がきており,日本のリハ医療,作業療法もこの波を受けることになるだろう.
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の『NEDOロボット白書2014』1)では,ロボットを“センサー,知能・制御系,駆動系の3つの要素技術を有する,知能化した機械システム”としたロボット政策研究会2)の定義を紹介したうえで,ロボットの役割を,産業用ロボットのような「生産環境における人の作業の代替」,無人システムのような「危機環境下での作業代行」,それに日常生活の中での家事支援や介護支援等の「日常生活支援」に大別している.この分類では「医療」は明記されていないが,「日常生活支援」に医療・福祉系のロボットは含まれるかもしれない.また,ロボットの定義は時代や産業の状態等により柔軟に変更されてきた歴史があり,今後も変化していく可能性がある.一方,AIとは「知能をもつ機械」のことであり,人間の(あるいは人間を超える)ような知能をもつAIと,知能があるようにもみえる,人間の知的な活動の一部と同じようなことをするAIとがある3).圧倒的に後者の研究が多いが,AIとロボットの関係性を単純に説明するならば,AIと機械工学等の融合により生まれたものがロボットと理解できる.ロボットにも実用的な製品が増え,すでに作業療法支援の一手段として活用できる時代となった.今回はコミュニケーション・ロボットを活用したレクリエーション(以下,レク)で,主に認知症の高齢者の場合に焦点を絞り解説する.なお,この稿では,ロボットを活用したレクをロボット・レクと呼ぶ.
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