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はじめに
発達障害児にみられる感覚・運動の問題や,医学的診断としての発達性協調運動障害(developmental coordination disorder:DCD)が,近年,注目されてきており,発達障害の支援に取り組む現場では,感覚統合療法の視点を活かした感覚運動遊びのプログラムが実施されていることが多い.感覚統合療法とは,発達障害に対する治療介入モデルであり,米国のOTであるAyresにより神経科学を基盤とする理論として構築された.現在,発達障害に対する作業療法において,広く一般的に用いられている治療モデルの一つである.
感覚統合とは「人間が自分の身体や環境からの感覚情報を整える神経学的過程であり,環境の中で自分の身体を有効に使うのを可能にすること」であり,この機能の障害は,環境に対する適切な行動,運動,学習等を妨げると考えられており,感覚過敏等の「感覚調整障害」,身体の不器用さ等の「行為機能障害」という枠組みにて整理されている.
感覚統合療法は,人と環境の相互作用の中で適切な感覚情報処理が促通されるような遊び活動の提供によって実施されることが多い.したがって感覚統合療法の実施場面は,一見ただ遊んでいるように見えるが,治療者は対象児の詳細な感覚統合機能評価結果に基づき,治療的な遊び活動を設定し提供している.このような遊び経験によって対象児の感覚情報処理機能が改善され,環境への能動的な携わりが促され,そして対象児の達成感,有能感へとつながる.
本稿では,筆者が運営する児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「プレイジム」等で実践している感覚統合理論を活用した支援の考え方や遊びの具体例等について説明する.
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