増刊号 急性期における疾患別作業療法
第2章 急性期脳卒中患者に対する作業療法
2 脳卒中患者の予後予測
佐々木 信幸
1
Nobuyuki Sasaki
1
1聖マリアンナ医科大学
pp.810-817
発行日 2023年7月20日
Published Date 2023/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203459
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
予後予測の目的
脳卒中患者の多くは時間経過とともに改善して当然であり,患者が呈するさまざまな症状に場当たり的に対応したところ麻痺改善や歩行自立を得たとしても,それをもって治療成功ということはできない.脳卒中に限らず,リハビリテーション治療にとっての成功とは,単なる改善ではなく“医学的に妥当な時期に妥当な水準まで改善を得ること”であり,その水準の設定および治療戦略の選択に不可欠なのが予後予測である.
予後予測は,患者の能力のみにかかわる問題ではない.患者の予後予測を見誤ることは,住居やローン,子どもの将来,会社の事業計画等,時として患者が属するコミュニティに甚大な損失を及ぼしかねない.もう一点,医療資源に対する視点も重要である.脳卒中は,回復期病棟や施設等への転帰も含め,長期的な治療を要することが少なくないが,医療資源は有限である.特に急性期病院では,より多くの患者を救うために,発症後数日〜数週で適切な転帰先を予後予測のもとに判断しなければならない.
Copyright © 2023, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.