作業療法ジャーナル 58巻13号 (2024年12月発行)

←前の号

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　訪問での精神科作業療法

扉岩根　達郎 , 香山　明美 , 長野　敏宏 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1233

PDF(137KB)

フリーアクセス

文献概要を表示

特集にあたって

　本企画は訪問を手段とする精神科作業療法（＝精神科訪問作業療法）の特集である．

　精神科領域の作業療法士は，以前からその大部分が精神科病院の作業療法室やデイケアに勤務しており，現在もその状況に変化はない．しかしながら，訪問看護ステーション勤務を中心とした，訪問を手段とする作業療法士は相当に増えており，筆者もケア会議等で訪問の作業療法士と顔を合わせる機会が増えている．また，訪問看護ステーション等に勤務する（主たる業務が訪問）作業療法士だけでなく，普段は入院患者さんを対象としているが，週に何件かは訪問をしている（従たる業務，兼務といった形態で訪問をしている）作業療法士も少なくない．従たる業務とまではいかなくとも，退院前訪問等を含め，何らかのかたちで訪問での精神科作業療法を経験したことがあるという作業療法士は多いのではないだろうか．

精神科における訪問での作業療法士の役割香山　明美 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1234-1240

PDF(960KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Key Questions

Q1：精神科における訪問での作業療法士の現状は？

Q2：精神科における訪問での作業療法士の役割は？

Q3：精神科における訪問での作業療法士のこれからのあり方は？

はじめに

　筆者の40年にわたる作業療法士人生で，初めて訪問を行ったのは，30年ほど前になる．それは，市の保健師からの依頼で，陽性症状が激しい統合失調症の患者さん宅に訪問し，かかわりの可能性を探るものであった．いわゆる未受診者を治療へとつなげていく訪問を保健師と行ったのである．訪問を継続しながら本人との関係性構築を試みていった．不思議なことに，彼女は訪問するスタッフを拒まなかったのである．孤独の中で誰かを求めてもいたのである．それ以来，筆者は，地域で生活する対象者の支援のあり方を模索することになっていった．

　精神科において作業療法士が，対象者の生活の場で支援を行うことは，その特性から至極当然のことである．作業療法士が，対象者の地域生活を支援する職種として有効に機能するためには，入院中の退院前訪問，退院後の訪問支援を他職種と連携しながら積極的に展開していく必要がある．

　本稿では，精神障害者の地域生活支援のあり方やアウトリーチに関する国の施策の変遷と，作業療法士による訪問活動の実践を振り返り，その中からみえてきた作業療法士の役割を整理し，今後に向けた課題を示す．

—訪問による精神科作業療法①—精神科訪問看護における作業療法的生活支援—訪問看護ステーションでの実践森　志勇士 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1241-1246

PDF(580KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Key Questions

Q1：病院での精神科作業療法との違いや共通する部分は？

Q2：対象者，家族，他職種，地域への実践と課題は？

Q3：訪問支援で作業療法士に求められることや能力は？

はじめに

　一般的独立型とも病院併設型とも異なる特徴をもつ訪問看護ステーションでの作業療法士の実践を報告し，訪問支援で作業療法士に求められることをまとめる．

—訪問による精神科作業療法②—精神科病院に併設された訪問看護ステーションでの実践—逆境的小児期体験のある準ひきこもり生活ユーザーに寄り添う矢野　有加 , 笠井　秀夫 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1247-1253

PDF(623KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Key Questions

Q1：逆境的小児体験が与える影響により，生きにくさや生きづらさを抱えている方の過去から現在をいかに理解できるか?

Q2：自己肯定感を高め，今の自分でも何とかなるかもしれないと感じられるかかわりとは？

Q3：人生の意味や目的を見いだして，自分らしく充実した生活を送るための，リカバリーを促進する支援とは？

はじめに

　内閣府^1）によれば，「ひきこもり状態にある者は令和4年度の実態調査（15歳〜64歳の生産人口）において推定146万人いる」との結果が示されている．また，ひきこもり支援においては，ほっとできる空間としての「居場所」や，寄り添おうとする「人」の存在が重要であり，本気で本人家族の状況やニーズを受け止め，本人がひきこもる状況に至るまでの痛みや苦悩，不安を感じ取れているか等，真摯に理解を寄せていく姿勢と，信頼関係の構築が必要不可欠といわれている^1）．加えて，カイザーパーマネンテ（アメリカ最大級の健康保険組織と連携した医療機関）と米国疾患予防管理センターの共同研究では，「逆境的小児期体験（以下，ACE）によって健康リスクが高まり，ACEsとトラウマは「肥満・精神疾患・ひきこもり・仕事の欠勤」などの問題行動や身体的・精神的問題の出現要因，すなわち，公衆衛生問題の決定要因であるとされている^2）．ACE研究では，良質な対人関係を育むことがトラウマの改善において効果が高い（対人関係療法などの効果が高い）ということがわかっており，現在「いま，ここ」にこそ，トラウマの影響が垣間見え，そこに対応することができる^2）とされており，環境調整や寄り添う人とのつながりが，生きづらさの回復の助けになることを示唆している．

　野中^3）は，“リカバリーは障害や疾病からの回復のみを意味するのではなく，生活の主体者としての機能，自尊心，社会的役割を回復すること，障害があるにもかかわらず人生とその意義を回復すること”と述べている．また，鶴見^4）は“健康な面やその能力が拡大すれば，問題点や障害の部分は相対的に小さくなることになる．地域生活支援を行う過程の中で，支援者は「障害の部分に焦点化しすぎてないか」など，自己の評価についてモニタリングを常に行っていく必要がある”と述べている．今回，ACEsに加えて死を意識するようなPTSD（心的外傷後ストレス障害），性同一性障害のある事例を担当し，ストレス脆弱モデルと生物心理社会モデルの要素を用いて個別性・特性を重視し，本人の助けになるものやストレングスに焦点を当てた支援を行ったことで，リカバリーの促進につながる支援が行えたので報告する．事例報告を行うにあたり，本人から口頭にて同意を得た．また，院内の倫理審査委員会の承認を得ている（承認番号20241009-1）．

ACTにおける作業療法士の役割と実践片岡　大貴 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1254-1257

PDF(420KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Key Questions

Q1：ACTの特徴とは？

Q2：ACTでの作業療法士の役割とは？

Q3：ACTでの実際の支援とは？

はじめに

　日本でACT（アクト，Assertive Community Treatment：包括型地域生活支援プログラム）が活動を開始して20年以上が経過している．多くの当事者や家族がACTの普及・発展を望んでいるものの，制度化されることはなく，現在は全国で約20数チームが活動している．筆者が所属するQ-ACTは，全国で初めて複数のACTチームを立ち上げ，実践する法人であり，現在5チーム目の立ち上げに着手している．本稿では，ACTの特徴や具体的な支援を作業療法士の役割も含めて述べたい．

コラム：世田谷ひきこもり相談窓口「リンク」—重層的支援体制整備事業の活用足立　千啓 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1258-1260

PDF(825KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　2010年（平成22年）厚生労働省は「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」を策定し，自治体ごとに支援の構築を進めてきた．それから10年以上が経過し，中高年層のひきこもりや8050問題，複雑化・複合化した課題を抱える世帯の顕在化等，ひきこもり支援に求められるものも変化しており，包括的な支援体制の整備が課題となっている．

コラム：就労支援における訪問での精神科作業療法芳賀　大輔 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1261-1262

PDF(254KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　作業療法士の業務において「訪問」という言葉から企業への訪問ということを思いつく人がどれくらいいるだろうか？就労を支援する中ではとても重要なことであるが，訪問という言葉からは，自宅への訪問をイメージする人が多いかもしれない．しかし，作業療法士が就労にかかわることになると，職場へ訪問することも守備範囲に入っているといえる．

コラム：ひきこもり，未治療者，治療中断者へのアウトリーチ真下　いずみ 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1263-1265

PDF(324KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　ひきこもりは，さまざまな要因の結果として社会的参加を回避し，原則6カ月以上にわたって，おおむね家庭にとどまり続ける状態を指す現象概念である^1）．日本では15〜64歳でひきこもり状態にある人は推計146万人に上り^2），国家的な課題となっている．近藤ら^3）は，ひきこもり当事者の80.9％が精神科診断基準を満たしたと報告しており，筆者の調査^4）でも当事者のうち精神科通院の中断者が55％に上った．すなわち，ひきこもっている人の中には，未治療者，治療中断者が包含されているが，当事者は援助を求めて行動しないか，できないことが多いことからひきこもりは長期化しやすい．そこで解決の糸口となるのが，アウトリーチ（訪問）である．本稿では，ひきこもり状態にある人への訪問の特徴を概説する．

わたしの大切な作業・第80回

余裕を作る作業柳家　喬太郎 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1227

PDF(250KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　この原稿の執筆、御依頼を頂いて、安請け合いはしたものの、いざ書く段になって、困ってしまった。

　私にとって大切な作業って、なんだろう？

提言

何気ない日々に気づきと想像力を長城　晃一 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1230-1231

PDF(1102KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　この「提言」の依頼をいただき承諾はしたものの，自分に何か語れることがあるのかと立ちどまった．これまでをたどってみたが，自身が実践してきた作業療法について深く語れるほどの自信もなく，中々書きたいことに思い当たらなかった．これまでライフワークのように研究として取り組んできたパーキンソン病について執筆するほうが，筆が進むことは理解しているものの，この機会を自身の作業療法士人生を振り返る機会として活用しようと思う．良くも悪くも失敗と恥の連続であったと感じる．それでも，作業療法のことだけでなく，社会人としてのマナーや人付き合い，物事の考え方，個人の将来展望等に，日々思考を巡らせ自分なりに考え行動してきた．これまで，社会人になってから考えてきたことや価値観，行動してきたことを振り返ってみたい．

あなたにとって作業療法とは何ですか？・第120回

あなたにとって作業療法とは何ですか？今寺　忠造 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1266

PDF(396KB)

有料閲覧

文献概要を表示

人と地域を元気にする

　私は，人と地域を元気にするパイオニアだ．

　伊豆半島で，回復期・維持期・地域リハを2年間，金沢で急性期を4年，その間「生きる健康科学」にこだわった．

講座　作業療法とコミュニティデザイン・まちづくり・第1回【新連載】

住民主体のまちづくりの実践と作業療法士への期待大内　佳子 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1268-1272

PDF(1849KB)

有料閲覧

文献概要を表示

作業療法士との出会い

　はじめに，私が初めて事業連携した作業療法士である，現在，東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科作業療法学専攻長の香山明美氏との出会いについて記したいと思います．

　私は，保健師として矢本町（現東松島市）に入職後，保健福祉分野の業務に長く携わってまいりました．

隔月連載　やさしい短歌のよみ方，つくり方・特別編

対談：短歌の豊かな世界を語る北村　薫 , 横山　未来子 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1274-1282

PDF(4679KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　読者の皆さまからもご好評をいただき、11月号で最終回を迎えた横山未来子先生の連載「やさしい短歌のよみ方、つくり方」。そもそもこの連載は、作家の北村薫先生に横山先生のご著書をご紹介いただいたことがきっかけでスタートしました。そこでなんと、今回は特別編として、北村先生にお越しいただき、横山先生との豪華な対談をお送りします！　本の達人と歌人が短歌への愛を語り尽くした対談をぜひお楽しみください。（編集室）

連載　作業療法を深める・第97回

どなたでも楽しめる博物館の実現を目指して—古代オリエント博物館における視覚障害者を対象とした展示解説の実践髙見　妙 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1283-1287

PDF(2545KB)

有料閲覧

文献概要を表示

はじめに

　筆者が所属する古代オリエント博物館は，日本で最初の古代オリエント専門博物館として1978年（昭和53年）に開館しました．開館以降，古代オリエント領域の調査研究と関連資料の収集・保存を続けながら，展示や教育普及を通じて古代オリエントの歴史・文化の発信に努めています．さらに近年では，どなたでも楽しめる博物館の実現を目指し，これまで博物館を利用しづらかった人々の学習環境を保障する取り組みを進めています．その一つが，副題に記載した視覚障害者に向けた展示解説の実践です．本稿では，古代オリエント博物館で2022年度（令和4年度）より実践している「視覚障害者のための展示解説ツアー」について，プログラムで活用する「触る」教材の紹介を中心に，その意義と可能性について探ります．

連載　患者の死と向き合うために・第6回【最終回】

座談会：家族・遺族の死生観と作業療法士に望むこと石丸　昌彦 , 竹内　香 , 田尻　寿子 , 池知　良昭 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1288-1292

PDF(2329KB)

有料閲覧

文献概要を表示

座談会にあたって

池知　本日は，3人の先生方にお集まりいただきました．お忙しい中，ありがとうございます．まずは自己紹介をお願いいたします．

石丸　石丸昌彦と申します．精神科医になって今年で38年です．最初は診療と研究専門でしたが，ある時期から大学教育に携わるようになり24年経ちました．診療を続けながら，診療の場で患者さんから教わることを大学で発信するというかたちで仕事をしています．よろしくお願いします．

連載　覗いてみたい!? 先輩OTの頭の中・第12回【最終回】

始めあるものは必ず終わりあり柴田　八衣子 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1294-1296

PDF(411KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　今回は，最終回という区切りの回を迎え，今，頭の中にあることを伝えるために尽力したいと思います．

　このシリーズでは，皆さんに私の頭の中を覗いてもらってきたわけですが，執筆という作業は，たとえてみますと，空の雲のような，「ふわっ」とした，何となく思っていることに焦点を当て，それを鮮明にして他の人に理解してもらえるように言語にする（「見える化」する）ことでした．と同時に，作業療法士としてやってきた自分と，もう一度向き合う作業となりました．実はこれらは，私がとても苦手とすることでした．

連載　二刀流！多様性！サバイバルカラフルキャリアの指針!?・第9回

カラフルデブ100kg超級に到達する軌跡〜ダイエット失敗日記〜 Dr まあや 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1297

PDF(294KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　出生体重3,200kg．私の人生はここから始まった．

　三つ子の魂百まで．幼少時，東京在住，好きな食べ物，マクドナルドのフライドポテト，中華そば，近所のおにぎり屋さんの鮭のおにぎり．炭水化物デブの始まりなのである．3歳で岩手に移り住み，幼稚園から大学までの学生時代は，運動大好き少女だった．幼少期は食べるのが好きではなかったが，小学生になると，食欲旺盛，特にお菓子を好き放題食べてしまう生活に．小学4年生ごろ，自分が友人たちより，太っていることにようやく気がつきはじめた．ちょうど，第二次性徴に突入．身長の成長が止まり，149cmの人生がここで確定．足も太くて短い．「人生，終わった……」．絶望感．せめて少し痩せないと，と人生初めてのダイエット開始．といっても，お菓子を減らす，という意識はしはじめた程度．

ふぉーらむ

目の前の対象者から作業療法の効果を見いだすためには？—シングルケースデザインの活用丁子　雄希 , 金子　隆生 , 鹿田　将隆 , 徳地　亮 , 佐野　哲也 , 籔脇　健司 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1298-1301

PDF(361KB)

有料閲覧

文献概要を表示

1．はじめに

　作業療法では，長年にわたりevidence based practice（EBP）の重要性が謳われており，介入の有効性について検証することが求められている．研究のエビデンスの質を示す階層ピラミッドでは，メタアナリシスやランダム化比較試験（randomized controlled trial：RCT）が上位層にあり，ケースレポートや専門家の意見は下位層に位置している．そのため，臨床家や研究者によっては，上位層から得られた知見に高い信頼性や妥当性があり，臨床の意思決定に大きく寄与すると考えるのに対し，下位層に位置するデザインは軽視しやすい傾向がある．

　多くの臨床家は，「自身の作業療法介入が本当に目の前の対象者に効果があるのか」に関心が高いと思われる．では，どのようにして臨床家はEBPを踏まえたうえで，目の前の対象者に対して作業療法の効果を検証できるのだろうか．本稿では，1例からでも効果検証を可能とするシングルケースデザイン（singe-case design：SCD）の手法について紹介する．

学会・研修会印象記

第3回日本老年療法学会学術集会川端　敦史 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1302

PDF(503KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　2024年8月3日と4日の2日間，北海道の雄大な自然と青空の下，札幌医科大学にて「第3回日本老年療法学会学術集会」が開催されました．この2日間は，札幌の涼しい風が心地よく，全国各地から集まった実践者や研究者を優しく迎え入れるかのような学会日和でした．

　今回の学会のテーマは，「Well-beingな未来を創造する〜老年療法学の挑戦〜」．超高齢社会が進展する中で，老年期において療法士に求められる役割や地域社会への貢献について，熱い議論が繰り広げられました．特に印象的だったのは，急速に進化するテクノロジーが高齢者の健康や生活に与える影響に焦点を当てた研究が数多く寄せられていたことです．

症例報告

Transtheoretical Modelを用いて自主練習の継続につながった橈骨遠位端骨折術後の1例熊谷　純久 , 白砂　寛基 , 加納　裕遵 , 山崎　奈緒 , 中山　政憲 , 角田　亘 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1315-1319

PDF(1088KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Abstract：橈骨遠位端骨折術後の患者を担当し，作業療法の中でTranstheoretical Modelを用いた自主練習の指導を行った．手術翌日から作業療法を開始し，自主練習の指導にはパンフレットを使用した．退院後は週1回の外来作業療法を継続し，自主練習は1回20分以上，1日2回以上を目標として，練習量を患者自身が毎日記録した．経過中，残存する疼痛により一時的に練習量が低下したため，疼痛そのものに対する治療と疼痛を回避する手の使い方の指導を実施した．また，練習記録の肯定的なフィードバックを行い，自主練習の継続を支援した．その結果，疼痛は軽減して重量物の運搬以外は患手が使えるようになり，作業療法終了まで自主練習を継続することができた．自主練習の指導には運動面だけではなく心理面に着目した介入が重要であり，患者の行動と心理状態に焦点を当てるTTMの視点が有用である可能性が示された．

通所および訪問リハビリテーションにおいて脳卒中後利用者の復職支援を行った1事例松尾　果澄 , 谷口　貴子 , 望月　碧 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1320-1324

PDF(431KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Abstract：脳卒中による重度右片麻痺に軽度注意障害を伴う50代利用者に，同一事業所の通所および訪問リハビリテーションで支援を行い，復職に至った事例を報告する．開始当初は自宅生活の安定を目指し，その後に生活範囲の拡大を目的として普通型車いす自操での外出獲得を図った．毎月のリハビリテーション会議では多職種で目標設定と情報共有を行った．利用開始5カ月目のリハビリテーション会議に職場上司が同席し，職場内環境の調整や配置転換について協議した．職場内移動に向けて通所リハビリテーションで杖歩行練習を，通勤に向け訪問リハビリテーションで電動車いすの練習を行った．さらに通所リハビリテーションではパソコン操作の作業速度向上を行った．これらにより利用開始1年で元の職場への復職を果たした．職場上司を含めたリハビリテーション会議，さらに目標に応じて通所・訪問リハビリテーションを組み合わせたことが有用であったと考えられた．同一事業所の通所・訪問リハビリテーション利用による切れ目のない連携が，復職支援に有用であることが示唆された．

回復期リハビリテーション病棟においてTransfer Packageを工夫した修正CI療法を実施し麻痺手の使用頻度が向上した症例御書　正宏 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1325-1328

PDF(645KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Abstract：回復期病棟入院中の限られた時間の中で，入院患者に対し入院早期から，修正CI療法のTransfer Package（以下，TP）を工夫しながら，回復期の介入時間で麻痺手の使用頻度向上を試みた．TPの工夫として麻痺手の使用目標が書かれた簡易シートを用いて本人に渡し，シートで目標を毎日確認しながら使用状況を確認した．結果として麻痺手の機能評価であるFugl-Meyer Assessmentや麻痺手の使用頻度，動作の質を示すMotor Activity LogにおいてMCIDを超える改善を示した．TPを工夫した修正CI療法が，回復期病棟入院中の限られた時間でも麻痺手の使用頻度を向上させることが示唆された．今後介入方法をプロトコル化し，機能レベルの異なる症例での検証や対照群を設けた比較検討を行う必要がある．

昭和の暮らし・第96回

番外編：間違い探しクイズ② 市橋　芳則 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1330

PDF(1450KB)

有料閲覧

文献概要を表示

　写真は昭和日常博物館内の情景再現展示「台所」．季節や展覧会によって模様替えを繰り返している．

　今回は，昭和時代の料理本に掲載されているレシピを再現して展示する特別展「ショウワ・キュイジーヌ・リバイバル」（2024年11月9日〜）にちなんで「間違い探しクイズ」のテーマに台所を選んだ．

--------------------

目次 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1228-1229

PDF(1362KB)

フリーアクセス

表紙のことば／今月の作品 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1232

PDF(687KB)

フリーアクセス

わたしたちの作業療法 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1267

PDF(309KB)

フリーアクセス

研究助成テーマ募集 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1303

PDF(227KB)

フリーアクセス

書評　—NPO法人ホスピスのこころ研究所（編），前野宏（責任編集）—「ホスピスのこころを究める—日本のホスピス50年が築き上げたもの」池知　良昭 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1304

PDF(218KB)

フリーアクセス

『作業療法ジャーナル』第59巻（2025年）表紙作品紹介 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1306-1307

PDF(1264KB)

フリーアクセス

第60巻表紙作品募集 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1308-1309

PDF(589KB)

フリーアクセス

Archives 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1311

PDF(107KB)

フリーアクセス

学会・研修会案内 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1313

PDF(154KB)

フリーアクセス

次号予告 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1333

PDF(162KB)

フリーアクセス

編集後記長野　敏宏 58巻13号 , 2024年12月 , pp.1334

PDF(227KB)

フリーアクセス

文献概要を表示

　特集のタイトルを「訪問での精神科作業療法」とした．本来なら「精神科訪問作業療法」という言葉を使いたいところだが，現在，日本の医療制度において精神科訪問看護として診療報酬がようやく認められている状況で，それは難しいと判断した．

　精神科領域でも，入院に偏重した医療から地域生活への移行が謳われて久しいが，十分な成果は得られていない．その一因は，まだ，診療報酬はじめ制度そのものが地域型に移行できていないことにある．特集の内容のように，長期間におよぶ試行錯誤的な実践から作業療法の内容や理論も成熟しはじめてきた今，「精神科訪問作業療法」を，その医療としてのエビデンスを確たるものにし，ご本人に求められ，かつ，国民が納得できるものにしていく必要があるのではないだろうか．

『作業療法ジャーナル』第58巻総目次 58巻13号 , 2024年12月

PDF(656KB)

フリーアクセス

基本情報

作業療法ジャーナル
58巻13号
(2024年12月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0915-1354 三輪書店

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

前身誌

理学療法と作業療法

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
12月9日～12月15日
)

第1位目標設定とそのエビデンス友利幸之介,大野勘太,澤田辰徳,沖田勇帆作業療法ジャーナル 55巻 5号 pp. 470-474 (2021年5月15日) 三輪書店
第2位座談会：若年性認知症―当事者・ご家族の思い駒井由起子作業療法ジャーナル 47巻 11号 pp. 1241-1247 (2013年10月15日) 三輪書店
第3位脊髄損傷の座位・立位バランス太田皓文作業療法ジャーナル 56巻 5号 pp. 407-411 (2022年5月15日) 三輪書店
第4位老健の作業療法士が大切にすべき視点渡邊基子作業療法ジャーナル 54巻 1号 pp. 8-13 (2020年1月15日) 三輪書店
第5位生活行為向上マネジメントのエビデンスの現状と今後の課題石川隆志作業療法ジャーナル 53巻 4号 pp. 343-352 (2019年4月15日) 三輪書店
第6位 5　基本動作の支援　④更衣・整容佐近隆二作業療法ジャーナル 48巻 7号 pp. 627-632 (2014年6月20日) 三輪書店
第7位作業療法士としてのモビリティへの支援—地域での移動と自動車運転藤田佳男作業療法ジャーナル 51巻 1号 pp. 4-5 (2017年1月15日) 三輪書店
第8位地域包括ケア時代における老健OTの可能性長倉寿子作業療法ジャーナル 49巻 8号 pp. 800-804 (2015年7月15日) 三輪書店
第9位目標設定に関するツール川口悠子,井上由貴,沖田勇帆,大野勘太,澤田辰徳,友利幸之介作業療法ジャーナル 55巻 6号 pp. 570-575 (2021年6月15日) 三輪書店
第10位 3　脊椎圧迫骨折の作業療法野崎達貴,村上正和,清本憲太,木村優斗作業療法ジャーナル 56巻 8号 pp. 783-788 (2022年7月20日) 三輪書店

投稿規定

作業療法ジャーナル 58巻13号 (2024年12月発行)

特集 訪問での精神科作業療法

わたしの大切な作業・第80回

提言

あなたにとって作業療法とは何ですか？・第120回

講座 作業療法とコミュニティデザイン・まちづくり・第1回【新連載】

隔月連載 やさしい短歌のよみ方，つくり方・特別編

連載 作業療法を深める・第97回

連載 患者の死と向き合うために・第6回【最終回】

連載 覗いてみたい!? 先輩OTの頭の中・第12回【最終回】

連載 二刀流！多様性！サバイバルカラフルキャリアの指針!?・第9回

ふぉーらむ

学会・研修会印象記

症例報告

昭和の暮らし・第96回

--------------------

基本情報

前身誌

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング( 12月9日～12月15日)

特集　訪問での精神科作業療法

講座　作業療法とコミュニティデザイン・まちづくり・第1回【新連載】

隔月連載　やさしい短歌のよみ方，つくり方・特別編

連載　作業療法を深める・第97回

連載　患者の死と向き合うために・第6回【最終回】

連載　覗いてみたい!? 先輩OTの頭の中・第12回【最終回】

連載　二刀流！多様性！サバイバルカラフルキャリアの指針!?・第9回

文献閲覧数ランキング(
12月9日～12月15日
)