増刊号 スポーツがもつ可能性—作業療法への期待
第4章 精神障害とスポーツ
3 認知機能改善療法とスポーツ
高野 隼
1
Shun Takano
1
1関西医科大学総合医療センター 精神科デイケア室
pp.868-874
発行日 2019年7月20日
Published Date 2019/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201802
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
認知機能障害は統合失調症における中核的な障害であり,患者の就労継続能力や社会転帰に深く影響すると報告されている1〜3).
本邦では2004年(平成16年)に厚生労働省精神保健福祉対策本部による「精神保健医療福祉の改革ビジョン」で「入院医療から地域生活中心へ」という精神保健医療福祉施策の基本的な方策が示され,統合失調症患者を含む精神障害者が,入院医療中心の生活から地域での生活へ移行し,ゆくゆくは就労を目指すという施策が展開されてきた.しかし,薬物療法により症状が軽減・消失しても,地域で安定した社会生活を送ることや就労継続に困難をきたす患者が多く存在している.これは,生活の障害が陽性症状や,陰性症状ではなく認知機能障害によるものだと考えられている.また近年では,統合失調症のみならず,さまざまな精神疾患で認知機能障害の存在が指摘されるようになってきた.
しかし認知機能障害に対する薬物療法の効果には限界があることが報告されており4),心理社会的治療法として認知機能改善療法(cognitive remediation therapy:CRT)に注目が集まっている.
本号のテーマが「スポーツがもつ可能性—作業療法への期待」であるため,CRTについては概説のみとさせていただく.本稿では統合失調症患者の認知機能障害に着目しつつ,スポーツがもつ力や要素をどのように利用すればCRTと応用できるのか,筆者の勤務する施設での実践も踏まえて論考していきたい.
Copyright © 2019, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.