臨床眼科 45巻7号 (1991年7月)

特集 第44回日本臨床眼科学会講演集(5)1990年9月 東京

学会原著

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 連続波Nd:YAGレーザー光凝固治療を施行した新生血管黄斑症22症例22眼に対して,視力検査,螢光眼底検査,自動量的視野計オクトパスを用いて,光凝固の新生血管閉塞効果と黄斑部視機能に及ぼす影響について6〜16か月間にわたって検討した。視力は20眼(90.9%)で術前と同じ程度あるいは改善を認めた。螢光眼底検査では,20眼(90.9%)で新生血管を消退させることができた。オクトパスによる中心視機能の変化は,4眼(40%)に改善を認めた。これらの所見より,連続波Nd:YAGレーザー光凝固は新生血管黄斑症に対する治療手段として有用であると考えられた。

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 サルコイドーシスは乾酪壊死を伴わない類上皮肉芽腫を形成する全身性肉芽腫性疾患である。眼窩内腫瘍で初発し,病理組織学的にサルコイドーシスと診断された41歳男性に,経過観察中,網膜静脈周囲炎が出現したが,眼科領域以外では異常は見られなかった。

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 経動脈塞栓術により,眼症状が改善したにもかかわらず,4か月後に網膜中心静脈閉塞症(CRVO)が発症した硬膜頸動脈海綿静脈洞瘻(硬膜CCF)の1例を経験したので報告した。本症例では硬膜CCFの治癒過程の中でCRVOが発生したものと考えられるが,塞栓術後に存続した軽度高眼圧が網膜内循環に悪影響を与えた可能性も否定できない。硬膜CCF症例においては塞栓術後もCRVOの発症を念頭において詳細な眼底検査の施行とともに,眼圧のコントロールを厳密に行う必要があると思われた。

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 先天縮瞳症はいかなる散瞳薬にも反応しない直径1mm位の小瞳孔と,虹彩紋理不明瞭を特徴とするまれな先天性疾患であるが,小瞳孔のため周辺部眼底の詳細な記載はみられない。今回の症例は75歳男性で生来瞳孔径1mm弱で,種々の散瞳薬でも全く反応せず,虹彩紋理は不明瞭で収縮襞は少数認められたが,捲縮輪,放射状皺襞,小窩はみられなかった。同症例に水晶体嚢外摘出術と後房レンズ挿入手術をし,術後眼底検査では黄斑耳側から周辺部にかけて強い網膜萎縮がみられ,同部位の視野欠損もみられた。手術時得られた虹彩の組織検査では瞳孔散大筋,括約筋は欠如しており,遺伝形式は単独発生例で外胚葉起源の発生異常と推測した。

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 全層角膜移植術の19年後に眼外傷を受け,移植創が裂開した症例を経験した。症例は82歳女性で,19年前右眼に水晶体全摘出術および全層角膜移植術を施行されていたが,今回その右眼を打撲し,移植創の裂開と同部位よりの虹彩と硝子体の脱出があったため、角膜縫合術および脱出虹彩と前部硝子体の切除術を施行した。角膜移植創の瘢痕部は,術後長期経過後もなお弱く,外傷によって開創する可能性のあることが判明した。

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 硝子体手術により得られた黄斑皺のある黄斑前膜7例を組織学的に検索した。黄斑前膜の原因疾患は特発性2例と各種眼内手術後5例である。増殖性硝子体網膜症(PVR)を除く5例で,シート状の膠原線維層が共通の主要構成要素であった。この膠原線維は直径は約16nmで周期性は約22nmであった。この線維の形態と内境界膜との位置関係から,この膠原線維層は,硝子体皮質そのものと同定された。細胞成分は少ないか限局性であった。PVRの2例では硝子体皮質と思われる膠原線維層はなく,細胞増殖が中心であった。以上から,種々の疾患で硝子体皮質が黄斑前膜の基本要素となりうることが確認された。また,その収縮は,必ずしも細胞成分の収縮とは限らず,硝子体皮質自身の収縮が考えられた。

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 外傷性黄斑円孔23例23眼の臨床像を検索し,特発性円孔と比較した。若年男子に多く,18例が,野球,サッカーボールによる打撲で占められていた。視力は,6眼で0.3以上であった。円孔が小さい場合と分層円孔では視力は良好であった。

 外傷性脈絡膜萎縮が,23眼中16眼に併発し,うち12眼は,三角症候群の形態を呈していた。黄斑に萎縮が及んだ10眼では,視力は0.1以下であった。隅角解離は7眼に,周辺部網膜裂孔は4眼に併発した。

 円孔は,新鮮例では,特発性に比べて小さく,その縁が不整で,正円ではなかった。円孔外縁の網膜の下掘れと縁の挙上はなく,周囲網膜は比較的平担であった。特発性円孔では,円孔外縁の下掘れと周囲網膜の浮腫が必発であり,際立った対照を示していた。硝子体検査を実施した13眼中12眼(全体の52%)で,後部硝子体剥離を認めた。一方,特発性円孔の新鮮例では,硝子体剥離はなかった。鈍的外傷による急性に生じた後部硝子体剥離により,中心窩に裂隙を生じることが外傷性黄斑円孔の主因であると推論された。

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 手持ち式圧平式眼圧計Tono-Pen Ⅱが開発されたのでこの眼圧計を試用した。205眼を対象とし,眼圧はGoldmann圧平式眼圧計とTono-Pen Ⅱで測定し比較した。平均眼圧はGoldmann眼圧計では16.9±5.1mmHg,Tono-Pen Ⅱでは16.8±6.1mmHg,相関係数は0.85であった。Goldmann眼圧計では21mmHg以上にもかかわらずTono-Pen Ⅱでは20mmHg以下と測定された偽陰性は2.4%,偽陽性は4.4%で平均誤差は2.3mmHgであった。Tono-Pen Ⅱは小型軽量であり,しかも測定体位を選ばない。暗室では使用しにくいという欠点はあるが測定値の平均がデジタル表示され検者間の差が起こりにくく,その測定値も信頼しうると思われた。

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 前嚢下に混濁を伴う皮質白内障,核白内障,後嚢下白内障,全白内障を対象として,ヒト白内障の水晶体上皮細胞の増殖能と混濁部位との関係を短期培養法により調査した。この結果,前嚢下に混濁を伴う皮質白内障では,核白内障,後嚢下白内障と比べて,水晶体上皮細胞に増殖能の低減がみられた。全白内障では,前嚢下に混濁を伴っているが,核白内障,後嚢下白内障と比べて,水晶体上皮細胞の増殖能低減はなかった。上皮細胞の増殖能は,混濁部位と混濁進行程度で異なり,白内障発生に関する上皮細胞の関与を知るうえで重要な知見と考えた。

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 分離培養,中和試験と酵素抗体法でウイルス性結膜炎と病因診断できた延べ1,104例の患者のうち,初・再感染を確認できた18人(36例)の臨床像と病因を比較検討した。1)ウイルス性結膜炎の再感染は1.7%で,内訳はアデノウイルス(Ad):0.6%,エンテロウイルス70(EV70):1.3%であった。2)病因ウイルスの組み合わせは,初・再感染ともにAd:6人,EV70:2人,AdとEV70:10人であった。Adの同一血清型の再感染はなく,EV70では2人確認できた。3)同種ウイルスによる再感染例の臨床像は,Ad感染の6人の初感染はすべて流行性角結膜炎(EKC)で,再感染はEKC:2人,咽頭結膜熱(PCF):2人,急性出血性結膜炎(AHC):1人,急性結膜炎(AC):1人であった。

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 脈絡膜欠損に合併した網膜剥離に対して硝子体手術を行い,復位の得られた2症例につき報告した。症例1は34歳男性で,SF6注入,光凝固,硝子体手術,最終的にsilicone oil注入により安定している。症例2は36歳男性で,小眼球に網膜剥離を合併していた。硝子体手術,SF6注入,光凝固により復位した。

 脈絡膜欠損部に裂孔を有する網膜剥離の治療は,硝子体牽引の除去と欠損部周辺の光凝固が有効と考えられた。

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 点眼麻酔薬に0.5%のフルオレセインを溶解したもの10μlを点眼してシルマーテスト1法を行い,涙液のクリアランステストを行った。対象は涙液分泌減少症群119名238眼,正常群16名32眼とし,他の涙液検査と比較した。

 涙液クリアランス値の分布は、正常群では2倍以下はなく,13.1+16.8−7.4倍であった。涙液分泌減少症群では5.1+6.9−2.9倍であり,正常群に比し有意に涙液クリアランスが減少していた(P<0.01)。シルマーテストで10mm以上を示したものは57眼(26%)で,涙液のクリアランスは平均3.4+5.2−2.0倍と,正常群に比べ明らかに減少していた(P<0.01)。涙液のクリアランスを測定することにより,涙液の質的異常を評価できることが示された。涙液のクリアランスは涙液の性状を評価する際に重要であると考えられた。

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 症例は55歳男性。初診時右眼に4ヵ所の漿液性網膜色素上皮剥離が認められた。3年後に3ヵ所の境界明瞭な隆起性病変が再発した。そのうち1ヵ所は初診時と位置を変えて再発し,初診時認められた病変のうち1ヵ所が消失していた。再診時右眼視力は0.1(0.5)。蛍光眼底造影にて造影初期から後期まで網膜色素上皮下に色素の貯留がある3ヵ所の病変が認められた。再診時消失していた部位に顆粒状蛍光が認められた。脈絡膜新生血管は認められなかった。10か月後,隆起に減少傾向が認められ,現在蛍光眼底造影にて2ヵ所の病変が認められる。消失した1ヵ所の病変とその周囲には,顆粒状蛍光が認められ,脈絡膜新生血管は認められない。視力は0.9と回復している。

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 両眼性糖尿病性黄斑症28例に対し,ダイレーザー(576または577nm)とアルゴン・ブルーグリーンレーザーで格子状網膜光凝固を行った。片眼のみ凝固を行い,反対眼は未治療のままコントロールとした。術後視力の変化はダイ凝固群(13眼),アルゴン凝固群(15眼),コントロール群(28眼)で大きな差はなかった。各群とも,後部硝子体剥離がないと視力が低下する症例がみられた。凝固群ではコントロール群より黄斑浮腫の軽減した症例が多かった。ダイ凝固群とアルゴン凝固群では,黄斑浮腫の軽減に大きな差はなかった。硝子体螢光値測定vitreous fluorophotometryの変化と術後視力はよく一致した。

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 糖尿病外来患者75例の血中β-トロンボグロブリン(β-TG),血小板第4因子(PF-4)を測定し,検討を行ったところ,血中β—TG,PF−4は,年齢・糖尿病罹病期間・空腹時血糖との相関はなかったが,黄斑浮腫の存在とは相関がみられた。また,網膜出血・白斑・増殖性網膜症などの糖尿病性網膜症の眼底所見と血中β-TG,PF-4とは相関がみられなかった。これより血中β-TG,PF-4の上昇は黄斑浮腫と関連があり,この値を低下させることにより黄斑浮腫が改善される可能性があるのではないかと考えた。

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 活性型凝固因子の鋭敏な指標である血中トロンビン・アンチトロンビンⅢ複合体(TAT)を,健常成人18例,網膜症が認められない糖尿病患者(NDR)20例,単純型網膜症(SDR)17例,前増殖型および増殖型網膜症(PDR)18例について測定した。測定結果は,対照群が1.67±0.94μg/L (mean±SD),NDRが2.10±0.83μg/L, SDRが3.47±1.75μg/L,PDRが4.78±2.62μg/Lであった。測定値の対数をとってt検定を行い,対照群とNDRとの間,およびSDRとPDRとの間に差は認められなかったが,NDRとSDRの間,およびNDRとPDRの間には統計学的に有意差を認めた。以上より,糖尿病性網膜症患者は,健常者および網膜症のない糖尿病患者と比較して,血液凝固亢進状態にあることが確認された。

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糖尿病性網膜症の進行と脂質代謝異常の関係を明らかにするために,糖尿病患者65例をNDR20例,SDR15例,PDR9例PDR+硝子体出血21例の4群に分類し,血清アポ蛋白を測定した。その結果

 1.アポAⅠは各群間に差を認めなかった。

 2.アポAⅡはNDRとPDR+VH, PDRとPDR+VHの間で有意に低下していた。

 3.アポB, CⅡ,CⅢ,Eは,糖尿病各群で増加し,NDR, SDR, PDR+VHで対照に対し,有意に増加していた。

 以上よりアポAⅡの低下,アポB, CⅡ,CⅢ,Eの増加の持続が,糖尿病性網膜症の発現,進行に関連していることが推察された。

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 後極部に硬性白斑のある糖尿病性網膜症67例121眼について検討した。硬性白斑を点状白斑,輪状白斑,融合性白斑に分け,対応する螢光眼底造影所見を,毛細血管瘤からの漏出,毛細血管床閉塞領域に隣接する毛細血管瘤と毛細血管からの漏出,毛細血管からのびまん性漏出に分けて検討した結果,硬性白斑の形と網膜微小血管障害の程度とは関連がみられた。

 硬性白斑の程度が強くなると黄斑部に沈着する頻度が高くなる。黄斑部に沈着している症例では硬性白斑が強くなるほど黄斑部の螢光漏出が強く,視力不良例も多かった。

 硬性白斑が黄斑部に沈着していない症例では硬性白斑の形と視力には一定の傾向はなかった。硬性白斑が黄斑部になくても黄斑部の螢光漏出がつよく,後極部に硬性白斑がある症例では黄斑浮腫に注意が必要である。

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 糖尿病血糖コントロール初期における網膜症悪化の危険因子について,プロスペクティブに全身的および局所的因子を観察し,数量化理論第Ⅱ類を用いて多変量解析を行った。対象は単純性網膜症をもつ42例で,血糖コントロール開始3か月後に,網膜症の悪化したもの16例,悪化しなかったもの26例であった。網膜症悪化に関与する可能性のある7項目の寄与度を検討したところ,大きい順に,治療開始時HbA1c,HbA1cの3か月間変化,肥満度,C-ペプチド,糖尿病罹病期間,網膜症病期(福田分類),収縮期血圧の結果を得た。さらに今回作成した判別関数により,血糖コントロール開始に際しての網膜症悪化を81%予測し得た。

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 糖尿病性網膜症の病期と血漿Throm-boxane B2(TXB2)と6-keto PGFおよび血漿thrombin-antithrombin Ⅲ複合体(TAT)とplasminα2-plasmin inhibitor複合体(PIC)との関係について検討し,次のような結果を得た。

 (1) TXB2/6-keto PGFの比は対照群,NDR群,SDR群の順で上昇傾向をとり,PDR群では対照群およびNDR群に対して有意に高値を示した(P<0.05)。

 (2) TATはPDR群で最も高値で対照群に対して有意に上昇した(P<0.05)。PICは網膜症の病期による大きな差を認めなかった。

 以上よりPDR群で微小血栓の形成傾向がみられ,網膜症の進行に関与していると考えられた。

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 内視現象を利用した網膜血流測定装置を用いて,正常者13眼と糖尿病患者85眼の傍黄斑部毛細血管の血流速度をmm/secを単位として測定した。

 傍黄斑部毛細血管の血流速度は,正常者群で1.01±0.19mm/sec,網膜症のない糖尿病患者群で1.05±0.17,単純糖尿病網膜症患者群で1.11±0.15,増殖糖尿病網膜症患者群で0.85±0.16,光凝固療法後で新生血管がない者の群で1.03±0.15,光凝固療法後で新生血管のある者の群で0.89±0.12,光凝固療法後の患者群全体では0.98±0.15であった。

 増殖糖尿病網膜症患者群では,正常者群と比べて,傍黄斑部毛細血管の血流速度が有意に低下していた。また,光凝固療法後,新生血管のあるものはないものに比べて,傍黄斑部毛細血管の血流速度が有意に低値であった。

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 糖尿病網膜症の網膜光凝固施行眼において,凝固終了後の網膜症の経時的変化を生命表法により解析した。術後12〜18か月頃までに悪化例は減少し,最終的な累積生存率に至った。数量化理論第Ⅲ類によって眼科的因子と全身的因子を同時に解析し,術後眼底因子は互いに関連が強く,術後眼底因子の悪化群は凝固期間6か月以上と関連が強く,術後眼底因子の良好群は凝固期間3か月未満と関連が強かった。術後12か月における新生血管を外的基準として数量化理論第Ⅱ類の解析を行い,新生血管の予後に最も影響する術前因子は血管漏出であった。凝固効果の予測的中率は77%であった。血管漏出が強い例は準PRPの適応が考えられた。

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 春季カタル患者24例に対し懸濁性ステロイド剤トリアムシノロンの瞼結膜下注射を施行した。この治療法による有効例は22例,無効例は2例,中止例は2例であった。有効例では注射後角膜病変,乳頭ともに軽快していた。初回の注射のみで半数の症例に効果があり,他の有効例では月1回の注射を反復することによって効果が出現した後は,3〜4か月に1回の注射で悪化を抑制できた。球結膜下注射を行ったものと比較して,この治療法では治療開始後2年目以降で軽症化するものが多くみられた。懸濁性ステロイド剤の瞼結膜下注射は年長児の春季カタルには有用な治療方法である。

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 涙液分泌減少症患者31名を対象とし,ブラッシュサイトロジーにより結膜上皮中の炎症細胞の定量的評価を行った。涙液分泌減少症の球結膜上皮中では,好中球0.2±1.0%,リンパ球0.1±0.3%を,瞼結膜上皮では,好中球1.0±2.2%,リンパ球0.9±1.8%を認め,好中球およびリンパ球が,球結膜に比べ瞼結膜で有意に多く出現していた(P<0.05)。一方,対象をシェーグレン症候群とそれ以外の涙液分泌減少症に分けて検討したが,炎症細胞の出現頻度に差はなかった。コントロール群に比べ,涙液分泌減少症では,瞼結膜上皮中のリンパ球が有意に多く認められ(P<0.05),瞼結膜のリンパ球が病態に関与していることが示唆された。

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 何らかの眼乾燥症状を訴えて受診した涙液分泌減少症患者72症例を対象に,免疫血清学的検査を施行した。全体で67%,男性に46%,女性に70%が自己免疫異常値を示した。フルオレセイン角膜染色とローズベンガル染色の結果より,臨床検査所見の悪化に伴い,免疫血清学的検査結果の陽性率も高まる傾向があった。涙液分泌減少症患者を診察した場合,基礎疾患として膠原病を含めた自己免疫疾患も念頭におくことが肝要であると思われた。

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 過去14年間に4例のParinaud's oculoglandular syndromeを経験した。これらの臨床観察,検査ならびに治療結果から,本疾患の病像形成機序と治療方法について次のような結論を得た。本疾患は,猫が媒介するWarthin-Starrysilver染色陽性の桿菌が病原菌であり,本菌が結膜に感染・増殖し,リンパの流れにのって同側の所属リンパ節に移動し,そこに膿瘍を形成するものである。したがって本疾患の治療は,抗生物質の投与が基本であり,アミノグリコシド系とセフェム系抗生物質の併用療法が望ましいものと考える。

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 1989年までの10年間に,樹枝状角膜炎が観察された症例のうち,21mmHgを越える眼圧上昇例34例を対象に,眼圧上昇の経過と,眼圧上昇時の角膜所見について検討した。眼圧上昇は中等度に留まり,ステロイド剤内服開始から,50%が2週間以内で,眼圧は正常化し,比較的後遺症なく終息した。34例中26例の輪部に隆起を伴う毛様充血,角膜輪部の浮腫,混濁があり,その部の角膜後面沈着物を観察した。この角膜輪部所見は,眼圧上昇例で有意に多く,これらは眼圧上昇に関連することが示唆された。

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 白内障などの眼科手術中の異常高血圧を塩酸ニカルジピン(ペルジピン®)の静注により治療し好結果を得た。

 対象は年齢50〜83歳の白内障患者20名(延べ22例)で,白内障手術中に収縮期血圧が190mmHg以上の高血圧を呈した症例である。投与量は1mgで,投与直前の収縮期血圧203.2±11.1mmHgが投与5分後には150.0±16.4mmHgに下がり,以後安定し投与30分後でも156.2±18.3mmHgであった。1mgの追加投与した症例が2例だけあった。心拍数は投与前80.1±15.7が投与5分後に87.0±14.2と増加したが,投与10分後には80.2±14.1に戻った。塩酸ニカルジピンは重篤な副作用もなく,点滴ルートから静注できるので,白内障などの眼科手術中の高血圧のコントロールに適していると考えられる。

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 白内障眼の術前,術後にレチノメーター(レーザー干渉縞)による縞視力とpotential acu-ity meter(PAM)の数字視標による視力を測定し,術後のLandolt環視力と比較した。さらにBangerter filterを装用した正常眼での格子,数字,Landolt環視標による視力を測定し,視標形状と透光体混濁との関係について検討した。

 透光体混濁があると,格子,数字やランドルト環などの視標形状の違いにより,測定された視力値に差が生じる。

 透光体混濁のない場合には,Maxwell視では視標形状の違いによる視力値の差が生じる傾向がみられるが,自然視では視標形状が異なっても視力値の差は生じにくいと思われた。

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 白内障の手術成績を単純化した条件で検討することを目的として,同一時期,同一術者,同一方法によってなされた白内障手術を検討した。

 総数1,060眼で,KPE809眼(76.3%),ECCE217眼(20.5%),その他34眼(3.2%)である。そのうち,6か月間追跡できた症例は586眼で,KPE 463眼(79.0%),ECCE 104眼(17.7%),その他19眼(3.3%)であった。

 KPE法に限定し,術前および術後の角膜倒乱視を解析すると,術後倒乱視度数≦0.7D以上では,術後1週での直乱視化の度数が著しく上昇した(2.66±0.17D)。また,術前が直乱視であろうと倒乱視であろうと,術後6か月のほうが乱視度は減少した。ところが術後倒乱視度数≧1.5Dでは,術後1週での直乱視化(2.12±0.13D)が弱く,3か月で一定せず6か月になっても倒乱視度に増加がみられた。弱主経線が術前値にもどらないことが原因であることがわかった。

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 クリスタリン網膜症の姉妹例を経験した。症例は52歳と55歳の姉妹で,主訴はそれぞれ左眼変視症と右眼視野異常であった。眼底には,両眼後極部に散在する閃輝性の黄白色結晶様沈着物を認めた。本症の姉妹例は本邦で初めてであり,家族性因子の関与を示唆するものと考えられた。

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 最近,全摘後の無水晶体眼や術中後嚢破損例に対して,後房レンズ毛様溝固定が試みられるようになってきた。当院で最近約2年間に手術した18例21眼の術中術後経過について検討を行った。観察期間は平均6.3か月である。全摘出後5眼,嚢外後4眼,眼内レンズ偏位修正7眼などの二次手術計16眼の他,水晶体脱臼などによる一次手術計5眼を対象とした。前部硝子体切除後,粘弾性物質にて角膜内皮と虹彩を保護したうえで,垂直位に9-0プロリン糸を用いて毛様溝縫着固定した。ほとんどの症例で視力改善を認め,手術の合併症はいずれも軽微なものであった。また手術後の眼圧上昇は少なかったものの,房水流出率は低下していた。以上より,後房レンズ毛様溝縫着手術は視力予後がよく,比較的安全な手技と思われるが,血液房水柵への影響は否定できず,長期の経過観察が必要と思われた。

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 接触型CW Nd:YAG laser経強膜毛様体光凝固を眼圧コントロール不良な難治性緑内障27症例30眼に施行した。接触凝固用プローブの前端を角膜輪部より後方1.0mmの位置に置き,照射エネルギー1.8〜9.2J,照射後6〜36で毛様体ひだ部を光凝固した。術前眼圧の平均は39.2±3.2mmHg,最終眼圧の平均は22.0±1.6mmHgで,最終的に全例で眼圧下降が得られた。術前眼圧が30mmHg以下の症例では4J,10発前後の照射で長時間眼圧コントロールが期待できるが,術前眼圧が50mmHg以上の症例では6J,20発前後の照射を施行し,必要に応じて追加凝固を検討するほうが安全と考えられた。

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 亜急性硬化性全脳炎(subacute scleros-ing panencephalitis:SSPE)は,麻疹ウイルスによる脳内持続感染症のひとつと考えられている。今回筆者らは,視力障害で受診した15歳の女性の眼底で,初期に黄斑部中心の網膜深層出血を伴う壊死性網膜炎様に始まり,瘢痕期に色素沈着,網膜皺襞形成に至った経過より,SSPEを疑い,血清,髄液中の麻疹抗体価の上昇を確認した。神経学的には脳波,CTなどでSSPEの特徴的所見を認めないものの,眼底,血液,髄液所見よりSSPEを強く疑い,イノシンプラノベクス経口投与を開始した。経口投与後1年を経過しても神経学的所見は発現しておらず,本症の進行を予防できていると思われる。

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 45歳,女性の網膜最周辺部に位置する約2乳頭径大の網膜血管腫に対して,ダイ・レーザー光凝固術を施行した。強膜側からの圧迫下での強凝固により,血管腫を瘢痕化させることが可能であった(波長:まず590nm次いで577nm,凝固サイズ:500μm,凝固時間:0.5sec,凝固出力:200mW)。このような方法により,従来は冷凍凝固術あるいはジアテルミー凝固術を併用していた網膜最周辺部に位置する網膜血管腫に対しても,光凝固術単独で治療可能であると考える。

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 サルコイド網膜肉芽腫の発生過程を,検眼鏡と螢光眼底撮影にて詳細に観察し得た18歳女性の1症例を報告した。肉芽腫は両眼性で,滲出性網膜剥離を伴った黄白色の隆起性病変として6か所に出現した。螢光所見上,早期に低螢光,後期に旺盛な色素漏出を示し,また,ステロイドの全身投与が著効した。これらの所見は,今までのサルコイド脈絡膜肉芽腫の報告と一致していた。しかし,本症例にみられたすべての肉芽腫は,初診時に網膜静脈周囲炎のみられた部位に一致して発生し,消退後には,網膜色素上皮萎縮などの変化を残さなかったことより,網膜起源であることが強く示唆された。したがって,今回の検討から,過去に脈絡膜肉芽腫と診断されたものの中には,網膜肉芽腫が含まれている可能性があると思われた。

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 向精神薬の長期投与中に,両眼性の高度の角膜浮腫を発生した1例を経験した。患者は28歳の女性で10年前より精神分裂病にてフェノチアジン系やブチロフェノン系の投与を受けていた。当科初診時,矯正視力は右(0.05),左(0.01)で,両眼角膜に高度の実質浮腫を認めた。向精神薬による内皮障害の可能性が考えられたため,上記向精神薬の投与を中止したところ角膜浮腫は著明に軽減し,矯正視力も右(0.6),左(0.4)に改善した。スペキュラーマイクロスコープによる観察では内皮細胞の著しい拡大が認められた。フェノチアジン系やブチロフェノン系などの向精神薬の長期投与により,角膜内皮障害が生じる可能性が示唆された。

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 閉塞隅角緑内障(ACG)をはじめとする緑内障眼に伴う水晶体混濁の実態,機序については,いまだ不明瞭な点が多いが,眼圧上昇機序を明らかにする上でも重要である。今回,筆者らは、混濁の種類,その進行のパターンなどの臨床的所見と,白内障手術時に得られた水晶体上皮の組織所見との相関についての検討を行った。対象は,白内障のために水晶体嚢外摘出術を行った184眼である。緑内障種類別内訳は,白内障手術以前に観血的手術既往のない,ACG20眼,POAG30眼,PEG11眼,さらに,緑内障手術既往のある各種緑内障眼(OPE)23眼。同年齢層の緑内障を伴わない白内障眼100眼を対照とした。水晶体上皮の組織的検討においては,術時に得られた前嚢を用いて上皮細胞の密度,面積,さらに前嚢の厚さについて行った。

 その結果,水晶体混濁の種類はACG群に核白内障の率が有意に高く,水晶体上皮細胞に関しては,緑内障群,OPE群ともに対照群と比べて面積増大,密度減少が認められた。また,水晶体嚢の厚さについて,今回の検討は,前嚢の中央でのみの検討であるが,ACG群は,対照群に比べて有意に厚いという結果が得られた。

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 硝子体圧の上昇をきたす術前の全身的因子について検討し,その防止策について考察した。対象は白内障手術を施行した症例のうち術中に前房消失ならびに虹彩脱出を認めたため,高張浸透圧剤の点滴をした症例である。その結果硝子体圧上昇を認めた症例は1,116眼中45眼(4.0%)であった。危険因子は高血圧症,術中の血圧上昇,肥満女性および近視眼であった。術中に硝子体圧の上昇が予測される症例には術前,術中の血圧コントロールなどの全身管理,眼球マッサージや完全な麻酔による眼局所管理が必要である。

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 成人から新生児にいたるオフロキサシン(OFLX)1回点眼後の血中移行について検討した。成人では,34名95サンプル中1サンプルのみに15.1ng/mlの血清中OFLX濃度を検出した。乳幼児〜小児では,26名26サンプル中1サンプルに5.7ng/mlの血清中濃度を検出した。

 未熟児および新生児では,25名39サンプル中20サンプルに5.0〜20.3ng/gのOFLX濃度を検出した。この他1名は血清移行につき検討し,10.5ng/mlの血清中OFLXを認めた。

 点眼によって吸収されたOFLXの血中濃度は,OFLXの毒性に対して最も敏感な反応を示す幼若犬での実験結果に比較してもはるかに低く,未熟児や新生児においても副作用を起こす危険性はないことが示唆された。

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 新しいアミノ配糖体薬アストロマイシン(ASTM)の全身投与後のヒト前房水移行濃度を螢光偏光免疫測定法(Fluorescence polarization immunoassay;FPIA)で測定した。白内障患者10名に術前ASTM 200 mgを筋注後,強角膜創から27G針にて前房穿刺し,約0.1mlの一次房水を吸引し,同時に静脈血を採取した。得られた房水および血清を−40℃で保存し,FPIA法にてASTM濃度を測定した。血清中の移行濃度は平均9.7μ9/ml,房水中の移行濃度は平均0.75μg/mlであった。従来の報告同様,眼内移行が低いことを示していた。FPIA法は,簡便,迅速,正確であり,微量でも測定可能なので,前房水のように量が少ない検体に適している。

連載 眼の組織・病理アトラス・57

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 房水の流出路である前房隅角には適当な房水流出抵抗が存在していて,眼圧を正常に保つ役割を果たしている。房水流出抵抗の発生には隅角に存在するグリコスアミノグリカン(以下GAGs)が関係すると考えられている。

 GAGsはウロン酸とアミノ糖の二つの糖が一単位となって,連続的につながった高分子化合物である。プロテオグリカンはGAGsが蛋白質と結合したもので,含まれるGAGsの種類によって,コンドロイチン硫酸系,デルマタン硫酸系,ヘパラン硫酸系,ケラタン硫酸系に大別される。

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 緒言 蜂による角膜刺傷については以前より多くの報告があり,スズメバチによるものは特に予後不良である1,2)。今回私たちは,スズメバチによる角膜刺傷を経験した。角膜内皮撮影を行うと,角膜内皮細胞が著しい障害を受けていることを確認できた。

 症例 61歳,男性。

連載 今月の話題

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 Stargardt病・黄色斑眼底の診断には螢光眼底造影の“dark choroid (脈絡膜背景螢光の隠蔽現象)”所見の確認が最も大切であり,錐体ジストロフィの一部でdark choroidを呈する症例との鑑別にはERGが必須である。

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・31

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緑内障と眼内レンズ

 白内障手術は眼内レンズ手術が大多数を占めるようになり,緑内障眼にも多く挿入されている。以前の隅角支持レンズや虹彩支持レンズなどの前房レンズの場合,緑内障の発症例や緑内障の悪化例が多く報告されている。しかし,後房レンズは直接隅角に障害を与えることはなく,また水晶体嚢内に挿入固定すれば毛様体に影響を与えることも少なく,緑内障眼は後房レンズの適応となる。そして視野障害が高度の緑内障眼は,残った視野の活用には白内障眼鏡より眼内レンズのほうが光学的に優れており,また濾過瘢痕をもつ緑内障眼はコンタクトレンズ装用が困難で,これらの見地から緑内障眼は眼内レンズがよい適応となる。

連載 眼科薬物療法のポイント—私の処方・31

慢性涙嚢炎 石橋 康久
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 患者は60歳の女性で,1989年8月頃より左眼の流涙が始まった。近医にて涙管の洗浄を受けたが通過が見られず,涙の管がつまっていると言われていた。12月頃より鼻根部を圧迫すると粘液様物の逆流を見るようになり,近医にて抗生剤の点眼液を処方されていたが症状はあまり改善されず,当科を紹介されて1990年3月20日に受診した。

 主訴:左涙嚢部膨隆,発赤,流涙

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 正常者,視神経炎において中心視野の測定範囲限定による効果を検討した。対象は正常者と視力0.8以上の視神経炎患者で,第1群は正常者10例10眼,視神経炎12例12眼,第2群は正常者10例10眼,視神経炎17例18眼であった。方法は自動視野計オクトパスによって視野測定し,第1群は中心30°と中心10°を測定する2つのプログラムを,第2群は中心10°と中心5°を測定する2つのプログラムを施行し,共通測定点の平均感度について2つのプログラム間で比較検討した。正常者,視神経炎患者において1,2群とも測定範囲を狭くしていくと,平均感度が上昇することがわかった。

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 眼底の後極部付近の滲出性病変で発症し,切除硝子体液の水痘・帯状疱疹ウイルス抗体価が高値を示し,これが原因ウイルスと考えられた両眼性の急性網膜壊死症候群の51歳女性に,CTおよびMRIにて片眼の視神経の腫脹を認めた。治療として,アシクロビルおよびγ-グロブリンの点滴静注,ステロイドの内服,汎網膜光凝固術に加え,片眼の網膜剥離の予防を目的として硝子体切除術と網膜輪状締結術を行ったが,術後に網膜前増殖膜による牽引性網膜剥離が発生した。本症ではCTやMRIで視神経の状態を検索することも重要であろう。

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 原発閉塞隅角緑内障の手術後に生じた有水晶体眼の悪性緑内障に対し,YAGレーザーによる前部硝子体破砕が奏効した2例を経験した。

 1例はトラベクレクトミー術後,他例はトラベクロトミー後の縫合不全例で,2例とも軽度の小眼球と小角膜があった。悪性緑内障と診断し,保存的治療を行ったが,瞳孔領と虹彩切除部から水晶体を通し,YAGレーザーによる前部硝子体破砕を行い,悪性緑内障は寛解した。YAGレーザーによる悪性緑内障の治療は,無水晶体眼や偽水晶体眼だけでなく,有水晶体眼にも有効で,観血的手術を行う前に試みる価値のある,新しい治療法であることが示された。

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 瞳孔が十分に散瞳しない症例は,核の娩出が難しいため術中合併症を起こしやすく,眼内レンズを確実に嚢内固定することも難しい。そこで,このような症例に対して初心者が安全かつ容易に眼内レンズを挿入できるようにするため,intercapsular法による計画的嚢外摘出術を採用し,瞳孔径の大きさに応じて安全な核娩出法を工夫した。この方法を用いて行われた瞳孔径4mm以下の23眼では,術中合併症は少なく,重篤な術後合併症もなく,良好な術後視力が得られた。散瞳不良眼に対する本術式は,難しい手技がなく,初心者にとっても安全なものと思われる。

臨床報告 カラー臨床報告

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 網膜前出血は,その拡大過程で,中心窩を回避することがある。筆者らは,黄斑領域に発症した網膜前出血48眼中18眼(38%)に,同現象を経験した.48眼の内訳は,糖尿病網膜症41眼,網膜静脈分枝閉塞症4眼,網膜細動脈瘤2眼,原因不明1眼であった。このうち、中心窩回避のあった18眼につき,出血の解剖学的部位を検索した。

 18眼の原疾患は,糖尿病網膜症16眼,網膜静脈分枝閉塞症2眼であった。細隙灯顕微鏡検査では,網膜前出血は光沢のある薄膜の下にあったが,その前方は液化腔(後部硝子体皮質前ポケット)であり,硝子体は,全例未剥離であった.中心窩回避を示した18眼中17眼で,続発した後部硝子体剥離により,硝子体出血が起こった。そのうち,13眼に硝子体手術が行われた。細隙灯顕微鏡所見,臨床経過と硝子体手術所見から,中心窩回避を呈した網膜前出血の貯留部位は、後部硝子体膜と内境界膜の間隙であると推定された。

 網膜前出血の中心窩回避現象は,出血が内境界膜と後部硝子体膜の間隙に広がる際,中心窩での強固な網膜硝子体接着によって,その拡散を阻まれることにより生ずる,と考えられた。同現象は,それを呈する網膜前出血が,後部硝子体膜下出血であるという診断の根拠を与えるものである.

基本情報

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臨床眼科
45巻7号 (1991年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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