臨床眼科 43巻5号 (1989年5月)

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 多彩な眼症状を呈し,くり返し再発のみられた急性後部多発性小板状色素上皮症(AP-MPPE)の1例について報告した。症例は32歳の女性で,経過中に,虹彩毛様体炎,網膜小出血,乳頭炎,漿液性網膜剥離,後部強膜炎様所見等の眼症状が出現した。本症例は,4年9ヵ月の間に8回の発症をくりかえした後,黄白色滲出斑が消退した部位に多数のwindow defectが散在性にみられるようになった。

 経過中,APMPPEにみられる滲出斑および螢光眼底所見を呈したものの,初発時の螢光眼底所見,虹彩毛様体炎の反復,発症時の頭痛,眼痛の出現などから,本症例は,原田病,サルコイドーシスとの鑑別が困難であると思われた。本症例は,APMPPEが免疫学的炎症反応によっておこる症候群的なものであることを示唆している。

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 北大眼科を受診した原田病患者の新鮮例37例を対象として,ステロイド療法における炎症の推移及び視力予後について比較検討を行った。ステロイド療法は,パルス療法群12例,大量投与群18例,全身投与を行わないで,局所のみの局所投与群7例の3群に分けられた。その結果,1.パルス療法群と大量投与群を合わせたステロイド剤大量全身投与群の方が,局所投与群よりも6ヵ月後の前房炎症が少なかった。2.パルス療法群と大量投与群を合わせたステロイド剤大量金身投与群の方が,局所投与群よりも最終視力が良好であった。3.ステロイド剤大量全身投与群のうちパルス療法群と大量投与群では,6ヵ月後の前房炎症,及び最終視力について差がないことがわかった。以上より,原田病において,ステロイド剤大量全身投与は有効な治療法であることが再確認された。

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 我々は,先にその存在を証明したbursa premacularisが,増殖型糖尿病性網膜症(PDR)の病型形成にどのように関与しているか検索した。対象は,網膜前出血から牽引性網膜剥離を含むPDR 384眼である。PDRは,硝子体の緩慢な収縮に伴って進行する。有形硝子体が収縮すると,硝子体は眼底から剥離する。しかし,後極部では眼底の前方にポケット状の液化腔(bursa)が存在するため,硝子体ゲルの牽引が後部硝子体膜に伝わらず,後部硝子体膜の剥離が起きない。こうして,すりばち状の不完全硝子体剥離が形成される。新生血管増殖膜は,硝子体膜の立上がりに沿って成長し,輪状の網膜硝子体癒着が形成される。従って,PDRの増殖病変はbursaの形態を模倣すると言える。硝子体の収縮が更に進行すると,後部硝子体膜を介した牽引が黄斑部に及び,牽引雛や浮腫を生ずる。網膜前出血の解釈には,bursa内出血という可能性の追加が必要である。

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 黄斑部にびまん性浮腫のある糖尿病性黄斑症18例25眼に対して,dyeレーザーによる格子状網膜光凝固を施行した。その結果,術後2段階以上の視力の改善が7眼(28%)にみられ,黄斑浮腫の改善は16眼(64%)であった。12例での静的視野(中心30°)による計測では有意な術後の感度低下を認めなかった。総合判定において,有効群は16眼,64%であり,不変群は7眼,28%,悪化群は2眼であった。dyeレーザーの波長による相違は認めなかった。

 dyeレーザーによる格子状網膜光凝固は有効であると考えられた。

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 マルファン症候群に伴う網膜剥離11例11眼について臨床的検討を加えた。11眼中8眼(73%)が無水晶体眼であり,うち6眼に硝子体脱出の既往が認められた。また,7眼(64%)に網膜格子状変性による裂孔形成がみられた。網膜剥離の程度は重篤なものが多く,PVR-D群が4眼あった。手術には全例にシリコン埋没術を行い,このうち6眼には硝子体手術の併用を必要とした。その9眼(82%)に復位が得られた。網膜剥離発生には硝子体脱出と網膜格子状変性が大きな役割を演じているので,剥離発生の予防として水晶体摘出を行う場合は経毛様体扁平部水晶体摘出術を用い,また術眼他眼を問わず,網膜格子状変性には冷凍凝固などの処置が必要であると考える。手術に際しては,眼底が見えない部分や裂孔の否定できない部分に対しても広い範囲をバックルで覆うことが治療成績の向上につながると考える。

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 アトピー性皮膚炎を合併した白内障患者16例22眼,網膜剥離12例14眼の手術自験例について検討した。白内障患者のうち14%に網膜剥離が合併しており,術前眼底透見不能例のうち40%に網膜剥離がみられた。網膜剥離の復位率は72%であり,初回手術時から高度の増殖性変化があった6眼の無水晶体眼では,その復位率は極端に低かった。後嚢破損のあった例の復位率も非常に低かったが,増殖性変化のない例では100%の復位率であった。アトピー性皮膚炎に合併した白内障における眼底検査の重要性と白内障,網膜剥離の合併した例の処置について考察した。

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 真菌汚染が疑われた5種類の連続装用ソフトコンタクトレンズ(SCL)からの162検体の真菌の質的,量的分布について検討した。連続装用SCL 5種類からの真菌の分離頻度は,最高75%,最低34%,平均48.7%であった。真菌はAspergillus,Penicillium,Candidaが多く,SCLの種類によりその分布に差があった。真菌の量的分布は糸状菌の多いSCLと酵母菌の検出率が特に高いSCLがあった。褐色の付着物からは白色の付着物の約1.6倍の真菌検出率を示した。真菌の質的分布では両老の間に有意の差はなかった。

 以上,素材の異なるSCLの付着物において真菌の量的,質的変化が認められた。

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 過去9年間に,アトピー性皮膚炎を伴った網膜剥離16例22眼を経験した。うち17眼に硝子体基底部のテント状剥離を伴った硝子体基底部裂孔があり,そのうち3眼は赤道部に変性巣とは別の裂孔を伴っていた。これらは臨床的または実験的な外傷性裂孔と一致していた。外傷を示唆する隅角離開を10眼,水晶体亜脱臼を3眼,風車状白内障を5眼に認めた。これらの患者の性癖を調査すると,アトピー性皮膚炎で網膜剥離を伴わないコントロール群に比べて,眼を叩く性癖を持つ者が有意に多かった。以上より,アトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離の主原因は外傷であると考えられ,眼を強くこすったり,叩いたりしないような指導が必要であると考えられた。

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 種々の網膜硝子体疾患12例(13眼)に対し,Qスイッチ型Nd-YAGレーザーとPeyman硝子体用コンタクトレンズ,もしくはGoldmann 三面鏡を用い,硝子体索(膜),網膜フラップの切開を行った。硝子体索(膜)切開では10眼中9眼で成功したが,牽引性網膜剥離の症例において,広範囲の硝子体癒着を伴う前後方向の牽引に対しては,ほとんど無効であった。しかし,接線方向の牽引による黄斑偏位の症例では有効な結果が得られた。網膜裂孔の3眼では全てでフラップの切開が成功し,硝子体の牽引が解除された。合併症として,硝子体索内新生血管,網脈絡膜からの出血の危険性があり,慎重に症例を選択する必要がある。

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 アトピー性皮膚炎に伴う白内障に,網膜剥離を伴った3例4眼を報告した。第1例は白内障術前より網膜剥離を認め,白内障術後,網膜剥離手術を施行し,一旦復位ののち,再発,悪化した。第2例の2眼は白内障術後に剥離が発生した。全4眼とも,後嚢が残存しており,網膜の復位に,硝子体切除術,輪状締結術,網膜冷凍凝固術,後嚢切除術を要した。

 症例1と2において,網膜剥離に一致して白内障術後の後嚢と毛様体突起の癒着を認めた。症例1において,硝子体手術中に明瞭な硝子体線維を認めた。このような網膜剥離の手術には,硝子体切除術と,後嚢切除術との併用が必要な症例があると考えた。アトピー性白内障の手術には,超音波乳化吸引術や嚢外摘出に,後嚢切除術と前部硝子体切除術との併用あるいは pars plana len‐sectomyが望ましいと考えた。

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 狭義の蚕食性角膜潰瘍10例10眼にkeratoepithelioplasty (KEP)を施行し,その術後長期経過観察を行った。手術術式はKEP単独を6眼に,KEPと表層角膜移植の併用を4眼に行った。手術眼は術後すみやかに消炎し,いわゆる再手術を必要とした例はなかった。しかし,術後6ヵ月以内に軽度の上皮浸潤と潰瘍が4眼に発生した。2眼はステロイド結膜下注射にすみやかに反応し治癒した。他の2眼はステロイド結膜下注射に反応したが完全な治癒を認めなかったため,一部追加結膜切除を行い治癒した。術後7〜12ヵ月では軽度の上皮浸潤が2眼に発生したが,ステロイド結膜下注射により治癒した。術後12ヵ月以降たは上皮浸潤や潰瘍発生は認めなかった。術前視力は最終観察時まで良好に保たれていた。上述の結果より,蚕食性角膜潰瘍に対するKEPは術後適切な管理を必要とするが,長期予後からみても有効な手術方法と考えられた。

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 急性期網膜静脈分枝閉塞症21例21眼とhemi-CRVO 2例2眼に対し,波長610nmの色素レーザーを用いて光凝固を行ない,その治療効果と副作用を検討した。経過観察期間は3ヵ月から9ヵ月,平均5.1ヵ月である。症例は全例,黄斑部に出血と浮腫があり,全例放置すればさらに視力低下が起こると予想された。

 出血吸収は22眼で見られ,嚢胞様黄斑浮腫(CME)は15眼中13眼で,CMEを伴わない黄斑浮腫は8眼中7眼で改善した。治療後の視力は,2段階以上の視力改善で10眼,不変が9眼,2段階以上低下が3眼であった。晩期合併症として,光凝固9ヵ月後に1眼に網膜新生血管が生じた。クリプトンレーザー光凝固で見られるような脈絡膜出血,過剰凝固等の合併症はなかった。網膜神経線維層萎縮は6眼で観察され,うち5眼では,光凝固部位に一致していた。

 610nmの波長は,急性期網膜静脈分枝閉塞症の出血,浮腫の吸収に従来のアルゴン,クリプトンレーザーと同様に有効であった。また,出血部でも網膜外層の凝固が可能であり,術中の凝固斑が見やすく,術後の凝固瘢痕をコントロールしやすいことが利点と判断された。

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 玩具エアーガンの玉BB弾で角膜を直撃された7歳と13歳の症例に対して,角膜内皮細胞を長期観察した。2例とも虹彩毛様体炎,前房出血等を起こし,著明な視力障害を来した。安静などにより視力は改善したが,受傷部の角膜内皮細胞は初期に著明な大小不同と膨化傾向を示し,その傾向は4〜6ヵの期間変化しなかった。将来,角膜混濁などの障害を生じる可能性があり,さらに長期にわたる経過観察が必要と思われた。

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 1983年より1987年までの5年間に全層角膜再移植術を施行した25名26眼につき術前術後の検討を行った。全層角膜再移植(以下再移植と略す)例の透明治癒率は17眼65.4%であり,混濁は9眼に認められた。混濁原因は,免疫反応が8眼で,うち緑内障の合併が3眼あり,他に角膜内皮障害が1眼であった。

 再移植後の手術成績低下要因として,再移植時の血管侵入,虹彩前癒着の存在,緑内障の併発,他の手術の併用等があった。

 免疫抑制剤ミゾリビンを26眼中23眼に内服投与し,透明治癒率を検討し,1963年より1981年までのミゾリビン導入前の再移植例75眼の透明治癒率と比較した。ミゾリビン投与例の透明治癒率は74%,ミゾリビン導入前の透明治癒率は40%であり,ミゾリビン投与により有意に高い透明治癒率が得られた。

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 表層角膜移植を行った角膜輪部デルモイド13例13眼につき,視力予後に影響する因子,特に屈折に関して検討した。13例中6例(46%)に2D以上の遠視性不同視が存在した。術後の最高視力と乱視度との関係では,最高視力0.8以上の9眼の乱視度は平均2.8D,0.7以下の4眼の平均は3.8Dで,有意の差はなかった。術後の最高視力と患眼と健眼の屈折力の差との関係では,最高視力0.8以上の9眼の患眼と健眼の屈折力の差は平均1.6D,0.7以下の4眼の平均は4.1Dで,有意の差を認めた。視力予後に関して,大きな斜乱視とともに,遠視性不同視の存在が重要と思われた。手術による乱視の減少効果は平均0.5Dと少なく,手術は美容目的となるので,弱視治療後に行うのが望ましいと考えられた。

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 1985年1月から1988年6月までに新潟市民病院NICUで管理された低出生体重児286例(男156例,女130例)について未熟児網膜症の発症,進行の状況を国際分類を用いて検討し,Pco2をはじめとする全身諸因子との関連についても検討を加えた。

 1)74例(25.9%)に網膜症が発症し,うち28例(9.8%)がStage 3以上に進行した。

 2) Zone Ⅱに属する47例中30例(63.8%)が,Stageの何如に拘わらずExtent 6時以上に広がっていた。その重症度は多岐にわたるため,慎重な経過観察が必要である。

 3)(+) Diseaseは10例(3.5%)に認められた。全例がZone Ⅱ以下に属し,Stage 3以上に進行した。

 4)初診時における無血管領域の幅が鋸状縁より4乳頭径を越える症例は,Stage 3以上に進行する率が有意に高かった。

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 旭中央病院新生児医療センターで管理された出生体重2,500g未満の低出生体重児239例を対象とし,多重ロジスティック回帰分析を用いて未熟児網膜症(ROP)発症に影響すると考えられている16因子を検討し,発症の予測を行った。発症に関与する因子は出生体重,酸素投与期間,在胎期間,人工換気日数,酸素投与最高濃度,人工換気の有無,気管支肺異形成,Apgar score 1分値,動脈血酸素分圧(PaO2)が60 mmHg未満の時間,PaO2の平均,呼吸窮迫症候群,PaO2が60mmHg未満かつ80 mmHg以上の時間の12因子であった(P<0.05)。多重ロジスティックモデルの変数選択によって出生体重(W)とApgar score 1分値(A)が選択され,次式が発症確率の予測式として求まった。

 P=1/1+exp (-λ)

 λ=9.462-0.005553×W-O.3604×A

 このモデルにより,出生直後から効率よく発症を予測することができ,ROPの予防,予後の管理に役立つと考えられた。

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 シリコン後房レンズを挿入した50眼につき,長期的な観察と角膜内皮細胞撮影を行った。8眼でfoldableに,他の42眼はnon-foldableにout of the bagに挿入した。46眼(92.0%)で0.5以上の術後視力を得た。角膜内皮障害に関しては,観察期間が平均20.3ヵ月で,平均減少率は26.8%あった。挿入方法別では,non-foldableでは平均減少率が23.9%であり,foldableでは41.8%であった。foldable caseでは,術後約6ヵ月より角膜内皮障害を強く認めた。シリコン後房レンズの挿入に際しては,foldableよりは,non-foldableに挿入した方が,角膜内皮細胞に影響が少ないと考えられる。

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 出生体重1,500g以下の極小未熟児84例を対象とし,未熟児網膜症(ROP)の危険因子に対する動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)等のガス分析値の重要性の程度を決定するために,統計学的検討を行った。まずガス分析値の他に,一般に危険因子と考えられている他の項目も含めて,全25項目とROP重症度との相関分析を行った。その結果,動脈血酸素分圧(PaO2)最低値およびPaCO2最高値と各々有意な相関関係があった。次に我々が考案したROP重症度指数を目的変数とし,上記危険因子を説明変数とした重回帰分析を行った。この解析では,少数例のもつデータが過大評価されることのないようにⅠ型のみを対象とし,さらに最重要因子である出生体重,在胎週数以外の危険因子を明らかにするために上記2者を除く検討を行った。その結果,PaCO2最高値とPaCO2最低値との比が選択された。すなわち,PaCO2はその高値と共に低値もまたROPの進展に関与することが明らかになった。

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 緒言 生体眼での毛様体嚢胞の報告は少なく,本邦での臨床報告の全てが毛様体冠嚢胞である。我々はすでに日本人剖検眼と生体眼の観察で毛様体扁平部透明嚢胞は正常眼で高齢者に高い頻度で認められることを確認した1,2)。以下にさまざまな眼疾患を伴った5症例につき報告する。

 症例 症例の臨床所見を表1に総括した。全例において嚢胞は透明で,棍棒状で1例にのみ横楕円形の嚢胞を認めた。全例血液検査で,蛋白量・蛋白分画などに異常を認めなかった。毛様体扁平部の観察はHaag-streit社製鋸状縁観察用コンタクトレンズまたはMartin-Hüber社製圧入漏斗とGoldmann三面鏡を用い細隙灯顕微鏡で行い,写真撮影した。

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 緒言 サルコイドーシスの主たる眼合併症はぶどう膜炎であり,涙腺と無関係に眼窩内に腫瘤を形成することは稀とされている。また近年,網膜に新生血管を生じた報告も多く1-6),その成因,治療法には依然として議論が多い。今回我々は両側の下眼瞼腫瘤と網膜新生血管を合併したサルコイドーシス性ぶどう膜炎を経験したので報告する。

 症例 26歳,男性。1986年2月,上腹部痛のため内科を受診,胸部X線所見によりサルコイドーシスを疑われ,近医眼科を受診,治療を受けていた。同年6月頃より両側下眼瞼に腫瘤が出現,1988年1月28日当科に紹介された。

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 緒言 小口病は先天性停止性夜盲と特異な金箔様眼底を呈する疾患である。我々は水尾・中村現象陽性で色覚異常を伴う小口病の1兄弟例を経験したので報告する。

 症例1 14歳,男。 主訴:夜盲と両眼視力低下。

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 緒言 Alport症候群は家族性出血性腎炎に感音性難聴と種々の眼症状(角膜環,前部円錐水晶体,前極白内障,偽視神経炎,眼底白点症,黄斑変性症など)を伴うとされている。本症候群は文献的には少なく,しかもどの文献も眼底変化にまで触れたものはごくわずかに過ぎなく,さらに報告により異なった所見を呈しており,Geeraetsがあげた所見だけではないように思われる。

 症例 女性,38歳(1980年時)。主訴は両視力障害,V.d.=0.2(0.5×+0.5〓cyl+1.0DA 180°) V.s.=0.3p(0.4p×cyl−1.0D A 90°)で,両側性前部円錐水晶体を呈し,暗順応の軽度な低下が見られ,ERGも両側性に著明な低下を認めた。聴覚は自覚的にも他覚的にも低下していた。眼底所見は軽度な斑紋様所見が両側性に広範囲に認められ,さらに中心窩を囲む小さいdrusen-like spotsが見られたが,眼底白点症は認められなかった。家族歴には父親と同胞7人中,本人を含め4人に腎不全が認められ,以上よりAlport症候群と診断された。なお染色体の分析検査は正常を示した。

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 緒言 白血病性網膜症は白血病の眼合併症の中で最も頻度が高い1)。慢性骨髄性白血病(CML)でもその急性転化時にしばしば認められる。しかし,白血病性網膜症の悪化はCMLの急性転化の早期診断の指標としてはまだ一般的に認識されていない。今回,脳内出血に前駆して白血病性網膜症の急激な発症と悪化を認め,1週間後に死亡に至ったCMLの急性転化の1例を経験したので報告する。

 症例 患者:39歳,男性

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 緒言 1968年Gassが初めて報告したacute pos-terior multifocal placoid pigment epitheliopathy (以下APMPPE)はよく知られた疾患であるが,このAPMPPEの黄斑部型はGass1)およびYoungら2)の各々1例の簡単な記載があるのみである。われわれも黄斑部に限局した大きい孤立性のAPMPPEと思われる症例を経験し,新知見を見出したので報告する。

 症例 22歳,男子。初診1984年8月24日。主訴は右眼の中心暗点,家族歴,既往歴に特記すべきことなし。現病歴:1984年8月15日,風邪をひいたあと急に右眼の中心暗点を来し,8月17日中村眼科受診,右眼の視神経が侵されているといわれ,内服薬を処方された。その後中心暗点,視力改善なきため久留米大学眼科を紹介され来院された。

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 緒言 眼球を短時間,眼動脈圧程度の圧力で圧迫し急に解除すると,眼内血管の瞬間的虚脱のため一旦眼圧は低下するが,血液の眼内血管への流入と共に眼圧は上昇し元の圧に回復する。この時の単位時間あたりの眼圧上昇を我々は眼内圧回復速度(Intraocular Pressure Recovery Velocity: I0P-RV)と呼び,その特性について家兎眼を用いて基礎実験を行ってきた1-3)。今回,これまでに得られた結果をもとに,人眼を対象として I0P—RVの測定を行いその臨床応用を試みたので報告する。

 対象ならびに方法 対象として全身的にも眼科的にも異常のない成人ボランティア5名10眼の他,疾患例として高眼圧症,内頸動脈閉塞症,強度網脈絡膜萎縮,強膜炎などについて検討を行った。

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 緒言 網膜中心動脈閉塞症は急激な血流途絶による網膜の虚血状態であり,その状態が持続すれば不可逆性の組織壊死に陥り,著しい視力低下が起こる重篤な疾患であることが知られている。今回我々は,異なった条件下で急激な視力低下をきたした2例に対し1日2回の星状神経節ブロックと50%酸素吸入療法を行った。症例1は,発症後12時間で来院,矯正視力は初診時20cm/mmが0.2(n.c)となり視野でも著明な改善を得た。症例2は,発症後5日を経過し来院。矯正視力は初診時S.I.(+)から30cm/n.dとなった。以上治療経過中の眼内血流動態,動脈血ガス分析から検討した。

 対象と方法 症例1:24歳,男性。主訴:右眼視力の急激な低下。家族歴・既往歴;共に特記すべきことなし。1987年6月20日夜テレビ観賞中,右眼視野狭窄を認めたが就寝。翌朝さらに視力の低下。視野狭窄が進んでいるのに気づき来院。眼底所見(図2);後極部網膜全体のびまん性乳白色混濁,黄斑部のcherry red spotが認められた。

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 緒言 眼循環を反映する非侵襲的方法としてOcu-locerebrovasculometry (OCVM)は高い評価を得ている。本法はsuction cupを用いて眼球を加圧し,眼球脈波の消失する時点の眼圧を測定するものであるが,今回はその脈波検出能力に目をつけ,非加圧時の眼球脈波を分析し,さまざまな疾患における眼球脈波の変化を調べ,臨床応用への可能性を追求した。

 方法 Alcon社製OCVMを利用し,主として内頸動脈疾患及び緑内障の27例に対して眼球脈波を測定した。結果はデータレコーダーに記録し,同時に記録した心電図のR波をトリガーとして10回加算して解析した。解析には日本電気三栄社製signal processor 7T18を用いた。また,内頸動脈および眼科的疾患のない症例で,ICUにて呼吸管理のため動脈圧を持続測定している7症例で腕動脈脈波を同時に記録し,眼球脈波と比較した。さらに内頸動脈閉塞の影響を調べる目的で,手術室で全身麻酔下の頸動脈や眼科的疾患のない1症例に術前の了解を得たうえで20秒間頸動脈を圧迫し眼球脈波の変化を調べた。

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 緒言 介達性の外傷性網膜血管症は,いわゆるPur—tscher病と呼ばれ,ほぼ両眼性に発症する。本疾患の予後については,一般に良好であり,治療せずとも眼底病変は3〜4ヵ月で消失するといわれ,Gass1)によれば病変が黄斑部に進展する例は少ないという。今回われわれは片眼に典型的なPurtscher病の像を呈したが他眼は,何らかの栓子が疑われ黄斑変性,視神経萎縮を残し,予後不良であった症例を経験したので報告する。

 症例 60歳,男性,土木作業員。

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 緒言 一過性黒内障発作は主に内頸動脈閉塞症に伴って起こるとされているが,脈絡膜循環障害によるものもある。今回,OCVM (Oculocerebrovasculo-meter)を用いることにより,脈絡膜循環障害に起因すると考えられた一過性黒内障の症例を経験したので報告する。

 症例 患者:43歳,女性。

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 緒言 乳頭部網膜血管ループ形成症は,自覚症状のないままに眼底検査の際に発見されたり,あるいは網膜硝子体出血の原因として見つかることが多いが,動脈ループでは,稀に網膜動脈分枝閉塞症(BRAO)を合併する。これまでの報告でBRAO合併例は,むしろ若年者に多かった。最近我々は,経過観察中にBRAOを発症した,乳頭部動脈ループ形成症の高齢者の1例を経験した。本症例の螢光眼底所見を検討し,BRAOの発症機序について考察したので報告する。

 症例 64歳,男性。

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 緒言 ビデオ,写真などのアナログ画像によらない,charge coupled device (荷電結合素子,以下CCD)カメラにて撮像し,デジタル化して画像処理する装置,digital fundus camera (以下DFC)を用いて螢光眼底血管造影検査を行い,従来の35mmフイルムによる写真と比較検討した。

 方法 使用したデジタル画像処理装置は,OIS社製DFCシステムである。眼底カメラはOF−60U (キヤノン)を用い,これに直結したCCDカメラによる撮像と,35mmフイルムでの撮影を同時に行い,スイッチにより,瞬時に切り換えが可能であった。デジタル化はリアルタイムに行われ,本体のhard diskと,WORM (write once read many times)としてlaser diskにメモリーされる。その容量は,230 MGバイトあり920駒に相当する。画像処理(contrast enhance-ment,image sharpening,zooming,nega-posi反転など)を行い,白黒モニター画面に表示された画像を写真撮影したものを,おのおの比較検討した。図1にシステムの概略を示した。症例は,ぶどう膜炎,網膜静脈分枝閉塞症,網膜血管炎,中心性漿液性脈絡膜症,糖尿病性網膜症,網膜色素線条症,加齢性黄斑変性症などの22例であった。

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 緒言 後毛様動脈の閉塞による脈絡膜循環障害のため生ずる扇形脈絡膜萎縮を,Triangular shaped choroidal alteration (Amalric)1)として報告されて以来,臨床的,実験的知見が加えられてきている。Triangle症候群には,原因疾患が不明な特発性,全身疾患に伴うもの,外傷によるものとがある。今回本疾患と思われる11例13眼について検討を行った。

 症例 症例は1984年3月から1988年8月までの間に日本医科大学眼科を受診した患者で,既往歴,検眼鏡的所見,螢光眼底造影所見より本症候群と考えられた11例13眼を対象とした。内訳は,特発性2例3眼,全身疾患によると思われるもの1例2眼,外傷8例8眼である。表に年齢,性別,罹患眼,原因,視力(初診時,最終時),病巣部を示した。

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 緒言 糖尿病性網膜症の重症度や進行度を知るひとつの手段としては,螢光眼底撮影における血管透過性亢進の所見が非常に重要である。この際に,虹彩における血管透過性亢進を認める事があるが,これは虹彩ルベオージスの早期発見のために重要な徴候である。さらに,この虹彩血管透過性亢進は,網膜血管透過性亢進に先立つ変化であるという報告1)もあり,臨床上虹彩における血管透過性亢進の検索が重要だと思われる。本研究では,25%ガラクトース食餌にて飼育したガラクトース血症ラットにおいて,虹彩血管透過性亢進を前眼部螢光血管造影とHorseradish Peroxidase(HRP)酵素組織化学法にて証明し,アルドース還元酵素阻害剤(Statil)の予防効果を検討した。

 方法 生後3週齢(体重50g)のSprague-Dewley系雄ラット90匹を使用し,以下の3群に分けた。正常群:正常食餌で飼育する群。ガラクトース群:25%ガラクトース食餌で飼育する群。ARI群:25%ガラクトース食餌にアルドース還元酵素阻害剤の Statil(ICI)を0.046%加えた食餌で飼育する群。食餌開始1,2ヵ月の時点で尾静脈より0.05mlのフルオレセインを注入し,前眼部螢光血管撮影を行った。食餌開始後1,2,3,5ヵ月の時点では虹彩血管透過性をHRP,(Sigma, TypeⅡ)の透過性により組織学的に検索した。

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 目的 糖尿病の発症年齢が20歳以下の若年型糖尿病患者の眼合併症に関して検討を行った。

 対象 対象は1985年から1987年の3年間に大阪市立大学眼科を受診した若年型糖尿病患者132例のうち年齢30歳以下の119例で(図1),男性50例100眼,女性69例138眼であった。

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 緒言 糖尿病性網膜症は進行性で,失明に陥ることの多い疾患であり,内科,眼科管理が重要である。網膜症の治療法,網膜症増悪因子に関する報告は多い。しかし,本症の活動性変化が落ち着くまでの期間について検討した報告はない。我々は活動性病変が停止性となった症例を抽出し,発症から停止に至る期間について分析し,本疾患の最低管理期間を明らかにした。

 対象・方法 症例は1982年4月より1988年7月まで継続的に観察した糖尿病(NIDDM)のうち,厳重な内科管理と眼科治療を行い,2年以上にわたり両眼の病変が完全に鎮静化していた(停止型)32例(男12例,女20例)である。

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 緒言 原田病は比較的予後良好であると言われているが,症例によっては不良の経過をとることがある。遷延化は予後を不良にするとも言われる1)が,現在までに本症の予後不良因子について,十分に解明された報告はない。これを解明することは治療上最も大切なことである。そこで本症の予後不良因子につき研究することとした。

 今回著者らは因子の一つとして網膜剥離を推測し検討を加えることにした。

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 緒言 成人の単純ヘルペス脳炎と桐沢型ぶどう膜炎の合併した稀な1例を経験し,さらにウイルス抗体価の検索を行い興味深い結果を得たので報告する。

 症例 49歳男性。初診:1987年1月8日。主訴:左眼痛と充血。現病歴:前年12月中旬より全身倦怠感,食欲不振を訴えていたが,12月20日頃より朦朧状態となり本年1月4日当院精神科を受診し,脳内の器質性の病変を疑われ,脳外科に入院。入院時より左眼の充血と眼痛を訴え眼科受診となった。

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 緒言 先に,われわれは,ステロイドに反応しない急性のぶどう膜炎患者に,大量の免疫グロブリンを,経静脈的に投与したところ,著効した事を報告した1,2)。今回は,ぶどう膜炎の中で,病像,病態が,比較的均一なベーチェット病患者に,大量の免疫グロブリンを,経静脈的に繰り返し投与したところ,著効した。免疫グロブリンの投与による,血清免疫グロブリンならびにリンパ球サブセットの変動を中心に,病状とあわせて検討したので報告する。

 対象 三菱京都病院眼科に通院中のベーチェット病患者8名(22〜59歳,平均41歳,すべて男性)である。これ等の患者に,免疫グロブリン製剤(グロブリンN)2,500mgを生食に溶かして5%の濃度とし,約1時間かけて点滴静注し,計5日間を1クールとし,それぞれ1〜2ヵ月の間隔をあけて,2〜数クール施行した。ベーチェット病の病期は,特定しにくいので,1988年2月に受診時に免疫グロブリン療法を開始し,使用前,使用2週間後の,視力,未梢血リンパ球サブセット,血清免疫グロブリンの変化について検討した。

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 緒言 網膜中心静脈閉塞症(CRVO)あるいは網膜中心静脈分枝閉塞症(BVO)は,高度な黄斑部浮腫,出血,硬性白斑を生じ,しばしば永続的な高度視力障害をきたす疾患である。今回著者等は CRVO 4例,BVO 9例に対しウロキナーゼ大量投与(UK)と星状神経節ブロック(SGB)を併用し,さらにBVO症例中6例にグリッド・パターン網膜光凝固術(GPHC)を施行し,網膜症の改善と視力の向上をみたので報告する。

 方法 SGBは1%塩酸メピバカイン8mlを1日1回第6または第7頸椎部に注射することにより行った。UKはダイナボット社製アボキナーゼ24〜30万単位をソリタT3500mlに溶解し2時間かけて点滴静注した.SGB,UK共に2週間継続を基本とした。

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 緒言 Avulsed retinal vessel syndrome (以下,本症)とは,牽引性網膜裂孔形成の後に,網膜血管(多くは網膜静脈)が硝子体牽引により網膜面から引き離されて硝子体腔に突出した状態を示し,1971年にRobertsonらにより命名された疾患概念である1)。本症の臨床上の問題点は硝子体出血を反復する点であり,当該血管への硝子体牽引の持続が原因と考えられている。従来,硝子体出血の予防を目的として種々の治療法が試みられているが,侵襲が大きく効果が不確実で重大な合併症の危険があり1-5),本症の有効な治療法は確立していない。我々は,YAG laser vitreolysisの手法を用い6,7),本症の1典型例の根治的治療を達成したので報告する。

 症例 症例は59歳の女性で1984年1月右眼の飛蚊症を主訴に来院した。既往歴,家族歴に特記すべきことはない。視力は右1.2(n. c.),左1.5(n. c.)。右眼に上耳側の網膜裂孔と硝子体出血があり,裂孔縁に網膜静脈が通過していた(図1)。裂孔原性硝子体出血と診断し,アルゴンレーザーにより網膜裂孔を凝固閉鎖した。外来で経過を観察していたが,硝子体牽引により裂孔縁の静脈がしだいに硝子体腔に引き上げられ,avulsed retinalvesselを形成した。患者はその後,20ヵ月間の期間に二度にわたり本症に起因したと考えられる硝子体出血を発症した。

連載 眼の組織・病理アトラス・31

水晶体起因性眼内炎 猪俣 孟
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 水晶体が損傷されたり,白内障手術で多量の水晶体質が残存した場合には,その眼に炎症反応が生じる。また,水晶体が傷つかなくても,過熟白内障では,水晶体質が水晶体嚢を通して眼内に拡散し,同様に炎症反応が起こる。このように,水晶体質に対する眼内の炎症反応を水晶体起因性眼内炎lens-induced endophthalmitisと呼ぶ。これは,水晶体質を異物とする眼内の異物反応で,いわば水晶体炎phacitisである。

 臨床的には,水晶体起因性眼内炎が起こると難治性のぶどう膜炎症状を示し,しばしば緑内障を併発する。残存した水晶体質を除去することによってぶどう膜炎症状や緑内障が軽快する。

連載 今月の話題

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 自動視野計を選択する際に参考となる基本的知識について簡単に解説した。自動視野計は現在多くの機種が発売されており,また多くの機能が備えられる傾向にあるが,選択に際してはこれらに惑わされることなく,目的にあった機種を選ぶことが大切である。

連載 眼科手術のテクニック—私はこうしている・5

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手と眼の固定

 白内障嚢外摘出と後房レンズ挿入を安全かつ確実に行うには,①術者の手の固定と,②介助者の手の固定が極めて重要である。

 熟練した手術手技,すなわち能力で手術の安全性と確実性をあがなうのではなく,それを最小限にする努力をすべきである。

連載 眼科薬物療法のポイント—私の処方・5

真菌性角膜炎

角膜真菌症—典型例 石橋 康久
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 患者は42歳の男性。農作業中に稲の穂で右眼を突いた。2〜3日後に充血,視力低下があり近医を受診。角膜に傷があると言われ抗生剤の点眼を処方されたが改善しなかった。他医では抗生剤とステロイド剤にて治療されたが改善の傾向ないため当科を紹介された。

 主訴:右眼痛、右眼視力低下

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 視野を他覚的に測定するための基本的な実験として,光刺激ないしは格子縞視標による視覚誘発脳電位(VEP)を,脳電図法により解析したところ,視野部位と,脳の興奮部位との関係を頭皮上の電位分布からとらえることができた。光刺激では,視野の中心2.3°のみの刺激では後頭極に限局した帯電を示した。これに比して全視野刺激では頭皮上の陽性帯電域は,後頭部から頭頂にかけて凸型帯電を示し,約2倍の面積に拡大した。格子縞視標によるVEPでは,中心部刺激により後頭部に広がった陽性帯電が出現したが,周辺45°刺激では陽性帯電は頭頂部に出現した。これは視中枢の大脳皮質分布を反映する反応であると考えられた。

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 Morquio症候群の1例を経験した。症例は19歳女性。両眼の角膜実質全層にびまん性顆粒状の点状混濁を認めた。角膜内皮細胞はspecular microscopyによる検査で平均細胞面積がやや拡大傾向を呈した。角膜上皮のPapanicolaou染色を行い,光学的顕微鏡下で空胞変性は認めなかった。また両眼の水晶体皮質下にもびまん性,大小さまざまな点状混濁を多数認めた。眼底,ERGには特に異常は認めなかった。全身的には侏儒症,短頸,樽状胸郭,小骨盤,X脚など著明な骨奇形を認めた。知能は正常であり,難聴を認めた。病態生化学的に,尿中ケラタン硫酸及びコンドロイチン硫酸排泄が増加していた。

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 片眼に発症後,ステロイド剤の投与中にも拘らず第2眼にも発症し,ウロキナーゼの大量投与にて軽快した,側頭動脈炎による前部虚血性視神経症の1例を報告した。

 浅側頭動脈の生検にて,リンパ球の浸潤,巨細胞の出現と,内膜及び中膜の肥厚による血管内腔の閉塞,再疎通を認め,細動脈に血栓症を引き起こし易い状態であることが推定された。このため,重篤な障害を残し易い本症の治療には,線溶療法の併用が有用であると考えた。なお,本症例では,第2眼の発症前に,すでにCT及びVEPで異常を認めており,早期診断が可能であった。

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緒言

 内頸動脈などの閉塞または狭窄によって眼内循環血液量が低下し,眼球とくに前眼部に毛様充血,角膜浮腫,虹彩ルベオーシスなどの前眼部炎症様症状をきたす例は Knox1)により ocular is-chemic inflammationとして最初に報告された。

 内頸動脈閉塞症に伴う眼症状として,自覚的には一過性黒内障発作,一過性視野欠損,色視症,複視,視力障害などが,他覚的には球結膜充血,虹彩毛様体炎,血管新生緑内障,白内障,瞳孔不同,眼球運動障害などがある。眼底変化としては’網膜動脈閉塞症2〜4),虚血性視神経症5,6),高血圧性網膜症7),網膜中心静脈閉塞症8)などの症状を呈することが知られている。

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 本邦におけるレーザーによる眼誤照射は,10症例が確認されているが,そのうちYAGレーザーによるものが8例と大部分を占めている。今回我々は,Nd:YAGレーザーによる黄斑部誤照射のため,高度の視力障害を起こした症例を受傷早期より観察することができたので報告した。

 症例は43歳男性で研究員,QスイッチYAGレーザーによる変向実験中,誤ってレーザー光を直視した。保護眼鏡は装用していなかった。直後より霧視,視力低下を自覚。受傷5時間後に近医を受診,ついで筑波大学眼科を受診した。初診時左視力(0.15),中心窩を含む黄斑部に極めて深い円孔を形成しており,円孔縁からの網膜硝子体出血を認めた。出血は受傷10日でほぼ消失し,円孔底は次第に滲出物で埋められ浅くなった。最終視力は0.04(0.1),左視野に約2°の傍中心暗点を残した。レーザー光の眼誤照射は視機能の障害をもたらすため,その予防にはレーザーの取り扱いに細心の注意を払うとともに,安全対策の必要性を強調した。

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 硝子体手術中の眼内光凝固による汎網膜光凝固が,術後の新生血管緑内障の発症予防にいかなる効果があるかを調べた。

 対象は,術前にほとんどあるいは全く光凝固が行われていなかった増殖型糖尿病性網膜症の60例69眼で,全例に硝子体手術,シリコンオイルタンポナーデを施行し,術後最低3ヵ月間の経過観察中には網膜再剥離が認められなかった症例である。

 術中に眼内光凝固を汎網膜的に行った13例16眼中には術後血管新生緑内障を発症した例はなかった。他の47例53眼には術中に汎網膜光凝固を行わず,術後に汎網膜光凝固を施行したが,そのうち5眼に血管新生緑内障が発症し,その3眼は無水晶体眼であった。

 硝子体手術中に眼内光凝固を汎網膜的に施行することは,術後の血管新生緑内障発症予防に効果があると思われる。

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 最近の性行為感染症としてのクラミジア性封入体結膜炎の臨床像は,トラコーマとは異なる。このため病因診断によって確認できた症例の検討が必要である。

 我々は約5年間に一眼科診療所における91例の結膜炎患者の結膜擦過物をHeLa細胞に接種,分離培養できた70例,Micro Trakによって抗原を検出できた46例の臨床像を総括した。

 クラミジア結膜炎は性活動の盛んな年齢群を主体として感染が拡がり,出産可能な年齢期の母親を通して新生児にも感染する。好発発生月は3月,8月と11月で,結膜炎の程度は軽症は少なく,上円蓋部から上眼瞼結膜に及ぶ中等症や重症が多く,特に新生児では偽膜を形成し易い。さらに新生児は細菌の混合感染が多く,治療上細菌の分離培養も必要である。

 クラミジアの眼感染は成人型では尿道,生殖器などに続く再感染に,一方新生児では産道における初感染に分けて臨床像を理解しておくことが大切である。

論文論

月並み
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 なにかを言うのに,ある特定の言回しがあまりに何度も使われてきたために,すっかり手垢がついてしまった表現があります。漱石の「猫」で,これが「月並み」として議論されているのは,どなたも御存知のことです。

 眼科の論文で「月並み」に該当するのは何だろうと考えてみした。まず金メダルに該当するのが,「NovotnyとAlvisにより1960年に開発された」という表現でしょうか。当然このあとに「蛍光眼底造影」が続きます。これの使用頻度は20回や30回は軽く越している筈です。この文章を見ると,反射的に「浦賀湾頭の黒船は300年の太平の夢を覚まし」を連想してしまうのです。「誰でも知っていることを今更なぜ言わなければならないのか」ということにもなり,シラケの原因にもなるのです。

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 眼内血液循環改善のため,持続型脳血管障害改善剤のカルシュウム拮抗剤・塩酸フルナリジン(フルナール®)をPOAGおよびLTGにて内服投与して,視野や乳頭の状態に変化をきたすかどうか,さらに副作用について検討した。視野や乳頭については一時的に改善されたように見える例が6/45=13.3%に見られた。6ヵ月以上投与を継続できた例は37/45=82.2%で,その内の14/37=37.9%にパーキンソン症候群,鬱状態,錐体外路障害の重篤な副作用が見られた。特に,女性,高齢者にこの傾向が強かった。

グループディスカッション

ぶどう膜炎 臼井 正彦 , 坂井 潤一
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 第16回日本ぶどう膜炎研究会が,第42回日本臨床眼科学会のグループディスカッション(GD)として,9月23日(金)14時から17時まで東京プリンスホテルプロビデンスホールで開催された。本研究会も回を重ねるにつれ関心が高まり,多数の演題の申し込みがあったが,時間の関係上18題のみ採用とし,しかも講演時間5分,討論時間2分と非常に短く,GDの主旨からするとはなはだ残念な形になってしまった。だが,研究会当日は延べ800人という多数の出席があり,さらには立ち見も出るほどで盛況のうちに会が進行された。特に今回は,国立予防衛生研究所の倉田毅博士とWilmer Eye Instituteの A.M.Silverstein博士に特別講演をお願いした。倉田先生はヘルペス感染症の国際的権威であり,またSilverstein先生は,眼と免疫に関する研究で世界の第一人者である。近年,ぶどう膜炎の研究の主流は,免疫学的手法によるその発症機序の解明,並びに原因不明のぶどう膜炎におけるウイルス学的アプローチにあると思われるので,まさに機を得た特別講演であった。

 以下,その講演要旨を筆者の印象を加えてプログラムに従いまとめてみた。

眼科と東洋医学 竹田 眞
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 一般演題は10題(湯液6題,ハリ4題)発表され,特別講演は藤平 健先生が「漢方診断の基礎」について話された。

 第1席は"脂漏性難治瞼板腺炎に於ける柴胡剤の有効例について"と題し函館市,工藤たけゑ先生が発表された。脂肪を過剰にとりすぎた人にマイボーム氏腺梗塞や脂漏性瞼板腺炎が好発すること,柴朴湯や柴苓湯が有効であったとのことであった。眼科的には即失明につながる疾患ではなく軽視されがちであるが、患者さんの愁訴は強い。眼科的症状のみならず,全身的にも好調になるとのことで注目に値する。

文庫の窓から

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 「医学全書」眼科篇は東京医学校(東京大学医学部の前身)におけるドクトル・シュルツェ (Wilhelm Schultze)教授の講義を三潴謙三氏,宇野朗氏等の筆訳に係り,東京大学医学部編輯,出版人安藤正胤,書肆島村利助発兌で,巻1より巻12及び附録が明治12年(1879)10月より同15年(1882)の間に出版された眼科書である。

 「医科全書」とは,その題言に『明治四年繆爾児,忽布満ノ二氏ヲ本校ニ聘シ大ニ医学ノ規則ヲ正シ,更ニ教師数名ヲ延キ,各其課ヲ分チ,解剖,生理ヨリ内科諸科ニ至ルマデ,逐次講習スルコト茲ニ五年,其課程ノ厳正ナル論説ノ明確ナル,独之ヲ校内ノ生徒ニ私スルヲ惜ミ,今其講莚ニ筆記スル所ヲ輯メテ校訂シテ之ヲ鉛版ニ上セ,以テ世ノ学者ニ頒タント欲ス,命ケテ「医科全書」ト云フ…』とあり,眼科篇はその一科で,解剖篇に次いで出版された。本篇は12巻及び附録1巻(12×14cm)よりなり,およそ月刊にて分冊発行された。各巻の刊記とその内容を各章の見出しにより抄記すると以下の通りである。

基本情報

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臨床眼科
43巻5号 (1989年5月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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