医薬ジャーナル 54巻13号 (2018年2月)

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 わが国の医学系研究は,観察研究と侵襲・介入研究に大別され,さらに後者のうち新薬や医療機器等の承認を目指す試験を,治験と呼ぶ。治験は医薬品・医療機器等法とGCP(Good Clinical Practice)の下で厳格に実施されるが,それ以外の侵襲・介入研究は人を対象とする医学系研究に関する倫理指針という「マナー」の下で実施されている。この倫理指針は,デュオバン事件などの研究不正を踏まえて2015 年より施行されたが,2018 年には臨床研究法および省令が施行され,臨床研究を取り巻く環境は大きく変化する。本稿では,この臨床研究法の下で臨床研究を実施するために,どのような教育を含めた体制整備が必要となるかについて取り上げる。

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 医療現場の各種情報が集積され,医療リアルワールドデータや疾患レジストリとして二次利用が可能になった。そのため,臨床研究においては,介入研究のみならず観察研究による医療や医薬品の評価の扉が大きく開かれ,臨床疫学や薬剤疫学研究が注目されている。さらに,個人が疾病に罹患する以前の,人生の健康の歴史を紡ぐライフコースデータにおいて,特に幼少期から学童期の健診情報をデータベース化することにより,どのような幼少期の健康状態がどのように病気の罹患に繋がっていくのか,というデジタルコホートによる縦断研究が可能となる。本稿では,その現状と展望について解説する。

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 厚生労働省では2016 年4月から,一部の医薬品や医療材料の償還価格調整について,費用対効果評価を応用する試みが始まった。欧州を中心とする先進国では,既に1990年代から,有効性と安全性だけでなく,医療経済評価を含めた多角的な視点による医療技術評価(HTA)の政策応用が行われてきている。わが国において,このような新たな制度を導入するそもそもの目的,すなわち,効率的かつ公平な医療資源配分方法の確立を実現するためには,どのようなプロセスや考慮が必要かについて,わが国での試行の現状と課題を通じて概説する。さらに,医薬品産業界の持続可能性も視野に入れた理想的な仕組みの構築に向けて,イノベーションの考え方の整理や,それに対する公的支援の方法についての提案を,海外の例を参照しつつ紹介する。

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 今後の国民医療費の伸びの可能性は,マクロ経済の動向,国家財政の動向に大きく左右される。近年,マクロ経済は比較的順調に推移しているが,相変わらず国家財政の赤字の膨張はとどまらない。これは将来の大きなリスク要因となっている。医療費抑制策は,特に近年の高額薬剤の出現に対応して,薬剤を標的にしている。これに対する考え方として,Value Based Pricing という考え方が注目を浴びている。新薬,既存薬の両方に対して,これまでの薬剤に対する価値観を見直して,真に価値のあるものを見出し,他方で「多剤投与」といった問題に対する対処についても,有効な手法が求められている。

5.AI の活用と将来性 田中博
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 創薬を革新するアプローチとして,人工知能(Artificial Intelligence:AI)を用いた創薬への期待は高い。本稿では,AI 創薬をできるだけ体系的に記載して,「疾患−薬剤−生体系の3層ネットワーク」の枠組みに基づいて,特定の疾患に対する有効な標的分子の探索法および与えらえた標的分子にヒットする化合物の探索においてAI,特に深層学習(deep learning)が果たす「教師なし」学習機能や多次元ビッグデータの次元縮約機能について述べ,その活用と将来性について論じた。最後に,人類と地球の持続可能性に対するヒトとAI が協力して構築する「共創的<知>」に対する期待について述べた。

第Ⅱ部 注目の新薬〔抗血小板剤〕

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 チカグレロルは,直接的に血小板のP2Y12 受容体に結合してアデノシン二リン酸(ADP)凝集を阻害する作用を有する,シクロペンチルトリアゾロピリミジン群に分類される新規経口抗血小板剤である。本薬は作用発現に代謝活性化を必要としないため,血小板凝集抑制作用の発現が速やかで,効果のばらつきが少ない。また,P2Y12 受容体との結合が可逆的なため,投与終了後の作用の消失が速やかであるという点で,同種の他薬剤にない特性を持つ。わが国での適応は「急性冠症候群」や「血栓性イベントのリスクが高い陳旧性心筋梗塞」における血栓性イベントの抑制であるが,急性冠症候群の効能・効果には制限がついているため,患者背景や患者特性を考慮した使用法が必要である。

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 オテズラ®錠(一般名:アプレミラスト)は中等症および重症の局面型乾癬,関節症性乾癬に有効であり,2016 年12 月に承認された。本剤は主に免疫細胞,平滑筋細胞等に発現するPDE(ホスホジエステラーゼ)4 を阻害する作用を有し,cAMP(環状アデノシン一リン酸)の濃度を上昇させてサイトカイン産生を調節する。海外臨床試験ではオテズラ®錠30mg を1日2回経口投与で,16 週目におけるPASI(Psoriasis Area and Severity Index)75 達成率は28.8~33.1%,関節症性乾癬に対しても一定の改善効果(ACR〔American College of Rheumatology〕20 達成善率30.7~40.7%)が見られ,その効果は52 週まで持続した。本剤の効果は生物学的製剤に比べるとやや劣るが,重篤な副作用はなく,本剤投与のためのスクリーニング検査やモニタリング検査が必須ではない経口薬であるため,簡便性に優れている。

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 抗悪性腫瘍剤のペムブロリズマブ「キイトルーダ®点滴静注20mg,同100mg」は,ヒトPD-1(programmed cell death-1)に対するヒト化IgG(免疫グロブリンG)4 モノクローナル抗体である。先行して上市されたニボルマブと同様に,PD-1 とそのリガンドであるPD-L1(programmed cell death ligand-1)やPD-L2 の結合を阻害して,癌抗原特異的なT細胞の増殖,活性化および細胞傷害活性の増強により腫瘍増殖を抑制すると考えられている。本邦では,2017 年8 月時点で根治切除不能な悪性黒色腫およびPD-L1 陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に承認されている。現在その他多くの癌種や,併用療法等の臨床試験が進行中であり,今後適応拡大が期待される薬剤である。

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 ロミタピドメシル酸塩「ジャクスタピッド® カプセル5mg,同10mg,同20mg」は,家族性高コレステロール血症ホモ接合体(HoFH)に対する初めての稀少性疾患用経口治療薬で,2016 年4月現在,38 カ国で承認されている。本薬は市販されている唯一のミクロソームトリグリセリド転送蛋白(Microsomal triglyceride transfer protein:MTP)阻害剤であり,主として肝臓における超低比重リポ蛋白(VLDL)の産生に関与するMTPを阻害することによって,VLDL の代謝過程で生じる中間比重リポ蛋白(IDL)や最終代謝産物である低比重リポ蛋白(LDL)を減少させる。従来の脂質低下薬とは作用機序が異なるため,LDL 受容体の機能とは関係なくLDL コレステロール(LDL-C)を低下させる。最大耐用量の脂質低下療法(アフェレシスを含む)を受けている成人のHoFH 患者において,追加投与することでベースラインからのLDL-C を40%近く有意に低下させたことが報告されている。HoFH 患者において投与されるプロ蛋白転換酵素サブチリシン/ ケキシン9型(PCSK9)阻害薬はLDL 受容体が完全欠損するHoFH には効果がないが,ロミタピドメシル酸塩はこのような症例にも有効である。ロミタピドメシル酸塩の作用機序からも考えられるように,MTP 阻害によるVLDL 産生抑制により,肝臓内の脂肪蓄積には注意する必要があり,投与中は厳重な脂肪制限やアルコール摂取の制限が必要である。本薬は早発性冠動脈疾患を高率に発症する重症のHoFH 患者に対する画期的な治療薬として期待されている。

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 抗ヒスタミン薬は,鼻アレルギー診療ガイドラインでもすべての病型と重症度における薬物治療で推奨されており,最も頻用度の高い薬剤である。デスロラタジンはロラタジンの活性代謝物で,鼻アレルギーの鼻症状と蕁麻疹,皮膚疾患のそう痒を改善する。1日1回の内服で,食事と無関係に服薬できる。ヒスタミンH1 受容体に高い親和性があり,中枢抑制作用が軽く,運転制限のしばりがないことも特徴である。

第Ⅲ部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~

抗菌薬 松元一明 , 榎木裕紀
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 2017 年に承認申請が行われた多剤耐性結核菌(MDR-TB)治療薬のベダキリンフマル酸塩の概要,作用機序,体内動態,用法・用量,相互作用および副作用について,最近の知見を元に概説した。また,2017 年10 月現在,国内第Ⅲ相試験が行われている新規フルオロケトライド系抗菌薬のT-4288(ソリスロマイシン)の概要と海外での開発状況について述べた。またさらに,国内第Ⅰ相試験段階ではあるが,β- ラクタマーゼ阻害剤のOP0595 について,そのユニークな薬剤特性を概説した。

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 2017 年にはウイルス肝炎領域の新薬として,抗B 型肝炎ウイルス薬(ベムリディ®),抗C 型肝炎ウイルス薬(マヴィレット®)が上市された。抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)薬では,上記の抗B 型肝炎ウイルス薬と同一成分の薬剤と,既存の抗HIV 薬の合剤(デシコビ®)が上市された。

 抗C 型肝炎ウイルス薬の新薬開発においては,これまでにGilead Sciences のハーボニー®,MSD のエレルサ®・グラジナ®,そしてAbbvie のマヴィレット® と,強力なDirect Acting Antivirals(DAAs)が席巻したことを受け,Jansen やMSD がPhase Ⅱまで進行していた新薬の開発中止を発表したことも記憶に新しい。このように,肝炎ウイルス治療薬は日進月歩であり,ダイナミックに変化している。抗HIV 薬は,ここ数年のsingle tablet regimen(1日1回1錠)への流れを維持しつつ,長期内服に伴う副作用をより軽減した組み合わせや新薬が模索されている。

ワクチン 関雅文
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 感染症治療においては,発症してからの治療よりも,発症前にワクチンを接種して,発症予防をしておく方が,経済的にもはるかに効率的である。わが国でもインフルエンザや肺炎球菌のような発症者数が多い疾患の新たなワクチンが期待されている一方,ノロウイルスや帯状疱疹に対する新たなワクチンの試みも始まっている。

 さらに世界的にはエボラウイルスのような稀少だが,死亡率の高い感染症へのワクチン開発も進行している。

免疫抑制剤 赤嶺由美子 , 三浦昌朋
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 全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)は難病に指定された膠原病の一つであり,日本全体で約6~10 万人程の患者がいるとされている(2013年時点でSLE として難病申請者は61,528 人)。SLE の治療は薬物療法が中心であり,ステロイド剤を主剤として,症状に応じてアザチオプリン等の免疫抑制剤が標準治療として使用されている。その中でこれまで副作用や毒性が少なく,疾患活動性の低下とステロイド剤の減量(または不要)可能な新規薬剤が求められてきた。2017 年に入り,新しい作用機序を持つ生物学的製剤(ベリムマブ〔遺伝子組換え〕)がSLE の治療薬に加わった。これによって標準的治療にべリムマブをアドオンすることで,疾患活動性を低下させ,ステロイド剤の1日投与量の減量が可能となった。

消化器癌治療薬 本多和典 , 室圭
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 最近の化学療法の進歩の中心的役割を担っているのは,免疫チェックポイント阻害薬である。免疫チェックポイント阻害薬は,消化器癌以外の他癌腫での開発が先行していた。本邦でも抗Programmed cell death-1(PD-1)抗体のニボルマブが「がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌」で効能追加承認を得て,いよいよ臨床導入された。

 本稿では,消化器癌に対する免疫チェックポイントの現状を述べつつ,最近新規に承認された消化器癌に対する他の薬剤について概説する。

肺癌治療薬 原谷浩司 , 中川和彦
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 肺癌診療は,毎年のように多くの新薬が次々と登場し,標準治療が年単位で目まぐるしく変わる領域である。特に進行・再発非小細胞肺癌においては,例えば3~4年前の知識をもって現在の標準的な一次治療や二次治療を行うことは,ほぼ不可能と言っても過言ではない。2016 年が肺癌領域において非常に豊作であったのと比較して,2017 年の新薬承認は少なく,本稿の執筆時点での2017 年中に,肺癌において初めて国内保険承認を受けた薬は存在しない。

 本稿では,ROS1 融合遺伝子陽性非小細胞肺癌に対して適応拡大されたクリゾチニブに加えて,現在承認申請中である抗PD-L1(programmed cell death-ligand 1)抗体Atezolizumab,BRAF 阻害薬ダブラフェニブ,ダブラフェニブとの併用で承認申請中のMEK 阻害薬トラメチニブについて説明する。

乳癌治療薬 伊藤良則
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 閉経後ルミナル(ER 陽性HER2 陰性)転移乳癌において,CDK(cyclin-dependent kinase)4/6 阻害剤であるパルボシクリブが標準治療薬として臨床導入される。1 次治療におけるレトロゾール+パルボシクリブ,2次治療におけるフルベストラント+パルボシクリブの臨床的有用性が証明された。その他のCDK4/6 阻害であるabemaciclib,ribociclibにおいても,臨床第Ⅲ相試験により有用性が証明されている。生殖細胞系BRCA(breast cancer susceptibility gene)1/2 変異を有するHER2 陰性転移乳癌患者において,olaparib は主治医選択化学療法より優れることが証明された。これらの乳癌治療薬の導入により,乳癌治療の選択肢はさらに多様になる。

婦人科癌治療薬 西川伸道 , 榎本隆之
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 婦人科癌のうち,卵巣癌はその半数がⅢ期以上の進行症例で発見される。しかし固形癌の中では比較的抗癌剤の感受性が高い癌種であり,進行癌であっても集学的治療を行うことによって,長期に生活の質を保ち,さらには生命予後も改善できることがある。

 卵巣癌の薬物療法は,長年プラチナ製剤とタキサン製剤の併用療法を主体とし,その治療効果を超える抗癌剤は開発されていなかった。だが,分子標的治療薬であるベバシズマブを加えることで無増悪生存期間が延長し,承認された現在では積極的に用いられ,良好な成績を得ていることから,標準的治療が変わる可能性も示唆される。またPARP(Poly〔ADP-Ribose〕Polymerase)阻害薬やPD-1/PD-L1(programmed cell death-1/programmedcell death ligand-1)阻害薬などが,海外の大規模第Ⅲ相試験で有効性が示されている。今回はPARP 阻害薬とPD-1 阻害薬,VEGF(血管内皮増殖因子)阻害薬について述べる。

血液腫瘍治療薬 田中智之 , 増子正義
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 造血器腫瘍の治療は年々進歩し,特に分子標的治療や細胞免疫療法の開発が進んでいる。急性骨髄性白血病(AML)の治療としては長らく新薬が登場していなかったが,FLT3(Fms-Like Tyrosine Kinase 3)阻害薬Midostaurin が初めて米国食品医薬品局(FDA)に承認された。またB 細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)に対する免疫療法としてのキメラ抗原受容体を用いた遺伝子改変T 細胞(CAR-T)薬のTisagenlecleucel や,CD22 複合製剤のInotuzumab ozogamicin も米国FDA で承認された。本邦でも今後,導入されることが予想される。なお,本邦においては末梢血幹細胞動員薬のプレリキサホルが発売された。これらの薬剤により,難治性造血器腫瘍の治療成績の更なる向上が期待される。

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 膀胱癌を中心とする尿路上皮癌に対する薬物療法は,シスプラチン・ゲムシタビンを中心とした抗癌剤治療以外に長い間大きな治療体系の変革はなかった。だが,免疫チェックポイント阻害剤が上市され,大きなブレイクスルーとして期待されている。前立腺癌はホルモン感受性の転移性前立腺癌に対するアビラテロン,非転移性去勢抵抗性前立腺癌に対するエンザルタミドが臨床試験で有効であることが判明した。さらに,新規アンドロゲン受容体阻害剤が臨床試験中であり,エンザルタミドとのプロフィールの差から,それらの試験成績が期待されている。

癌治療補助薬 山口正和
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 オピオイド誘発性便秘症(opioid-induced constipation:OIC)に対する治療薬としては,浸透圧性下剤(酸化マグネシウム,ラクツロース)および大腸刺激性下剤(センノシド,ピコスルファートナトリウム水和物)等が,単独または併用で使用されている。しかしながら,それらの薬剤では,高マグネシウム血症を含む電解質異常,腹部膨満感の発現,長期連用による耐性または習慣性等の問題点がある。

 ナルデメジントシル酸塩は,末梢性μオピオイド受容体拮抗薬であり,中枢のμオピオイド受容体に作用することなく,消化管におけるオピオイドの末梢性作用に拮抗し,OICを改善することが期待されている。

抗リウマチ薬 伊藤聡
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 バリシチニブはヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬であり,トファシチニブに続き二番目のJAK 阻害薬として,本邦では2017 年に使用が開始された。サリルマブはトシリズマブに続く新規IL(interleukin)-6 受容体阻害剤であり,2017 年9 月に承認された。TNF(腫瘍壊死因子)阻害薬であるアダリムマブとのhead to head 試験で,バリシチニブは,MTX(メトトレキサート)併用下で非劣勢,サリルマブは,MTX 非併用下で有意に優れた有用性を示し,実臨床での成績が期待される。そのほか,JAK 阻害薬ではpeficitinib,upadacitinib,filgotinib が,さらに抗IL-6 抗体であるsirukumab,抗フラクタルカイン抗体であるE6011 が,現在治験進行中である。本稿では,これらの薬剤について解説する。

抗アレルギー薬 外山聡
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 2017 年9月に,ルパタジンフマル酸塩(ルパフィン® 錠10mg)が承認された。本剤は,抗ヒスタミン作用と抗血小板活性化因子作用を併せ持つことが特徴である。また,ルパタジンの代謝過程でデスロラタジン(デザレックス® 錠5mg の有効成分:本誌第Ⅱ部参照)が生成することを配慮する必要がある。また,第Ⅲ相試験が終了した抗アレルギー薬のうち,IL(インターロイキン)-4 とIL-13 によるシグナル伝達を阻害するヒトモノクローナル抗体であるdupilumab について解説する。

糖尿病治療薬 阿部孝洋 , 曽根博仁
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 わが国において,2009 年のDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)阻害薬,2010 年のGLP-1(glucagon-like peptide 1)受容体作動薬,2014 年のSGLT2(sodium-glucose co-transporter 2)阻害薬と,次々に新規作用機序の糖尿病薬が登場した。そして,2015 年以降,SGLT2 阻害薬(EMPA-REG OUTCOME 試験,CANVAS 試験・CANVAS-R 試験)やGLP-1 受容体作動薬(LEADER 試験,SUSTAIN-6 試験)による心血管イベント予防効果が報告されるようになった。

 今のところ,新たな作用機序の新薬が上市される予定はないが,上記のDPP-4 阻害薬・GLP-1 アナログ・SGLT2 阻害薬を含む配合薬は多数開発されている。

 また,インスリンにおいては,従来のInslin Aspart(従来型インスリンアスパルト)の作用発現をさらに速めた超々速効型インスリン(Fast-Acting Inslin Aspart)が開発されている。

骨粗鬆症治療薬 竹内靖博
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 日本における最も新しい骨粗鬆症治療薬は,ゾレドロン酸5mg 点滴静注剤である。これはビスホスホネート薬であり,年1回投与で新規椎体骨折および非椎体骨折の発生を抑制することが国内外の臨床試験で実証されている。年1回投与ということで,内服継続が困難な患者においては利便性の高い薬剤として期待されている。一方,ビスホスホネートは一般的に腎毒性の高い薬剤であり,特に点滴静注では経口内服に比べ血中濃度が高くなるため,腎障害の著しい患者には禁忌とされている。また,特に初回投与時には発熱などの急性期反応を一過性に伴うことが多いため,十分な配慮が必要である。現在,新規の薬理作用を有する抗スクレロスチン抗体薬の開発が最終段階まで進んでおり,その臨床現場への登場が期待されている。

抗凝固薬・抗血小板薬 安珍守 , 赤尾昌治
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 心房細動(atrial fibrillation:AF)による塞栓症の予防を目的に,2011 年初めに直接型経口抗凝固薬(DOAC)が使用可能となった。抗凝固薬による治療は新たな時代を迎え,肺塞栓症・下肢深部静脈血栓症に対しても,適応拡大された。高齢化が進む日本において,AF の有病率は増加の一途をたどり,2050 年にはAF 患者は100 万人(総人口の約1.1%)を超えると予測されている。また,抗血小板領域においても,新規抗血小板薬チカグレロルが製造販売承認を取得し,今後は更なる使用指針を示されることが期待される。近年では,高齢化と有病率の上昇に伴って,抗凝固薬・抗血小板薬を併用する機会も増加してきていることより,抗血栓薬の併用数と期間を減らす方向に関心が向かっている。本稿では,我々が地域の医療機関の総力をあげて実施している伏見心房細動登録研究(伏見AF レジストリ)のデータを紹介しながら,最新の知識を概説してみたい。

脂質異常症治療薬 森田真也
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 近年,スタチン系薬物等の強力な低密度リポタンパクコレステロール(LDL-C)低下作用により,冠動脈疾患の発症抑制が可能となっている。一方で,高密度リポタンパクコレステロール(HDL-C)低値やトリグリセライド(TG)高値などの残余リスクが存在していることがある。2017 年に,選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)モジュレーターのペマフィブラートが新たに承認された。臨床試験により,ペマフィブラートはTG を顕著に低下させ,HDL-C を有意に増加させることが示されている。また,大規模臨床試験において,コレステリルエステル転送タンパク(CETP)阻害薬のanacetrapibが,HDL-C を大幅に増加させ,冠動脈疾患リスクをわずかながら有意に低下させたことが報告された。

抗不整脈薬 山本哲平 , 清水渉
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 心房細動をはじめとする不整脈診療において,カテーテルアブレーションといった非薬物治療と並んで,抗不整脈薬は重要な位置を占めている。しかしながら,同時に催不整脈性を併せ持つことや,心外副作用のリスクが高いことが知られている。新規薬剤開発においては,心房特異的に発現するイオンチャネルを治療標的にした心室催不整脈性の低減など,リスク回避の試みがなされ,成果を上げつつある。また,抗不整脈薬開発においてこうした新薬の開発とともに,既存の薬剤を使用した個別化医療やドラッグ・リプロファイリングなど,別の観点からの使用法を含めた新規薬剤開発が有望視されている。

心不全治療薬 彦惣俊吾
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 心不全は,心臓のポンプ機能の失調により多彩かつ重篤な症状を呈する疾患であり,さまざまな治療薬が臨床で使用されているが,依然として予後は不良であり,新規治療薬の開発が待望されている。しかしながら,近年,新規心不全治療薬の上市はなく,2016 年から2017 年にかけても本邦における新規有効成分による治療薬の上市は行われなかった。現在のところ,欧米を中心にいくつかの新規治療薬の開発が進められていて,第III相試験の実施中である。特に慢性心不全薬であるsacubitril/valsartan は,欧米で承認,市販されていて本邦でも第Ⅲ相試験を実施中であり,近い将来に本邦での臨床応用が期待される新薬である。

高血圧治療薬 曽根正勝
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 本邦ではここ数年は,配合剤を除き高血圧治療薬の新規上市はないが,近年,ステロイド骨格を有さない第三世代のミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬が複数開発されている1)。主に糖尿病性腎症や慢性心不全を適応症として開発が進んでいるが,降圧効果も有しており,高血圧症で適応を目指している薬剤もある。また,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)とネプリライシン(NEP)阻害薬の両者の骨格を持つ薬剤も開発され,米国では心不全治療薬として認可されているが降圧作用についての報告もあり,本邦でも治験が行われている。また,新しい治療としてアンジオテンシンⅡを対象に治療ワクチンの開発も行われている。

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 気管支喘息の治療薬は1990 年代以降,吸入ステロイド薬をはじめとした吸入薬を中心に進化し,喘息死患者の減少と密接な関係があると理解されている。しかし既存の吸入薬治療でも症状がコントロールできない重症喘息患者は根強く存在し,その数は少数であるものの喘息総医療費の半分以上を占めるとされ,医療経済的にもその対応は重要である。近年は重症喘息患者のフェノタイプに基づいた抗体製剤の開発が盛んであり,少しずつ市場に出てきている。

 一方,慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)領域の治療薬では,今後さまざまな種類の吸入薬の合剤が市場に登場するものと考えられている。

消化器疾患治療薬 柴田知行
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 2017 年10 月に「慢性便秘症診療ガイドライン2017」が発刊された。これは,従来の刺激性下剤やマグネシウム製剤偏重の日本の便秘診療に,新たな診療の道筋を示すものと考えられる。それに併せて新たな機序や,適応を持った便秘に対する薬剤も上市され,便秘診療に変革の到来が予測される年となった。炎症性腸疾患に対する薬剤も,TNF(腫瘍壊死因子)-α阻害剤以外に多種類の薬剤の製造承認や適応追加が相次いだ。PPI(プロトンポンプ阻害薬)を中心とした酸分泌抑制剤も,逆流性食道炎に対するキードラッグとなり,その安全性や使用法が今後も検討されるであろう。肝疾患治療薬も,これまで適応が無かった対象への薬剤開発,適応承認が行われ,より確実な抗ウイルス治療が選択可能になってきた。

睡眠薬・鎮静薬・抗不安薬 田ヶ谷浩邦
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 睡眠薬,鎮静薬,抗不安薬の分野では,2014 年以降の承認/ 上市薬で新規の薬剤は睡眠薬であるベルソムラ® だけで,それ以外はSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と非定型抗精神病薬の適応拡大であった。

 睡眠薬ではベルソムラ® と同様の作用機序(dual orexin antagonist)を持つ薬剤の,鎮静薬と抗不安薬では新規の作用機序を持つ薬剤の臨床試験が進められている。

抗てんかん薬 東間正人
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 抗てんかん薬ラコサミドとペランパネルについて概説した。ラコサミドは2016 年に部分てんかんの併用治療として,2017 年には単剤治療薬として承認された。同薬剤はNa+チャネルブロッカーの一つであるが,従来薬がチャネルの急速な不活化に関与するのとは異なり,緩徐な不活化に関与する。一方,ペランパネルは,グルタミン酸AMPA(α- アミノ-3- ヒドロオキシ-5- メソオキシサゾール-4- プロピロン酸)受容体の非競合的拮抗薬であり,2016 年に部分および全般てんかんの併用治療に対して承認された。2017年には米国で単剤治療が承認され,本邦でも現在第Ⅲ相試験が行われている。両薬剤は,従来薬とは異なる新規の作用機序を有し,合理的併用治療の視点からも難治てんかんの治療に期待できる薬剤である。

抗精神病薬 武田雅俊
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 第一世代抗精神病薬は,基本的にはドパミンD2 受容体遮断作用を有しており,錐体外路系副作用が殆ど必発であったが,1996 年以降は,副作用の少ない第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)が広く使用されている。第二世代抗精神病薬は,ドパミン・セロトニン拮抗作用,多受容体標的拮抗作用,ドパミン安定化作用などを有しており,錐体外路系副作用が少なく,陰性症状に対してもある程度の効果が期待できる抗精神病薬として広く用いられている。わが国においては2016 年にアセナピンが舌下錠として開発され,ジプラシドン,ルラシドン,ブレクスピプラゾール,カリプラジンなどの開発が進められている。

抗認知症薬 中村祐
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 わが国は,超高齢社会に突入しており,それに伴い認知症患者が急増している。認知症の大部分を占めるのは,アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症,AD)である。ADの主たる原因は加齢であり,現在,根本的な病態に対する治療の開発は難航している。しかし,AD における中核症状(記憶障害,見当識障害,失語,失行,実行機能障害)に対しての効果を持つ薬剤に関しては,ドネペジルに加えて抗認知症薬3剤(ガランタミン,リバスチグミン,メマンチン)が使用できるようになった。病態に則した治療薬は,早期治療にシフトし,アミロイドの病態にフォーカスされているのが現状であり,早期に病態の進行を止める,もしくは遅延させる薬剤が開発されることが熱望される。

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 パーキンソン病は次々と新しい治療法,薬剤が使用できるようになってきている疾患であるが,この1 年間で新たに承認されたパーキンソン病治療薬はない。

 現在,選択的モノアミン酸化酵素(MAO-B)阻害薬のRasagiline,Safinamide,カテコール-O- メチル基転移酵素(COMT)阻害薬のOpicapone が申請準備中,または治験中である。また,現在内服薬として使用されているロピニロールの貼付薬も,治験中である。

 これら薬剤のわが国での早期承認が期待される。

眼科治療薬 坂田礼 , 相原一
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 2017 年に眼科分野で上市された新薬は,緑内障治療薬のミケルナ®配合点眼液,黄斑浮腫治療薬のマキュエイド®硝子体内注用(ただしテノン嚢下投与として),非感染性ぶどう膜炎治療薬のヒュミラ®皮下注,の3 種類である。日本でphase Ⅲ相試験段階に進んでいる治験薬のうち,眼圧下降薬のプロスタグランジンEP2 レセプターアゴニストは,緑内障点眼液の中で最大の眼圧下降効果を有するプロスタグランジン関連薬とは異なるレセプターに作用する新規メカニズムの新薬であり,期待が持たれている。また海外に目を向ければ,実臨床での使用が待たれているphase Ⅲ相試験段階での治験薬が多数存在しており,こちらも目が離せない。

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 下部尿路機能障害は,蓄尿障害と尿排出障害の2つに大別される。蓄尿障害の代表的な疾患は過活動膀胱であり,尿排出障害の代表的疾患は前立腺肥大症であるが,臨床的には蓄尿症状と排尿症状が混在していることも多く,治療に難渋することもある。この領域においては,最近過活動膀胱診療ガイドライン(第2版)と男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドラインが発刊された。このガイドラインから過活動膀胱,前立腺肥大症に対して最近推奨されている薬剤の使用法について述べた。また,本領域においては2014年にPDE5 阻害薬が上市されて以降,新たな薬剤の承認はないが,最近さまざまな新薬の開発が進められてきており,その一端を紹介した。

オーファンドラッグ 森田陽介 , 後藤伸之
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 2017 年1月から9月までの期間中,製造販売承認事項一部変更承認も合わせて13 件21 品目がオーファンドラッグとして承認を受けた。新規成分の承認は6件9品目あり,内訳は抗がん剤が4件と最も多く,リンパ腫や骨髄腫など血液がんに適応を持つ薬剤であった。それ以外には,厚生労働省より要請のあった「医療上の必要性の高い未承認薬」としての承認を受けたビタミンK 拮抗薬投与中患者の緊急手術・処置施行時の出血傾向を抑制するケイセントラ®静注用や,今まで薬剤による原因療法のなかった乳児型脊髄性筋萎縮症に対する治療薬としてスピンラザ®髄注も,新たに承認を受けた。今回はオーファンドラッグとして承認された新規成分について,薬価算定時に比較された既存薬と対比して紹介する。

付 資料・薬価基準新規収載薬一覧

■索引

基本情報

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医薬ジャーナル
54巻13号 (2018年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0287-4741 医薬ジャーナル社

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