第Ⅱ部 注目の新薬〔抗血小板剤〕
「ジャクスタピッド®カプセル5mg,同10mg,同20mg」
山下静也
1
1地方独立行政法人りんくう総合医療センター・副理事長/ 病院長大阪大学大学院医学系研究科総合地域医療学寄附講座・循環器内科学講座・特任教授
pp.474-483
発行日 2018年2月28日
Published Date 2018/2/28
DOI https://doi.org/10.20837/1201813474
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
ロミタピドメシル酸塩「ジャクスタピッド® カプセル5mg,同10mg,同20mg」は,家族性高コレステロール血症ホモ接合体(HoFH)に対する初めての稀少性疾患用経口治療薬で,2016 年4月現在,38 カ国で承認されている。本薬は市販されている唯一のミクロソームトリグリセリド転送蛋白(Microsomal triglyceride transfer protein:MTP)阻害剤であり,主として肝臓における超低比重リポ蛋白(VLDL)の産生に関与するMTPを阻害することによって,VLDL の代謝過程で生じる中間比重リポ蛋白(IDL)や最終代謝産物である低比重リポ蛋白(LDL)を減少させる。従来の脂質低下薬とは作用機序が異なるため,LDL 受容体の機能とは関係なくLDL コレステロール(LDL-C)を低下させる。最大耐用量の脂質低下療法(アフェレシスを含む)を受けている成人のHoFH 患者において,追加投与することでベースラインからのLDL-C を40%近く有意に低下させたことが報告されている。HoFH 患者において投与されるプロ蛋白転換酵素サブチリシン/ ケキシン9型(PCSK9)阻害薬はLDL 受容体が完全欠損するHoFH には効果がないが,ロミタピドメシル酸塩はこのような症例にも有効である。ロミタピドメシル酸塩の作用機序からも考えられるように,MTP 阻害によるVLDL 産生抑制により,肝臓内の脂肪蓄積には注意する必要があり,投与中は厳重な脂肪制限やアルコール摂取の制限が必要である。本薬は早発性冠動脈疾患を高率に発症する重症のHoFH 患者に対する画期的な治療薬として期待されている。