別冊整形外科 1巻77号 (2020年4月)

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 腰椎変性すべり症に対する低侵襲手技による固定術として,われわれは全内視鏡下の腰椎椎体間固定術であるpercutaneous endoscopic transforaminal lumbar interbody fusion(PETLIF;ペトリフ)を発案した1).本術式はKambin’s triangleを経由して椎体間固定術を行う手技であり,当科が2001年より行っている腰椎感染症に対する全内視鏡下椎間板掻爬術を発展させた手技である2).椎間関節の完全温存が可能となり,間接除圧による神経症状の改善を目的とする.本稿では,本手術手技の詳細と術後2年の臨床成績を報告する.

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 近年,脊椎手術のアプローチに起因する組織損傷を最小限に抑える低侵襲化の試みが重視されており,正確な診断に基づいた標的治療が脊椎手術のパラダイムシフトをもたらしている.その中でも脊椎内視鏡手術は手技や光学技術の進歩,周辺機器の開発など新たな技術革新が急速に進展し,大きな変化を引き起こしている.脊椎内視鏡手術は1991年にObenchainが腹腔鏡下にL5/S1腰椎椎間板ヘルニアの摘出を最初に報告し1),本邦では前方からアプローチする胸腔鏡視下手術と腹腔鏡視下手術,側方からの後腹膜腔鏡視下手術,さらに後方からの脊椎後方内視鏡下手術が施行可能となっている.現在,もっとも使用されている脊椎内視鏡手術は腰椎椎間板ヘルニア摘出術に対する後方内視鏡手術である.腰椎変性疾患に対する後方内視鏡手術は,主にDestandauやFoleyらにより開発された内視鏡下腰椎椎間板摘出術(micro endoscopic discectomy:MED)と2,3),Kambinらが内視鏡を用いてHijikataの経皮的髄核摘出術を応用した全内視鏡下椎間板摘出術(transforaminal full-endoscopic lumbar discectomy:TELD)が主流である4,5)

 TELDは経椎間孔から侵入し経皮的に腰椎椎間板ヘルニアを摘出する最小侵襲脊椎手術として2003年に本邦に導入され,「局所麻酔」,「8mmの皮膚切開」,「背筋への最小侵襲」という低侵襲性と内視鏡下にヘルニアを摘出できる確実性が高い術式として有用である6~8).当科では本法を椎間孔狭窄,外側陥凹狭窄,椎体間固定術に応用し,全内視鏡下脊椎手術(full endoscopic spine surgery:FESS)として良好な成績が得られている.本稿では主に当科で施行している経椎間孔アプローチでの各手術手技と注意点について概説する.

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 外側型腰椎椎間板ヘルニアは,脊柱管内のヘルニアに比べ術野が深く,神経根の確認も含め手術に難渋することもある.このため手術方法はさまざまであり,外側開窓や還納式椎弓切除術による摘出術,椎間関節切除に固定術を併用する方法から近年は内視鏡下摘出術あるいは全内視鏡下摘出術など低侵襲手術も広まりつつある.本稿では,外側型腰椎椎間板ヘルニアに対する内視鏡下摘出術のラーニングカーブと治療成績について検討したので報告する.

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 この20年の医学の進歩により,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の術式として内視鏡を使用した低侵襲手術は一般化し臨床で行われている.脊椎内視鏡手術の利点は,皮切が小さく,傍脊柱筋侵襲も少なく,さらに,カメラを術野内部に設置,拡大した視野を得ることで術野の外から視野(conventional approachやmicroscopic surgery)と比較して死角の解消になることが最大の利点と考える.また,手術スタッフと同一の視野を得ることで安全性や手術進行,教育的側面で有用である.筆者は,腰椎椎間板ヘルニアへの内視鏡下髄核摘出術(microendoscopic discectomy:MED)の適応だけでなく,特に高齢者の固定術が厳しい場合にも内視鏡下片側進入両側除圧術(microendoscopic laminectomy:MEL)を用いて,多くの脊柱管狭窄症例にも対応してきた1~3)

 脊椎内視鏡手術の歴史は,1997年にFoley,Smith4)らが腰椎椎間板ヘルニアに対してMEDを発表したことに始まる.2002年にPalmer5)らが腰部脊柱管狭窄症にも脊椎内視鏡手術としてMELを報告して適応を広げた.MELは片側から責任高位椎弓間に設置して,進入側と対側の除圧を行うものである.ラーニングカーブが存在し,進入側の椎間関節の切除や対側除圧が不十分になる問題がある.そこで,MELの問題点と筋組織の低侵襲化を考慮した内視鏡下筋肉温存型棘突起間正中進入椎弓間除圧術(microendoscopic muscle preserving midline interspinatus interlaminar decompression:ME-MILD)6)が発案された.ME-MILDは正中から進入するため,conventional approachに近く,open surgeryからの脊椎内視鏡手術に移行しやすい術式と考える2,3).実際に筆者も初期の内視鏡手術では,ME-MILDの恩恵を受け,脊椎内視鏡手術の習熟につながったと考えている.また,筆者は現在まで腰椎椎間板ヘルニアに対するMEDの術後短期治療成績7)や腰部脊柱管狭窄症に対するMELとME-MILDでの術後治療成績比較を行い,術式間に差がなかったことを報告している2,3).本稿では,筆者の経験から内視鏡脊椎手術を始めたい読者へ実際の手技,注意点,合併症予防について解説する.

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 本邦では超高齢社会を迎え腰痛を主訴に外来受診する患者が増加の一途をたどっている.腰部脊柱管狭窄も増加しており70歳台以上の男女で多くみられるようになってきた.高齢化が進む中で手術に対する低侵襲化も進んでおり,脊椎外科領域にも内視鏡手術の導入が進んでいる.脊椎疾患に内視鏡を用いたのはFoleyで,腰椎椎間板ヘルニア摘出手技を報告している1).その後,腰部脊柱管狭窄に対する除圧術にも応用が進み,本邦ではMinamideらがその有用性を報告している2).当科においては2009年に脊椎内視鏡手術を導入し手術例は年々増えており,本稿において疾患ごとの内視鏡手術手技を報告する.

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 腰椎不安定性を有する椎間に対する除圧術は,術後の不安定性を惹起する恐れがあるため躊躇され,一般的に固定術が選択されてきた1).しかし,それらは従来法の除圧術における結果であり,脊椎の支持組織を最大限温存できる内視鏡下手術においては,過去の報告に合致するものではない.内視鏡下椎弓形成術(microendoscopic over the top laminoplasty:ME-OTT)[図1]は,脊椎の状態を可能な限り自然経過に沿ったものに維持できることが報告されており,内視鏡下手術における術前不安定性についての適応範囲は,再検討が必要である.われわれは,腰椎椎間可動角に着目し,腰部脊柱管狭窄症(LCS)に対するME-OTTの適用範囲について検討を行った.

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 中下位腰椎椎体骨折の中でも椎体下縁が損傷した尾側終板型骨折1)では下肢に放散痛が生じることがある1,2).多くは保存的治療で対処可能であり骨癒合が得られれば下肢痛は消失する.しかし,遷延癒合や偽関節になり,さらに椎体後壁の骨折骨片が転位して椎間孔狭窄が生じたときには下肢への放散痛が増強し日常生活動作(ADL)障害をきたすことがある.これを石元ら3)は体動時腰痛4,5)が軽減後に生じる遅発性神経根症として報告した.このような椎体下縁後壁損傷により生じた椎間孔狭窄に対し,われわれは全(経皮的)脊椎内視鏡を用いて椎間孔狭窄の開放術を行ってきたが,必ずしも良好に対処できたとはいえなかった.しかし,いくつかの椎間孔狭窄に対する本手術法を経験するに従い,症例4(表1)に行った全周型絞扼に対する全周性除圧術は本疾患に推奨される除圧手術法と考えられるので,手術法を紹介し,椎間孔狭窄の成因と病態につき考察する.

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 これまで椎間孔部における神経圧迫病変はきわめてまれな病態と認識されてきた.過去にhidden zoneと表現されてきたこれらの部分での圧迫も,三次元MRIや電気生理学的検査により診断が可能となり1~3),決してまれな病態でないことも判明している4)

 L5神経根症を呈する腰部脊柱管狭窄症例に対してL4/L5脊柱管内の除圧を施行し,術中所見や術後画像においても除圧が良好であるにもかかわらず術後下肢痛や間欠性跛行が残存する症例を経験することがある.多くの原因の中にL5/S1椎間孔部狭窄に伴うL5神経根症が合併した重複病変(double lesion)の見落としが考えられる.

 第5腰神経がL4/L5脊柱管内とL5/S1椎間孔部の2ヵ所で圧迫される重複病変に対して,これまでは2ヵ所の圧迫部位を1ヵ所ずつ順に内視鏡下に除圧を行い,安定した成績をおさめてきた.しかしながら,椎間孔部単独に対する内視鏡下後方除圧術の平均手術時間141.6分に対して脊柱管内および椎間孔部で圧迫を認める重複病変の平均手術時間は217.3分と,手術時間が長くなるという欠点を有していた5).手術時間を短縮することでさらなる手術の低侵襲化を獲得する目的で,第5腰神経の重複病変に対して2人の術者と2つの脊椎内視鏡を用いて行う同時進行手術(tandem operation)を考案したので報告する.

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 烏口鎖骨靱帯損傷を伴う陳旧性肩鎖関節脱臼に対して手術的治療を施行することは比較的まれである.しかし,時に,新鮮肩鎖関節脱臼に対する保存的治療や手術的治療による肩鎖関節の整復が不良であった場合,肩甲帯機能不全に基づく肩甲帯周囲筋の筋疲労や鈍重感,肩挙上や水平内転時の痛みなどの症状が残存し,日常生活動作(activity of daily living:ADL)に支障をきたす場合もある.そのような症例に手術的治療を施す場合には,破綻した肩鎖靱帯や烏口鎖骨靱帯の代用として生物学的補強が必要となることが認識されるようになってきた1).しかし,その術式はいまだ確立されたわけではない.以下,本稿ではわれわれが施行している半腱様筋腱を用いた烏口鎖骨靱帯再建術の術式,治療成績を報告する.

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 鏡視下腱板修復術(arthroscopic rotator cuff repair:ARCR)は,現在,縫合糸アンカーを用いたsingle-row法やdual-row法,suture bridge法が主流であるが,縫合糸アンカー特有の合併症である縫合糸アンカーの脱転や縫合部への応力集中,医療コストなどの問題点がある.

 一方,縫合糸アンカーを使用しない腱板修復法として骨孔式腱板修復法がある.骨孔式ARCRは手技が煩雑とされているが,上記の縫合糸アンカー特有の問題点を回避でき,臨床成績,コスト,手術時間など総合的に判断し,現時点では,われわれはArthro-Tunneler(Wright Medical社,Memphis)を用いた骨孔式ARCRを採用している.Arthro-Tunnelerは骨孔式ARCRを簡便に行うことができるデバイスであり,一般的な前外側ポータルから簡便に骨孔をL字状で作製できる(図1).直線状の骨孔式ARCRの際にみられた外側よりさらに遠位に追加ポータルを作製する必要がないため,追加した遠位ポータルでの腋窩神経損傷のリスクがなく,通常の縫合糸アンカーを用いたARCRと同じポータルでの手術が可能である.われわれはこれらの理由で2012年5月から,Arthro-Tunnelerを用いた骨孔式ARCRを採用しており,これまでに少しずつ手術手技を改良してきた.

 本稿では,Arthro-Tunnelerを用いた骨孔式ARCRの手術手技の実際,臨床成績,合併症とその対策および文献的な考察を述べる.

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 腱板大断裂および広範囲断裂に対する腱板修復術は再断裂率が高いことが報告されている1).そこで,腱板大・広範囲断裂に対して鏡視下腱板修復術を施行する際に修復部に吸収性人工生体材料であるポリグリコール酸(polyglycolic acid:PGA)シートを被覆させた.本術式の成績について報告する.

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 肩関節前方脱臼は,若年者から高齢者まで生じる頻度の高い外傷であり,反復性脱臼の原因として,両極性骨欠損(bipolar bone defect)が問題となる.両極性骨欠損とは,肩関節前方脱臼時に生じる関節窩前方骨欠損(bony Bankart lesion)と上腕骨頭後上方骨欠損(Hill-Sachs lesion)の双方を有する病態を指す.そこで,肩関節前方脱臼の治療法は,Yamamotoら1)が提唱した「glenoid track concept」やGiacomoら2)が提唱した「on-track/off-track concept」をもとに選択されるため,「関節窩欠損サイズ」や「on/off-track lesion」など骨形態を考慮した治療方針の選択が重要とされている1,3).われわれは,当院における30歳以上の中高年者でoff-track lesionを呈する反復性肩関節前方脱臼に対して,鏡視下Bankart修復術(ABR)に加えてremplissage法を施行し,その早期術後成績について検討した.

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 関節窩骨欠損やコンタクト/コリジョンスポーツ(以下,コンタクトスポーツ)は,反復性肩関節脱臼に対する鏡視下Bankart修復術(arthroscopic Bankart repair:ABR)後再脱臼の危険因子である1,2).関節窩骨欠損と同時にHill-Sachs病変を認めるものはbipolar lesion3)とされ,glenoid trackを逸脱すると再脱臼につながる.Off trackを防ぐためには関節窩骨欠損の修復またはHill-Sachs病変の処置が必要となり,関節窩骨欠損に対しては烏口突起移行術4,5)や骨移植6,7)などの骨性再建が主に行われている.

 われわれは,関節窩骨欠損例に対する鏡視下Bankart修復術の治療成績を向上させるため,関節窩骨性再建として関節鏡下自家腸骨移植術を行っていた.しかし,この方法では自家組織を犠牲にするとともに,移植骨の骨吸収などの問題点があった8).これらの問題を解決するため,骨伝導能の高いNEOBONE(Aimedic MMT社,東京)を素材として,関節窩骨欠損部を補塡する形状の人工骨を開発した9,10).現在われわれは,この人工骨を用いて,解剖学的であり自家組織を犠牲にしない鏡視下骨移植術による関節窩骨性再建を併用した,double anchor footprint fixation(DAFF)法による鏡視下Bankart修復術を行っている11).本稿ではこの術式を紹介するとともに,その術後成績を報告する.

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 肩甲骨骨折は全骨折の0.4~1%に相当し,関節窩骨折はその10~30%と比較的まれな骨折であるが1,2),肩甲帯の合併損傷を併発することが多く3),しばしば治療に難渋する.また関節窩骨折は肩甲上腕関節の関節内骨折となり,転位が生じていた場合には関節面を正確に整復する必要があるうえ,早期に可動域(ROM)訓練を開始するためには強固な固定が望ましい.

 腱板構成筋により覆われている肩甲上腕関節では,直視下に骨折部を確認することが困難である.そのため近年では肩関節鏡視下に骨折を整復し,スーチャーアンカーなどで固定をする術式が報告されている4).ただし骨折の整復操作に難渋することや,骨折部の固定性が得られないことが危惧される.われわれは,肩関節鏡を併用することにより,関節鏡視下に骨折の整復を確認し,直視下に関節包外で骨折の整復および内固定を行っている.これにより正確な関節面の整復と強固な固定が可能となり,確実な骨癒合と早期の機能回復が期待できる.

 肩甲骨関節窩骨折の治療においては,関節窩骨折の形態や肩甲帯合併損傷の有無により治療方針を検討する必要がある.本稿では,肩甲骨関節窩骨折の分類として広く用いられているIdeberg分類5)に基づき,各骨折型に対する関節鏡補助下整復固定の手術手技を述べる.

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 難治性の石灰沈着性腱炎に対する鏡視下石灰除去術はその良好な成績が報告され1),当科でも保存的治療に抵抗する症例に鏡視下石灰除去を行っている.鏡視下に石灰沈着部位を詳細に観察すると,大結節の骨表面に石灰塊が固着している症例や大結節海綿骨内に半球状の石灰塊がある症例を経験する.術中に大結節表面,骨内への連続性を認めた石灰沈着性腱炎の6肩について報告する.

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 上腕骨近位端骨折は全骨折の中でも頻度が高く,若年者では転落や事故により受傷し,高齢者では骨脆弱性を基盤とした骨折であることが多く,高齢化が進んでいる本邦では頻度が高くなっている.上腕骨近位端骨折に対する観血的骨接合術の治療成績はおおむね良好であるが,成績不良例の報告も散見される1).そこでわれわれは,上腕骨近位端骨折の治療,および術後合併症に対して関節鏡を応用したので症例を提示し報告する.

鏡視下手術の進歩――小関節から脊椎まで Ⅲ.肘関節

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 変形性肘関節症(OA肘)は他のOAに比較してまれであるが,骨棘形成が強く,遊離体や関節包の拘縮を生じる.上肢を使用する職業やスポーツ選手の男性に多く,疼痛,可動域(ROM)制限,遊離体などによる機械的な症状を訴える1).治療は高齢者で末期のOA肘であれば人工肘関節置換術の適応であるが,手術を必要とする患者は比較的若年であり,初期~中期の変形性関節症性,また非荷重関節であることもあり鏡視下関節形成術の適応となる.当科におけるOA肘に対する鏡視下肘関節形成術の手術方法と臨床成績について報告するとともに,術式について紹介する.

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 変形性肘関節症(肘OA)は,肘関節運動時の痛み,運動後の痛み,最大可動域(ROM)での痛み,急な激痛などを呈する.さらに,顔に手が届かない,ボタンがしめられない,などROM制限による機能障害を認め,急な激痛とともに肘を動かせなくなるロッキング現象などを呈する.これは,労働やスポーツにより上肢の負担が増えることで,関節内に軟骨変性,骨棘や遊離体が形成されることが主な原因である.

 肘関節は,重要軟部組織が複雑に存在するために関節内の展開は容易ではない.Tsugeら1)やWadaら2)は,観血的に関節を展開して直視下に遊離体と骨棘切除を行い,良好な治療成績を報告している.一方で,関節鏡の発展と解剖学的に安全なポータルの報告により,侵襲の少ない関節鏡手術が肘関節へ応用されるようになった3)

 本稿では当科で行っている肘OAに対する関節鏡視下形成術を紹介し,その治療成績について述べる.

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 変形性肘関節症(肘OA)は,関節軟骨の摩耗,変性と骨棘形成を主な特徴とする疾患である.主な症状としては,最大可動域(ROM)でのインピンジによる疼痛とROM制限,遊離体によるロッキング,および尺骨神経障害である肘部管症候群である.

 近年,肘関節において関節鏡手術が広がっており,肘OAに対しても行われている1~3).その特徴としては,低侵襲である手技により,早期の回復が期待できる点である.一方で,一度に観察できる範囲が限られるため,全体像が把握しにくいという難点がある.筆者らはCTデータを用いて術前シミュレーションを行い,鏡視下手術の際に役立てている4,5).以下にその手法と,鏡視下手術の方法や成績について報告したい.

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 成長期に発症する肘離断性骨軟骨炎(OCD)いわゆる外側型野球肘に対する低侵襲手術として,筆者らは2013年以降,市販キットに独自の工夫を加えた肘関節鏡視下骨軟骨柱移植術[鏡視下osteochondral autograft transfer(OAT)]を確立し,成績を報告,術式の改善を重ねてきた.また治療困難とされる外側広範型OCDに対しても本法を応用した鏡視下骨軟骨柱固定術(arthroscopic osteochondral peg fixation:AOCPF)を施行している.術式の詳細と成績を解説する.

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 上腕骨外側上顆炎の病因は短橈側手根伸筋(ECRB)腱起始部の変性が主因であるが1),難治例では滑膜ひだ障害,軟骨損傷,関節包損傷などの関節内病変や最近では外側側副靱帯弛緩による軽度肘外側不安定症の合併が報告されている2).本稿では難治性上腕骨外側上顆炎に対する鏡視下手術を安全に行うための手術手技および鏡視下手術の治療成績について報告し,成績不良例についても検討を行った.

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 上腕骨内側上顆炎は多くの症例で生活指導,薬物療法,理学療法などの保存的治療により症状の改善が期待できる.保存的治療が奏効しない難治例には手術的治療が考慮され,直視下に屈曲回内筋群起始部の病巣を切除する術式が行われている1~4).上腕骨外側上顆炎では直視下手術のほかに鏡視下での病巣切除術が施行されており,良好な成績が報告されている5~7).上腕骨内側上顆炎に対しても屍体標本を用いた研究により鏡視下手術が技術的に可能であることが示され8),臨床応用による治療成績も報告されている9,10).本稿では上腕骨内側上顆炎に対する鏡視下手術の術式と治療成績について概説し,その適応と限界および直視下手術と比較した利点と問題点について考察する.

鏡視下手術の進歩――小関節から脊椎まで Ⅳ.手部・手関節

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 遠位橈尺関節(DRUJ)障害に対するSauvé-Kapandji(S-K)法は,良好な治療成績が報告されているが,手術では伸筋支帯や伸筋腱,関節包,三角線維軟骨複合体(TFCC)などを展開,処置しなければならず,決して侵襲が少ない手術法とはいいがたい.われわれはこの問題を克服するとともに,障害部位や損傷状態,合併損傷などを正しく診断する目的で,鏡視下によるS-K法を行ってきた.本稿では本法の手術手技やその注意点,また手術適応,治療成績,合併損傷などについて述べる.

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 手関節周囲に発生するガングリオンは手関節背側部痛や整容面での問題から手術になることが多い1).近年,手関節背側部痛の原因としてpain and hypermobility wrist syndrome(PHYWS)という概念が提唱され2),背側関節包の摩擦による炎症や後骨間神経関節枝の圧迫が原因と考えられ,舟状骨月状骨間での不安定性(SL不安定性)の前駆症状とも考えられている.われわれは,手関節周囲に発生したガングリオンに対して関節鏡視下交通孔拡大術を用いて治療を行ったので,その有効性を示すとともに,今後の課題を述べる.

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 手根管症候群(CTS)は,1863年にPagetによって最初に報告された.正中神経の絞扼性圧迫または非炎症性虚血に起因し,すべての絞扼性単神経障害の90%1)とされ,成人人口の1.5~3%である2)

 手根管症候群に対する外科的手技は,Cannonら3)が,直視下に屈筋支帯を切離する観血的手術を報告し,世界中で標準的観血的手術として普及した.しかし,この観血的手術は,健常組織に損傷を加えるために,術後の日常生活動作(ADL)制限や横手根靱帯と皮下組織との癒着が大きく,pillar painの原因になることで日常生活や社会復帰に時間を要することがあった.

 そこで奥津ら4,5)は,健常組織に侵襲がない方法として手根管内視鏡手術を可能とするuniversal subcutaneous endoscope(USE)systemを開発した.このUSE system(図1)を用いた内視鏡下手根管開放術は,透明な閉鎖性の外套管と内視鏡を用いて,内視鏡挿入時から手術終了まですべての手術操作を内視鏡の観察下に行うことが可能で,おのおのの組織を確認したうえで手術操作を行うため,安全に手術目的を達成することができると考える.

 筆者らは,現在,USE systemを用いた内視鏡下手根管開放術を行っている.本稿では本術式について報告する.

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 手根管外鏡視手根管開放術(supraretinacular endoscopic carpal tunnel release:SRECTR)は,屈筋支帯上に皮下トンネルを作製して鏡視する方法で,直視下手術と同様に屈筋支帯と正中神経が下方視できるため違和感が少ない.本法は手根管内にカメラを挿入しないため神経に愛護的であり,支帯の切り残し,神経損傷,腱損傷といった合併症がきわめて低い.

 一般的に行われる鏡視下手根管開放術(ECTR)は手根管内にカメラを挿入し屈筋支帯を上方に見上げながら行う手術で,直視下法とは視野が異なる.また,手根管内圧が上昇して神経損傷を起こす懸念や予期せぬ腱損傷が発生している場合がある1,2)

 われわれはSRECTRを手首皮線上横皮切の1ポータル法で行っている.当科でSRECTRを行った特発性手根管症候群160例176手[男性52手,女性124手,平均年齢64.2(40~89)歳,病期は浜田分類でgrade 1が114手,grade 2が51手,grade 3が11手]を対象として検討を行った3).検討項目は直視下法への転換の有無,支帯の切り残し,神経損傷,血管損傷,腱損傷など合併症の有無,ターニケットによる駆血時間とした.術後の評価は,3ヵ月以上観察が可能であった149手を対象にKellyの評価法を用いて行った4).また手根管症候群の術後には屈筋支帯切離部の疼痛(pillar pain)が発生することが知られている.本法施行後の16例17(男性7,女性10)手で術後4週でのpillar painの有無を圧痛計で2.5kgの圧痛を加え評価した.

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 鏡視下手根管開放術は,手根管内に挿入した直径4mmの内視鏡で横手根靱帯を観察しつつ,専用ナイフで切離する方法である.当科では,手掌中央と近位手首皮線中央の2ヵ所の小皮切で行う2ポータル法を行っている.鏡視下手根管開放術は,整形外科で行う他の関節鏡手術と比較し,内視鏡操作にいたるまで,さらには内視鏡操作の終了後にも注意すべき点が多くあり,直視下手根管開放術の経験が少ない術者には,非常にハードルの高い手術であると考える.本稿では,自身の経験から得られた2ポータル鏡視下手根管開放術のコツを紹介する.

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 手関節尺側部痛の治療は,その多くが病態不明であったため,手術方法として尺骨短縮術や三角線維軟骨複合体(TFCC)切除術などが行われてきた.1981年にPalmerら1)がTFCCの解剖と機能を報告し,1996年にNakamuraら2)がTFCCの三次元構造を提唱して以来,その解剖学的特徴が徐々に解明されつつある.さらに関節鏡機器や技術の進歩に伴い,TFCCの治療は大きく進歩し,関節鏡下に病態を診断でき,同時に一期的に修復術が行えるようになった.当科では,TFCCの構造を考慮し,解剖学的再構築を目標として,尺骨小窩剥脱は経尺骨的に尺骨小窩へプルアウト法で,周辺靱帯損傷は経関節包で修復している.当科で行っているTFCC損傷の治療成績を調査し,関節鏡視下手術の適応と限界を検討する.

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 内軟骨腫には単発性のものと多発性のものとがある.わが国の統計1)では単発性内軟骨腫は骨腫瘍の中で単発性骨軟骨腫に次いで多く,原発性骨腫瘍の14.9%で良性骨腫瘍の20.6%である.単発性内軟骨腫は上肢に発生する骨腫瘍の中で最多であり,指骨や趾骨に多く発生する.指骨に発生するものは56.8%,中手骨は14.5%,趾骨は13.4%,中足骨は1.6%である.

 内軟骨腫の治療は骨皮質を大きく開窓しての病巣掻爬が広く行われている.掻爬した後に自家骨移植が行われていたが,最近ではβ型リン酸三カルシウム(β-TCP)などの人工骨を充塡することもある.

 しかし,1988年に小児例に対して骨移植なしの開窓病巣掻爬のみを行って良好な成績が報告2)され,1990~1991年にかけて成人例でも同様の報告3~5)がなされている.われわれも,内軟骨腫に対して開窓掻爬術後に自家骨移植を行った症例と掻爬術のみを行った症例を比較・検討して,手指の内軟骨腫に対しては原則として骨移植は不要であると結論した6).骨移植を行わない病巣掻爬であれば関節鏡を応用できると考えて,1992年以降,手指および足趾に発生した内軟骨腫に対して低侵襲の鏡視下掻爬術を行ってきた7~11)

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 手指の小関節の鏡視は,1975年に陳ら1)が環指の遠位指節間(DIP)関節についてはじめて報告したが,小さな関節鏡と手術器機が必要であるため,中手指節(MCP),近位指節間(PIP),およびDIP関節に関節鏡を応用した報告は非常に少ない.

 本稿では,手指の小関節における関節鏡下手術の適応と限界について述べる.なお母指と他の指で関節の解剖学的構造は類似しているので,区別せずに記述する.

鏡視下手術の進歩――小関節から脊椎まで Ⅴ.股関節

股関節鏡視下手術の進歩 渡邊 宣之
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 関節鏡の黎明期には,膝関節,肩関節などと異なり,特に厚い軟部組織と筋層に覆われた股関節は,関節腔に関節鏡を到達させ組織を観察するのがやっとの状態であった.股関節鏡が治療的手術を行えるまでに発展できたのは,術中イメージの使用,牽引により関節腔にスペースを作り出す牽引手術台の応用,関節包の切開などの手術技術の開発と,関節内に安全に関節鏡を到達させるガイドワイヤの開発,止血が可能なradio frequency system(RF)プローブ,良好な視野をもたらす液圧を保つ潅流ポンプなどの器機開発によるところが大きい.

 診断技術の向上により対象疾患の変革がみられたことも見逃せない.当初は遊離体切除や,また病態として末期変形性関節症(OA)にも適応していた股関節鏡視下手術であるが,特に注目されるきっかけとなったのはGanzらが提唱したfemoroacetabular impingement(FAI)の概念とその手術適応に相性がよかったことである.手術機器の工夫と開発,技術の向上により,股関節鏡視下手術はブレイクスルーを果たし,現在はFAI以外の疾患への適応や,3Dイメージングや超音波の導入など,さらなる拡充を予感させる.

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 近年の股関節鏡の普及や技術の発展により,femoroacetabular impingement(FAI)やそれに併存する関節唇損傷,軟骨損傷などに対し鏡視下手術が広く行われるようになり,その良好な成績が報告されている1~4).さらにcam病変と変形性股関節症(OA)の関連も報告されており5),股関節鏡手術はjoint preservationや人工股関節全置換術(THA)までのtime saving手術としての役割も期待されている.一方,関節内処置を行ったにもかかわらず股関節周囲に痛みが残存する症例が存在するのも事実であり,これらの痛みの原因として関節外病変の存在を考える必要がある.問診,身体所見,エコーガイド下ブロックなどから関節外病変と診断した場合,まずは保存的治療を行うことが多いが,スポーツや仕事への早期復帰を希望する症例や保存的治療が無効な症例に対しては,積極的に鏡視下手術を行っている.本稿では当科での鏡視下手術の適応として頻度の高い,下前腸骨棘炎(anterior inferior iliac spinitis:AIISpinitis),大転子疼痛症候群(greater trochanteric pain syndrome:GTPS)を中心に,その診断と手術の実際について述べる.

鏡視下手術の進歩――小関節から脊椎まで Ⅵ.膝関節

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 前十字靱帯(ACL)損傷などの外傷に伴って外側半月板断裂が生じたものの,長期間放置されたために変性断裂が進行し,縫合できずに部分切除せざるをえないことがある.また,成長期に円板状半月に対して半月板全・亜全切除術を受けて,壮年期に膝関節痛を訴える患者に遭遇することがある.本邦においてこのような半月板傷害による膝関節痛に対する根本的な治療は確立されていない.

 同種半月板移植術は,全身的な拒絶反応が生じないことや生着することから,海外では半月板切除術後の膝関節障害に対する治療法の一つとして位置づけられている1).当科では2016年8月から本法を行っている.本稿では当科における関節鏡支援下同種半月板移植術の実際と治療成績について述べる.

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 半月板切除術後に膝関節症性変化を生じることが報告され1),半月板温存の重要性が認識されている.近年,関節鏡手術手技の進歩や新たな手術手技の開発がなされ,その技術をサポートする手術器具の開発,発展に伴い,以前までは切除術の対象になっていた半月板損傷や断裂が修復術の対象となり,“save the meniscus” の理念のもと,可能である限り半月板を温存させ,再機能化させることが可能になってきている.本稿では,当科で行っている半月板損傷に対する修復,再機能化に向けた治療法について解説する.

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 内側半月板後根損傷(medial meniscus posterior root tear:MMPRT)は内側半月板(medial meniscus:MM)のhoop機能を破綻させてMMの逸脱を招き,内側コンパートメント圧を正常の約2倍まで上昇させる1).この圧の上昇は軟骨に対して強い負荷をかけ,特発性骨壊死(spontaneous osteonecrosis of the knee:SONK)の発症2)や変形性関節症(osteoarthritis:OA)の進行3)の原因となり,結果として人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)にいたる症例もある.一般に中高年の女性に好発し,軽微な外傷で発症する.症状は膝の後方または後内側に比較的強い痛み(painful popping)4)を発症時に自覚する症例が多いが,その後いったん症状が改善するケースがあり,発症時期の特定が困難である場合もあるため入念な病歴聴取が必要である.さらに確定診断にはMRIによる特徴的な所見(ghost sign,cleft sign,giraffe neck signなど)5)の読影が必要であることより見逃される場合も多い.しかしながら前述のメカニズムを考慮すると早期の診断と修復が必要であることはいうまでもない.

 このMMPRTに対する修復術としては,プルアウト法が一般に用いられる.これは脛骨関節面のMM後根付着部に脛骨前面から骨孔を作製し,MM断端にかけた縫合糸を経骨孔的に前方に引き出し牽引固定することで,MM断端の脛骨後根付着部への整復および癒合をはかるもので,骨孔の牽引方向は通常脛骨前内側方向である.しかしながらMM後根部の脛骨付着部の線維方向に着目すると,その走行は前外側方向に向かっている.つまり後根部においてより解剖学的な再建を行うためには,骨孔を脛骨前外側方向に作製し,MMをその線維方向にプルアウトする方法が望ましいと考えられる(図1).

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 近年,50~70歳台の女性に好発するとされる内側半月板(medial meniscus:MM)の後方付着部における断裂(後根断裂)[posterior root tear:PRT]に対する関心が高まっている1).MMPRTはMMの内側方逸脱のみならず,膝関節の屈曲動作に伴う後内方逸脱を引き起こす2).また,MMPRTによりMMのsecondary stabilizerとしての機能が破綻することから,膝関節軟骨の接触圧をMM全切除と同等にまで増大させることが知られている3).MMPRTを放置すると膝軟骨下骨の不全骨折,骨髄浮腫,変形性膝関節症(膝OA)をはじめとする膝関節の退行性変化が急激に進行することから,MMPRTを早期にかつ確実に診断する必要がある.しかし,MMPRTは階段昇降,歩行,しゃがみ込み,踏み外し,椅子からの立ち上がりなど軽微な外力で発生することから4),患者,医師ともに病状を軽視してしまう傾向があり,MMPRTの診断,治療の機会を逸しているものと考えられる.また,magnetic resonance imaging(MRI)における特徴的な所見が報告されているにもかかわらず,MMPRTの存在が見逃されていることも多い.さらに,MMPRTの診断時に膝関節軟骨変性が中等度以下である場合は,早期にMMPRTに対する経脛骨pullout修復術などを選択する必要があるが,技術的に高度であるという先入観からか一般整形外科医には敬遠され,無為に保存的治療が継続される傾向がある.

 当科ではMMPRTの診断,治療に関する研究を行っており,これまでに,① MMPRTの診断に有用な新しいMRI所見(giraffe neckサイン)や受傷機転について調査し4,5),② MM後根付着部の組織学的解析に基づいた脛骨骨孔作製が可能となる精度の高い手術機器(MMPRTガイド,Unicorn Meniscal Rootガイド)の開発にも携わってきた6~8).また,③ 安全かつ簡便にpullout修復術を行う手術術式を考案し9~12),MMPRTの病態や術後臨床成績に関する研究を継続してきた13,14)

 本稿では,MMPRTの診断におけるコツとpullout修復術の実際について概説したい.

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 円板状半月は0.4~17%の有病率1)であるが,特にアジア人種に多いと報告されている2,3).円板状半月は正常の外側半月より大きく厚い形状で損傷をきたしやすく,疼痛,クリック音,ロッキングなどの症状を呈する.近年,有症状の円板状半月の38~88%は円板状半月周囲の不安定性(peripheral instability in discoid lateral meniscus)であることが報告され4,5),単純な半月切除術より縫合を併用した形成術が推奨されている6).しかしながら,squaringやcondylar cutoff sign7)で知られるように成人(骨端線閉鎖後)の円板状半月を有する膝関節はそれに適合した形態である.そのため関節鏡視下円板状半月の形成術に関しては,適切な切除量や目標とする半月の形状に関する根拠,情報に乏しい.

 一方で,円板状半月の体部中央の組織は線維配向もばらつき脆弱である8).円板状半月の切除量を最小化し縫合術を加えたとしても術後に半月の逸脱や変形性関節症の悪化は避けられない9,10).したがって筆者らは,ロッキングを呈する症状の強い円板状半月症例に対する関節鏡視下手術のポイントとして丈夫な組織であるperipheral rim,free edgeを触らず(切除を加えない),脆弱な半月体部を露出させないことにしている.本稿ではロッキングを主とする有症状の円板状半月に対する関節鏡視下手術の詳細について概説する.

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 膝の滑膜ひだは胎生期の滑膜性隔壁の遺残正常組織であり,その発生起源より膝蓋上,膝蓋内側,膝蓋下,膝蓋外側の4種類が同定されている(図1).その中で膝蓋下滑膜ひだは,一般的にはligamentum mucosumとして知られ,大腿骨顆間窩の前方から起こり,前方へ下行し,前十字靱帯の上方を平行に走行し,膝蓋下脂肪体に付着する.Kimらは200例の関節鏡所見から膝蓋下滑膜ひだは85.5%に存在し,その形態より4つの型に分類でき,separate typeが最多であったと報告している(図2)1).膝蓋下滑膜ひだは通常,臨床症状を呈することはほとんどないが,その正常な弾性を失い,線維化を生じると,膝の動的な障害の原因となり,時として症候性となりうる.症候性膝蓋下滑膜ひだの病態は,膝への外傷などが契機となり炎症が惹起され,滑膜ひだの線維化,肥厚化,弾性低下,緊張する索状物への変化,大腿骨顆間窩とのインピンジメント,連続する膝蓋下脂肪体後面の炎症,また膝蓋骨軟骨面の変化などを引き起こし膝前面痛の要因となりうる.

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 人工膝関節全置換術(TKA)は除痛や膝関節機能の再獲得に優れた手術であり,本邦では年間約8万例の初回TKAが施行されている.一方,TKA後の拘縮膝は生活の質(QOL)を低下させるため,追加手術の適応となることがある.そこで,TKA後の拘縮膝に対する治療戦略を紹介する.

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 膝前十字靱帯再建術(anterior cruciate ligament reconstruction:ACLR)において,靱帯の固定にはさまざまなデバイスが使用されている.Interference screwやsuspensory typeのデバイスが最近は多く使用されており,素材も金属,吸収性材料,プラスチックなど多種多様である.われわれは,金属アレルギー患者に対して非金属固定材料であるpolyether ether ketone(PEEK)素材のQuattro Link Knotless Anchor(QL:Zimmer-Biomet社,Warsaw)を用いてACLRを行った症例を契機にQLを用いたACLRを行っており,文献的考察を含めて報告する.

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 急性炎症性膝関節炎は,整形外科の日常臨床において頻回に遭遇する病態の一つである.たとえば関節リウマチ(RA)や偽痛風という診断がすでに確定し,膝関節炎のエピソードを繰り返している患者ならば,診断に迷うことは少ない.しかし,診断未確定患者を治療する場合は,鑑別診断から始めなければならない1~7)

 急性炎症性膝関節炎の鑑別診断を行う際にもっとも注意を払うべき疾患は,化膿性関節炎である.化膿性関節炎の鑑別は,病歴聴取,身体所見や採血のみでは困難であり,関節液検査や細菌学的検査が必要となる1~7).そのため,化膿性関節炎を疑った場合はすみやかに関節穿刺を行い,関節液検査や細菌塗抹検査の結果をもとに治療方針を決定しなければならない.しかしながら,夜間休日いわゆる時間外に関節液検査や細菌学的検査が施行可能な施設は限定される.さらに,診断上もっとも重要である細菌培養検査はリアルタイムでは結果が判明せず,初診時には診断の参考にならない.

 われわれは,何らかの理由ですぐに関節液検査や細菌学的検査を行うことのできない急性炎症性膝関節炎の患者に対し,局所麻酔下に膝蓋上嚢から関節鏡を挿入し,大量の生理食塩水による関節内洗浄を行っている.

 本稿において,その実際を紹介する.

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 脛骨顆間隆起骨折は,前十字靱帯(anterior cruciate ligament:ACL)の脛骨付着部の剥離骨折であり,放置すると膝関節の不安定性を残す可能性がある.われわれは,手術的治療を行った本骨折の治療成績を検討したので,文献的考察を加え報告する.

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 従来から良性骨腫瘍の手術は,腫瘍のサイズに合わせた骨開窓を作製して直視下に腫瘍切除することが標準的とされてきた.一方,骨髄鏡手術は,関節腔に対する関節鏡手術と同様に,骨髄腔を鏡視しながら骨内の病変にアプローチする鏡視下手術である1,2).本法の特徴は,従来からの直視下手術より低侵襲で行えることにある.当科では2000年より本法を行ってきた.発生部位や組織型は異なっても,骨腫瘍の多くは骨髄腔内(骨内)から発生するため,本法の汎用性は高い.よって,内軟骨腫3,4)や骨内脂肪腫5)などの再発率の低い良性骨腫瘍には,その有用性が報告されている.われわれは,中間悪性腫瘍で局所再発率の高い骨巨細胞腫6)にも,本法を活用している7).よって本稿では,骨巨細胞腫に対する本法の適応,手技,臨床成績を概説する.

鏡視下手術の進歩――小関節から脊椎まで Ⅶ.足部・足関節

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 陳旧性足関節外側靱帯損傷に対する手術法として,海外では遺残靱帯と伸筋支帯を利用したBroström-Gould法がゴールデンスタンダードとされてきた1,2).しかし,足関節鏡の普及と手術の低侵襲化の流れもあり,2009年より鏡視下外側靱帯修復術の報告3)が散見されるようになった.さまざまな術式が報告されているが,どの術式においても短期成績は良好である4~10).それぞれの術式に手技上の違いはあるが,基本的には関節鏡視下にスーチャーアンカーを外果に挿入し,残存している前距腓靱帯(anterior talofibular ligament:ATFL)を縫縮する方法である.

 2016年以降,当院では外果に挿入したアンカー糸を用いてlasso-loop stitchでATFLを縫合する方法9)(K群)とracking hitchでATFLを縫縮した糸を外果にノットレスアンカーで圧着する方法10)(KL群)を行ってきた.本稿では,鏡視下外側靱帯修復術の術後成績を二つの術式間で比較したので報告する.

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 近年,慢性足関節不安定症(chronic ankle instability:CAI)に対し早期かつ安定したスポーツ復帰が可能とされるInternal Brace(IB)[Arthrex社,Naples]を用いた前距腓靱帯(ATFL)の再建補強術(IB法)が報告され,当科でも3年前よりCAIに対し足関節鏡を併用しながらIB法を実施している.本稿では本術式のピットフォール,術後成績,合併症,問題点について述べる.

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 足関節外側靱帯損傷はスポーツ障害の中でももっとも頻度が高い疾患の一つであり,ほとんどの場合functional treatmentに代表される保存的治療が行われる.しかし,その20~40%は陳旧例となり有症性の足関節外側動揺性を生じるとされており1,2),その際は手術的治療が必要となる場合が多い.手術的治療としては局所の遺残組織を用いる靱帯修復術と移植腱を用いた靱帯再建術の2つに大きく分けられるが,解剖学的修復術であるBroström法は低侵襲かつ良好な長期成績が獲得されており,ゴールデンスタンダードといわれている3,4).近年,小径の内視鏡や小さく強度の高いスーチャーアンカーが開発され,それらを用いた低侵襲である鏡視下足関節外側靱帯修復術の報告が散見されるようになり,その良好な成績が報告されている.鏡視下修復術の合併症として,浅腓骨神経障害とともに,アンカーから出ている縫合糸による縫い目の違和感といった症状があげられる.当科ではこの縫い目の問題を回避するために,特殊な構造をもったノットレスアンカーを使用して縫い目を皮下につくらない方法で鏡視下修復術を行っている.本稿では,この新しい鏡視下修復術の手術手技やピットフォールなどを詳述し,手術成績についても報告する.

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 Albertが1879年に最初の足関節固定術を報告して以来,距腿関節の関節固定術は進行期および末期の疼痛を有する変形性足関節症に対して安定した除痛効果と強固な支持脚が得られる方法として選択されてきた.足関節固定の術式の報告は,O’Brien1)らが30種以上,Kennedy2)らが40種以上あると報告している.代表的なアプローチとしては,前方,外側,内側であるが,O’Brien1)は正常な距腿関節の位置関係を得るための障害となる骨棘や果部を切除するためには,付随する軟部組織は十分に剥離する必要があり,そのために切開は大きくなってしまうと述べている.

 そこで侵襲を少なくする手術の一つとして関節鏡視下手術があげられる.鏡視下足関節固定術はShneider3)が1983年に報告して以来,欧米で良好な成績が報告されるようになり,本邦でも2000年前後から報告されるようになってきた.切開部位は鏡視のためのポータルとキャニュレイテッドスクリューのための小切開のみであるため,低侵襲で合併症の少ない方法として徐々に普及してきている.成川ら4)は鏡視下足関節固定群と従来の観血法群とで術後のvisual analogue scale(VAS)を比較・検討し,観血法群と比べて鏡視下足関節固定群では術後早期に有意に低値であることを示しており,術後疼痛においても患者負担の少ない方法と考えられる.本邦においても広く施行されるようになってきており,最近の知見について文献などより概説する.

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 足関節骨軟骨損傷に対する鏡視下手術は有用な手技である.近年,器具の改良とともにこの分野での目覚ましい発展がみられる一方,骨形態的に安定した構造を有する足関節自体の特性から,病変部へのアプローチの困難さを主としたさまざまな課題が残されている.さらに,骨・軟骨という特性の異なる二種類の組織病変であることも,治療を困難にさせる一因と考えられる.現在考案されている術式のうち鏡視下で手技が完遂可能である方法としては,骨髄刺激法であるMicrofractureおよびDrilling(順行性および逆行性),内固定術,海綿骨移植術(順行性および逆行性),Biologics移植術があげられる.これらは元の骨・軟骨の温存が可能であるDrillingおよび内固定術と,元の骨・軟骨を除去したうえで自己組織再生を期待するMicrofracture,および欠損した組織を置換する海綿骨移植術とBiologics移植術に大別することができる.一方,自家骨軟骨移植術はエビデンスレベルが高くMicrofractureとともにもっとも繁用される手技であるが1),関節面へのアプローチに骨切りを要するため,現時点では鏡視下手術の適応にはいたっていない.本稿では,足関節骨軟骨損傷に対する鏡視下手術の適応と限界について述べる.

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 母趾種子骨障害は日常診療において比較的よくみられる.診断は種子骨局所に圧痛を認め,本疾患を疑えば比較的容易である.しかし,その病態は複雑で,新鮮骨折,疲労骨折,偽関節などの外傷を起因としたもの,二分種子骨,分裂種子骨,先天性欠如といった形態異常,さらには滑液包炎,種子骨炎,神経障害や非感染性関節炎,脱臼・亜脱臼,無腐性壊死,感染など非常に多彩である.これらの病因が絡み合い起こると考えられる.機能解剖を理解したうえで身体所見をとり,X線をはじめ,CT,MRIの画像所見を参考に診断する.

 治療については保存的治療が第一選択となる.保存的治療はギプスなどの外固定,足底挿板(アーチサポートや中足骨パッド),短母趾屈筋のストレッチング,足部アーチ構造保持のための内在筋トレーニングなどがある.保存的治療に抵抗する場合は,画像所見も参考にして手術をすすめる場合もある.手術的治療には部分種子骨摘出術,全種子骨摘出術,自家骨移植術,観血的固定術などがあるが,中でも一般的に行われているのが観血的種子骨摘出術であり,良好な治療成績が報告されている1).一方で,この手術により母趾屈筋腱のレバーアームを減少させて母趾底屈力を減少させること2)や術後に外反母趾(内反母趾)を起こすこと3)が報告されている.そのため,母趾底屈筋のレバーアームを形成するsesamoid mechanismをできるだけ壊さずに種子骨を切除することがのぞまれる.われわれはsesamoid mechanismへの侵襲を考慮し,2018年から種子骨切除を関節鏡視下に行っている.この項ではその手術手技の概要を述べる.

基本情報

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別冊整形外科
1巻77号 (2020年4月)
電子版ISSN:2433-4316 印刷版ISSN:0287-1645 南江堂

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