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は じ め に
近年,50~70歳台の女性に好発するとされる内側半月板(medial meniscus:MM)の後方付着部における断裂(後根断裂)[posterior root tear:PRT]に対する関心が高まっている1).MMPRTはMMの内側方逸脱のみならず,膝関節の屈曲動作に伴う後内方逸脱を引き起こす2).また,MMPRTによりMMのsecondary stabilizerとしての機能が破綻することから,膝関節軟骨の接触圧をMM全切除と同等にまで増大させることが知られている3).MMPRTを放置すると膝軟骨下骨の不全骨折,骨髄浮腫,変形性膝関節症(膝OA)をはじめとする膝関節の退行性変化が急激に進行することから,MMPRTを早期にかつ確実に診断する必要がある.しかし,MMPRTは階段昇降,歩行,しゃがみ込み,踏み外し,椅子からの立ち上がりなど軽微な外力で発生することから4),患者,医師ともに病状を軽視してしまう傾向があり,MMPRTの診断,治療の機会を逸しているものと考えられる.また,magnetic resonance imaging(MRI)における特徴的な所見が報告されているにもかかわらず,MMPRTの存在が見逃されていることも多い.さらに,MMPRTの診断時に膝関節軟骨変性が中等度以下である場合は,早期にMMPRTに対する経脛骨pullout修復術などを選択する必要があるが,技術的に高度であるという先入観からか一般整形外科医には敬遠され,無為に保存的治療が継続される傾向がある.
当科ではMMPRTの診断,治療に関する研究を行っており,これまでに,① MMPRTの診断に有用な新しいMRI所見(giraffe neckサイン)や受傷機転について調査し4,5),② MM後根付着部の組織学的解析に基づいた脛骨骨孔作製が可能となる精度の高い手術機器(MMPRTガイド,Unicorn Meniscal Rootガイド)の開発にも携わってきた6~8).また,③ 安全かつ簡便にpullout修復術を行う手術術式を考案し9~12),MMPRTの病態や術後臨床成績に関する研究を継続してきた13,14).
本稿では,MMPRTの診断におけるコツとpullout修復術の実際について概説したい.
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