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は じ め に
この20年の医学の進歩により,腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の術式として内視鏡を使用した低侵襲手術は一般化し臨床で行われている.脊椎内視鏡手術の利点は,皮切が小さく,傍脊柱筋侵襲も少なく,さらに,カメラを術野内部に設置,拡大した視野を得ることで術野の外から視野(conventional approachやmicroscopic surgery)と比較して死角の解消になることが最大の利点と考える.また,手術スタッフと同一の視野を得ることで安全性や手術進行,教育的側面で有用である.筆者は,腰椎椎間板ヘルニアへの内視鏡下髄核摘出術(microendoscopic discectomy:MED)の適応だけでなく,特に高齢者の固定術が厳しい場合にも内視鏡下片側進入両側除圧術(microendoscopic laminectomy:MEL)を用いて,多くの脊柱管狭窄症例にも対応してきた1~3).
脊椎内視鏡手術の歴史は,1997年にFoley,Smith4)らが腰椎椎間板ヘルニアに対してMEDを発表したことに始まる.2002年にPalmer5)らが腰部脊柱管狭窄症にも脊椎内視鏡手術としてMELを報告して適応を広げた.MELは片側から責任高位椎弓間に設置して,進入側と対側の除圧を行うものである.ラーニングカーブが存在し,進入側の椎間関節の切除や対側除圧が不十分になる問題がある.そこで,MELの問題点と筋組織の低侵襲化を考慮した内視鏡下筋肉温存型棘突起間正中進入椎弓間除圧術(microendoscopic muscle preserving midline interspinatus interlaminar decompression:ME-MILD)6)が発案された.ME-MILDは正中から進入するため,conventional approachに近く,open surgeryからの脊椎内視鏡手術に移行しやすい術式と考える2,3).実際に筆者も初期の内視鏡手術では,ME-MILDの恩恵を受け,脊椎内視鏡手術の習熟につながったと考えている.また,筆者は現在まで腰椎椎間板ヘルニアに対するMEDの術後短期治療成績7)や腰部脊柱管狭窄症に対するMELとME-MILDでの術後治療成績比較を行い,術式間に差がなかったことを報告している2,3).本稿では,筆者の経験から内視鏡脊椎手術を始めたい読者へ実際の手技,注意点,合併症予防について解説する.
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