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は じ め に
内側半月板後根損傷(medial meniscus posterior root tear:MMPRT)は内側半月板(medial meniscus:MM)のhoop機能を破綻させてMMの逸脱を招き,内側コンパートメント圧を正常の約2倍まで上昇させる1).この圧の上昇は軟骨に対して強い負荷をかけ,特発性骨壊死(spontaneous osteonecrosis of the knee:SONK)の発症2)や変形性関節症(osteoarthritis:OA)の進行3)の原因となり,結果として人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty:TKA)にいたる症例もある.一般に中高年の女性に好発し,軽微な外傷で発症する.症状は膝の後方または後内側に比較的強い痛み(painful popping)4)を発症時に自覚する症例が多いが,その後いったん症状が改善するケースがあり,発症時期の特定が困難である場合もあるため入念な病歴聴取が必要である.さらに確定診断にはMRIによる特徴的な所見(ghost sign,cleft sign,giraffe neck signなど)5)の読影が必要であることより見逃される場合も多い.しかしながら前述のメカニズムを考慮すると早期の診断と修復が必要であることはいうまでもない.
このMMPRTに対する修復術としては,プルアウト法が一般に用いられる.これは脛骨関節面のMM後根付着部に脛骨前面から骨孔を作製し,MM断端にかけた縫合糸を経骨孔的に前方に引き出し牽引固定することで,MM断端の脛骨後根付着部への整復および癒合をはかるもので,骨孔の牽引方向は通常脛骨前内側方向である.しかしながらMM後根部の脛骨付着部の線維方向に着目すると,その走行は前外側方向に向かっている.つまり後根部においてより解剖学的な再建を行うためには,骨孔を脛骨前外側方向に作製し,MMをその線維方向にプルアウトする方法が望ましいと考えられる(図1).
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