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は じ め に
関節リウマチ(RA)の薬物治療の発展により,疾患活動性コントロールが多くの症例で得られるようになった.直近20年の出来事であり,以前はRAが慢性進行性の疾患であることから,疾患のケアに加えて,疾患により生じた障害のケアも同様に治療の大部分を占めていた.RAを総合的に扱う,すなわちRAのトータルマネジメントは,患者の生活活動全体を対象とする概念である.具体的には,医師による直接的な治療行為である薬物治療と手術的治療,メディカルスタッフによるケアとリハビリテーションの4本柱から構成される.したがってトータルマネジメントの半分が,医師以外が行う行為であることを考えると,RA診療にはメディカルスタッフ,特にリハビリテーション関連職種との協働は必須である.
しかしながらリウマチ友の会が刊行している『リウマチ白書2020年度版』によると,リハビリテーションを受けているRA患者の割合は23.6%にすぎず,さらにこれは年々減少している.本邦における大きなRAコホートであるIORRAコホートの研究によると,疾患活動性コントロールの年次推移は,2015年ごろまで寛解もしくは低疾患活動性の患者割合は年々増加していたが,その後は伸び悩んでいる1).National Database of Rheumatic Diseases by iR-net in Japan(NinJA)データベースでも同様の傾向にあり,薬物治療の進歩が続いているが,リハビリテーションが不要になることはなさそうである.しかし日本リウマチ学会(JCR)や各所で行われる研究会などでは,リハビリテーション関連の議論はあまり行われない.
筆者は整形外科出身のリウマチ医であるが,内科系リウマチ医と席を並べてリウマチ診療に取り組み,普段から情報交換している.その折に痛切に感じるのは,薬物治療以外に対するリウマチ医の興味のなさ,および知識不足である.手術的治療に関しては,JCRの専門研修に必須項目としてカリキュラムに含まれており,一定程度の重要性が認識されている.しかしリハビリテーションは,“医師しか処方できない” にもかかわらず,何を目的に何が行われているのか,専門医でもノータッチのままが多い.加えて,“患者のケアは医学的な内容ではない” といった発言をリウマチ医から聞くこともあり,RA患者の生活への無関心に危機感を感じることもある.
本稿では,リウマチ医自身がリハビリテーションを自ら処方するしないにかかわらず,無関心を少しでも関心に近づけるよう,または必要なタイミングで適切な医師にアプローチできるようにするための基礎知識を述べる.
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