看護教育 59巻8号 (2018年8月)

増大号特集 実習指導 虎の巻

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 医療の高度化,在院日数短縮化などの医療環境の変化,実習以外の講義科目の増加,看護系大学の急増に伴う実習施設確保の問題,教員不足のなど,実習指導の環境が大きく変化しています。特に,大学の増加は,あまり臨床,指導経験をつまれていない若手の教員が実習指導で学生と向き合うことを意味しています。こうした若手の教員に対し,実習指導のあり方や方法などについて,サポート体制もなかなか整っていません。そこで本特集では,4部構成にて,さまざまな角度から,経験の浅い先生方へ,実習指導について考えるヒントとなることをめざします。

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 実習教育は,看護基礎教育の根幹とされています。今,さまざまな場所で看護基礎教育の改革が話題にあがっていますが,そこでも,実習が大切という幹は変わりません。

 多様な設立母体や課程の教育機関で,それぞれが抱える課題や工夫点,そして今後どういった方向をめざされるのか,長い教員経験をもつ4人の先生方にお話し合いいただきました。若い先生方へのメッセージとともにお届けします。[本誌編集室]

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実習指導って楽しくないですか?

 不慣れな看護学生とともに臨地実習に行くことは,看護教員の心身に多大な負担と疲労をもたらします。規定の実習期間が終了すると,何事も起きなくてよかったという安堵感もあります。しかし,臨地実習が看護学生に大きな成長をもたらす機会であることはだれもが認めています。

 患者さんと話ができなかった看護学生が「患者さんがありがとうって私に言ってくれて……」と感謝の言葉をいただけるほど信頼されるようになり,涙ながらに実習を終了することが多々あります。「先生,先生」とアヒルの子のように付きまとっていた基礎看護学実習の看護学生が,最終段階の実習で病棟で会うと,胡散臭い目で看護教員である私をみることもありました。自分で考えながら行動しようとする学生の変化に,思わずにんまりします。

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実習でいちばん不安になるのは誰?

 実習指導に対して,みなさんはどのような印象をもっているでしょうか。実習時期が近づいてくると,“今度担当するのは,この学生たちか……”“病棟とうまくやっていけるかな……”“正直,何も(悪いことが)起こらなければいいんだけど……”などと,気を揉んだり,気が重くなったりすることも多いと思います。私もその1人であり,新任教員のときは殊に緊張していました。始まってみないとわからないこともありますが,事前に準備できることはしておきたいと,ソワソワしながら手探りで臨んでいました。ここでは,そんな私の体験も交えて,実習指導への取り組みを述べていきたいと思います。

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 臨地実習において,教員の看護師としての役割と教える役割の両立に悩む例として今回考えたいのは,教員として「学生の実習での目標を達成できるように支援すること」と,「患者の安楽・安全」のバランスをどうとるかということである。たとえば,以下のような状況が考えられる。

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 「看護過程と実践がズレているときのヒント」について応えようと思うとき,私たちが学生の実習指導をとおして感じる「ズレ」とは何であろうかと,これまでの経験から状況を思い起こした。「ズレ」にはさまざまなものがあろうが,まず教員として学生とのやりとりで感じた違和感─「ズレ」から紹介したい。

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 実習では,ベッドサイドで行われる看護実践についての「教材化」が求められます。実習場面における教材化とは,教科書教材によって与えられた教材を実践してみることではなく,また,教科書教材に述べられていることをレポートしてベッドサイドに向かい,学びを深めることでもありません。今,まさに繰り広げられている実習場面の1つひとつの出来事について,意識化させ,看護とは何かと問いかけ,看護について語ることこそ,学生の学びにつながるととらえています。そのためには,考察させたい場面や,看護について問いたい場面などを意図的につくりあげることこそ,実習場面の「教材化」なのではないかと考えます。

 ここでは,実習場面での教材化について例をあげて紹介したいと思います。

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「教えたはず」と「習っていない」の関係

 私は現在,看護系大学で教師として勤務し,看護学概論や看護技術に関連する科目,基礎看護学実習に関する科目を主に担当している。実習期間は毎日病院で教師として実習指導を行っている。

 これまで基礎教育機関で教師として勤務した期間が長く,実習指導ではさまざまなことを経験してきた。特に教師として働き始めたころの経験は,学生に学ぶことが多かった。とりわけ臨床実習をとおして,学生の受け持ち患者を,学生の背後からともにケアした経験が,学生を成長させると実感し,教師としての能力を培ってくれ,現在の私につながっている。

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 実習グループの雰囲気が悪い……,沈黙の多いカンファレンス……,助け合わないメンバーたち……,実習でのグループ運営に悩みを抱えたことのある教員は少なくないと思います。実習グループをうまく運営するために教員にできることは何でしょうか。ここではグループをチームとしてとらえることを提案し,近年,注目されているシェアド・リーダーシップという概念をヒントにこの問いに答えていきます。

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抽象的な講義内容を具体化するために

 「学生のみなさん,いよいよ看護学実習が始まります。準備はいいですか?」私は教員時代,学生にこのように問いかけていました。そして同時に自分自身にも「準備はできているのか?」と問いかけていました。ここでの準備とはいったい何を指すのでしょう。準備にはいろいろあり,知識・技術・態度の準備が必要です。本稿ではその内容を少し考えてみようと思います。

 実習にはそれぞれの年次にあった実習目標がありますが,その内容を学生は理解できているでしょうか。私は小児看護学を担当していたので,某病院の小児病棟に学生と実習に行きました。たとえば,『小児病棟の特殊性と機能を理解する』という実習目標があるとします。病院のなかでも小児病棟は成人病棟とは構造的に異なります。テキストにもそのことが書かれているのですが,それがどういうことなのかを初日のオリエンテーションの際,実際に見ることで理解できます。教員がオリエンテーションの際にその説明をするのは簡単ですが,私はあえて学生に「今から15分間でこの小児病棟をぐるっと一周して,自分なりに成人病棟と異なる点を10個書いてください」と指示しました。学生は授業で小児病棟のイメージを自分なりに描いているのですが,実際にトイレの大きさであったり,病室の廊下側の壁がガラスになっていたり,ベッドの大きさやベッド柵が高いことなどさまざまな異なった点を10個書き留めてきます。それを互いに発表することで,自分と同じ項目や気づかなかった違いを他の学生から学ぶことになります。一とおり出し合ったあと,不足部分や知っておいてほしいことを追加し,授業で話した小児の特徴を説明します。オリエンテーションでは,どうしても一方的な病棟の説明になりがちですが,意図的に違いを探すことで学生は『小児病棟の特殊性と機能を理解する』という実習目標をクリアしていきます。

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実習でのアセスメントの問題

 看護実習は,個別性をふまえた看護ケアを学ぶ場としても非常に大切である。患者が今どのような状態なのか,その原因またはそこから考えられる影響は何か。これらに関する情報を集められたとしても,それを整理し,アセスメントすることができなければ,個別性をふまえた看護ケアの展開にはつながらない。

 目に見えてわかる顕著な症状のパターンだけでなく,対象者のこれまでの経験や習慣をふまえて現在できていることは何かなど,その人の強みをアセスメントすることで,症状や生活における対象者の特徴を広くとらえることができ,それがケアの工夫・生活面での具体的な援助につながる。また,アセスメントにより1つひとつのケアに根拠をもち実施することができ,看護展開に必要な患者との信頼関係の構築にもつながる。

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看護職における主体性の意義

 看護学生は,看護基礎教育課程卒業後も生涯にわたり,専門職としての資質の向上のために自ら学習し続ける必要があり1),「学習への主体性」が求められます。学生が,看護基礎教育課程において学習への主体性を修得することは,卒業後も質の高い看護の提供に向けた学習に取り組むための基盤となります。

 これほど重要な学習への主体性ですので,教員はそれを学生から引き出し,促進することをめざした教授活動を試行錯誤しながら実践していることと思います。

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 私は大学を卒業し,看護師として3年半,糖尿病・腎臓内科・呼吸器内科病棟を経験した。当時4年目の自分は徐々にリーダー業務にも慣れ,周りを見て動けるようになった時期であり,退職後すぐに非常勤実習助手として実習指導をすることになった。臨床では断片的に学生指導に携わったことはあったが,臨床指導者講習などの受講歴もない自分が,教員として指導するのは初めてで,不安を抱えながら実習指導に取り組んだ。そして,そんな私が初めて指導で行くことになったのは,臨床での経験がまったくない精神看護学の領域だった。ここでは,初めての実習指導を経験するなかで自分が気づいたことを3つの局面に沿って振り返る。

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 私は,実習の大きな目的は,学生が机上で学んだことを看護の体験をとおして深めていくものだととらえています。「学生に良い実習をしてもらいたい」「心身ともに健康でいてもらいたい」という思いで,実習環境を整えるために,教員のみなさんは,実習先との調整をされているでしょう。実習調整として,実習打ち合わせ会議がありますが,臨床側から打ち合わせに出席するのはほとんどの場合代表者,専任臨床指導者に限られます。

 結果,多くの実習指導者は,実習に来たタイミングで初めて教員と顔を合わせることになります。実習が始まると,スタッフは交替勤務のため何日も経ってから,教員や学生と顔を合わせることになります。そうすると,スタッフにとっては,あの人がおそらく教員だろうと推測はしますが,確信をもてない状態でいます。実習も,毎週来ているわけではなく,年間数回であったり,領域別でそれぞれ違う教員が来ます。受ける側は,どの実習領域が来ているのか,また,複数校受け入れていると,どの学校が来ているのか混乱してしまいます。教員のみなさんの想定以上に,臨床側は教員のことを把握できていない場合が多いと思います。

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 昨年度「臨地実習における学生の実習目標達成度に影響を与える要因」という内容で研究を行いました。これは当病棟に実習に来た80名の学生に行なったアンケート結果を分析したものになりますが,その結果からは,実習目標達成度に影響を与える要因として「指導による学習効果」「適切な看護援助の実施」「振り返りからの学び」「看護展開の難しさ」「実践内容と目標の関連性の理解」の5つの項目があがりました。そこで,当病棟では指導者の役割として,以下の点を意識して実習指導を行っています。

(1)「指導による学習効果」が感じられた,自己の「振り返りからの学び」があったなど自己の成長を感じられるよう,学生の課題を見極め,それを克服することで,本人が成長したと感じられるよう指導する

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2年間教育を学んだ臨床教員として

 私たち聖路加国際病院クリニカルナースエデュケーター(以下,CNE,写真)は,2014年度より開校した聖路加国際大学大学院看護教育学上級実践コース(CNEコース)を修了し,2016年度から臨床における看護教育の上級実践者,および臨床に軸足を置く臨床教員として活動しています。

 CNEには,学習促進力,学習プログラム力,学習効果評価力,教育活動改善力,カリキュラム計画,参画力,社会性育成力,看護実践改革参画力,学問貢献・研究力の8つのコンピテンシーが期待され,看護学生から新人・若手看護師,学習の支援をする立場にある看護職とさまざまな段階の看護者を対象に,看護師としてシームレスに学び続ける支援を行っています。

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カンファレンスでの学びを豊かにする

 実習では,実習中もしくは実習終了後に,実習先のスタッフと学生で,学生の学びや学生が担当した患者のケアについて意見交換などをするカンファレンスが行われる。私たちがこれまでに参加したカンファレンスでは,学生が実習中の経験とそこから得た学びをうまく関連づけて語ることができず,抽象度の高い学びだけが報告されていたり,学生が実習中にうまくいかなかった実践の解決策を知ろうとスタッフに一問一答の質問ばかりを繰り返すことが見受けられた。

 そのため,カンファレンスに同席したスタッフからは,「学生からの一方的な学びの報告が多い。せっかくなら担当した患者の看護ケアについて,意見交換できればよいのにもったいない」との意見が聞かれ,スタッフのカンファレンスへの満足度は低いようだった。

第4部 実習指導の理解をさらに深める

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「経験型実習」への歩み

 看護基礎教育を専門学校と看護大学で合計7年間受けた私は,看護学生経験のエキスパートだと密かに自負しています。3年間の看護師経験を経て看護大学に入学し二度目の看護基礎教育を受けた私にとって,同級生たちとわからないことを一緒に考え,持ち寄った専門書を繙きながら,なぜを追求するディスカッションは新鮮で楽しいものでした。専門基礎の知識の深さでは舌を巻く同級生たちが何人もいました。しかしいざ実習に出るとそうした学生たちでさえ,自分の強みを十分に発揮できないでいたことに驚きました。看護師ライセンスがある私も,同じように実習していましたが,同時に同級生のメンターのような役割を担っていたように思います。当時,助手の教員たちは張り付きで実習教育をされていたので,相談しやすい存在でしたが,こんなことを聞いたらバカにされるとか,恥ずかしいと思うようなちょっとしたことは気軽に聞ける私に聞いてきました。

 看護師や教員が叱りつけるような出来事でも必ず学生なりの理由があります。学生の言語化能力の問題もあるとは思いますが,多くの学生は自分の考えたことや思ったことを十分には言えないのです。忙しそうな看護師には報告のタイミングを見つけることが難しいですし,一方的に決めつけられると何も言えなくなってしまいます。看護師ライセンスのある私であっても,看護学生として同じような気持ちを味わいました。優秀な同級生たちの,「えっ,こんなことで悩んでるの?」「こんなことで迷っているの?」という驚きもたくさんありました。学生の埋もれている経験のなかに,実は看護としてとても貴重な学習素材となる経験がかなりあることにも気づきました。私は2度目の看護学生として実習するなかで,その後,実習教育の方法論を考えるにあたっての,多くの貴重な経験をしたのだと思います。

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 昨年の夏,『看護教育のためのパフォーマンス評価 ルーブリック作成からカリキュラム設計へ』(医学書院)を発行した。この書籍は,パフォーマンス評価の単なるマニュアルではない。10年以上,看護教育実践で本当に大切なことは何かを問い続けながら試行錯誤していくなかで,パフォーマンス評価,ルーブリック,「逆向き設計」に出会い,その活用を紹介した書籍である。本稿では,本特集号のテーマである,臨地実習の指導について,パフォーマンス評価の視点から,その背景となる考えについて,象徴するような禅の言葉も照応させながら紹介する。

 あじさい看護福祉専門学校(以下,本校)の教育は学習者中心ではない。教育において学習者は学習経験の主体ではあることは否定しない。しかし,看護教育(とくに臨地実習)においては,「専門職としての第一義的な責任は,看護を必要とする人々に対して存在する」1)べきであるのだから,学生も指導にあたる教師も,患者に対する第一義的な責任を担っていると考えている。そのため,教師も学生も患者中心に看護を実践し,看護を学ぶことをめざした実習計画と評価2)をしている。

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エピソードから紐解く実習指導

 看護教育のなかで教員が実習指導に費やす時間,労力はかなり大きい。とりわけ新人教員は「実習指導に自信がない」「学生の未熟さに戸惑う」「実習指導体制を調整できない」「講義実習に関する知識や技術の不足による自信のなさ」「学生に応じた指導方法やかかわりへの不安や迷い」を経験し,大きなストレスを感じている1)。私も実習前夜に緊張して寝付けないこともある。やる気のなさそうな表情や暗い顔をしている学生にどう接したらよいかと気になるし,態度や身だしなみを厳しく指導する師長,実習生に風当りの強いスタッフに気を遣い,実習場への足取りが重くなることもある。同僚と励まし合いながら実習に向かう日々である。

 私が所属する大学では長年,教員たちによる実習指導体験を語る場が定期的に設けられている。参加する教員たちは,思い思いに実習での出来事,学生のこと,スタッフや指導者,師長とのやりとりを語る。その場で話された内容は口外されず,問題解決策を検討するわけではなく,ただひたすらしゃべるのである。教員経験,臨床経験,専門領域を問わず集まり,領域毎の実習の特徴や,指導に困った学生のその後の様子などの情報交換の場でもあり,サポートグループとしての機能もある。自分の体験を語り,他の教員の体験を聞くことを通して,自分自身の体験の内に類似の出来事を思い出し,不可解だった学生の行動に合点がいくこともある。

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「教育」の学びを振り返って

近藤 現在医学書院から,『看護教育実践シリーズ』が刊行されています。今回はそのシリーズコンセプトと同様に,教育学の専門家である中井先生と私たち看護教員とで教育をもっと充実させるためについて話し合いたいと思います。まずは,看護教員側がどのように教育を学んできたか,振り返りたいと思います。阿形先生お願いします。

阿形 私は教員になって20年弱くらいですが,実は現任校の卒業生で,京都でしばらく看護師をしていたところ,恩師から実習指導に来ないかとお声がけいただき教育の世界に入りました。病院で新人教育もしていたので,その延長線上だろうと気楽な気持ちで引き受けたので,実習に同行し,個々の学生に対して困りごとに解決の糸口を見つけ,それを患者さんの看護過程に沿ってやり遂げさせるみたいなところがスタートです。

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教育機関と実習受け入れ先双方のために

 わが国は,高齢者の増加にともない,要介護者の急増や看取りが問題となっている。2025年を目前に地域包括ケアの構築が急ピッチで進められ,在宅医療・ケアを担う人材育成が急務となっている。訪問看護アクションプラン20251)では,2025年までに在宅看護を担う訪問看護師数を現在の3倍程度(約15万人)に増やすことを目標としており,訪問看護師の離職対策や新卒の訪問看護師の育成が求められている。

 看護基礎教育の在宅看護学実習において,訪問看護ステーションでの実習はその中心をなし,生活の場における看護を理解するうえで重要である。しかし,在宅看護学実習は,他領域の実習と異なり,教員が直接学生指導をすることが大変難しく,同行する訪問看護師に学生指導を託しているのが現状である。一方,指導に当たる訪問看護師の育成は,個々の背景となる教育背景やそれまでの臨床経験,同行訪問のなかでの経験的な学びが多く,訪問看護師自身の学習能力や意欲にその効果が左右されがちである。また,訪問看護ステーションは小規模が多く,利用者の選定や調整,1人の利用者に何か所もの教育機関の学生が訪問するなど利用者やステーション,訪問看護師にかかる負担も大きい2,3)。さらに,教育機関の在宅看護学実習担当教員は訪問看護の実務経験者が3割と少ないため,教員の臨地での指導には限界がある。看護基礎教育機関の実習と現任教育の充実をめざして,看護基礎教育機関と訪問看護ステーション双方がもつ強みを生かした効果的な教育のコラボレーションが求められる。

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 大学教育において,学生の学びを促進するために,アクティブラーニングを取り入れ,学生と双方向の関係で授業をすすめることが求められている。しかし,授業目的や目標を達成するために,どのような教育方法がもっとも効果的なのかという十分な吟味なしに,アクティブラーニングをはじめとする新しい教育方法を取り入れればよいととらえている傾向はないだろうかと,危惧する面も自分にあった。

 私は,博士後期課程在学中の2014年3月に本セミナーを主催されている講師による聖路加看護大学(現聖路加国際大学)FNF(フューチャー・ナースファカルティ)育成プログラム(2日間コース)に参加した経験があった。このプログラムは大学教員として授業展開力向上のために必要な教授に関する知識やスキルを修得することを目的としており,参加者は5分間の模擬授業を設計,実施,評価することが課せられた。そのプログラムでシラバスの概要は学習していたが,2017年度より本学で日本初の学士編入2年コースが開講したことで,授業内容をより精選した科目統合が求められており,担当科目全体の構成をあらためて考えていかなくていけないと感じていた。

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はじめに

 2018年3月21日,東京情報大学にて,看護経済・政策研究学会 第30回研究会「病や障害とともに生きる看護職の活用─ケアギバーとしての役割と共生社会への道」が開催されました。東京情報大学特命副学長(看護学部担当)の加納佳代子先生および同大学看護学部の松下博宣教授が主催されました。

 当日は,冷たい雨の降るなか,40名ほどの参加者を得て開催されました。参加者の内訳は,臨床や看護学教育領域にてご活躍中の看護職,看護職の当事者をはじめ,障害学生や障害者の支援にかかわる多領域の方々でした。また合理的配慮として,車椅子席,車椅子用トイレ,手話通訳,文字通訳を準備し,その他の配慮は事前相談としました。当学会における合理的配慮の提供や主催側による事前準備は初の試みであり,参加者のうちには,初めて合理的配慮を体験された方もあったと聞いています。

 研究会は,わが国のさまざまな法規に準じた障害学生支援や職業リハビリテーションの最前線でご活躍中の専門家によるご発表を骨子とし,当事者3名を含む5名の話題提供とパネルディスカッションで構成されました。後半のパネルディスカッションは個人情報を含むことから,前半の話題提供について報告します。

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研修参加の動機

 臨床経験が乏しい学生に看護の対象者を容易にイメージできる教育教材をつくれないか検討していたときに「インストラクショナルデザインの原理」に関する本と出会った。看護教育のなかでもインストラクショナルデザイン(以下,ID)という言葉を聞く機会が多くなっているが,購入当初,初めて聞く言葉で曖昧な理解であった。今回参加した日本教育工学会のFD研修会は,そのID理論を活用しながら,担当している授業科目の設計を点検し,改善していくことが大きなねらいとなっていた。IDのさまざまな理論をもう一度学習できる機会となることの期待と担当しているヘルスアセスメントの講義・演習を効果的にするためのヒントを得たいと考え,参加するに至った。

 FD研修会の主催は日本教育工学会であったが参加者は,工学系,看護をはじめとする医療系,デザインや文学系,コンサルティング関係など多岐にわたっていた。5時間の短い研修ではあったが,セッションを進める過程でID理論にもとづいてデザインされていることを体感した。また,現代の学生に対して効果的な授業とするために,講義形式の授業から脱却すること,そのためには学習目標の具体化と評価という一連のデザインが必要であることを確認することができた。この研修を機に“講義形式の授業をやめてみる”ことへの不安や恐怖を断ち切り,模索しながらではあるが講義形式をやめた授業を始めている。

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 「教育」には,常になんらかの課題があります。ただ,大抵の場合は,その課題に取り組むのは教職員であり,学生がかかわることはほとんどありません。看護教育においても然りです。しかし,本来であれば,当事者である学生の考えを反映せずして,教育の課題が解決に向かうはずはないのです。

 この企画は,看護教育に関する“大きなテーマ”を,学生と教員が同等の立場で意見を表明し合うことで,問題点をよりクリアにし,課題解決に向けてどうかかわっていけばよいかの糸口を探るため,3回にわたって組まれたものです。[編集室]

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・8

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 私たちの尻の膨らみは主に殿筋で構成されています。殿筋はそのサイズによって大,中,小と3種類あります。尻と聞いて思い浮かぶ後ろに膨らんだ部分は,もっともパワフルな大殿筋によるものです。残りの2つの殿筋は実は後ろの膨らみには関与せず,骨盤部の両外側の膨らみを構成しています。深いところに小殿筋があり,その上に中殿筋が重なります。中殿筋は想像以上に強大な筋です。片脚立ちをしても足を上げたほうに体が傾くことはありませんが,これは中殿筋が上半身の重さを引っ張って支えているからです。私たちの歩行が片脚立ちの交互連続運動であることを思えば,この筋の重要性は明白です。

 造形においても,大殿筋と中殿筋の存在する方向を明確に意識します。大殿筋は後ろで中殿筋は横向きです。中殿筋は,骨盤の上端(腸骨陵)から大腿骨の上端までの間を“厚い扇型”の粘土で埋めます。腸骨陵より外側に盛り上がるほどに付けていきます。また前方部が非常に厚くなるのも特徴です。

連載 NとEとLGBTQ・5

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 SOGI(性的指向・性自認)の多様性は,看護学生のなかにも見られます。筆者が2016〜2017年に実施した看護学生へのインタビュー調査では,同性愛指向や性別違和をもつ看護学生がいろいろな対処行動をとりながら,学んでいる事例が明らかになっています(表)1)

 たとえば,学校で実習服のデザインが男女で異なる場合,戸籍とは異なる性別の制服の着用が許可されるか,ということが学業継続の分岐点の1つになり得ます。その交渉のために学校長や教員へのカムアウトが必要になります。しかし性的な個人情報を,すべての学生が公にしたいわけではありません。また学生からカムアウトをされた看護教育者側は,SOGIに関して学生の「同意なき暴露」(アウティングと言います)をしてはなりません。学校として,実習指導者や患者が学生を受け入れてくれるだろうか,SOGIの多様な学生の状況をどの程度伝えるのか,対応を検討することになります。学生自身も「自分の性的指向の話はしたいと思ってるけど,あの人ちょっといや……みたいに思われる方(患者)もいるかもしれないので,どこまでオープンにしようか……」1)と考えている場合もあります。まずは当該学生と相談し,具体的に起こり得る状況を伝え,意思確認をおこなうことが重要です。

連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・4

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前回までの振り返り

 これまで2回にわたり,ベナー/ルーベルの『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の第1の視点,「身体化した知性」について解説してきました。ベナーらは,心と身体とを分断し,心だけが知性を持ち,身体は心の指令を受けて動く単なる機械だと考える「デカルト的人間観」を強く批判して,身体もまた知的な働きを行っており,人間は「身体化した知性」を具えた存在だと主張していました。「身体化した知性」には,赤ん坊が生まれたときから具えている,反応したり学習したりする「生得的複合体」としての身体的能力や,誕生後に文化的・社会的に習得され身につけられる「習慣的身体」の能力─姿勢や身振りなどの身体的習慣や日常的な道具使用,専門的な熟練技能における習慣的な身体的能力─が含まれています,こうした「身体化した知性」の能力は,うまく働いているときには,取り立てて意識されないという特徴をもっており,だからこそ,これまで注目されず,研究対象にもなってきませんでした。

 けれども,ベナーらによれば,私たちの日常生活の多くは「身体化した知性」のおかげで円滑に営まれており,また看護のスキルの多くも「身体化した知性」によって支えられています。とすれば,ふだん取り立てて振り返ることなく円滑に営まれている私たちの日常生活が実はどのようなものであるのか,また看護実践におけるさまざまなスキルがどのように習得され身体化されるのかを考えるうえで,「身体化した知性」という視点は大切ですし,またとりわけ,人が疾患に罹ると「身体化した知性」が損なわれ,円滑な日常生活が破綻し,それが「病い」の経験につながるのですから,患者さんが疾患によってどのような「病い」を経験しているのかを理解するうえでも,その患者さんの「身体化した知性」がどのような状態であるのかを見つめる視点が大切になるのでした。

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はじめに

 今回は,前回の座談会の後半部分です。後半は教育理念のより深い部分に迫っていきます。

 この座談会の内容から,自身あるいは所属におけるティーチング・ポートフォリオ・チャート(以下,TPチャート)作成の意義,自分の教育のより深い理念について考えてみましょう。また,他者との対話をとおしてTPチャートについて深めるとき,相手の理念を深める手助けをする側(メンター)の問いかけについても感覚をつかめるとよいでしょう。

今回の目標(再掲)

・自分あるいは所属機関におけるTPチャート作成の意義を考える

・TPチャートを見直しあらためて自分のさらに深い理念を見出す

連載 授業を良くする! 教育関連理論・10

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前提を押さえて技法を用いる

 本稿は,グループ学習の効果を高めるというテーマの3回目です。第1回「協同学習の前提を押さえる」(59巻6号)では,グループ学習の理論としての協同学習とは何か,その効果はどのようなものか,どのようなことを事前に考えておく必要があるか,グルーピングはどのようにすべきかについて扱いました。第2回「アイスブレイクの技法」(59巻7号)では,グループ学習を円滑に進めていくためには,受講生の不安や緊張をほぐし,学生同士の相互交流を促していく必要があることを述べました。そして,そのための方法論としてさまざまなアイスブレイクの技法を紹介しました。

 アクティブラーニングの研修依頼をいただくときも,その多くは「(すぐに使える)技法を教えてほしい」という要望が中心です。一方で,技法を使うだけではアクティブラーニングにならないのではないか,技法を使ったけれどもうまくいかなかったなどの困惑,疑問や批判もあるようです。そこで本連載では技法を紹介する前に,その背景にある考え方や,グループ学習への導入の仕方について説明させていただいた次第です。さらに元をたどって,授業分析や授業設計の考え方まで立ち返っていただくと,なんのためにグループ学習を用いるのか,どのような技法を用いるべきかをより明確にできるはずです。

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目次

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 看護教員であれば,「情報収集に途方に暮れる学生にどう接していますか?」という問いをもったことがあると思う。他にも「学生の身だしなみ」「習ったことと違う!」など,実習指導における「あるある」な21のシーンをこの本は読み手に問う形で投げかけている。私も看護教員として,ここで紹介されている場面は読めば読むほど「あるある」「わかるわー」と共感してしまう場面であった。

 1つひとつのシーンで,読んでいる自分がその場にいて各シーンを経験しているかのような感覚になって感情移入でき,心揺さぶられてしまうことが何度もあった。これは,著者が臨床指導者,学生,看護教員それぞれの世界のまなざしから,1人ひとり固有の経験としてそれぞれの場面を解釈しているからだろう。

新刊紹介

INFORMATION

基本情報

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看護教育
59巻8号 (2018年8月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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