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抽象的な講義内容を具体化するために
「学生のみなさん,いよいよ看護学実習が始まります。準備はいいですか?」私は教員時代,学生にこのように問いかけていました。そして同時に自分自身にも「準備はできているのか?」と問いかけていました。ここでの準備とはいったい何を指すのでしょう。準備にはいろいろあり,知識・技術・態度の準備が必要です。本稿ではその内容を少し考えてみようと思います。
実習にはそれぞれの年次にあった実習目標がありますが,その内容を学生は理解できているでしょうか。私は小児看護学を担当していたので,某病院の小児病棟に学生と実習に行きました。たとえば,『小児病棟の特殊性と機能を理解する』という実習目標があるとします。病院のなかでも小児病棟は成人病棟とは構造的に異なります。テキストにもそのことが書かれているのですが,それがどういうことなのかを初日のオリエンテーションの際,実際に見ることで理解できます。教員がオリエンテーションの際にその説明をするのは簡単ですが,私はあえて学生に「今から15分間でこの小児病棟をぐるっと一周して,自分なりに成人病棟と異なる点を10個書いてください」と指示しました。学生は授業で小児病棟のイメージを自分なりに描いているのですが,実際にトイレの大きさであったり,病室の廊下側の壁がガラスになっていたり,ベッドの大きさやベッド柵が高いことなどさまざまな異なった点を10個書き留めてきます。それを互いに発表することで,自分と同じ項目や気づかなかった違いを他の学生から学ぶことになります。一とおり出し合ったあと,不足部分や知っておいてほしいことを追加し,授業で話した小児の特徴を説明します。オリエンテーションでは,どうしても一方的な病棟の説明になりがちですが,意図的に違いを探すことで学生は『小児病棟の特殊性と機能を理解する』という実習目標をクリアしていきます。
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