焦点
共同意思決定の臨床判断、どう教育設計するか?—Simulation設計とPatient Journey Map作成による教育デザイン
西村 礼子
1
1東京医療保健大学
pp.482-491
発行日 2025年8月25日
Published Date 2025/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.004718950660040482
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社会情勢から求められる看護師の役割
現代医療は高度化・複雑化が進み、加えて医師の働き方改革に伴うタスク・シフト/シェアや、地域・在宅ケアへの移行が進んでいます1-3)。このような変化の中で、看護職には、対象の状態やコンテスクト(文脈)、その場の状況やリソースを統合的に把握し、多様な情報を解釈・分析・推論し、的確に判断し、自律的に行動できる高い実践能力が求められています。実践能力の中でも特に臨床判断が重要であり、臨床判断は、利用可能な情報や根拠を活用し、臨床的に推論する能力、教育や経験に基づく知識を活用する能力、そして省察を通して実践を調整する能力などを含み、看護師が意思決定を行うプロセスを指します4)。
近年は、対象者自身が多様な情報にアクセスし、自らの価値観やニーズに基づいた医療・ケアを選択したいというニーズが高まっています。リスクと利益・不利益のバランスが不明確な症例、対象のニーズや価値観が多様な状況においては、対象者の自己決定を尊重し、最善の選択肢を共に探求する「共同意思決定(Shared Decision Making)」が重要となっています5-8)。SDMは、患者と医療やケア専門職の2名以上の人が協力し意思決定を行うプロセスと定義されます。意思決定の質評価は、患者と医療やケア専門職間の情報の共有と決定の共有を重要視し、意思決定のプロセス(どのように決めたのか)で行われます。

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