連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・8
中殿筋─お尻は後ろだけじゃない
阿久津 裕彦
1,2
1順天堂大学解剖学生体構造科学講座
2東京芸術大学美術解剖学講座
pp.621
発行日 2018年8月25日
Published Date 2018/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201035
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私たちの尻の膨らみは主に殿筋で構成されています。殿筋はそのサイズによって大,中,小と3種類あります。尻と聞いて思い浮かぶ後ろに膨らんだ部分は,もっともパワフルな大殿筋によるものです。残りの2つの殿筋は実は後ろの膨らみには関与せず,骨盤部の両外側の膨らみを構成しています。深いところに小殿筋があり,その上に中殿筋が重なります。中殿筋は想像以上に強大な筋です。片脚立ちをしても足を上げたほうに体が傾くことはありませんが,これは中殿筋が上半身の重さを引っ張って支えているからです。私たちの歩行が片脚立ちの交互連続運動であることを思えば,この筋の重要性は明白です。
造形においても,大殿筋と中殿筋の存在する方向を明確に意識します。大殿筋は後ろで中殿筋は横向きです。中殿筋は,骨盤の上端(腸骨陵)から大腿骨の上端までの間を“厚い扇型”の粘土で埋めます。腸骨陵より外側に盛り上がるほどに付けていきます。また前方部が非常に厚くなるのも特徴です。
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