増大号特集 実習指導 虎の巻
第4部 実習指導の理解をさらに深める
現場での体験こそ最高の教材─『実習指導を通して伝える看護 看護師を育てるひとたちへ』で伝えたいこと
吉田 みつ子
1
1日本赤十字看護大学
pp.702-707
発行日 2018年8月25日
Published Date 2018/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663201057
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エピソードから紐解く実習指導
看護教育のなかで教員が実習指導に費やす時間,労力はかなり大きい。とりわけ新人教員は「実習指導に自信がない」「学生の未熟さに戸惑う」「実習指導体制を調整できない」「講義実習に関する知識や技術の不足による自信のなさ」「学生に応じた指導方法やかかわりへの不安や迷い」を経験し,大きなストレスを感じている1)。私も実習前夜に緊張して寝付けないこともある。やる気のなさそうな表情や暗い顔をしている学生にどう接したらよいかと気になるし,態度や身だしなみを厳しく指導する師長,実習生に風当りの強いスタッフに気を遣い,実習場への足取りが重くなることもある。同僚と励まし合いながら実習に向かう日々である。
私が所属する大学では長年,教員たちによる実習指導体験を語る場が定期的に設けられている。参加する教員たちは,思い思いに実習での出来事,学生のこと,スタッフや指導者,師長とのやりとりを語る。その場で話された内容は口外されず,問題解決策を検討するわけではなく,ただひたすらしゃべるのである。教員経験,臨床経験,専門領域を問わず集まり,領域毎の実習の特徴や,指導に困った学生のその後の様子などの情報交換の場でもあり,サポートグループとしての機能もある。自分の体験を語り,他の教員の体験を聞くことを通して,自分自身の体験の内に類似の出来事を思い出し,不可解だった学生の行動に合点がいくこともある。
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