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「経験型実習」への歩み
看護基礎教育を専門学校と看護大学で合計7年間受けた私は,看護学生経験のエキスパートだと密かに自負しています。3年間の看護師経験を経て看護大学に入学し二度目の看護基礎教育を受けた私にとって,同級生たちとわからないことを一緒に考え,持ち寄った専門書を繙きながら,なぜを追求するディスカッションは新鮮で楽しいものでした。専門基礎の知識の深さでは舌を巻く同級生たちが何人もいました。しかしいざ実習に出るとそうした学生たちでさえ,自分の強みを十分に発揮できないでいたことに驚きました。看護師ライセンスがある私も,同じように実習していましたが,同時に同級生のメンターのような役割を担っていたように思います。当時,助手の教員たちは張り付きで実習教育をされていたので,相談しやすい存在でしたが,こんなことを聞いたらバカにされるとか,恥ずかしいと思うようなちょっとしたことは気軽に聞ける私に聞いてきました。
看護師や教員が叱りつけるような出来事でも必ず学生なりの理由があります。学生の言語化能力の問題もあるとは思いますが,多くの学生は自分の考えたことや思ったことを十分には言えないのです。忙しそうな看護師には報告のタイミングを見つけることが難しいですし,一方的に決めつけられると何も言えなくなってしまいます。看護師ライセンスのある私であっても,看護学生として同じような気持ちを味わいました。優秀な同級生たちの,「えっ,こんなことで悩んでるの?」「こんなことで迷っているの?」という驚きもたくさんありました。学生の埋もれている経験のなかに,実は看護としてとても貴重な学習素材となる経験がかなりあることにも気づきました。私は2度目の看護学生として実習するなかで,その後,実習教育の方法論を考えるにあたっての,多くの貴重な経験をしたのだと思います。
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