看護教育 59巻9号 (2018年9月)

特集 統合実習は“統合”されているか?

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 2009年のカリキュラム改正で取り入れられた「統合分野」。文字どおり専門を“統合”することを目的として設けられました。統合実習は,その“統合”の総括として位置づけられていると思われます。

 実習は,それまで座学や演習で学んできたことを,実際の現場で体験・実施するもの。統合実習では,それら領域別実習の体験を統合することが求められています。実際ここで行われている「夜間実習」や「複数受け持ち実習」は,学びを“統合”しなくてはできないという前提で行われれていると思われますが,果たしてそれは,本当に実習を“統合”したものになっているでしょうか。

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 筆者は2009年4月号の本誌の特集『カリキュラム改正に対応した教育方法・2』において,「統合分野:看護の新たな考え方の視点をどう教授するか」のタイトルのもと,意見を述べた。2008年にカリキュラム改正により提起され,新たに構築された統合分野に対する教育内容についての意見である。そのなかで,統合実習に対する見解と問題提起についても取り上げた。

 そのときから9年。看護教育を取り囲む社会,医療の変化は著しく,また,看護の対象である人々からのニーズも質的量的に変化してきている。その影響もあり,看護教育に求められる能力育成の内容の変化は著しい。しかしながら,普遍的に重要視されるもの,しなければならないものも看護には多くある。これら双方をふまえ看護教育における教育内容も,生物が環境によりよく適応しながら進化していくように,内容を変化させながら構築していかなければならないと考える。

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総合実習から統合実習へ,何が変わったのか

 2009(平成21)年のカリキュラム改正を受けて,筆者が所属する神奈川県立保健福祉大学(以下,本学)では,総合実習から統合実習へと科目名を変更した。ただし,実習目的・目標,方法のいずれもほぼ変更はしなかった。それは2003年に開学した本学では,その教育理念や教育方法において時代を見据えたカリキュラムを構築し,総合実習についても統合実習がめざすところを先取りしていたためかもしれない。

 とはいえ,筆者は,科目名を変更し,「統合」という言葉が含まれた以上,その意味を忠実にとらえた実習を行いたいと考えてきた。また,筆者自身も1967(昭和42)年からのカリキュラムにおいて総合実習を経験し,しかも,現在本学が行っているテーマ探求型の実習であったことから,なおさら総合実習から統合実習へと何が変わったのか,何を統合するのかを考えた。筆者自身の総合実習の経験は,今でも鮮明に覚えているほどに辛い実習経験であったのだが,今日の自分の看護観,教育観に大いに影響を及ぼしたのは確かであり,そのため,学生の統合実習が将来にわたり有意義な実習であってほしいと思う。

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はじめに

 筆者は看護教育学を専門としており,神奈川県立保健福祉大学の基盤分野に所属し,2012年より看護管理学・看護教育学領域の統合実習を担当している。統合実習は,4年生前期に配置された3単位3週間の実習であり,それまでに習得した知識と技術,経験を統合し,看護を総合的にとらえ実践していくとともに,自らが課題を発見,追求していく実習として位置づけられている。また,実習の専門領域は,基礎看護学・看護管理学・看護教育学領域,急性期看護学領域,慢性看護学領域,高齢者看護学領域,精神看護学領域,小児看護学領域,リプロダクティブ・ヘルスケア領域,地域・在宅・学校保健領域の8つに分かれている。学生は,各専門領域が提供する実習の場や方法のオリエンテーションを受けた後,統合実習を通して探究したいテーマを決めて専門領域の希望を提出し,原則,第3希望までの領域に配置される(統合実習の全体像および基礎看護学領域の実習については,前掲の水戸原稿p782を参照)。

 看護管理学・看護教育学領域の統合実習は,学生がチームを組み,日替わりのリーダーを決めて,受け持ち患者全員へのチームナーシングを展開する形をとっており,2010年当時,看護管理学領域の准教授であった加納佳代子先生(現 東京情報大学特命副学長 看護学部担当)が考案された方法を基本としている。看護管理学・看護教育学領域を希望する学生の多くは,複数患者受け持ちにおける優先順位の決定やタイムマネジメント,チームナーシングにおける効果的な情報共有や協働をとおした個別性のある看護実践などを探究したいテーマとしている。また,チームナーシングは,看護方式の1つであり,チームナーシングそのものが看護の目的ではないため,(チームナーシングをとおした)言語的コミュニケーションが困難な患者への看護,病院から在宅への継続した看護など,各専門領域に共通した要素が,学生の探究したいテーマとしてあがる場合もある。

 前任校に勤めていた頃,筆者は,基礎看護学領域の統合実習を担当し,学生1名が患者2名を担当する複数受け持ち実習や準夜勤帯の看護をシャドーイングする夜間実習を取り入れていたが,統合していく力を学生が「自ら」培うことに課題を感じていた。現在,取り組んでいる方法は,統合実習をとおして何を(あるいは何に向けて)どのように統合していくのかという視点のうち,「どのように」という部分を重視しており,学生が主体性,自律性を発揮し自己教育力を育みながら,質の高い看護実践に向けて知識・技術・経験を統合していく過程を歩めることに手応えを感じている。

 本稿では,看護管理学・看護教育学領域が取り組んでいる統合実習の概要と学生の学習経験を紹介し,統合実習における統合,統合実習の可能性について考えてみたい。

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統合実習における夜間実習の意味

 3年課程看護専門学校では2009年より現行カリキュラムが適用され,2011年より新たに統合実習が導入され8年が経過している。

 統合実習は臨地実習を含む3年間の教育課程の集大成として,総合的な看護実践能力の育成をねらいに設定している。卒業後臨床現場にスムーズに適応できるように,臨床の実務に近い看護内容や方法を学ぶ“臨床との橋渡しになる実習”としての位置づけで行ってきた。

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はじめに

 統合実習は,卒業後臨床にスムーズに適応することをめざして行われる。当校では,病棟チームの一員として複数の患者を同時に担当し,ケアマネジメントと看護サービスを学び,常に「安全」を念頭に看護を提供する方法を学ぶことをねらいとしている。実習病院,実習病棟の看護方式によって,学生はPNSやチーム看護を学んでいる。

 学生チームによるチームナーシング形式を取り入れる前は,病棟の各チームに学生を配置し,その日に受け持ち患者を担当する看護師(以下,担当看護師)に同行し,患者を1,2名受け持って看護ケアを行っていた。看護師は1日4,5名の患者を担当しているため,学生の受け持ち患者以外のケアに入っているときは学生が待機していることもあった。学生は臨地実習指導者(以下,指導者)や担当看護師と,ともに複数患者の看護ケアを実施しタイムマネジメントは学んでいるが,「看護チーム」での自己の役割が明確にならず,看護チームの一員としての態度や姿勢が養われないと感じていた。

 学生チームによるチームナーシング形式を取り入れ,リーダーを立てることに対しては,卒後クリニカルラダーレベルⅡ以上にならないとリーダー業務をしないため,教員間では学生には必要ないという意見もあった。しかしこれは,統合実習で「リーダーシップ」を発揮することをねらったものではなく,リーダー経験をとおして,リーダーに必要なスキルを学び,また,自己の傾向に気づく機会となると考え,取り入れることになった。

 本稿では,チームナーシングを取り入れた当校の統合実習での学生の学びについて述べる。

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在宅看護の基礎教育・現任教育の現状

 超高齢社会であるわが国では,保健医療福祉分野が連携し,住み慣れた地域での人々の暮らしの継続を支える仕組みとして,地域包括ケアシステムの構築を進めようとしている。

 看護基礎教育においては,1996年にカリキュラムに在宅看護論が加わり,2011年には保健師の役割と専門性をより明確化する観点から,公衆衛生看護として内容を充実させるカリキュラムの改正がなされた。最近,日本看護系大学協議会が公表した「看護学士課程教育におけるコアコンピテンシーと卒業時到達目標」1)では,6群ある能力のうちの1群として,地域における保健医療福祉の連携協働能力である「多様なケア環境とチーム体制に関する実践能力」を取り上げており,在宅看護の重要性が高まっていることがわかる。また,在宅看護学実習での学習内容に関する訪問看護ステーション管理者に対する調査2)では,在宅看護・訪問看護の実際を体験するだけではなく,地域包括ケアを基盤とした臨地実習,訪問看護師養成を視野に入れた臨地実習となることを管理者が望んでいることが示されている。

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基礎看護技術教育の課題をみすえた動画教材作成

限られた時間で技術修得をめざす

 看護教育の充実に関する検討会は,2007年に出された報告書1)で,看護基礎教育課程におけるカリキュラム改正案を示し,「学生の看護実践能力を強化することを大きなポイント」とした。看護教育の現状と課題としては,看護基礎教育で修得する看護技術と臨床現場で求められるものにはギャップがあり,自信がもてないままに業務を遂行していることや自信の喪失が離職につながっていることが示されている。

 これまでの看護師教育のカリキュラム改正では,新たな科目が追加されてきたものの2),総時間数についてはゆとりと弾力的運用を可能にするために,総時間数の削減が図られ,特に実習時間数は1770時間(1967年)から1035時間(1989年)に減少している。以上のことから,看護基礎教育では看護実践能力の強化に向けて演習の役割が極めて重要になっており,限られた授業時間数で看護実践能力の向上を図るには,学習者の特徴をふまえた教材作成と有効な活用法が求められている。

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 「教育」には,常になんらかの課題があります。ただ,大抵の場合は,その課題に取り組むのは教職員であり,学生がかかわることはほとんどありません。看護教育においても然りです。しかし,本来であれば,当事者である学生の考えを反映せずして,教育の課題が解決に向かうはずはないのです。

 この企画は,看護教育に関する“大きなテーマ”を,学生と教員が同等の立場で意見を表明し合うことで,問題点をよりクリアにし,課題解決に向けてどうかかわっていけばよいかの糸口を探るため,組まれたものです。【編集室】

連載 つくって発見! 美術解剖学の魅力・9

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 屈伸が激しい関節部では,主要な血管や神経は伸縮の影響を受けにくい屈側を通ります。体幹から四肢が突出する部位,つまり腋窩と鼡径部でもそれは同じです。ここは太い血管が通るのでまさに急所ですが,四足動物の姿勢ではちょうど四肢の内側に位置するので,外敵の攻撃からも守られています。

 ところが,人間は立ち上がったので鼡径部の急所が前面に丸見えです。ここは大腿動静脈および神経が縦に走る大腿部の盆地で,周囲は鼡径靱帯・長内転筋・縫工筋で囲まれ,大腿三角と言います。

連載 看護に恋した哲学者と読む ベナーがわかる! 腑に落ちる!・5

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 本連載は,ベナーの看護論を,そのベースとなっている「現象学」という哲学の視点から理解することを目的として,ベナー/ルーベル『現象学的人間論と看護』*1で提示されている現象学的人間観の5つの視点を明らかにすることから,歩みを始めました。そしてこれまで,「身体化した知性」と「背景的意味」という2つの視点について,解説を行ってきました。

 「身体化した知性」とは,赤ん坊が生まれたときから具えている,反応したり学習したりする「生得的複合体」としての身体的能力や,誕生後に文化的・社会的に習得され身につけられる姿勢や身振り,日常的な道具使用,専門的な熟練技能などの「習慣的身体」の能力のことでした。ベナーらによれば,人間は,デカルト的二元論のように,知性の担い手としての心と,それによって動かされる身体とに分断された存在ではなく,まさにこのような「身体化した知性」を具えた心身統合的な存在であり,また,その人が属している文化や下位文化,そして家族からさまざまな「背景的意味」を与えられ,それを「当たり前」のものとして身につけている,そうした存在なのでした。「身体化した知性」も「背景的意味」も,ふだんはそれとして自覚されていませんが,私たちの日常生活は実はこれらのおかげで円滑に営まれています。疾患によって「身体化した知性」が損なわれると,この円滑な生活の営みが破綻し,それがさまざまな意味を帯びた「病い」として経験されるわけですが,そこには,その人が身につけているさまざまな「背景的意味」がかかわってきます。それゆえ,その人を理解し,その人の「病い」経験を理解するためには,「身体化した知性」と「背景的意味」という視点が重要になるのでした。

連載 ティーチング・ポートフォリオ作成講座・6

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はじめに

 第4,5回は,ティーチング・ポートフォリオ・チャート(以下,TPチャート)の作成者と筆者2名による座談会を紹介しました。TPチャートの作成,さらにはTPチャートをとおした対話が,教育活動を振り返り,その改善につながるという可能性についてご理解いただけたのではないかと思います。

 ところで,第1回で紹介したとおり,TPチャートは,TP作成の事前課題に位置づけられるものです。TPチャートは教育活動の俯瞰の出発点となりTPに記述されることの土台となります。

 今回は,TPの作成に向けてさらに一歩進めるため,TPの作成ワークショップの全体像について解説します。本講座は「独力でTPを作成すること」を目的としていますが,実際のワークショップにおける作成プロセスを理解することで,今後の本講座のTP作成の各段階においてよりよいTPを作成するために重要なポイントをつかんでいきましょう。

今回の目標

・TPの作成プロセスをワークショップの進行にしたがって説明できる

連載 授業を良くする! 教育関連理論・11

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授業における評価の基本

 ここまで授業づくりの基礎理論の1つであるADDIEモデルにしたがい,分析(Analysis),設計(Design),開発(Development),実施(Implement)という流れで書き進めてきました。そして今回は,最後の評価(Evaluation)を扱います。

 授業における評価には教育評価と学習評価という用語がみられます。教育評価(Evaluation)は,第二次世界大戦後にタイラーが提唱した考え方です。教育という働きかけの営みによって子どもの能力は変化することを前提とし1),その変化を評価することで教育実践を反省・改善することにつなげられると主張しました2)

連載 NとEとLGBTQ・6

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 昨今,LGBTQについて社会的な動きがメディアで取り上げられることが多くなっている一方で,多様な性のあり方についての正確な知識を得る機会はとても少ないのが現状としてあります。LGBTQについての知識は,これまでの連載で述べてきたように,医療や福祉の現場でも非常に重要なものであり,多様な性について知識があるかないかで患者のQOLや現場で働く当事者に大きく影響することがあります。

 僕自身も実際に体験したことがあることですが,差別的な発言(ホモ・おかま・レズ・おなべ・おねえ・そっち系・あっち系)などを無意識にする看護師がいます。本人は差別的な発言とは思ってはいないものの,言われた当事者は傷ついていることがあるのです。「私の職場ではLGBT当事者はいない」と発言する人もいますが,実際には,カミングアウトする必要がないから言わない当事者が存在することを念頭に入れておいてもらいたいものです。現在,LGBTQへの対応を積極的に行っている医療機関はあるものの,全国規模となるとまだまだ不十分です。LGBTQについて正しい知識を学ぶため,院内研修や教育カリキュラムの1つとして多様な性についての深く正しい知識を学ぶ機会をもってもらいたいと願っています。

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目次

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 本書を開くと,凄まじい自傷行為の再現場面がありありと迫ってきます。精神科とか急変時の看護実践という視点で眺めると,危機的状況におかれた患者さんの身体的安全を,どう取り扱うのが最善なのかという実践的方法論がていねいに説明されています。現場の看護師には,お守り代わりの一冊となるでしょう。

 さて,看護教育という視点で眺めた場合は,著者が「患者さんの心に向けてどう声かけし対応するかが決定的に大事」と述べているように,自傷や自殺企図をせざるを得ない主観的体験に,思いをはせられるようなこころの醸成に主題があるように見えます。

INFORMATION

新刊紹介

基本情報

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看護教育
59巻9号 (2018年9月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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