臨床皮膚科 72巻5号 (2018年4月)

増刊号特集 最近のトピックス2018 Clinical Dermatology 2018

1.最近話題の皮膚疾患

自己炎症性角化症 秋山 真志
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2017年,われわれは自己炎症性発症メカニズムを有する種々の炎症性角化症を包括する新規疾患概念として,「自己炎症性角化症(autoinflammatory keratinization diseases:AIKD)」を提唱した.AIKDは以下,①〜④によって定義される.①疾患発症の起因であり,かつ,主となる炎症の部位は表皮と真皮浅層である,②その表皮,真皮浅層の炎症が本疾患の特徴である過角化を引き起こす,③表皮と真皮浅層における自然免疫系の過剰活性化(自己炎症)と関連する遺伝的発症因子を有している,④本疾患概念は,発症機序が自己炎症単独であるものに限らず,自己炎症的機序と自己免疫的機序の協調的な機序を有するものも含むが,本疾患の一次的で主となる機序は自己炎症である.現時点で,AIKDに含まれる疾患には,汎発性膿疱性乾癬とその類症としての疱疹状膿痂疹,稽留性肢端皮膚炎等,毛孔性紅色粃糠疹のⅤ型,家族性keratosis lichenoides chronicaがある.今後,AIKDに含まれる疾患がさらに多くなることが予想される.

RASopathy関連色素異常 大磯 直毅
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RAS-mitogen-activated protein kinase(MAPK)経路は細胞増殖,分化,生存に関与する細胞内シグナルである.RAS/MAPK経路関連遺伝子の生殖細胞変異(germline mutation)によりRASopathyが生じる.色素異常は神経線維腫症1型,Legius症候群,多発性色素斑を伴うヌーナン症候群(LEOPALD症候群)で生じる.RAS/MAPK経路を活性化させる細胞間シグナル伝達に関与するリガンドとその受容体のgermline変異で発症する色素異常症として,まだら症,Familial progressive hyper-and hypopigmentation, Waardenburg syndrome type 4A/4Bがある.RAS/MAPK経路関連遺伝子の体細胞変異(somatic mutation)により母斑,母斑症,悪性黒色腫が生じうる.

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ボリコナゾールは2005年本国で発売が開始された抗真菌薬で適応症として造血幹細胞移植患者における深在性真菌症の予防的投与があり長期投薬される症例が多い.ボリコナゾールの投薬を受けている患者で露光部に紅斑や色素斑が生じ,その後日光角化症あるいは有棘細胞癌が発生してくることが国内外から報告が相次いでいる.同剤においての光線過敏症状は光毒性機序で起こると考えられているが比較的長期間投薬を受けてから症状が出ること,またそれに引き続く紫外線皮膚発癌の詳細な機序については依然明らかとなっていない.これらボリコナゾールと皮膚癌発症の報告からこれまで薬剤が原因で起こる光線過敏症のうち主に光毒性のメカニズムとして働くものは表皮・真皮における細胞でのDNA損傷を引き起こすとされていたが,そのことにより紫外線皮膚発癌が誘導される薬剤が存在する可能性が示唆され今後の症例の蓄積が待たれる.

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アタマジラミ症は,近年,再び日本国内でも密かに増加傾向にある.その要因として,ピレスロイド抵抗性アタマジラミの拡大が懸念される.ピレスロイド製剤は,現在,日本でアタマジラミ症に対して唯一承認されている市販薬である.ピレスロイド系薬剤であるスミスリン製品の使用により駆虫できない難治性のアタマジラミ症例では,ピレスロイド抵抗性と考えた上での対処が必要となる.ピレスロイド抵抗性の機序と,日本における現状と可能な対処方法,さらに承認が期待されるピレスロイド抵抗性アタマジラミにも有効な薬剤について解説した.

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「顧みられない熱帯病(neglected tropical diseases:NTDs)」は,先進国において患者が少ないことなどから社会的関心が低く,治療薬の新規開発に消極的であるなどの理由から,これまで対策がなかなか進まなかった感染症を統合した20の疾患群である.皮膚感染症,あるいは,皮膚症状を呈する疾患が多く含まれ,最近この共通点が注目され,skin NTDsというサブグループがグローバル・ヘルスの世界で定着化しつつある.ハンセン病,ブルーリ潰瘍,リーシュマニア症,リンパ系フィラリア症(象皮病),オンコセルカ症(河川盲目症),風土病性トレポネーマ症(yaws)がその代表的なものである.さらに,2016年より菌腫(mycetoma)が,2017年より疥癬がNTDs群に新規登録された.本稿では,臨床の現場でも,そして,国際舞台に立ちたい皮膚科医にも役立つことを念頭に,skin NTDsの臨床から疾病対策のトピックスまでを概説した.

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表皮細胞は顆粒層で扁平化してから角化する.しかし,表皮細胞の“かたち”とその分化過程における変化については,議論されることはほとんどなかった.教科書の模式図などの断面図は長方形として描かれており,顆粒層は,六角柱の“かたち”をした細胞が積み重なった単純な構造として捉えられてきた.われわれは,表皮タイトジャンクション(tight junction:TJ)の研究を通して,表皮顆粒層のTJを構成する細胞が,扁平ケルビン14面体という特殊な多角形の形状をとることを発見した.これらの細胞は,お互いに隙間なく組み合わさって頑丈で幾何学的に規則正しい構造をなす.さらにこの形をうまく利用して,規則的な順序で細胞が入れ替わることにより,皮膚のバリア構造と機能を保ったまま,バリアを構成する細胞が新陳代謝していくことを可能にしているのである.本稿では,表皮細胞の立体形状を利用した巧妙な皮膚バリアの維持機構,“ケルビン14面体モデル”について解説する.

コリン性蕁麻疹 戸倉 新樹
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コリン性蕁麻疹は,アセチルコリン(acetylcholine:Ach)によって誘導されるためにこの疾患名がついている.そのメカニズムに関して,Achの直接作用によって肥満細胞が脱顆粒し点状膨疹を生じる機序と,Achによって発汗が促され,汗管閉塞などにより汗が真皮に漏出し,汗アレルギーによって膨疹が形成される間接機序とが考えられる.前者機序の代表が,減汗性コリン性蕁麻疹であり,汗アレルギーがなく,汗腺上皮細胞のAch受容体発現が低下している.後者の機序は,以前より考えられていた説であり,汗中のアレルゲンとしてマラセチアの菌体成分が提唱されている.

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Ichthyosis with confetti(IWC,別名congenital reticular ichthyosiform erythroderma)とは,全身の皮膚にさまざまな程度の過角化,鱗屑を認める疾患である.“confetti”と呼ばれる白色皮膚部分が,加齢とともに全身に増えてくることがこの疾患の大きな特徴である.この白色皮膚部分では,体細胞組換えにより病因遺伝子変異が消失し,いわゆる「自然治癒」が起きていると考えられている.われわれは,この自然治癒を起こす病態を解明するために,IWC家系の組織を用いて,whole-exome sequenceなどの詳細な病態解析を行った.その結果,過去に報告のない,KRT1遺伝子のイントロン1からイントロン5までを含む2209塩基の欠失変異を同定した.本研究により,KRT1遺伝子の広範囲欠失変異により,IWCを引き起こすことが証明された.

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毛孔性紅色粃糠疹は6つの病型に分類される.近年,家族性毛孔性紅色粃糠疹の病因としてCARD14遺伝子の変異が報告された.しかし毛孔性紅色粃糠疹の病型とCARD14遺伝子変異との関連は明らかでなかった.しかし2017年に,PRP type ⅤがCARD14遺伝子変異あるいは多型と関連するがそのほかの病型はほとんど関連しないことが明らかにされた.CARD14遺伝子変異による炎症性角化症をCARD14関連乾癬(CARD14 mediated psoriasis:CAMPS)と呼び,PRP type Ⅴの他に家族性乾癬,膿疱性乾癬を発症することがある.自己炎症性角化症とは表皮角化細胞に存在する蛋白質をコードする1遺伝子の変異ないし多型が病因に大きく関与し炎症性角化症を発症する疾患群で,IL-36受容体拮抗因子欠損症,CAMPS,familial keratosis lichenoides chronicaが含まれる.

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円形脱毛症は病型が複数あり治療反応性も異なるためすべてのタイプを同じに考えて良いのか疑問は残るものの,急性期の円形脱毛症の病態理解は進みつつある.従来,円形脱毛症の治療は歴史的に行われてきた古典的な治療が現在に至るまで脈々と続き,また病態が不明瞭なことから,患者がさまざまな民間の施術や育毛剤などに振り回されている現実もある.今回,より病態を詳述し今後の治療ターゲットが何であるのかをより明確にすべく解説した.

3.新しい検査法と診断法

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Squamous cell carcinoma antigen(SCCA)は子宮頸癌で初めて同定され,いくつかの扁平上皮癌の治療選択やモニタリングに利用されているが,アトピー性皮膚炎においても疾患活動性を鋭敏に反映する新たなバイオマーカーとして注目されている.この蛋白はセルピン(serpin)スーパーファミリーに属するセリンプロテアーゼインヒビターである.動物モデルにおいてSCCAがアレルゲン感作による皮膚炎症形成に働くこと,ヒト細胞を用いたin vitro系でTh2サイトカインのIL-4,IL-13によって誘導されることが観察されている.すなわち,アトピー性皮膚炎のTh2型炎症病態を反映する分子と考えてよい.実際に,血清SCCA2はアトピー性皮膚炎の重症度に相関して高値をとり,治療によって症状が改善すると低下する.小児のアレルギー疾患の中ではアトピー性皮膚炎特異的に高値をとり,多施設共同研究による多数例の検討では,カットオフ値1.6ng/mlにおいて高い感度と特異性を示すことが明らかとなっている.SCCA2は小児アトピー性皮膚炎の診断とモニタリングに有用なバイオマーカーである.

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水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)は,高齢者に好発し本邦では最も頻度の高い自己免疫性水疱症である.BP患者血中には表皮基底細胞ヘミデスモゾーム構成分子であるBP180あるいはBP230を標的とする自己抗体が存在し,BP180を標的とする自己抗体を同定する検査法(抗BP180 NC16a抗体)は広く臨床応用されている.しかし“抗BP180 NC16a抗体検査”は,BP180の限られた部位(NC16a領域)のみ標的とする自己抗体を同定する検査法であり,陰性となる患者も稀でない.筆者らは近年,BP180上のすべての領域を標的とする自己抗体の同定を目指し,リコンビナント全長BP180蛋白を用いた“全長BP180 ELISA法”を開発した.多数例を解析する過程で,近年,2型糖尿病治療薬として広く使用されている“DPP-4阻害薬”内服中に発症するBPでは,通常の抗BP180 NC16a抗体検査法が陰性か低値の症例が多く,“全長BP180 ELISA法”が診断に有用であることが明らかとなった.

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薬疹の原因薬剤特定は,診療において重要な情報となるが,内服誘発試験は実施困難な場合が多く,薬剤投与歴,薬剤添加リンパ球刺激試験(drug-induced lymphocyte stimulation test:DLST),パッチテストでは十分な根拠が得られない症例を少なからず経験する.薬剤特異的T細胞は末梢血液中にわずかであり,DLSTでは,その細胞分裂を検出することが難しいため偽陰性となりやすく,薬剤特異的インターフェロン-γ(IFN-γ)産生の検出が試みられている.末梢血単核球での薬剤添加によるIFN-γ産生細胞数を検討するELISpot法の有用性が報告されており,われわれは,この方法をさらに高感度にする目的で,抗CD3/CD28抗体とIL-2添加で,あらかじめ1週間活性化増殖させることで,薬剤特異的なIFN-γ産生を飛躍的に効率良く検出できることを見出した.活性化リンパ球を用いた薬剤添加IFNγ-ELISpotは,リンパ球が少ない検体でも安定して行える薬疹の原因薬特定法として有用性が期待される.

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プロカルシトニン(procalcitonin:PCT)は敗血症等の重症細菌感染症で上昇しその重症度との相関が認められる.皮膚科領域では診断が難しいにもかかわらず早期診断が求められる壊死性筋膜炎に対して,重症蜂窩織炎との鑑別にPCTがよいバイオマーカーにならないか興味が持たれている.このことに対する報告はまだ少なく2016年にKatoらは,PCTのカットオフを5.88ng/mlとすると感度・特異度は100%となり,LRINEC(laboratory risk indicator for necrotizing fasciitis)スコアより有効と報告した.われわれも壊死性筋膜炎1例,入院加療を要した蜂窩識炎18例でPCTを測定したところ,壊死性筋膜炎例はPCT値7.74ng/mlで18例の蜂窩識炎は全例5.0ng/ml以下であった.一方,PCTは以前より非感染性病態でも上昇することが指摘されていたが,最近ではマクロファージ活性化症候群,成人Still病,さらには横紋筋融解症でも上昇することが示されている.壊死性筋膜炎の診断は,PCT値を参考にしつつ緻密な臨床的観察のもと,LRINECスコアや画像診断も含め複眼的解釈によってなされることが肝要と考えられる.

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近年,梅毒におけるTP抗体検査の自動化が普及しつつあり,また用いられる抗体も改良され,迅速性・安全性・特異性が飛躍的に向上した.その結果,従来から行われてきた用手法による脂質抗原法とTP抗体検査との組み合わせによる血清学的結果の解釈が変わりつつある.多くの成書では,RPRの陽転化がTP抗原の陽転化に先んずるとされているが,最近はTP特異IgM抗体と反応性が高いTPLA試薬が使用されるようになり,window periodが短縮し,脂質抗原法の陽転化よりもTP抗原が早期に検出されることが明らかとなった.そのため,実際には早期梅毒であっても従来の既感染パターンと同一の定量結果となり,血清学的解釈に苦慮する場合も多い.臨床症状から早期梅毒を疑った場合は,血清学的検索だけでなく皮膚症状など臨床所見も合わせて総合的に診断する必要がある.

4.皮膚疾患治療のポイント

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アトピー性皮膚炎は,かゆみを伴う慢性炎症性皮膚疾患であり,ステロイド外用薬を用いた薬物療法が中心となる.近年その病態の解明が進み,治療薬としてサイトカインやシグナル伝達分子を標的とした生物学的製剤,低分子阻害薬の開発が進んでいる.IL-4受容体抗体,IL-31抗体などのサイトカインや受容体に対する抗体,cAMP阻害薬,JAK阻害薬などである.これら薬剤は,特定の分子を標的にし,皮膚炎の改善,かゆみの抑制効果が認められており,今後,アトピー性皮膚炎における新たな治療薬として期待される.その選択基準,適応範囲,治療期間など今後の課題である.

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頭部の乾癬は難治部位であるにも関わらず,治療の選択肢は少なかった.コムクロ®シャンプー0.05%は,シャンプーにストロンゲストクラスのステロイドを配合した薬剤である.短時間接触療法といって,乾いた状態の頭皮の患部に塗布し,15分待ち,その後シャワーで洗い落とす手順で使用する.このような用法により,有効性を維持し,副作用発現を抑える用法で使用する.頭部の乾癬はquality of life(QOL)を低下させる一因となるものの,有効な治療法が限られていた.今後,同製剤は有効性が高く,利便性も高いことから,頭部の乾癬治療に頻用されるであろう.

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わが国では1988年にアシクロビル(ACV)が発売開始となり,その後,ACVおよびペンシクロビル(PCV)のそれぞれのプロドラッグであるバラシクロビル(VACV),ファムシクロビル(FCV)が登場し,より効果的な帯状疱疹治療が行われるようになったが,いずれも核酸アナログであるため使用における注意点が存在した.わが国で開発され,2017年9月に発売開始されたアメナメビル(アメナリーフ®錠)は,ヘリカーゼ・プライマーゼ阻害薬であり既存の抗ヘルペスウイルスとは薬理作用が異なり,ウイルスDNA合成のより早い段階で効果を発揮すること,帯状疱疹に対し1日1回の内服でVACVと同等の効果を発揮すること,主として胆汁から糞便に排泄されるため腎機能による用量調節の必要がないことなど既存薬と比べメリットが多い.一方,この薬剤はCYP3Aで代謝されるため,併用禁忌,注意薬が存在することに留意する.

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遺伝性血管性浮腫(hereditary angioedema:HAE)は,ときに致死的な浮腫を引き起こすため,発作の出現時には速やかな治療が必要である.HAEの浮腫形成には,ブラジキニンによる血管透過性の亢進が中心的な役割を果たしている.HAE診療における国際ガイドラインでは発作時の治療として,ブラジキニンB2受容体拮抗薬(イカチバント)がC1インヒビター(C1 inhibitor:C1-INH)製剤と同様に第一選択薬として推奨されている.イカチバントの海外臨床試験では,浮腫改善まで2時間程度と速やかな効果が報告されており,すでに自己注射による浮腫発作のコントロールが行われている.しかし,本邦ではC1-INH製剤の静注のみ使用可能であるため,発作時には医療機関を受診し治療を受ける必要がある.現在,本邦でのイカチバントの第Ⅲ相試験が終了し,海外と同様の効果が示されており,今後より良いHAEの治療体制が構築されることが期待される.

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発汗時に強い瘙痒を伴った小型の膨疹や紅斑が出現し,同時に強い気分不快や意識消失など全身症状を併発する難治性のコリン性蕁麻疹で,強い汗アレルギー反応認め,さらに通常の薬物療法や発汗調整の対処により症状が制御されない症例においては,精製汗抗原による減感作療法は有効な治療の1つと考えられる.方法は,まず患者もしくは家族の汗を集め,精製し,汗抗原を作製する.精製汗抗原による皮内反応閾値の1/10倍の希釈濃度を開始濃度とし,精製汗抗原250μlを1〜2週間に1回上腕外側に皮下注射する.コリン性蕁麻疹の悪化や気分不快などの明らかな反応がなければ,4回終了ごとに2倍濃度に上げていき,症状が改善した時点で終了となる.当院で精製汗抗原減感作療法を行った6例全例で自覚症状の改善を認めた.なお,精製汗抗原減感作療法の治療にあたっては,患者の協力のみならず,大学病院との連携も大切であると思われた.

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類天疱瘡は,水疱性類天疱瘡,粘膜類天疱瘡および後天性表皮水疱症を一連の疾患群として2015年に厚生労働省指定難病に追加された.それを受け,それら3疾患を含む形で類天疱瘡診療ガイドラインが策定され,2017年に公表された.診断の確定には臨床症状のほか,皮膚あるいは粘膜生検が必須である.国際基準であるBPDAI(Bullous Pemphigoid Disease Area Index)に準じた重症度分類を行い,水疱性類天疱瘡と後天性表皮水疱症では軽症と中等症以上に分け治療方針を決定する.粘膜類天疱瘡では,低リスク群(口腔粘膜と皮膚に限局)と高リスク群(広範囲または進行性の口腔粘膜病変,あるいは口腔粘膜以外の粘膜病変あり)に分類し,治療方針を立てる.本疾患群は稀少であるため,現時点で治療に関するエビデンスは十分とは言えず,今後も新たなエビデンスに即した継続的なガイドラインの改訂が求められる.

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現在,天疱瘡の治療は副腎皮質ステロイドが中心であるが,将来的には標的を絞った新たな治療法が期待される.リツキシマブは抗CD20ヒト/マウスキメラ型抗体で,B細胞を特異的に排除することで抗体産生を抑制する.海外では,500例を超える天疱瘡の症例に対して豊富な治療実績があり,欧米のガイドラインではステロイド治療抵抗性の天疱瘡に対する治療法として確立されてきた.日本でも,難治性天疱瘡への適応拡大をめざした医師主導治験が進んでいる.治療抵抗例のみならず初期治療においても,ステロイド単剤治療群との比較試験によりリツキシマブの有用性が示され,天疱瘡の治療戦略が大きく変わろうとしている.有害事象のリスクの軽減,適応症例の選定,費用対効果の検討など,再評価が必要な問題も多いが,ステロイドに依存しない治療の新たな選択肢として,臨床現場では一日も早いリツキシマブの天疱瘡への適応拡大が待ち望まれている.

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全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)の皮膚硬化と間質性肺炎に対してさまざまな治療が試みられてきたが,有効な治療法はまだ確立されていない.IL-6受容体に対する抗体製剤であるトシリズマブ(商品名:アクテムラ®)を用いたプラセボ対象,無作為化二重盲検第Ⅱ相臨床試験では,トシリズマブ群ではプラセボ群と比較して有意差はなかったものの投与24週後と48週後の皮膚硬化は改善する傾向があった.また,投与24週後,48週後ともトシリズマブ群で有意に呼吸機能が改善した.これらの結果をもとに現在本邦を含めたグローバル規模で第Ⅲ相臨床試験が実施されており,SScに対する有用な治療薬となることが期待されている.

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化膿性汗腺炎は慢性・炎症性・再発性・消耗性の皮膚毛包性疾患であり,患者のquality of life(QoL)を著しく障害する.本邦では男性優位,家族歴が少ない,重症患者が多いなど海外とは異なる背景がある.病態生理は毛包を中心とした自然免疫の活性化であり感染症ではない.近年γ-secretaseの変異が自然免疫の活性化の原因であることがわかり,家族性化膿性汗腺炎患者を中心に変異が報告されている.治療は海外のガイドラインを参考に行うが,適応外の治療も多い.まず患部の外科的切除を最初に検討する.切除にて改善しない,または手術ができない場合はクリンダマイシン外用またはテトラサイクリン系抗菌薬内服,続いてリファンピシン+クリンダマイシン内服が推奨されている.上記の方法で効果がない場合はアダリムマブの投与が推奨されている.エビデンスレベルが高く,患者のQoL維持にも有用であるが,本邦では適応外であり,今後の適応拡大が望まれる.

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乳児血管腫は従来より自然治癒が期待できるとされており,学童期までに多くは縮小,消退する.しかし,増大の程度が大きい症例では退縮後,多少の皮膚のたるみ,しわを呈し,醜形を残してしまう症例もある.大きさのピークを迎える生後6〜12か月後までに増大を抑制し有効性が高いことから,従来から早期のパルスダイレーザー照射が勧められてきた.最近,2008年に報告されたプロプラノロール療法が欧米では治療の第一選択となっており,本邦でも国内での臨床試験において日本人乳児血管腫患者に対する有効性および安全性が確認され,2016年7月に製造販売承認された.視力障害や哺乳障害を起こしえるような眼瞼や鼻部の症例,顔面の広範囲症例などに効果が期待されている.症例の個人差が大きい乳児血管腫に対し,両治療の方針を家族に説明・相談し,両治療をうまく選択していくことが重要である.

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近年登場した免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1抗体は,従来ダカルバジン一辺倒であった進行期悪性黒色腫の治療成績を大きく改善した.抗PD-1抗体にて劇的に奏効して長期生存する症例が存在する反面,本剤を投与してもまったく効果が得られない症例も少なくない.そのため,現在抗PD-1抗体の奏効例・無効例を早期に見分けるバイオマーカーの探索が世界中で研究されている.一方,抗PD-1抗体使用例が増加するに伴い,本剤投与下の白斑発生は臨床効果を反映すると考えられる症例が徐々に集積しており,実際いくつかの症例集積研究も報告されている.本稿では進行期悪性黒色腫における抗PD-1抗体下の白斑出現と臨床効果の関連につき概説し,臨床的バイオマーカーとしての可能性につき言及する.

5.皮膚科医のための臨床トピックス

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熱傷は日常で高頻度に遭遇する疾患の1つである.われわれは当科で加療した0歳〜15歳未満の小児熱傷患者105例について,原因,年齢,時間帯,部位を検討した.主な原因としては熱い液体,加熱機器への接触,火炎が挙げられた.なかでも熱い液体が最も多く,その中で熱湯やホットドリンクが大半を占めたが,次いでインスタントヌードルに関連した熱傷が多かった.日本は世界第3位のインスタントヌードル消費国であり,インスタントヌードルの調理工程や軽量な器もリスクファクターである.年少児の場合は食卓の上方からかぶることもあり,広範囲に受傷する例もみられた.調理する際の見守りの強化が,小児熱傷の抑制につながると考えた.

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TNFAIP3遺伝子がコードする分子A20はTNF-αのシグナル伝達経路を抑制性に制御する分子である.2015年にZhouらがこの遺伝子のハプロ不全変異により常染色体優性遺伝形式で若年発症するBehçet病様の疾患として,A20ハプロ不全症(HA20)を報告した.その後国内から3家系,海外から2家系の追加報告がなされている.HA20はBehçet病様症状のみではなく,複数の自己免疫疾患の合併を生じるなど多彩な症状を有する症例も報告されている.新規疾患であるため有効な治療法は未解明であり各施設で試行錯誤されているが,無治療経過観察で対応可能な症例から,寛解のために抗TNF-α製剤などの分子標的薬が必要な重症例もあるなどさまざまである.本稿ではHA20について,現在までの報告を基に臨床症状,検査,治療,注意すべき合併症などについて概説する.

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Helicobacter cinaediは,最近注目されているグラム陰性らせん状桿菌で,主に免疫不全患者に腸炎,蜂窩織炎や菌血症をきたす.ところが,H. cinaediによる蜂窩織炎は,日常よく経験するグラム陽性球菌による蜂窩織炎とは臨床的に異なる点が多い.すなわち,H. cinaediによる蜂窩織炎は,病変を複数箇所に認める傾向があり,病初期は真皮を中心とした軽度のsuperficial cellulitis(表在性蜂窩織炎)から始まり,皮下脂肪織への進展は後から起こることが多い.皮疹の成因はいまだ不明だが,腸管に存在していた菌が血流に侵入し,血行性に皮膚に波及したものと考えられている.診断は難しいことがあり,H. cinaediの蜂窩織炎について知識がないと,見逃したり,非感染性の皮疹と誤って診断してしまう可能性がある.治療後もしばしば再発を繰り返すため,正しい診断と,適切な治療が重要である.

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ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis:TBE)はダニ媒介性脳炎ウイルス(tick-borne encephalitis virus:TBEV)を保有するマダニに吸血されることにより感染,発症する疾患である.TBEは発症すると致死的となりうる重篤な感染症であり,回復しても神経学的な後遺症を残しやすい.本邦では2017年8月8日までに4例報告されており,そのうち2例が死亡している.有効な治療法はなく,本邦の現状ではマダニ咬症を受けるリスクのあるところに入る際,肌を極力露出しないようにして予防することが重要となる.

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疥癬はその臨床形態から,丘疹を主体とした通常型疥癬と牡蠣殻状の角化局面を呈する角化型疥癬に分類される.しかしながら通常型疥癬の寄生数は1,000以下なのに対して角化型疥癬の寄生数は数百万単位と言われている.通常型疥癬からいきなり角化型疥癬に移行するわけではなく,必ず寄生数が数千〜数万単位の中間型疥癬が存在するものと考えられる.老人施設では疥癬の増殖しやすい環境が整っているため中間型が発生し,アウトブレークしやすく,老人施設型疥癬とも呼ぶべき病態が推測され提唱した.

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南米原産のヒアリが2017年に国内で初めて輸入貨物内で確認された.ヒアリは尾端部に毒針を有しており,刺されるとアルカロイド毒であるソレノプシンの作用で激しい疼痛や無菌性膿疱を生じる.この症状に対してはステロイド外用薬で対応する.また,ハチ毒との類似性が指摘されている蛋白毒に対する感作が成立していれば,アレルギー反応でアナフィラキシーを生じる可能性もあり,ショック症状に対してはアドレナリンの投与を行う.ヒアリが国内に定着するのか今後の継続調査が必要であるが,ヒアリに関する正しい知識と対応が皮膚科医に要求される.また,刺すアリとしてヒアリだけでなく,国内に生息するオオハリアリにも注意が必要である.

足育(あしいく)について 高山 かおる
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「足育」と書いて「あしいく」と読む.足の健康を生涯にわたって守り,歩行機能を維持するための知識を育み実行することである.足育の基本は,①足や爪のスキンケア,②適切なフットウエアの選択や使い方,③足や下肢の運動機能の維持向上にある.日常的にしばしば遭遇する胼胝や鶏眼・巻き爪などの足や爪の皮膚疾患の根治的加療を行うために,まさに「足育」の知識は必要である.また糖尿病性壊疽の治療や予防,高齢者の足爪の異常が下肢機能低下につながるという側面でも「足育」は欠かせない.さらに小児の足育は,未熟な足の骨の成長過程には必須であり,間違った靴選びでこの時期に強い変形をきたせば保存的に改善することは難しく,子どもロコモティブシンドロームから成人ロコモディブシンドロームへとつながることが懸念されている.筆者らは「足育」を啓発する目的で「足育研究会」を3年前に設立した.

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腫瘍溶解性ウイルス療法とは,増殖型ウイルスを腫瘍細胞に直接感染させ,ウイルスによる殺細胞効果および抗腫瘍免疫誘導によって癌を治療する手法である.ウイルス学の発展や,遺伝子操作技術の向上により,様々な遺伝子改変ウイルスが現在腫瘍溶解性ウイルスとしての開発が進められている.単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV)においては,GM-CSF遺伝子が挿入された“武装ウイルス”であるT-VECが,米国で2015年10月27日,初めての腫瘍溶解性ウイルス製剤として皮膚およびリンパ節の悪性黒色腫病変の治療に対して承認された.わが国で開発されたHF-10株は,人工的な遺伝子改変はされておらず,神経病原性のないHSV-1から自然発生的に選択,分離されたウイルス株である.HF10は悪性黒色腫,頭頸部有棘細胞癌を対象とした第I相試験が終了し,現在日米でHF10と抗CTLA-4抗体であるイピリムマブを用いた第Ⅱ相試験が行われている.

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血管腫・血管奇形の診療は,様々な診療科にわたるため,標準的な診療ガイドラインが求められる.最新のISSVA分類2014に基づいた「血管腫・血管奇形・リンパ管奇形ガイドライン2017」が発表された.重要な改訂点として,乳児血管腫に対するプロプラノロール療法が挙げられる.プロプラノロールは,海外では高い有効性が確認されており,治療の第一選択となっている.本邦でも2016年にプロプラノール製剤が発売され,ガイドラインにおいても高い推奨度となっている.プロプラノロールは非選択性β遮断薬であり,徐脈,低血圧などの副作用が起こり得るため,治療に際しては小児科医との連携が必須である.また,適応症例の選択についてコンセンサスを形成していく必要がある.

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2017年にシワ改善を謳う医薬部外品が登場した.1980年に姿を消してから実に35年以上の空白期間を経たうえでの復活であった.この効能の取得には,日本香粧品学会で策定した化粧品機能評価法ガイドラインの存在が大きかった.それまで業界各社が独自の基準で行っていた化粧品の効能評価に統一基準を導入したものである.その策定に協働した皮膚科医と化粧品研究者の努力が結実した結果であった.

Derm.2018

プライマリ・ケア 帆足 俊彦
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 日常診療で患者さんに,調子が悪くなったら予約日を待たないで来てもらっていいですよ,と言うことがよくある.アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬だったら皮疹の予想外の増悪,蜂窩織炎なら抗生剤が思ったように効かないとか症状の再燃を大体想定しているし,患者さんもおそらくそう思っている.悪性腫瘍だったら再発,転移に伴う症状や,抗悪性腫瘍薬を投与している場合ならそれによって引き起こされるさまざまな副作用を想定している.特に悪性腫瘍の場合は症状がさまざまで一言で言えない場合が多いので,調子悪くなったら来て,と曖昧な表現を好んで使う.

 つい先日,悪性黒色腫で免疫チェックポイント阻害薬を投与中の患者さんが,調子が悪くなったのでと家族が連れてきた.2週間前にインフルエンザと近医で診断されて,内服して多少良くなったけどまだ元の感じにならない.いつもは杖をついて歩いて診察室に入ってくるのに,今日はベッドの上に寝ている.顔色が悪く,精気がない.家族は一大事と思ってか入院させる気が満々だ.免疫チェックポイント阻害薬の副作用か? この人ITP(特発性血小板減少性紫斑病)にもなってたよなあ.悪性黒色腫の急速な進行か? 1,2か月前のPETでは特に何もなかったなあ.採血したり,X線を撮ったり,内科の先生にコンサルトしたりして,ついた診断は誤嚥性肺炎だった.抗生剤投与で軽快した.

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 「患者さんが具合悪いときに研究なんかする気がしないけど,それでもやらないといけないよ」とは,私の先輩の言葉です.研究こそわが人生,と覚悟を決めている人からは,気合いが足らん,と叱られると思いますが,私もその先輩に同感です.しかもビッグデータや斬新な動物モデル実験でないと評価の高い雑誌に載りにくい昨今の状況は,そうした気持ちに拍車をかけます.

 しかし一方で,乾癬,悪性黒色腫を筆頭に,アトピー,膠原病に至るまで,基礎研究に基づいた新規治療がぞくぞくと登場している現在は,自分の研究と臨床の結びつきを強く感じられる時代です.ゴールが見えない時代にも懸命に研究されてきた先輩方と比べると,それだけでも幸せなことかもしれないと感じています.日常診療を通して「それでもやるべき価値がある」と心から思える研究テーマを見つけることが重要だと思っています.大規模なデータを集め,眺めていろいろ考えるのも良いですが,興味深い症例を徹底的に解析することから次のブレークスルーが生まれる可能性だってあると思って,今日もベンチに向かいます.

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 自分の前歯2本は真ん中が欠けており,詰め物をしている.ある日,日系スーパーで見つけたスルメをあてにビールを飲んでいると前歯の隙間にスルメの筋が挟まった.勢いよく引っ張ったら詰め物が取れてしまった.米国ではこんなことで歯医者には行けない.仕方なく強力接着剤とやらを買ってくっつけてみた.見た目はいける.よし,っと思ったが,少し硬めの物を咬むとすぐに取れてしまうので弱った.そんなある日,ガムを食べていたら今度は左奥歯の詰め物がガムに引っ付いて取れた.なにくそ,とここも接着剤で凌いだが,やはりすぐにとれてしまう.やむを得ず,食べ物は右の犬歯辺りで咬みちぎり,右奥歯で咀嚼して,最後に左奥歯でそっと咬んでから飲み込んでいた.実に不便であった.

 英語はもちろん苦労した.特にしゃべるほうはさっぱりであった.多少会話を覚えても発音で苦戦する.免許証の書き換えで住所を聞かれたが(Monaco street),どうしても通じない.「モネィコ〜」,「も〜なこぅ」などと工夫(?)したがダメで,結局紙に書いた.このときの「Oh, Monaco…」と言ったofficerの表情は忘れられない.しゃべるのに比べ聞くほうはそれなりになった,と思っていたが,妄想であった.帰国間近に長男の三者懇談があった.長男の学校での生活ぶりなどを聞いてみよう,と出かけたが,懇談前に長男と担任の先生が交わしている会話が全く聞き取れない.この頃の長男はほぼnativeのEnglishであり,ああ,これが生の英語か,と.Labはヘテロな集団でnativeは少なかった.結局懇談どころではなく,「今先生何言うたんや?」と長男を突っつくのに必死で,話は全く盛り上がらなかった.ま,最も盛り上がらずに困ったのは,冴えない実験結果ばかりで,最後の最後まで盛り上がらなかったボスとのdiscussionであるのは間違いない.

深爪は良くない!? 齋藤 昌孝
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 深爪は陥入爪の主な原因とされており,実際に陥入爪の患者の多くが深爪をしている.したがって,深爪さえしなければ,陥入爪の発症や再発のリスクはかなり少なくなるはずであるが,これがなかなか難しい.というのも,世の中には深爪が好きな人が意外と多いからである.爪の遊離縁の白くなった部分を残さないようにと切っているうちに深爪が進み,結果的に指趾先端皮膚よりも爪が短い状態となるが,それで長年トラブルもなく過ごしていたのであれば,深爪はいけないと急に言われたところで本人はピンとこないであろう.本来は,爪の重要な機能の1つである「指趾先端の物理的防御」という観点からも,少なくとも指趾先端が完全に覆われる程度の長さに維持するのが理想的と考えられるが,習慣化した深爪をやめさせるほどの説得力はないようである.一方で,手指の爪はそうでもないのに,足趾の爪だけが深爪になっている人もよく見かける.つまり,深爪が好きなのではなく,深爪になってしまったケースである.そもそも,手指の爪に比べて,足趾の爪は切りにくい.加齢や肥満などによって,手が足まで届きにくかったり,目がよく見えなかったりで,意図せずに深爪してしまったり,あるいは爪の角を切り残してしまったりといったことがしばしば起こり,それが陥入爪の発症につながることも多い.陥入爪は,機械的な外力が加わりやすい母趾に生じることがほとんどなので,深爪が好きな人もそうでない人も,せめて母趾の爪だけは深爪しないように細心の注意を払ってもらいたいところである.陥入爪にならないように,爪の長さは母趾先端の皮膚が完全に覆われる程度に維持し,さらに両角を切り落とさないように(爪の先端の形状をスクエアに)する切り方を指導することが重要となる.

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 商いは門門(あきないはかどかど)ということわざがある.意味は,お客をよく観察して,そのお客に適した品物を売るのが商売を成功させるコツであるということ.これを敷衍すると医療施行者にとっても,病院を受診する患者にはそれぞれニーズと希望があるはずであり,それに応じた医療を提供することがコツということになる.したがって,皮膚科医もそれぞれの患者さんに応じた接遇をし,診断・治療をすることに心を砕くのが診療の基本になる.しかしながら,病因や診断までもが,ご本人の中で確定している方が診療ブースに入ってこられることも少なくない.寄生虫妄想などはその最たるものである.待合室が込んでいたような場合は,自分の番までかなり待たされたあげく,本人からすれば,診断も間違っているじゃないか,このヤブ医者! となってしまう.このような事態を防ぐには,まずは患者の立場に立ってみることが必要不可欠? お待たせしてスミマセンでしたの一言が必須? 患者から信頼を得られる話し方や声音を訓練して獲得? 一目見るだけで,患者から信頼される外見に調整? 名医が醸し出すオーラを借用し偽装? など考えてみるが,無理は禁物.難しい患者さんにも波長の合う先生がいるはず.そういえば,商いは門門のもう1つの意味は,客目線から商売にはそれぞれ専門があるので,専門店で買うのが一番であるということだった.そうか,患者によって好みに合う病院や医者はそれぞれ異なっているので,そこを受診してもらえばいいだけじゃないか.つまり,扱いの難しい患者さんを納得させるのが上手い先生(時に精神科医)にお任せだ.結語:医療は門門なのである.もちろん皮膚科も.

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 皮膚遺伝外来を開設して3年半,母斑症や角化症などさまざまな疾患の診断,遺伝カウンセリングを行ってきた.臨床所見のみで診断できる疾患もあるが,遺伝学的検査が必要な疾患も多い.皮膚科領域で保険適応のある遺伝学的検査はわずかであり,実際は患者さんに自施設または他施設の臨床研究に参加していただいて解析を行っている.現在は,未診断疾患イニシアチブ(IRUD)にコンサルテーションすることもある.稀な疾患が多いため症例ごとに猛勉強しなければならないが,疾患を類推しその原因を突き止めていく過程はエキサイティングである.また,遺伝カウンセリングによって患者さんが病気を乗り越えて行けるよう支援し,診療にあたれることは医師として喜びである.

 近い将来人工知能(AI)が人間の仕事の多くを奪うという予測が世間を賑わせている.2017年の『Nature』誌には,皮膚癌の画像診断についてAIが皮膚科医を凌駕するとの論文が出た.遺伝性疾患の診断も,文献やゲノムデータベースなどを参照しながら行うため,AIに有利な作業であろう.また,次世代シーケンサーの低コスト化により,網羅的な遺伝子解析が臨床で利用される日も近い.現在は倫理的な障壁があるものの,将来的には個人が予めゲノム情報を取得し予防的医療や病気の診断に活用できる時代が来るかもしれない.これらのデータの扱いもAIが得意とするところであろう.

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 当科乾癬外来は長年,担当医2名で診療を行っている.そのため,患者さんとのつきあいは長く,大方の患者さんの病状,治療歴,キャラクターを把握している.患者会も設立され,患者さんとの親睦もますます深まっている.患者会では,診察時には聞くことのできない患者さんの本音を聞くことができ,とても勉強になる.しかし,最近懸念しているのは,乾癬治療をやりたいと名乗りをあげる若手の先生が少ないことであるが,他施設ではどうであろうか.乾癬治療に生物学的製剤が登場して8年,そして現在も次々に新規薬剤が開発されている.若手の先生方にとっては,薬剤の多様さを目の前にして,どのように治療を選択したら良いか戸惑うこともあるようだ.確かに,同じサイトカインを標的としていても,製剤ごとに投与間隔が異なったり,抗体の組成,製法が微妙に異なったりと,“何が違うの?”と混乱してしまうのも理解できる.しかし,薬剤の種類が増えたということは,以前に比べて“次の手”が増えたということでもある.また,生物学的製剤は他科領域でのエビデンスがある薬剤も多く,副作用対策も含めてシステマティックに投与法が定められている.すなわち,比較的経験の少ない医師でも治療を行いやすいと考えられる.また,乾癬の病態解明の歴史を踏まえても,生物学的製剤の作用機序を理解することは乾癬の免疫学的病態を理解,解明する上で重要である.近年,皮膚悪性腫瘍,アトピー性皮膚炎など乾癬以外の皮膚疾患にも生物学的製剤が開発,使用されており,それらの免疫学的機序を理解しておくことは,今後ますます求められるだろう.乾癬治療の基本は外用療法であるということには同意であるし,バイオ偏重の傾向に警鐘を鳴らす御意見は承知の上で,若手の先生方には,生物学的製剤の使用をきっかけとして,乾癬,ひいては皮膚の免疫学に興味を持ってもらうというのも良いかと思っている.

ラーニングカーブ 金子 高英
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 「ラーニングカーブ」,日本語だと「経験曲線」「学習曲線」と訳す.ざっくり言うと,“やればやるほど上手くなる”過程をグラフにしたものだ.一般的に,初期の立ち上がりは急激で,後期は緩やかに,遂にプラトーに収束する負の加速度曲線として描かれることが多い.手術に当てはめるとこうだ.若手医師が先輩の指導の下,実践を重ねるとぐんぐん腕は上達する.しかしある程度の経験を積むと,次第にスキルは頭打ちになっていく.

 ところで,私は当教室で皮膚外科の指導的立場にある.当然,早い・適切・きれいな手術を患者に提供し,当科の全手術は責任をもって対応できることが責務と思っている.だから自分の手術スキルの低下はあってはならない.

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 懐かしさといくつかの絵画を目当てに出かけた『ボストン美術館の至宝展』で,13世紀前期の中国の画家 陳容の『九龍図巻』を目にした.奥深い峡谷から姿を現し,風を起こしながら飛翔し,荒れ狂う波と雲の中で玉を掴んだり,誰も通り抜けたことのない門に挑んだりするさまざまな姿の龍がダイナミックに描かれていた.その中に「黒雲の中,老年の龍が左右の若い龍に教えを授ける」という場面があり,すべてを超越したような龍の世界でも教えを次世代に引き継ぐことは大事なんだなと妙に感心した.

 少し飛躍するが,この場面を観て,米欧内科3学会・組織合同による『新ミレニアムにおける医のプロフェッショナリズム:医師憲章』の一節を思い出した.この中では,医師の「プロフェッショナルとしての一連の責務」として,患者に対する責務と並んで「医師は,現在および将来の医師のための教育や規範を組織的に定めねばならない.医師は,これらの過程に個人的におよび全体として参加する義務を有する」と記載されている.

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 2015年10月2日,私は夢を1つ叶えることができました.当時勤務していた北海道大学病院皮膚科で清水 宏教授のご恩情の下,表皮水疱症外来を開設できたのです.それまで北海道大学病院では,表皮水疱症患者はさまざまな皮膚疾患患者が受診する一般外来で診療されており,十分な診察時間を確保することが困難でした.また,2010年(平成22年)から在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料が算定されるようになり,表皮水疱症患者が自宅で使用する創傷被覆材等を処方することが可能になりました.その結果,患者に医療材料を適切に処方するため,マンパワーと診察時間をより確保する必要がありました.そのような状況もあり,時間当たりの予約患者数を制限し,表皮水疱症患者を詳細に診察するため,表皮水疱症外来を開設しました.たくさんのコメディカル,パラメディカルに支えられ,藤田靖幸講師とともに表皮水疱症外来で診察を行い,これまでに20名以上の表皮水疱症患者を診療しています.また昨今,日本医療研究開発機構(AMED)主導の下,希少な疾病や難病を克服するための治療法の開発が推進されており,表皮水疱症に対する治験や臨床研究もこの表皮水疱症外来では積極的に行っています.

 私は2017年4月から阿部理一郎教授のおられる新潟大学皮膚科に赴任いたしました.新潟大学病院は北海道大学病院と違い,表皮水疱症患者があまり多くありません.そのため,新潟大学病院では表皮水疱症外来ではなく,遺伝性皮膚疾患外来を開設させていただいています.新潟大学皮膚科の先生と一緒に遺伝性皮膚疾患患者を診察し,ともに臨床力を養っていきたいと考えています.これからも皮膚疾患で苦しむ患者やそのご家族が一人でも笑顔になれるように,努力したいと存じます.

Common diseaseに思うこと 村上 正基
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 北海道で地域医療に携わっていたときの,いまだ忘れられない患者さんがいる.結節性痒疹の患者さんだった.典型的なcommon diseaseの1つではあるものの,誰もが経験するように,この人もとにかく経過が長く,アドヒアランスは悪く,何件も皮膚科を変えていた人だった.初めて会ったときから,“どうせこいつも大したことできないだろうに,黙っていつもの薬だけ出せよ”というオーラが出ているのは,私のみならず外来スタッフにも伝わっていたようだった.

 外来でいろいろ話を聞いてはみるものの,過去のカルテ記載以上に新しい手掛かりを得ることもなく時間ばかりが過ぎていき,とうとう,「どうする? ここで僕と頑張ってみる? 僕も大したことないから期待に沿えないよ,きっと」と言ってしまった.随分とふざけた返事をしたものだったが,逆にそれが受けたらしい.このときから毎週あるいは月に一度の定期受診や,入院加療(3回)が始まった.大学へ異動となってからも,はるばる旭川まで通ってくれて,気が付けば3年が経っていた.彼の瘢痕・色素沈着だらけの皮膚には,新たな掻破痕はみられなくなり,無数にみられた結節もほとんど平坦化し,夜も十分に眠れるようになったとのこと.初診時はむっつりと怖い印象であったが,最後のほうでは笑顔や冗談が多くなり,外来にちょくちょく差し入れなどもしてくれたりして.

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 私は大学病院勤務の皮膚科医です.毎日の診療,後輩の指導,そして研究と忙しいながらも充実した日々を送っています.

 これまでのキャリアを振り返ると,大きな転機が訪れたのは入局から6年後.念願の専門医に合格できて,いったん目標を失ったような時期でした.ある患者さんに「このシミはレーザーで消せるのですか? ほかにどんな治療方法があるのですか?」と質問され,言葉に詰まったのです.

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 さまざまな業務に追われる日常の中で,忙しいときこそ仕事を効率化する最大のチャンスではないかと思っています.データのstorageにMOドライブを使用していた2003年入局組の私ですが,2012年以降Dropboxを導入してから,自宅・職場間のデータシェアがストレスフリーになりました.Google Driveを使うこともありますが,前者のほうが使い勝手に優れる印象です.小さい頃からノートや手帳をつけるのが苦手で,書いたメモをすぐに紛失してしまっていた私が,Evernoteの導入によって過去の講演内容や新しいアイディアのメモをすべて収められるようになったのは新鮮な驚きでした.出張先から仕事の打ち合わせをメールでやりとりしていると,ついついメールの件数が膨大になってしまいますが,Slackを用いるとチャット形式でどんどん意思決定できて快適です.部署のメンバーの予定を可視化するためにGoogle Calendarを共有したところ,仕事の道筋をつけやすくなりました.また,To do listの管理のためにTrelloを導入し,これを同僚と共有することで,誰が今何をやっているかお互い把握できるとともに,相手への依頼事項もTrelloに直接入れることで依頼の手間を簡略化できました.最近,執筆活動用にScrivenerをインストールしましたが,今後の執筆速度の上昇につながるかは乞うご期待といったところです.ライフハックの情報は主にTwitterから得ていますが,気づくと画面をひたすらスクロールして時間を過ごしてしまうのが難点です.今の私にはSNSにかける時間を減らすライフハックが必要なようです.

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 留学時,臨床のことはすっかり忘れ研究に没頭し,研究の難しさと楽しさを味わった.研究は結果がどんどんでているときは楽しいが,うまくいかないときのほうが多いし苦しい.しかもそれにかけた時間や労力,研究費も結果がでないと報われない.楽しかったり苦しかったり,そんな2年半を過ごし帰国した.帰国後は医局長の任を拝命され人事や雑用中心の1年半であった.臨床は専門外来や外勤中心で,2年半で失われた臨床の勘を徐々に取り戻しながら,いつもみんながハッピーになる方法を模索する毎日であった.そして昨年の7月から帝京皮膚科に移り病棟医長となり,毎日が臨床中心の生活に.病棟患者を診るのは4年ぶりで初めは戦々恐々としていたが入院患者を前にその暇もなく,地域連携が功を奏し入院患者はどんどん増えていく.優秀な病棟チームの先生と一緒にひとりひとりの患者さんをきちんと診断し最善の治療をすることで治っていく過程をみることが,こんなに充実し幸せなものであったのか,忘れていた感覚が戻ってきた.全員ではないが,多く患者さんは治療により喜んでくれる.今後も一人でも多くの患者さんに喜んでもらえるにはどうすればいいか? まずは自分自身が教科書,論文,学会で勉強し,それを患者さんに還元すること.そして,若い先生へ教育し,若い先生がそれを実践してもらうこと.そして学会や講演で多くの先生と教訓となる症例を共有すること.2018年は少しでもそれを実践できるよう努力していきたい.今年で40歳になるが,医者という職業は現役であり続ける限り勉強を続けなければならない,大変ではあるがやりがいのある職業なのだと改めて実感した.大先輩の先生方に少しでも近づけるよう日々努力していきたい.『論語』には四十にして惑わずとあるが,その境地には程遠い….

アレルギー刑事 花見 由華
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 今は全く面影がないとよく言われるが,子供の頃は体が弱く,テレビがお友達の時代があった.特にサスペンスドラマや刑事ものが好きで,体が丈夫だったら捜査一課の刑事になりたいと憧れていた.

 大人になり皮膚科医になって,ある症例をきっかけに接触皮膚炎の犯人(原因物質)捜しが面白いと気づいた.所轄の刑事が足で稼ぐが如く網羅的にアレルゲンを貼って,思いがけない犯人があぶりだされることもあるし,推理して絞り込み,犯行に使った凶器の詳細(成分)まで当てたときは気持ち良い.しかも長年繰り返す湿疹に悩まされていた患者さんにも感謝された.事件解決である.食物アレルギーの犯人捜しも同じところがある.被害者(患者)から事件発生時(発症時)の詳細な聞き込みから捜査が始まる.推理して引っ張ってきた容疑者の面通し(プリックテスト)で犯人がわかることもあるし,再現実況見分(食物負荷試験)ではっきりすることもある.

分子標的薬雑感 長田 真一
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 ダブラフェニブ,トラメチニブ,パゾパニブ….皮膚悪性腫瘍に対する分子標的薬の効果を日々実感しているが,同時に心の中に苦い思い出がよみがえる.大学の助手になって間もなく,恩師からMAPキナーゼ(MAPK)の上流を探してみようと言われ,世界中で競争が激化しつつあった分野に身を投じた.毎週のように,一流雑誌がリン酸化の「黒いスポット」であふれていた時代である.当時研究者がしのぎを削っていたのは,細胞増殖にかかわるシグナル経路の要素を解明し,それを阻害する薬ができれば癌は制圧できる(そして大きなマーケットになる)と考えられていたからである.酵母のMAPKK,MAPKKKの配列をもとにクローニングに挑戦した私の実験は順調で,ほどなく新しいキナーゼの単離に成功した.しかし,当時「複雑系」にはまっていた私は,還元主義のど真ん中に身をおきながらもどこか冷めていて,不遜にも癌の治療はそんなに単純なものではないだろうと思っていた.そんな私に勝利の女神が微笑むはずはない.まごまごしているうちに,クローニングしたキナーゼがある日『Nature』誌に掲載されているのを見て,愕然としたのは言うまでもない.その後の還元主義の成果を応用した創薬,臨床試験,上市のスピードは,私の予想をはるかに上回っていた.最初に登場した分子標的薬は慢性骨髄性白血病に対するイマチニブであるが,その開発をめぐる物語を読んだとき,研究者たちの努力と情熱に感銘を受けると同時に,自分の不明を大いに恥じたものである.一方で,最近分子標的薬の使用によるさまざまな皮膚障害,全身症状の出現が問題になっている.また,分子標的薬で有棘細胞癌やケラトアカントーマが発生するといった逆説的な現象も起きている.これは,まさに「複雑系」のなせるわざではないだろうか.私が若いころに感じた漠とした違和感も,あながち間違いではなかったのかもしれない.

教室のカラー 石井 文人
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 この度,医局が大学の職場巡視の指導を受け,老朽化していた教室の壁紙を張り替えることとなった,と同時に医局内の片付けも行う羽目となった.このようなきっかけでもない限り,日々の忙しさに埋もれて,片付けらしい片付けができていなかったので,ちょうどよい機会だったと思う.その作業中に,今まで教室に在籍していた先輩たちの遺物がたくさんでてきた.ほとんどのものは廃棄処分行きとなったが,まだ私が生まれて間もない頃まで遡る40年以上前の教室の業績集や記録集が出てくると断捨離の手が止まってしまった.今は同門会の重鎮の先生方も,当然のことながら当時は中堅・若手医師として病棟医長や外来医長をされ活躍されており,若かりし頃の同門の先輩方の顔が浮かんでくると同時に,教室の紡がれている歴史に感慨深くなった.

 教室には力を注いでいる皮膚科学の研究や学問がそれぞれあり,運営の仕方や雰囲気に特徴(=カラー)があり,紡ぎ繋がれている伝統がある.現症の記載や病理所見の記載ひとつにしても,教室のカラーが出てくるのは面白い.論文の書き方,指導の仕方,研究の仕方についてもそうだ.こうした伝統も悪しきものは時代背景とともに淘汰されながらも,教室として継承していかなければいけないものがある.いつの間にか医局というある意味狭い世界の中では,私も後輩を指導し教育する立場となった.この教室で同僚と学び育んだ誇り(=カラー)を次代を担う後輩たちに,引き継ぎ発展させることがいかに難しいか,それをやりがいのあることと捉えて伝承できるかが,教室の最重要案件の1つであることと最近よく考えさせられる.

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 時間が限られた外来診療内で,治療内容を患者さんに正確に伝えるのはなかなか難しいものです.内服については食前・後といったタイミングや回数は一般の人たちにもなじみがあり,理解が得られやすいと考えられますが,外用剤,特に抗炎症目的の処方(主としてステロイド)についてはどうでしょうか.

 再診時に改善していないため,診断を考え直していたらせっかく処方した外用剤が実はほとんど使用されていなかった,ということがあります.瘙痒が軽微な疾患で「かゆみが気にならないので使わなかった」り,接触性皮膚炎などでも「かゆくない日には外用しなかった」りといったケースに遭遇します.皮膚疾患の外用治療=かゆみ止め,という潜在意識があるようです.そういった傾向を踏まえて,自覚症状を緩和することだけが目的ではないので,皮膚疾患の外用治療に不慣れな患者さんには,降圧剤や抗生物質の内服同様,改善するまで「定期的に」外用する必要があることを強調しています.また,当院の電子カルテの処方入力では,使用部位・回数のほか,薬袋に20字までの指示表記が可能であるため,診察中に話した内容をできる限り要約して表記しています.症状などを一般的な言い回しにかえて「△△なところへ」とか「□□になったら終了」「○日で終了」といった具合です(薬袋にそんなコメントありましたか,と言われて苦笑することもあります.字はけっこう大きいのですが).適正使用量のこともあるので,処方された薬剤が患者さんの手許にそろった時点で実際の外用方法をデモンストレーションできれば理想的ですが,病院の外来では時間やマンパワー的に難しく悩ましいところです.

先生は信用できない 堀 仁子
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 皮膚科医になって4,5年目の2年間,北海道道北地方の関連病院で勤務していた.2年目となる秋に「来年は医長になる可能性もある.残り半年間,入院患者の治療方針決定やインフォームドコンセント(IC)を自分でやるように.困ったら助けるから」と尊敬する上司に言われた.

 両下腿深達性Ⅱ度熱傷の高齢女性が入院した.デブリードマン後,手術の準備を整えた.日中と夕方の回診はルーチンで,手術の不安がとれるようにできるだけ頻繁にベッドサイドに行くことを心掛けた.術前ICに患者の娘が来院した.初対面だった.ひとしきり植皮術の説明と起こりうる合併症の説明をした後,「何かお聞きになりたいことはありませんか?」と問うと「先生は若くて信用できない.母だってそう言っている」と言われた.自分なりに患者とはコミュニケーションをとっていたつもりであったので,家族のその言葉は予想外でありハンマーで殴られたかのような強い衝撃を受けた.驚愕,悲哀,憤りといった複雑な感情を隠そうとしながらやっとの思いで説明を終えた.今思うと泣きべそ状態だったと思う.

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目次

欧文目次

あとがき 大槻 マミ太郎
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 今年も増刊号をお届けする時期となりました.「最近のトピックス2018」は月刊の『臨床皮膚科』とは異なり,皮膚科で注目される最新の話題,新薬の情報を集め,その分野でフロントラインにおられる先生に書き下ろしていただいております.

 私としては本増刊号の編集に関わるのは2年目であり,「あとがき」の執筆も初めてとなりますが,これまでの増刊号編集委員の先生を見渡すと,他の雑誌の編集にもいろいろ関わっておられる方ばかりで,現在の私もその例外ではありません.ただ,本増刊号編集にかかる仕事量はそれこそ“ハンパない”もので,前号の編集会議が終了した直後から1年間,皮膚科の主な学会や研究会で発表された内容の渉猟が開始され,皮膚科におけるアップデート取材活動が,いわば1年中行われることになります.そうすることによって逆に,最新のトピックスについてわれわれ編集委員自身が,それこそエッセンスが凝縮された形で勉強できる側面も有しています.

基本情報

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臨床皮膚科
72巻5号 (2018年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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