Derm.2018
教室のカラー
石井 文人
1
1久留米大学医学部皮膚科学教室
pp.169
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205418
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この度,医局が大学の職場巡視の指導を受け,老朽化していた教室の壁紙を張り替えることとなった,と同時に医局内の片付けも行う羽目となった.このようなきっかけでもない限り,日々の忙しさに埋もれて,片付けらしい片付けができていなかったので,ちょうどよい機会だったと思う.その作業中に,今まで教室に在籍していた先輩たちの遺物がたくさんでてきた.ほとんどのものは廃棄処分行きとなったが,まだ私が生まれて間もない頃まで遡る40年以上前の教室の業績集や記録集が出てくると断捨離の手が止まってしまった.今は同門会の重鎮の先生方も,当然のことながら当時は中堅・若手医師として病棟医長や外来医長をされ活躍されており,若かりし頃の同門の先輩方の顔が浮かんでくると同時に,教室の紡がれている歴史に感慨深くなった.
教室には力を注いでいる皮膚科学の研究や学問がそれぞれあり,運営の仕方や雰囲気に特徴(=カラー)があり,紡ぎ繋がれている伝統がある.現症の記載や病理所見の記載ひとつにしても,教室のカラーが出てくるのは面白い.論文の書き方,指導の仕方,研究の仕方についてもそうだ.こうした伝統も悪しきものは時代背景とともに淘汰されながらも,教室として継承していかなければいけないものがある.いつの間にか医局というある意味狭い世界の中では,私も後輩を指導し教育する立場となった.この教室で同僚と学び育んだ誇り(=カラー)を次代を担う後輩たちに,引き継ぎ発展させることがいかに難しいか,それをやりがいのあることと捉えて伝承できるかが,教室の最重要案件の1つであることと最近よく考えさせられる.
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