臨床皮膚科 72巻4号 (2018年4月)

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要約 85歳,女性.認知症の既往あり.2日前からの倦怠感,前日からの37℃台の発熱が持続するため受診した.灯油臭が著明で右臀部,両大腿,腹部にびらんを伴う体表面積の約20%に及ぶ紅斑があった.また胸部CTで両肺野に浸潤影を認め,患者の記憶は曖昧であったが灯油皮膚炎と灯油による化学性肺炎として入院加療となった.エキザルベ軟膏®外用で皮膚症状は速やかに改善したが,第5病日より呼吸苦と咳嗽が出現した.CTで両肺野に肺化膿症を疑う浸潤影と胸水貯留を認めた.その後利尿剤と抗菌薬加療で徐々に改善したため,第43病日に退院した.灯油中毒では化学性肺炎が最も重篤になりうるが,時に肺化膿症を続発する症例が散見される.これまでの灯油誤飲による肺化膿症の報告ではドレナージや肺葉切除といった外科的治療が選択されていることが多いが,自験例では保存的加療で良好な経過をたどった.

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要約 27歳,男性.顔面の紅斑と腫脹,発熱を主訴に当科を受診した.初診時,両頰部から鼻背部にかけて浮腫性紅斑を認め,その後1週間で急速に顔面全体に紅斑が拡大した.紅斑部の病理組織像では,真皮血管と付属器周囲に炎症細胞浸潤があり,膠原線維間のムチン沈着,表皮真皮境界部や毛包周囲の液状変性がみられた.蛍光抗体直接法では,lupus band test陽性であった.顔面紅斑,血液学的異常,免疫学的異常,抗核抗体陽性などから全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)と診断した.ステロイドパルス療法や血漿吸着療法を行うも,肺胞出血を合併して初診日より20日目に永眠された.SLEの男性例は稀であり,発症した場合は女性より重症化しやすいとされている.特に顔面の紅斑が急速に拡大する場合は,性別に関係なくSLEも鑑別に挙げ,早期診断・早期治療につなげることが重要と考える.

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要約 47歳,女性.10年以上前より頸部の皺を自覚していた.2014年より羞明を自覚するようになり当院眼科を受診した.両網膜色素線条と両脈絡膜新生血管を指摘され,皮膚病変については同年5月に当科を紹介され受診した.後頸部,両腋窩,両肘窩,両鼠径部に白色〜黄色の丘疹が集簇しており,腋窩からの皮膚生検で真皮内に断裂した線維が認められた.またABCC6遺伝子にナンセンス変異がみられ,全身検索目的のCT検査では脾動脈瘤を認めた.脾動脈瘤破裂症例の死亡率は10〜25%と報告されており,その存在は予後に大きく関与すると考えられる.

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要約 58歳,女性.10年前に眼・肺所見よりサルコイドーシスと診断された.数年前より上下肢に自覚症状のない紅斑,皮下結節が出現した.拡大傾向を示し,組織学的所見から局面型,皮下型の混在する皮膚サルコイドと診断した.ミノサイクリン100mgの内服を開始し,2か月で淡く紅斑が残存するものの改善傾向を示し,皮下結節も消退傾向を示した.また,活動性指標となる血清リゾチーム値の低下も認められた.本邦における皮膚サルコイドに対してミノサイクリンが有効であった症例をまとめ,その作用機序についても若干の考按を行った.皮膚病変にミノサイクリンが有効な機序として,サルコイドーシス発症との関連が注目されているPropionibacterium acnesに対する抗菌作用,抗炎症作用,リンパ球抑制作用,肉芽腫形成抑制作用が考えられた.皮膚サルコイドの治療に際しては,ミノサイクリン投与も検討すべきと考えられた.

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要約 66歳,男性.体幹に多発する紅色丘疹を主訴に前医を受診した.外用剤で皮疹はやや軽快するも,新生するために皮膚生検を施行した.病理組織所見で真皮内に類上皮細胞性肉芽腫を認め,当院を紹介受診した.胸部CTでBHLや肺野散布影は認めず,眼病変合併はなかった.臨床所見,病理組織所見とあわせてrecurrent follicular and lichenoid papules型の皮膚サルコイドーシスと診断し,ステロイド外用を開始した.また初診時採血で著明な赤血球増加があり精査したところ,JAK2遺伝子V617F変異,血清エリスロポエチン低値より真性多血症と診断した.瀉血開始となり,治療開始4か月後,赤血球数,Hb値は正常化した.皮膚症状は一部は消退したが丘疹が新生する部位もあり,皮疹に対する瀉血の効果について評価は難しかった.サルコイドーシスと真性多血症の合併は稀ではあるが報告されている.両疾患の関連性を明らかにするためには慎重な経過観察が必要である.

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要約 83歳,女性.40歳頃に左腰部の結節に気付いた.その後徐々に結節周囲に褐色扁平小結節が増数した.初診時,左腰部に紅色結節があり,その周囲に軽度隆起する淡褐色局面を伴い,局面内には褐色扁平小丘疹が多発していた.ダーモスコピーでは,紅色結節部で乳白色の網目状構造がみられ,網目の部分は紅色領域でglomerular vesselsがみられた.結節周囲のびまん性淡褐色領域では,円形から長楕円形の褐色小球が多発していた.病理組織像は,中央の紅色結節部では充実性胞巣が表皮と連続して真皮内に索状に伸びて吻合していた.胞巣は主にporoid cellで構成され,cuticular cellは散在性に小管腔を形成していた.褐色扁平小丘疹部では表皮内に胞巣を形成し,胞巣を形成する細胞は紅色結節部と同様だが,poroid cellはメラニン顆粒を多く含み,ダーモスコピー像の褐色小球に対応していた.Eccrine poromaと異なりhidroacanthoma simplexのダーモスコピー所見は知られていないが自験例ではそれがはっきりしており病理組織学的構築を予想させるものであった.

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要約 症例1:39歳,男性.自発痛を伴う背部の連珠状皮下結節.症例2:44歳,男性.前額部の圧痛を伴う単発性皮下結節.いずれも病理組織学的にeccirne spiradenoma(ES)と診断した.症例1は症例2と比較し複数の腫瘍疱巣からなり,より複雑な構築であった.また,前者は自発痛を伴ったが,後者は軽度の圧痛を伴うのみであった.そこで,疼痛と組織学的構築に相関がある可能性を考え,過去の当施設のES症例を合わせて,両者の関連性について検討した.興味深いことに自験例を含めた5例では,腫瘍胞巣の数が多い,分葉しているなど複雑な組織学的構築を示すESほど,疼痛が強い傾向があった.また,S100蛋白強陽性の汗腺明調細胞由来と考えられる腫瘍細胞の割合は,構築が複雑なESほど高かった.これらの所見は汗分泌による腫瘍緊満がESの疼痛の一因とする説を支持するものと考えた.

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要約 42歳,男性.1年前から左頰部に褐色調の紅斑局面を自覚していた.近医で抗菌薬を投与されたが無効だったため当科を紹介受診した.皮膚生検による病理組織所見で,表皮直下から皮下脂肪織層にかけて,好酸球を混じる炎症細胞の浸潤,毛細血管の増生,血管内皮細胞の腫大と内腔への突出を認めたことから好酸球性血管リンパ球増殖症(angiolymphoid hyperplasia with eosinophilia:ALHE)と診断した.トリアムシノロンアセトニドの局所注射が奏効し局面は平坦化した.一般的にALHEの治療は,外科的切除が選択される.しかし顔面に発症したALHEは,整容的ないし侵襲的観点から単純切除が困難なこともある.ALHEに対するステロイド局所注射は,その有効性,低侵襲性,簡便性から第一選択療法の1つとすべきと考える.

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要約 86歳,男性.初診4か月前に右側頭部の有痛性の結節を自覚した.近医にて炎症性粉瘤の疑いで切開後,創部が改善せず,潰瘍が拡大した.初診1か月前に両側気胸が発症し,CTで頭部血管肉腫肺転移を疑われ,両側胸腔ドレーンを留置後,当科へ転院した.頭部の潰瘍の生検病理組織像で血管肉腫と診断後,電子線照射を開始した.肺病変は胸腔ドレーン抜去後に全身化学療法を始める方針とした.しかし,血胸水の増悪と気胸の再発を認め,左肺囊胞結紮術と両側胸膜癒着術を行ったが,病勢が進行し,入院41日目に呼吸不全で永眠された.頭部血管肉腫肺転移による血気胸は再発性・難治性であり,気胸発症後の平均生存期間は4.1か月と予後不良である.過去の胸腔ドレーン適応例では,胸膜癒着術や外科的治療中に転移巣が進行し,再発する例が多かった.近年,胸腔内化学療法の気胸改善や病勢制御への有用性が報告されており,進行例での適応を積極的に検討すべきと考えた.

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要約 53歳,女性.初診の7年前に関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)と診断された.5年前にメトトレキサート(MTX)を開始し,4年前よりエタネルセプト(ETN)を併用し加療していた.初診1か月前に出現した右大腿の紅色丘疹が次第に増大し当科を初診した.右大腿部に長径2.5cmと1.2cmの紫紅色結節を認めた.病理組織像では真皮全層から皮下組織に大型細胞が増生していた.大型細胞はCD20,Bcl-6,Bcl-2,MUM-1陽性,CD3,CD10陰性で,EBER in situ hybridizationは陰性であった.びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の組織像を呈し,MTX投与中であることから,MTX関連リンパ増殖異常症と診断した.MTXとETNを中止後に結節は消退した.その後5年間以上にわたり再発は認めていない.過去の報告例の集計と自験例の経過を合わせて考えるとMTX中止のみで改善するかを適切に判断することは重要と考える.

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要約 症例1:10歳,女児.前医にて前頭部項部の脱毛の真菌鏡検が陽性であった.塩酸テルビナフィン(TBF)90mg/日の3か月間内服およびベタメタゾン,ルリコナゾールの外用で加療したが改善がみられず,当科を紹介受診し,イトラコナゾール(ITZ)100mg/日約3か月の内服で治癒した.原因菌はMicrosporum canisと同定した.症例2:9歳,女児.右側頭部の脱毛で近医皮膚科を受診し,伝染性膿痂疹と診断され抗菌薬内服やステロイド外用にて加療されたが悪化したため受診した.KOH直接鏡検にて真菌要素を認め頭部白癬と診断し,ITZ 100mg/日を11週間投与し治癒した.原因菌種はTrichophyton rubrumと同定した.2症例とも副作用はなかった.ITZ内服は小児の頭部白癬治療において比較的安全であり,最近増加傾向にあるMicrosporum属のみならず,Tricophyton属が原因菌の場合やTBF無効の小児頭部白癬に試みてよい治療と考えた.

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要約 2006年5月〜2016年5月の過去10年間に当科において転移性皮膚癌と確定診断した30例について,臨床的ならびに組織学的所見を検討した.患者の年齢構成は平均62.2歳,原発巣分類では,肺癌,乳癌,食道癌が多く,全体の56.7%を占めていた.転移部位は頭頸部・顔面,腹部に多かった.臨床像では結節型が,組織像では腺癌が多かった.原発巣発見から皮膚転移までの平均期間は約34.2か月で,皮膚転移発見後の平均予後は約10.5か月であった.転移性皮膚癌切除が生命予後に与える影響は不明であったが,出血や疼痛などの緩和のために有効と考えた.

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要約 70歳,男性.初診の4〜5年前から右鼠径部に不完全脱色素斑が出現した.病理組織検査で乳房外Paget病と診断し全摘した.理学所見と画像検査で転移なく,経過観察を行っていた.手術から11年後に右下肢の腫脹が出現し,PET-CT検査で鼠径部から頸部リンパ節に及ぶ広範なリンパ節転移が認められた.S-1+ドセタキセル療法を開始したところ,転移巣は縮小し,開始10クールまで部分寛解を保っている.S-1+ドセタキセル療法は,進行期乳房外Paget病に対して有効な治療法である.

マイオピニオン

若者を鼓舞するコツ 神人 正寿
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 タイトルのようなテーマの原稿依頼を頂きました.新人の勧誘に日本一力を入れていて若手が増えてきた熊本大学にいたからでしょうか,あるいは日本研究皮膚科学会きさらぎ塾やあおば塾のチューターであったイメージからでしょうか.いずれにせよ,そういったことに熱心と思っていただけるのはありがたいことです.私自身,これまで東京大学,東京逓信病院,熊本大学,そして和歌山県立医科大学などと異なる環境に身を置いてきましたが,何もしなくても勝手に入局者が集まってきた東京大学とは異なり,熊本では甘い言葉を駆使してなんとか入局させた若手をどのように育成していくかについては責任を感じておりましたし,和歌山に移った現在,その重要性を再認識しています.特に,東京大学や熊本大学ではせっかく入局してくれた若手が1年足らずですぐ退局するという苦い経験をいたしました.和歌山ではそういった思いはもうしたくありません.新専門医制度により皮膚科の入局者が増えるのかどうか予測がつかない状況で虎の子の若手たちをどう鼓舞するか,どこの施設も頭を悩ませているのではないでしょうか?

 さて,googleで「若者を鼓舞するコツ」を検索してみるとさまざまな会話術や褒め方,叱り方が出てきます.書籍ではカーネギーから『暗殺教室』のような漫画まで,参考になるものが多数あります.私の愛するプロ野球では,モチベーター型の監督として星野仙一元監督が有名であり,「選手の家族の誕生日にはプレゼントを贈り,2軍の選手の両親には心配なさいませんようと手紙を書く」というようなエピソードに事欠きません.ただ,こういったテクニックを真似できるかどうかは指導医側の個々のキャラクターにもより,個人技の要素が強いです.それから,(特に地方では)一般企業に比べて思いきり売り手優位市場なので,若手のモチベーションやロイヤルティはどうしても個人差が大きくなります.個人個人に合わせてきめ細かくフォローできればいいのですが,なぜ指導医がそれになかなか注力できないのかと考えるとやはり日々の業務が忙しいからなのでしょう.どんどん成功体験を積ませればいいとも聞くのですが,そんな都合の良い症例ばかりではありません.私としては,日々の診療や研究がそのまま鼓舞につながるようなシステムを構築してしまうことができれば理想だという結論に至っています.

連載 Clinical Exercise・128

Q考えられる疾患は何か? 浅田 秀夫
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症例

患 者:35歳,男性

主 訴:軀幹,上肢の激痒を伴う多発性紅斑

現病歴:約1か月前より頭部にかゆみを伴う皮疹が出現し,項部,胸部,背部へと拡大した.近医にて単純疱疹が疑われ,アシクロビルの点滴を受けたが改善しないため,当科を紹介受診した.自家感作性皮膚炎の疑いでプレドニゾロン5mg/日,抗アレルギー薬内服,ステロイドを外用したが改善しないため入院した.

現 症:皮疹は主に項部,胸背部,臀部,大腿にみられ,強い瘙痒を伴っていた.前胸部では紅色丘疹が多発融合し,紅色局面を形成していた.腰背部では紅斑が左右対称性に分布し(図1a),紅斑の辺縁には丘疹が列序性に多発,小水疱を伴っておりヘルペス様外観を呈していた(図1b).

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目次

欧文目次

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 本論文では,細胞間接着において重要な役割を果たす代表的なカドヘリン蛋白であるデスモグレイン(Dsg)とデスモコリン(Dsc)の接着能と構造について述べられている.教科書などでみられる表皮細胞間接着を担うデスモソームの構造の模式図では,DsgやDscが示されていることが多い.しかしながら,構成されている分子については電子顕微鏡や免疫学的研究によって解明されていても,各々の分子がどのような関係を持ち細胞間接着を担っているかは明らかでなかった.これまでの模式図では,Dsg同士,Dsc同士が結合しているように描かれることが多かった.

 著者らは,沈降平衡法,表面プラズモン共鳴や各種DsgとDscを表面に固定したビーズを用いて,各々のペアでの結合能を検討している.その結果,Dsg-Dsg,Dsc-Dsc同士でも結合能があるものの,Dsg-Dscの組み合わせでより強力な結合が認められた.

次号予告

あとがき 石河 晃
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 平昌オリンピックでは日本選手が冬季五輪史上最多の13個のメダルを獲得しました.事前に期待されていた選手が期待どおりに,また,あまり知られてなかった選手も頑張った結果だろうと思います.日本と時差がない国での開催であったことも日本選手にとって良かったことだろうと思います.13個のメダルのうち8個,4個の金メダルのうち3個が女子でした.日本女子は男子より勝負強いのはメンタルが強いからなのでしょうか.カーリング女子が笑顔を絶やさず決勝トーナメントを戦う姿や,スピードスケートの小平奈緒選手がレース直後,観客に静粛にするよう求める姿から,そんな印象を受けました.

 本号が皆様のお手元に届くころには,大学病院や大きな病院では新人がいることと思います.本年度の皮膚科新入局者はそのほとんどが,新専門医制度に則ったプログラム制にて研修を進めることとなります.新制度では,毎年自己評価と指導医評価を記録してゆく必要がありますが,研修修了までに求められる単位や論文などは旧制度とほぼ変わりません.受験申請に必要な症例レポートは現行制度でも評価対象となっています.審査する側から見ると,レポート内容の充実度は論文執筆数と強い相関関係があることがわかります.問題点の抽出,アセスメント,問題解決は論文執筆数の多い先生ほど的確で内容が濃いのです.臨床論文を多数書くことは臨床能力を高める「筋トレ」なのだと思います.新しく皮膚科に入局した方,専門医取得を目指している方は論文必要最低数3本にとどまることなく,多数執筆することをお勧めします.自らの業績UPにもなりますのでぜひ頑張ってください.特に,ライフイベントによってキャリアを中断せざるを得なくなることの多い女性医師にとって,臨床能力を高めることと,履歴書に添付できる業績を増やすことはまさしく将来のためになることだと思います.大和撫子の強いメンタルをもって頑張っていただきたいと思います.

基本情報

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臨床皮膚科
72巻4号 (2018年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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