Derm.2018
先生は信用できない
堀 仁子
1
1旭川医科大学皮膚科学教室
pp.180
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205423
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皮膚科医になって4,5年目の2年間,北海道道北地方の関連病院で勤務していた.2年目となる秋に「来年は医長になる可能性もある.残り半年間,入院患者の治療方針決定やインフォームドコンセント(IC)を自分でやるように.困ったら助けるから」と尊敬する上司に言われた.
両下腿深達性Ⅱ度熱傷の高齢女性が入院した.デブリードマン後,手術の準備を整えた.日中と夕方の回診はルーチンで,手術の不安がとれるようにできるだけ頻繁にベッドサイドに行くことを心掛けた.術前ICに患者の娘が来院した.初対面だった.ひとしきり植皮術の説明と起こりうる合併症の説明をした後,「何かお聞きになりたいことはありませんか?」と問うと「先生は若くて信用できない.母だってそう言っている」と言われた.自分なりに患者とはコミュニケーションをとっていたつもりであったので,家族のその言葉は予想外でありハンマーで殴られたかのような強い衝撃を受けた.驚愕,悲哀,憤りといった複雑な感情を隠そうとしながらやっとの思いで説明を終えた.今思うと泣きべそ状態だったと思う.
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