Derm.2018
Common diseaseに思うこと
村上 正基
1
1愛媛大学大学院医学系研究科分子機能領域皮膚科学
pp.110
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205398
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北海道で地域医療に携わっていたときの,いまだ忘れられない患者さんがいる.結節性痒疹の患者さんだった.典型的なcommon diseaseの1つではあるものの,誰もが経験するように,この人もとにかく経過が長く,アドヒアランスは悪く,何件も皮膚科を変えていた人だった.初めて会ったときから,“どうせこいつも大したことできないだろうに,黙っていつもの薬だけ出せよ”というオーラが出ているのは,私のみならず外来スタッフにも伝わっていたようだった.
外来でいろいろ話を聞いてはみるものの,過去のカルテ記載以上に新しい手掛かりを得ることもなく時間ばかりが過ぎていき,とうとう,「どうする? ここで僕と頑張ってみる? 僕も大したことないから期待に沿えないよ,きっと」と言ってしまった.随分とふざけた返事をしたものだったが,逆にそれが受けたらしい.このときから毎週あるいは月に一度の定期受診や,入院加療(3回)が始まった.大学へ異動となってからも,はるばる旭川まで通ってくれて,気が付けば3年が経っていた.彼の瘢痕・色素沈着だらけの皮膚には,新たな掻破痕はみられなくなり,無数にみられた結節もほとんど平坦化し,夜も十分に眠れるようになったとのこと.初診時はむっつりと怖い印象であったが,最後のほうでは笑顔や冗談が多くなり,外来にちょくちょく差し入れなどもしてくれたりして.
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