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深爪は陥入爪の主な原因とされており,実際に陥入爪の患者の多くが深爪をしている.したがって,深爪さえしなければ,陥入爪の発症や再発のリスクはかなり少なくなるはずであるが,これがなかなか難しい.というのも,世の中には深爪が好きな人が意外と多いからである.爪の遊離縁の白くなった部分を残さないようにと切っているうちに深爪が進み,結果的に指趾先端皮膚よりも爪が短い状態となるが,それで長年トラブルもなく過ごしていたのであれば,深爪はいけないと急に言われたところで本人はピンとこないであろう.本来は,爪の重要な機能の1つである「指趾先端の物理的防御」という観点からも,少なくとも指趾先端が完全に覆われる程度の長さに維持するのが理想的と考えられるが,習慣化した深爪をやめさせるほどの説得力はないようである.一方で,手指の爪はそうでもないのに,足趾の爪だけが深爪になっている人もよく見かける.つまり,深爪が好きなのではなく,深爪になってしまったケースである.そもそも,手指の爪に比べて,足趾の爪は切りにくい.加齢や肥満などによって,手が足まで届きにくかったり,目がよく見えなかったりで,意図せずに深爪してしまったり,あるいは爪の角を切り残してしまったりといったことがしばしば起こり,それが陥入爪の発症につながることも多い.陥入爪は,機械的な外力が加わりやすい母趾に生じることがほとんどなので,深爪が好きな人もそうでない人も,せめて母趾の爪だけは深爪しないように細心の注意を払ってもらいたいところである.陥入爪にならないように,爪の長さは母趾先端の皮膚が完全に覆われる程度に維持し,さらに両角を切り落とさないように(爪の先端の形状をスクエアに)する切り方を指導することが重要となる.
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