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当科乾癬外来は長年,担当医2名で診療を行っている.そのため,患者さんとのつきあいは長く,大方の患者さんの病状,治療歴,キャラクターを把握している.患者会も設立され,患者さんとの親睦もますます深まっている.患者会では,診察時には聞くことのできない患者さんの本音を聞くことができ,とても勉強になる.しかし,最近懸念しているのは,乾癬治療をやりたいと名乗りをあげる若手の先生が少ないことであるが,他施設ではどうであろうか.乾癬治療に生物学的製剤が登場して8年,そして現在も次々に新規薬剤が開発されている.若手の先生方にとっては,薬剤の多様さを目の前にして,どのように治療を選択したら良いか戸惑うこともあるようだ.確かに,同じサイトカインを標的としていても,製剤ごとに投与間隔が異なったり,抗体の組成,製法が微妙に異なったりと,“何が違うの?”と混乱してしまうのも理解できる.しかし,薬剤の種類が増えたということは,以前に比べて“次の手”が増えたということでもある.また,生物学的製剤は他科領域でのエビデンスがある薬剤も多く,副作用対策も含めてシステマティックに投与法が定められている.すなわち,比較的経験の少ない医師でも治療を行いやすいと考えられる.また,乾癬の病態解明の歴史を踏まえても,生物学的製剤の作用機序を理解することは乾癬の免疫学的病態を理解,解明する上で重要である.近年,皮膚悪性腫瘍,アトピー性皮膚炎など乾癬以外の皮膚疾患にも生物学的製剤が開発,使用されており,それらの免疫学的機序を理解しておくことは,今後ますます求められるだろう.乾癬治療の基本は外用療法であるということには同意であるし,バイオ偏重の傾向に警鐘を鳴らす御意見は承知の上で,若手の先生方には,生物学的製剤の使用をきっかけとして,乾癬,ひいては皮膚の免疫学に興味を持ってもらうというのも良いかと思っている.
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