Derm.2018
遺伝性皮膚疾患の診療─現在と未来
肥田 時征
1
1札幌医科大学医学部皮膚科
pp.66
発行日 2018年4月10日
Published Date 2018/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205385
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皮膚遺伝外来を開設して3年半,母斑症や角化症などさまざまな疾患の診断,遺伝カウンセリングを行ってきた.臨床所見のみで診断できる疾患もあるが,遺伝学的検査が必要な疾患も多い.皮膚科領域で保険適応のある遺伝学的検査はわずかであり,実際は患者さんに自施設または他施設の臨床研究に参加していただいて解析を行っている.現在は,未診断疾患イニシアチブ(IRUD)にコンサルテーションすることもある.稀な疾患が多いため症例ごとに猛勉強しなければならないが,疾患を類推しその原因を突き止めていく過程はエキサイティングである.また,遺伝カウンセリングによって患者さんが病気を乗り越えて行けるよう支援し,診療にあたれることは医師として喜びである.
近い将来人工知能(AI)が人間の仕事の多くを奪うという予測が世間を賑わせている.2017年の『Nature』誌には,皮膚癌の画像診断についてAIが皮膚科医を凌駕するとの論文が出た.遺伝性疾患の診断も,文献やゲノムデータベースなどを参照しながら行うため,AIに有利な作業であろう.また,次世代シーケンサーの低コスト化により,網羅的な遺伝子解析が臨床で利用される日も近い.現在は倫理的な障壁があるものの,将来的には個人が予めゲノム情報を取得し予防的医療や病気の診断に活用できる時代が来るかもしれない.これらのデータの扱いもAIが得意とするところであろう.
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