臨床皮膚科 73巻5号 (2019年4月)

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Thymoma-associated multiorgan autoimmunity(TAMA)は胸腺腫の腫瘍随伴症候群の1つとして近年報告が散見されるようになった稀な疾患である.胸腺腫内でnegative selectionの過程の異常,制御性T細胞(Treg)の減少により骨髄移植などの既往がないにもかかわらず皮膚,肝臓,腸管が障害されるという移植片対宿主病(graft-versus-host disease:GVHD)に似た病態を呈する.GVHD-like erythrodermaなどの皮膚病変は胸腺腫患者の予後不良因子であり,TAMAの重要な診断契機となりうる.そのため皮膚症状からTAMAを早期に診断し適切な治療を行う必要がある.本稿では,われわれが経験したTAMAに伴うGVHD-like erythrodermaの症例を提示し,病態,臨床所見,組織所見,治療,予後を中心に文献的考察を加えて解説した.TAMAの認知度は依然低く,皮膚科医にも十分に周知される必要がある.

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デルマドロームはさまざまな皮膚病変から内臓疾患を見出すことが可能であるため,皮膚科医に限らず,関連する他科の医師にとってもきわめて重要である.古くからさまざまな皮膚症状と内臓疾患の関連が論じられてきたが,近年になっても新たなデルマドロームの発見があり,臨床医にとっては最新の知識を押さえておく必要がある.そこで今回は,最近話題のデルマドロームとして,①paraneoplastic acral vascular syndrome,②disseminated superficial porokeratosis,③aquagenic pruritus,④nuchal type fibroma,⑤necrolytic acral erythemaの5疾患について述べ,臨床像の特徴と注意すべき内臓疾患との関連について述べた.

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Blaschko線は,胎生期に皮膚が形成される時に,皮膚を構成する細胞が増殖進展する線状の分布領域とされ,多くの母斑や母斑症,また後天性皮膚疾患がこの線上に配列・分布する.Blaschko線に沿って生じる後天性炎症性皮膚疾患では,線状苔癬,線状扁平苔癬,線状強皮症などがよく知られている.Blaschkitisは,Blaschko線に沿って生じる太い帯状の炎症性皮膚病変で,報告例は少ないものの,日常診療で時々遭遇する皮膚疾患の1つである.Blaschkitisと線状苔癬は,好発年齢,臨床像,経過など異なるが,病理所見では多くの類似点を認める.

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固定疹は原因物質の摂取のたびに同一部位に繰り返し生じる皮疹である.原因として薬剤による頻度が高いが,食物など薬剤以外によるものでも引き起こされることが知られている.非薬剤性の場合,原因物質の特定が困難な場合が多く,診断に時間を要してしまうことが多い.薬剤内服歴がなければ早期診断のために詳細な問診を行うことが重要であり,確定診断には負荷試験が最も有用である.トニックウォーターによる固定疹はトニックウォーター中に含まれるキニーネにより引き起こされることが報告されている.キニーネを含む水は紫外線照射で青く発光するため容易に検査することができ,国内で流通しているトニックウォーターにはキニーネを含んでいる製品も認められている.今日ではトニックウォーターを使用したカクテルなどの種類も豊富であり,知らずにキニーネを摂取してしまう機会が多くなっているため注意が必要である.

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近年,いろいろな疾患の病態形成メカニズムが,これまでに比べて,より詳細に解明されてきており,それはアトピー性皮膚炎においてもそうである.治療薬物の開発も,解明されてきたメカニズムを基盤として,より疾患特異的な経路を念頭においたものとなっており,今後もその傾向は進んでいくのであろう.アトピー性皮膚炎の薬物治療は,長年,ステロイド外用薬を中心とする外用療法が主体となってきた.このこと自体はこれからもそのままであろうと思われるが,本邦においても,アトピー性皮膚炎治療薬における初の生物学的製剤である,デュピルマブが登場することとなった.おそらく,デュピルマブを皮切りとして,これから複数の新規治療薬が登場してくるだろうと思われる.本稿においては,そのデュピルマブに焦点を当てて,Th2型免疫反応亢進を是正することによるアトピー性皮膚炎の治療について述べることとする.

2.皮膚疾患の病態

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免疫再構築症候群(immune reconstitution inflammatory syndrome:IRIS)はHIV感染治療による免疫の回復に伴って生ずる疾患群として概念が確立されたが,非HIV感染者においても免疫抑制治療の解除や免疫チェックポイント阻害薬投与による免疫の回復によって同様の事象が経験される.皮膚科領域では薬剤性過敏症症候群においてIRISの病態を示すエビデンスが得られている.しかしその他の疾患ではエビデンスが十分とは言えない.本稿ではステロイド薬減量中に発症した中毒性表皮壊死症,免疫チェックポイント阻害薬投与中に生じた薬疹の症例を呈示し,皮膚病変発症時に好中球増加,リンパ球減少,LDH上昇など共通する検査値の変動があることを示した.今後,免疫関連有害事象(irAE)を包含する概念と考えられるnon-HIV IRISの診断基準を確立し,バイオマーカー開発を進める必要がある.

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ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)感染が関連する癌としては子宮頸癌をはじめ,陰茎癌,肛門癌,中咽頭癌などが知られている.爪部有棘細胞癌/Bowen病もHPV感染に起因するが,十分には認識されていない.今回われわれは自験例と既報告HPV関連爪部有棘細胞癌136例を集計した.患者平均年齢は52.2歳,男女比は2.5:1であった.右1〜3指,左3指に好発し,臨床的には爪母周囲に生じ,爪周囲型と爪下/爪甲線条型に分けられた.HPVのDNA型のほとんどは粘膜型ハイリスクであり,HPV16型が約半数を占めるが特にBowen病では多様性がみられた.患者およびパートナーではHPV関連病変が多く,爪有棘細胞癌/Bowen病はハイリスクHPVのリザーバーおよび性感染症としての認識が必要であると思われた.

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Aryl hydrocarbon receptor(AHR)は大気汚染物質や皮膚常在菌などに含まれる化学物質をリガンドとして認識し,それらを代謝する酵素を誘導する受容体型転写因子であるが,近年アトピー性皮膚炎に関連する遺伝子群の発現も制御していることが報告された.具体的には,表皮におけるAHRの活性化はフィラグリンをはじめとするバリア機能分子の発現を増強させ,TSLPやIL-33などのアトピー性皮膚炎に関連する上皮産生性サイトカインを発現し,更に神経伸長因子ARTEMINの誘導により表皮内への瘙痒伝達性の神経伸長を引き起こすことでかゆみ過敏状態につながることが示された.表皮におけるAHR活性の調節はアトピー性皮膚炎の病態改善につながることが期待されるが,AHRリガンドTapinarofを含有する外用薬がPhase Ⅱ studyを終えて,アトピー性皮膚炎に対して奏効することが示された.

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近年,生物の約24時間周期性の生理活動を司る「概日時計」に関する研究が飛躍的に進歩し,体内時計(時計遺伝子)とさまざまな疾患の関係が明らかになりつつある.時計遺伝子は,中枢のみならず,臓器を構成する末梢細胞ほぼすべてに存在し,個々の末梢時計は中枢時計によって同調される.これまでの研究で細胞増殖やバリア透過性などの皮膚のさまざまな機能が時計遺伝子によって制御されていることがわかっていたが,最近,皮膚の感染症や炎症,癌といった種々の疾患・病態も体内時計と密接に関連していることが続々と報告されている.われわれは単純ヘルペスウイルスの感染症状が宿主の感染時刻によって大きな影響を受けることや,活動期(昼)にヘルペスの易感染性がピークになることなどを明らかにした.本稿では,ヘルペス感染症を中心に概日時計と皮膚疾患との関係をひも解きながら,“Chronodermatology”(時間皮膚科学)について考察したい.

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汗は体が健康な状態を維持するための大切な役割を持っている.体温や皮膚温の調節,病原体への生体防御,皮膚を潤すことで健康な皮膚の状態を保つ作用がある.このため,汗は最前線で体を守る免疫システムの1つとも言える.ところが,ある状況下において,汗はかゆみを生じる要因となる.例えば,余剰な汗が長時間にわたり皮膚表面で密閉された状況で放置されると汗疹を生じやすい.そのほか,臨床現場において,汗によって皮膚疾患が発症あるいは悪化という訴えを伺う機会は少なくない.ここでは汗と皮膚疾患の関係について,これまでのエビデンスを基に概説する.

3.新しい検査法と診断法

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医療分野でも人工知能(artificial intelligence:AI)の活用がいよいよ始まろうとしている.皮膚病は臨床像から診断を類推できるものが多いことから,AI診断がやりやすい領域であり,実際にダーモスコピーではその研究がかなり進んでいる.一般の臨床写真を使ったAI診断の研究も世界各国で進められており,2017年には科学雑誌Natureに,ディープラーニングによる皮膚腫瘍のAI診断が平均的な皮膚科医と同レベルに達したことが報告され,大きな反響を呼んだ.同時期に筑波大学は京セラコミュニケーションズ社と共同で同様の研究を進めており,皮膚腫瘍の診断精度で皮膚科専門医を超える正答率をもつAI診断補助システムを開発している.現在,皮膚病写真のデータベースの構築が日本皮膚科学会主体で進められており,今後このビッグデータを利用したさまざまなAIが開発されるであろう.そうしたAIの活用によりわれわれの業務負担を減らし,医師にしかできない業務にリソースを割けるようになると期待される.

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皮膚腫瘍の初診時診断は主にダーモスコピーを用いた視診によりなされる.しかし時に皮膚科専門医においても診断に苦慮することがあり,悪性腫瘍の発見が遅れ治療に影響を及ぼすことがある.近年,悪性腫瘍と健常組織ではその熱伝導率が異なることが示唆されている.そこで,精密な温度測定に汎用されているサーミスタを応用して,非侵襲的に皮膚表面の温度を測定する技術を利用し,皮膚腫瘍と隣接する健常組織との熱伝導率の差を数値化し診断の指標とすることで,皮膚腫瘍の良性,悪性の判定を試みた.結果,悪性黒色腫12例,non-melanoma skin cancer 17例において浸潤癌と表皮内癌で真逆の熱伝導性を示すことが明らかとなった.興味深いことに,基底細胞癌のみ表皮内癌と同じ傾向を示した.本機器は,特に皮膚腫瘍の真皮内浸潤を検出する点で優れていると考えられ,特に悪性黒色腫においては,センチネルリンパ節生検の必要性を判断するために有用な検査機器となりうる可能性がある.

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ロイシンリッチα-2グリコプロテイン(leucine-rich α-2 glycoprotein:LRG)は主に肝臓から産生されるが,炎症局所での腸管粘膜上皮,好中球,マクロファージにおいても発現を認め,IL-6,TNF-α,IL-22などの炎症性サイトカインによって発現が誘導される急性期蛋白質である.血清LRGは関節リウマチ,潰瘍性大腸炎やCrohn病などの疾患活動性マーカーとして有用であり,炎症性腸疾患におけるラテックス免疫比濁法による血清LRGの測定は2018年8月21日に製造販売承認を取得した.乾癬においてLRGはPASIスコアと強い相関を示し,皮疹の重症度に従い血清LRG値は上昇していた.さらに生物学的製剤投与後の血清LRG値はPASIスコアおよびDAS-28と連動して推移することから,血清LRGをモニターすることにより治療薬の増量,変更もしくは投与間隔の延長の判断と生物学的製剤中止後の再燃予測が可能である.今後,血清LRGなどのバイオマーカーによる病勢の経時的評価で再燃を早期に予測し治療介入することが可能になると思われる.

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水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)感染症,特に帯状疱疹は皮膚科の日常臨床でよく遭遇する疾患である.典型的な水痘,帯状疱疹では皮疹の状態や病歴から臨床診断が可能であるが,時に他の皮膚疾患との鑑別が困難な場合もある.またステロイドなど免疫抑制剤投与患者や,先天性・後天性免疫不全患者のVZV感染症では早期の正確な診断が重要である.これまで,帯状疱疹を迅速に確定診断できる検査がなかったが,新しいイムノクロマト法によるVZV抗原診断キットであるデルマクイック® VZVが登場した.臨床試験の結果では,本キットの陽性一致率,陰性一致率,全体一致率はいずれも95%前後であり,感度,特異度とも高く,またHSV-1,-2,および4種の表在性細菌との交差反応性は認められなかった.このことから皮膚に水疱,びらん性の病変を形成する感染症,特にHSV感染症との鑑別に効力を発揮するものと思われる.

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脱毛症にはさまざまな疾患が存在するが,臨床所見のみでは診断が困難な脱毛症では,脱毛病変部の皮膚生検による病理組織学的診断が必要となる.脱毛症は,毛周期異常によるもの,炎症細胞の浸潤により毛組織が破壊されるもの,先天的または外的な原因により毛組織の形態異常を示すものに大別される.頭皮生検によって,細胞浸潤の主な部位と程度,免疫グロブリンおよび補体の沈着の確認,毛組織の形態,毛周期の状態を把握でき,病態の把握と診断が可能となる.これらを的確に評価するには,垂直断標本に加えて4mmパンチを用いた水平断標本を作製することが有用である.脱毛症における適切な検体の採取方法も含め,頭皮生検の実践法について解説する.また,脱毛症の病理組織所見の効率的な読み方について代表的な疾患を中心にポイントを述べる.

4.皮膚疾患治療のポイント

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メトトレキサート(MTX)は,関節リウマチ治療のアンカードラッグとして評価されているだけでなく,欧米では乾癬に対する標準治療薬に位置づけられている.国内では,MTXの乾癬に対する適応は認められていなかったが,2018年11月,厚生労働省「医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」において,医療上の必要性が高く公知申請が妥当と判断され(2019年3月に承認),乾癬という病名(尋常性乾癬,関節症性乾癬,膿疱性乾癬,乾癬性紅皮症)でのリウマトレックス®の保険償還が可能となっている.本稿では,MTXの歴史を振り返り,乾癬治療薬としてのMTXの今後の位置付けと適正な使用法,そして関節リウマチにおいて実践されており今後乾癬にも適用可能な安全対策を中心に解説する.

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天疱瘡および類天疱瘡の診療ガイドラインでは,ステロイドの早期減量効果およびステロイド減量時の再発予防効果を主に期待して,免疫抑制薬を使用することが提唱されている.代表的な免疫抑制薬であるアザチオプリンは,天疱瘡に対しては比較試験等により併用の有用性が確立されつつある一方で,類天疱瘡群では報告が少なく,有効性についての結論は出ていない.軽症・中等症の天疱瘡・類天疱瘡症例に対して,アザチオプリン単剤療法は有効な選択肢の1つになりえることが最近報告された.アザチオプリンの副作用として,感染症,肝機能障害,骨髄抑制,消化器症状,悪性腫瘍の発生などに留意する必要があるが,重篤な白血球減少症および脱毛症の発症が,NUDT15(チオプリン代謝酵素)の遺伝子多型に関連することが判明している.2019年1月現在,自己免疫性水疱症に対して保険適用のある免疫抑制薬はなく,今後の状況の改善が望まれる.

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当院ではステロイド外用剤でも十分にコントロールできない多形慢性痒疹患者に対しナローバンドUVB(NB-UVB)全身照射を行っている.2015〜2017年にNB-UVB全身照射で加療した患者について集計し,有効性について検討した.結果はNB-UVB全身照射開始後,約1か月で皮疹,瘙痒感の改善を認め,約2か月で照射を終了でき,少なくとも6か月以上はステロイド外用,抗ヒスタミン薬内服のみでコントロール可能であった.外用でコントロール不十分な多形慢性痒疹の全身治療として積極的に考慮すべき治療法であると考えた.

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円形脱毛症は自己免疫疾患の1つであり,難治例では,脱毛の後に長期間にわたり全く発毛を認めなかったり,発毛と脱毛を繰り返して慢性の経過をとる.2017年に本疾患の診療ガイドラインが改訂されたが,治療の主役は変わらずステロイドと局所免疫療法である.ステロイドは,患者の病期や脱毛面積に応じて外用療法,局所注射療法と全身投与を適切に選択することが重要である.これらの治療に加え,抗ヒスタミン薬の内服や紫外線療法なども適宜併用する.あらゆる治療に抵抗性の最重症例では,かつらの使用や無治療での経過観察も考慮する必要がある.なお,まだ時期尚早ではあるが,将来的にはJAK阻害薬などの新規の治療法の導入が強く期待されている.

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重症で難治性の乾癬患者に対して,2018年にIL-23p19抗体であるグセルクマブが発売された.VOYAGE 1試験で16週後のPASI 90(Psoriasis Area and Severity Indexが90以上改善した患者の割合)は,プラセボ群2.9%に対し,アダリムマブ群が49.7%,グセルクマブ群が73.3%であった.VOYAGE 2試験では,28週時点でPASIが90%以上改善しなかった症例はアダリムマブからグセルクマブに切り替えられた.切り替え症例での48週時点でのPASI 90は66.1%であった.NAVIGATE試験では,16週時点でIGA(医師による全般評価)が2以上の症例はウステキヌマブ継続群とグセルクマブ変更群に割り付けられた.28週時点でのPASI 90は,ウステキヌマブ群が22.6%,グセルクマブ群は48.1%であった.グセルクマブはPASI 90が高く,投与間隔も長く,他の生物学的製剤で効果不十分な症例に対しても高い効果が期待できる.

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ホスラブコナゾールは新規トリアゾール系の広く強力な抗真菌活性を発揮するラブコナゾールのプロドラッグで,約20年ぶりに登場した内服薬である.1日1回12週間内服にて治療が完結する.吸収率が高くまた食事の影響を受けないことも特徴である.ホスラブコナゾールの有効性と安全性は,爪白癬日本人患者を対象とした多施設プラセボ対照二重盲検無作為化試験(実薬101名,プラセボ52名)にて検証された.48週後の完全治癒(臨床的治癒+真菌学的治癒)率は実薬群59.4%(60/101)であり,プラセボ群5.8%(3/52)に比べて有意に高かった.安全性については,肝機能検査値異常が認められたことから,定期的な検査による肝機能障害の早期検出が求められる.近年では爪用外用抗真菌薬が相次いで登場し多く使われる傾向にあるが,治癒率は決して高いものではなく,より高い治療効果の薬剤が望まれていた.その点で本薬剤は爪白癬治療の新たな選択肢となることが期待される.

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灌流式持続陰圧洗浄療法(negative pressure wound therapy with instillation and dwelling:NPWTi-d)は,既存治療で奏効しない,あるいはしないと考えられる難治性創傷への適応をもつ周期的自動洗浄機能を備えた陰圧創傷治療システムである.主な適応疾患は褥瘡,末梢動脈疾患,糖尿病足潰瘍,外傷,骨髄炎を伴う潰瘍などさまざまな急性/慢性創傷であるが,従来の製品と比較し大きく異なる点としては中等度までの感染や壊死組織を伴う創傷へも適応が拡大された点である.それ故に早期の治療介入が可能となり,在院日数の短縮と医療費の削減が期待できる.超高齢化社会を迎えたわが国の難治性創傷治療におけるNPWTi-dの役割は中心的な位置付けになりつつあるが,最大効果を挙げるためには包括的客観的評価を行い,適切に使用することが重要である.

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Merkel細胞癌(Merkel cell carcinoma)は,高齢者の露光部に好発する皮膚原発の神経内分泌腫瘍である.本邦におけるデータには乏しいものの,近年明らかな増加傾向にある.その悪性度は高く原発性皮膚癌の中で最も予後不良なものの1つとされ,その致死率は33%にも及ぶ.遠隔転移症例に関しては,これまで肺小細胞癌に準じた細胞傷害性化学療法による加療が行われてきたものの効果に乏しい時代が続いたが,免疫チェックポイント阻害薬の登場により新たな局面を迎えている.最近になって免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-L1抗体)であるアベルマブが保険適用となったことから注目されている.

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全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)をはじめとする自己抗体産生と臓器障害が明らかにされている自己免疫疾患では樹状細胞,T細胞以外に,抗体産生を担うB細胞が中心的な役割を果たしている.B細胞の生存,増殖,分化と抗体産生に重要なBAFF(B cell activating factor)またはBlyS(B lymphocyte stimulating factor)は,SLEの病態形成だけでなく,疾患活動性との関連も示唆されている.ベリムマブは血清中の可溶性BAFFに対する完全ヒト型モノクロナール抗体であり,SLE治療で初めて承認された分子標的薬である.BAFFはまた自己免疫の発症と進展にも重要な役割を果たしている.SLEに代表される自己免疫疾患では従来のステロイドと免疫抑制剤による免疫全般を抑制する治療から,より病態に即した疾患分子を標的とする治療に変わりつつある.

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悪性黒色腫の根治切除術を実施した後,再発抑制のための治療を希望する場合は術後補助療法が以前よりダカルバジン,インターフェロンβを中心に行われてきた.しかし,エビデンスに乏しく,明らかな効果を見ることができなかった.術後補助療法としての免疫チェックポイント阻害薬,分子標的薬の適応が拡大され,Stage ⅢまたはⅣの術後補助療法として,イピリムマブを経過観察のみと比較,またはニボルマブと比較した臨床試験や,ダブラフェニブ+トラメチニブの分子標的治療を経過観察のみと比較したデータが報告された.イピリムマブの術後補助療法により,術後5年間の再発リスクや死亡リスクは無治療経過観察より3割弱低下し,ニボルマブの術後補助療法は術後5年間の再発がイピリムマブより3割以上低下,また,ダブラフェニブ+トラメチニブによる術後補助療法では,無治療経過観察と比べ再発,死亡リスクがいずれも5割前後低下している.

5.皮膚科医のための臨床トピックス

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人を対象とする医学研究は,人由来の試料・情報が用いられる点で被験者保護が重要であり,その成果が医療に還元される点で高度の正確性と公正性が求められる.ここでは特に,利益相反と個人情報について取り上げる.研究者や組織としての責任と,研究により得る利益とが衝突・相反する状態を利益相反と呼び,研究にバイアスが生じていると誤解を招かぬよう適切に管理することを利益相反管理という.研究機関による研究実施段階と学会や学術雑誌による成果発表段階の2段階で行われる.個人情報の取得には本人の同意が必要であるが,医学研究では,個人情報保護法の適用除外や例外規定によるオプトアウト等で個人情報を利活用する場合が多くあるため,倫理指針を遵守した手続を取る必要がある.医学研究が社会からの幅広い理解と支援を受けながらよりいっそうの発展を遂げるために,医学研究者には研究倫理に関する基本的な理解が必須である.

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悪性黒色腫は2018年からの症例は新たな病期分類が適用となる.今回のAmerican Joint Committee on Cancer第8版への改訂は前回の第7版での改訂と比較して全体的に大きく変更が加えられており,特にリンパ節転移に関わる分類で大幅な分類の変更が行われた.これにより,病期ⅢはこれまでのⅢA〜Cではなく,ⅢA〜Dの4つに細分類されることになった.皮膚悪性腫瘍学会予後統計委員会で集計している本邦の悪性黒色腫の症例データを第8版に合わせて分類したところ,病期ⅢA〜Dの疾患特異的生存曲線はよく分離されており,より細かい予後予測が可能となっている.ただし,今回の改訂で病期ⅢAはより予後良好に,そして新設された病期ⅢDは病期Ⅳに近接するほどが予後は不良であることから,論文や臨床試験の結果を読み解く際にはどちらの分類が使用されているのかよく確認する必要がある.

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白斑の病態はいまだに未解明の部分が多く,治療に難渋する例も少なからず経験される.そんな中で,国際的な白斑研究の盛り上がりと並行して,2011年よりVitiligo Global Issues Consensus Conference(VGICC)が開催され,用語や評価方法の統一基準が議論されてきた.また,2016年にはEast Asian Vitiligo Association(EAVA)が設立され,これまでに2回の研究会が開催されてきた.このような経過から,日本でも国際的に対応できる学会が必要となり,白斑学会が設立された.タスクとしては,臨床的な視点を重要視し,新規治療法の開発,白斑研究者間の情報共有ならびに若手研究者の育成,診療ガイドライン改訂などが挙げられる.

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Earlobe crease(ELC)は耳垂を斜めに横断する皺の所見であり,老化に伴う血管や皮膚の弾性線維の減少に起因するとされている.ELCは非高齢者においては冠動脈疾患との関連が指摘されており,報告者にちなんでFrank徴候とも呼ばれている.ELCと動脈硬化に関する統計学的検討は数多くあるものの,肝疾患との関連性についてはこれまでに報告されていない.われわれは,一般企業の健康診断の受診者を対象にELCと生活習慣病の関連について検討し,ELCと脂肪肝に強い関連性があることを見出した.「ELCは脂肪肝のデルマドロームである」という新たな知見を解説する.

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本邦の手足口病は,2009年以降,奇数年で流行し,非典型例や重症例の原因となるコクサッキーウイルス(coxsackie virus:CV)A6の検出率が増加している.当科でも,水痘や多形滲出性紅斑(erythema exsudativum multiforme:EEM)様の臨床像を呈した,主にCVA6による手足口病の成人例を14例経験したので,臨床的および病理組織学的に検討した.男性5例(平均51歳),女性9例(平均34歳).発熱(10例),感冒様症状(11例)で始まり,皮疹型は水痘型4例,EEM型10例で,全例にかゆみを伴っていた.家族内/外感染が5/6例.白血球減少はなく,9例でCRPとLDHが上昇していた.手足の症状のために11例でステロイド全身投与を要したが,全例,約1〜3週で軽快した.水疱は表皮内水疱で網状変性や海綿状態を伴っていた.紅斑は表皮真皮境界部変性と角化細胞壊死を伴い,真皮の血管周囲と間質にも,リンパ球,好酸球,核塵の浸潤を伴っていた.EEM型を呈する手足口病はかゆみが強く,薬疹と混同しやすいが,全身状態が良好で,好中球,核塵の浸潤が混在していることが,鑑別になると思われた.

Postorgasmic illness syndrome(POIS) 伊藤 崇
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Postorgasmic illness syndrome(POIS)は射精後に全身倦怠感やインフルエンザ様症状などの複合症状をきたす疾患で,世界的にも症例報告の少ない極めて稀な疾患である.判定基準と皮膚テストにより診断するが,発症機序は不明で治療法はいまだ確定していない.本邦での報告は自験例を併せて2例のみであり,皮膚科領域では今回初となる.POISは射精により誘発されるため,思春期以降の男性にとっては非常にstressfulであり,本人のQOLを著しく低下させる.今後症例の蓄積により,診断基準,治療指針の確立が重要となる.

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第二子出産後,初めての夫との性交渉後に顔面浮腫,呼吸苦などのアレルギー症状を起こした29歳女性を経験した.夫が採取した精液を遠心分離して得た精漿希釈液を用いたプリックテストが陽性を示し,ヒト精漿アレルギーと診断した.血清特異的IgEでは,ヒト精漿とともに,イヌ上皮にも陽性を示し,イヌアレルゲンコンポーネントでは,r Can f 5(アルギニンキナーゼ,prostatic kallikrein)が高値で,r Can f 1,r Can f 2,r Can f 3は陰性であった.牡イヌ上皮中のCan f 5に感作された場合,その交差反応により,ヒト精漿アレルギーが発症するとの報告がある.自験例は第二子出産前後に里帰りした実家で飼育されていた牡イヌに接触して,イヌ上皮中のCan f 5に感作され,出産前までは無症状であったが,出産後初めての夫との性交渉時にヒト精漿アレルギーを起こしたと考えた.性交渉時のコンドーム使用にて症状の再発はない.

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Acro-dermato-ungual-lacrimal-tooth syndromeは上皮系の主要な転写因子であるp63をコードしているTP63遺伝子異常が原因であり,遺伝形式は常染色体優性遺伝である.Ectrodactyly-ectodermal dysplasia-cleft lip/palate syndromeの亜型と考えられている.臨床症状として欠指症や合指症,爪甲異常,顔や体幹にそばかす様の色素沈着,乏汗や無汗といった発汗異常,脱毛,捻転毛といった頭髪の異常,歯芽形成不全,涙管閉塞,乳房低形成などを呈する.今回,19歳女性のacro-dermato-ungual-lacrimal-tooth syndromeの1例を経験した.発汗テストとしてMinor法を行い,発汗部と無汗部を同定することができた.過去にacro-dermato-ungual-lacrimal-tooth syndrome患者に発汗テストを行った報告はなく,自験例を交えて考察する.

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掌蹠膿疱症(palmoplantar pustulosis:PPP)は,手掌・足蹠に無菌性膿疱を繰り返し生じる慢性炎症性の難治性疾患で,患者QOLは低下する.特に関節症状を合併している場合は治療に難渋する.治療は生活指導,悪化因子の除去,対症療法(外用,内服,光線療法,顆粒球単球吸着療法)に大別される.乾癬に準じた治療に加え,まず禁煙と病巣感染の治療を行う.難治例のPPPに対して,生物学的製剤として抗IL23p19抗体のグセルクマブ(GUS)が本邦初,世界に先がけて保険適用となった.国内第Ⅲ相臨床試験では,皮疹の重症度を示すPPPASI(Palmoplantar Pustulosis Area and Severity Index)合計スコアが投与開始16週後でGUS 100mg群では有意に低下し,PPPASI 50達成率は57.4%であった.52週後における重篤な有害事象は3例(5.6%)と忍容性にも優れている.

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外陰部の乳房外Paget病で,肛門周囲に病変が分布する場合,それが皮膚原発Paget病か肛門直腸に由来する二次性Paget病かが問題となる.両者は臨床像に加えて病理組織所見も類似するが,皮膚原発であれば皮膚病変に対する治療で根治しうる一方,二次性EMPDの場合には,下部消化管の癌腫の併存を前提とした治療方針を立てる必要があり,これら二者の鑑別は重要な意義を持つ.免疫染色で,皮膚原発のPaget病では一般にCK7陽性,CK20陰性,直腸/肛門管癌はCK7は不定,CK20は一般に陽性とされ,これらの免疫染色が二者の鑑別に有用とされるが,時に例外もあり精度の高い鑑別は難しい場合がある.明確な皮膚原発Paget病の症例と,下部消化管癌の併存を確認された二次性Paget病の例でCK7,CK20に加え,CDX2,GATA3による免疫染色を行った結果,これら2種のマーカーの併用で,鑑別の感度,特異度が向上することを報告した.広く普及していて多くの施設で実施可能,かつ有用な免疫染色と考えられる.

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「宮崎スタディ」は,現在も進行中の世界で最大規模の帯状疱疹の疫学調査である.「宮崎スタディ(1997-2006)」では,帯状疱疹は女性に多く,男女ともに50歳以上で急増し,また,水痘と帯状疱疹は鏡像関係にあり,その結果,帯状疱疹は冬に少なく夏に多いという季節性があること,年齢別構成で二峰性となっていることなどを明らかにした.しかし,水痘ワクチン定期接種化後,帯状疱疹の疫学にも変化が起きている.2014年10月からの水痘ワクチン定期接種開始以降,水痘は年間を通して減少し,季節性が消失したことが報告されている.今回の「宮崎スタディ(1997-2018)」では,水痘減少の影響で,帯状疱疹は夏に多く冬に少なくなるという季節性もあまりみられなくなった.このことは,水痘ワクチン定期接種の影響が年間を通じての帯状疱疹の増加に関連していると考えられた.また,水痘ワクチン定期接種の影響を受けたのは,高齢者層よりも若年層のほうがより大きいと推察され年齢別構成の二峰性の消失が起きている.

Derm.2019

皮膚科医の醍醐味 山口 由衣
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 3年ほど前から大学近くの循環器呼吸器専門病院に外勤に行っている.膠原病関連の新規治験の分担者として行くことになったのだが,それを機に,間質性肺炎の専門家である副病院長が「皮膚膠原病外来」を立ち上げてくださった.そこで診る患者さんは,「間質性肺炎(interstitial pneumonia:IP)ありき」の方々で,肺組織の病理像や血液検査所見から膠原病を疑う要素が少しでもあれば併診されてくる.自分が大学の膠原病外来で診る患者層との違いに気づかされることが多く,非常に興味深い.IPがあり全身性強皮症の特異抗体陽性だが,皮膚所見のないsine sclerodermaを初めて診断した.また,セントロメア抗体陽性で強皮症のない方々は珍しくはないが,IPのみがある患者層にはあまり出会ったことがなかった.さらに,抗ARS抗体陽性IP患者はあまりに多く驚くが,メカニックスハンドを認めることは珍しくないものの,多くは他の所見を欠き,皮膚筋炎とは診断できない.時に,典型的な皮膚筋炎や強皮症,全身性エリテマトーデス,全身性血管炎などを見つけ出し,主治医と議論できると自分の存在価値を感じる.膠原病は多診療科が関与すべき分野であり,オーケストラ診療が理想である.皮膚科医の醍醐味は,皮膚症状から全身性疾患を見つけ出すこと,皮疹を正しく診断し病勢との関連を議論すること,そして個々の患者にとっての最良の予後改善を目指して治療に積極的に関与することである.自分の常識にとらわれず,疾患の全体像を把握するための自己研鑽を大切に,皮膚科医として時にオーケストラ診療の指揮をとっていきたい.

察知する診療 沖山 奈緒子
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 後進への臨床研修・教育ということについて考える機会も多くなってきた.しかし,臨床を教えるというのはとても難しい.もっと体系的に次世代へ伝えるべきであろうと反省すると同時に,いや,でも,所詮センスだよ,習うより感じろ,と言ってしまいたくもなる.最近,マスクをすることが流行していて,それも人前でも取らないのがごく普通になってきている.老若男女問わずであり,患者さんもそうだし,医師や看護師もである.病院ではもちろん,免疫抑制剤を飲んでいる患者さんもいれば,不特定多数の病人と接する医療従事者側も,感染予防対策としてのマスクが主ではあろう.しかし,マスクをされていると(もしくはしていると),とても診察がやりにくい.見えないし,感じ取れない,熱意すら希薄になる気がする,と思うのは私だけなのだろうか.患者さんの表情から察知できるものもあるし,こちらの表情から察知してもらうものもある.体系的に説明できないような感覚的診療をしている証拠かもしれないとも思い当たりつつ.

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 先日,WHO Classification of Skin Tumours,通称ブルーブックの改訂版,第4版がやっと手元に届きました.2005年の第3版から13年ぶりの改訂です.皮膚病理が好きですし,知っておく必要があろう,とぼちぼちと読み進めていますが,どんなことが新しくなっているのだろう?とワクワクします.

 …と書くと聞こえは良いですが,実際は…「ふむふむ,TMN分類は2005年度版と印象が違いますね.あ,ついにケラトアカントーマ,SCCの亜型に入ったか—アメリカっぽいな—.Merkel細胞癌も上皮性の腫瘍ね(以前は神経系に分類).おお,メラノサイト系病変は,日光曝露を受けるかそうでないかによってまず分類すると.Bastian先生編集なのかしら…? まあ,付属器腫瘍のNOS.ざっくりいったなあ.Pleomorphic dermal sarcomaも確立した? のね!」と背中を丸めニヤニヤしながらブツブツと独りごちている,すっかり怪しいおばさんです.しかもまだ目次のページです.

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 当科の自己免疫性水疱症外来では,天疱瘡や類天疱瘡の患者さんの診断,軽症例の通院治療,中等症〜重症例の退院後フォロー,臨床治験などを行っている.多少時間がかかるものの,患者さんの話をしっかり聞いて診療することを心掛けている.外来で悩ましいのは,ステロイド内服の合併症対策と,ステロイド減量の判断である.外来で患者さんは多くのことを語ってくれる.「最近だるくて…」(ステロイドによる筋力低下? 不眠症のせい? 肝機能障害? 内分泌異常?),「目がかすむんです…」(ステロイド性白内障?),「腰が痛くなってきました…」(骨粗鬆症による圧迫骨折?),「膝も痛い…」(体重増加+下肢筋力低下によるもの?),「足がしびれるような感じが…」(?),「最近ご飯が美味しくないのです…」(?)など.どれもこれもステロイド内服に関係がありそうななさそうな微妙なところである.検査で異常が見つかることもあるので安易に不定愁訴扱いするのは危険ではあるが,過剰診療になるのも避けたいので,精査や他科紹介に踏み切るタイミングにはいつも苦慮している.

 天疱瘡や類天疱瘡は再発が多い.ステロイド減量で患者さんの希望と私の方針が合わないこともある.「え? 今日は薬を減らしてくれないのですか? 多少再発する可能性があっても減らしてほしいです」という方もいれば,「無理に薬を減らさないでください.二度と再発したくないんです」という方もいる.そこで,別の患者さんに「あなたの希望はいかがですか?」と尋ねると,「そんなの私に聞かれてもわからないので,先生が決めてください」と返ってくる.ああ,再発予測マーカーさえあれば….日々,医学の限界を感じつつ,それが研究の原動力となっているようにも思う.

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 昔のことですが,自分より年長の先生が執刀する手術を積極的に見学した時期がありました.その手術を自分がメインで行うと仮定し,手術の進め方等あらかじめ自分なりに考えシュミレーションしておき(例えば,どこからメスを入れるか,どこから剝離するか,どこで体位変換するか等),手術見学しながら自分がシュミレーションしていた内容との違いを自分で確認しました.見学している手術のやり方が自分の考えと違っていた場合でも,その場ですぐに執刀医に質問はせず,自分が考えたのとは異なる,そのやり方のメリット・デメリットをまず自分なりに考え調べました.このような学び方は時間など余分にコスト?がかかるようにも思えますが,「こう切って,こう剝離して」と初めから手取足取り?教えてもらう場合よりも,色々な応用力を含めかえってよく身についたと自分で勝手ながら思っています.皮膚科内の大きな手術を自分がメインで行う機会はめっきり減りましたが,Paget病,悪性黒色腫,広範囲熱傷,膿皮症,腋臭症などの手術を,ブランクがあっても今でも問題なくできると思っています.人から簡単に教えてもらったことは案外忘れやすいですが,上記のようにして得た経験,知識はよく身につき,貴重だったと感じています.あと,最高責任者として診療,手術(たとえば一人医長での赴任)する経験もやはり貴重だったと思っています.若い先生方の何かの参考になったら幸いです.

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 私は沖縄で真菌係をしています.正直,真菌に興味があったわけではなく,真菌培養について質問をしたのがきっかけだったように思います.私が皮膚科に入局した頃は,あやしいスラント培地が所狭しと並べられた暗い雰囲気の真菌部屋と呼ばれる一室がありました.現在は,整理され見た目には普通の部屋になりましたが,細胞培養を扱う先生にはバイ菌扱いされ,若い先生にはなかなか興味を持ってもらえずにいます.

 真菌を扱う皮膚科医が少なくなったと聞きます.しかし,培地は簡単に用意できますし,検体を培地に載せて置いとくだけ,あとはゆっくり,ちょっとした空き時間に観察と継代するくらいであまり手がかかりません.マイペース,コツコツ型の先生に向いていますが,忙しい先生でも取り扱い可能です.疑った真菌が生えたときはちょっと嬉しくなります.

皮膚病理が読める人 栁原 茂人
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 皮膚病理が読める人,それは一家に一台,ならぬ一医局に一人欲しい存在であります.私はそれになりたい,と思うようになったのは皮膚科ローテート中,研修医のときでした.皮膚を診て,診断,治療するという自己完結性をもった科として皮膚科に興味を持ち皮膚科の門を叩いた私でしたが,顕微鏡を覗くとまた全く違う青と赤の世界の中で繰り広げられる生命活動に魅了されました.腫瘍細胞は自身の増殖のために必要な栄養を取り込むために周囲の血管を増殖させたり,生体側は腫瘍細胞の増殖を阻むかのように炎症細胞を向かわせる.というように細胞の集まりが組織として,まるで意志をもったかのように変化する,たった1cm程度の深さで繰り広げられる世界をもっと見たいと思うようになりました.大阪市立大学皮膚科入局後,鳥取大学皮膚科へ国内留学の機会をいただき,山元 修教授のもと「なぜそういう形態にならざるを得なかったのかを考える皮膚病理組織学」を学び,皮膚病理組織学会主催の講習会「皮膚病理道場あどばんすと」に開講以来すべてに参加,全国に沢山の病理仲間もでき,ついには中級以上の皮膚病理医の前で講師も務めることができました.今は近畿大学皮膚科で若手の先生達に皮膚病理を教えています.川田 暁教授,病理部の先生,私の3者がdiscussion顕微鏡で同時に診ながら病理診断をつけ,カンファレンスで臨床像と合わせて確定しています.上記の3者で病理を診るのは山本明美先生の調査1)によれば,全国80医局のうち7医局しかないとのことで貴重な経験をさせていただいております.

 皮膚病理,暗く,泥臭く,地道な分野でありますが,日々の皮膚科診療において重要な立場にあります.患者さんのため,医学のため,医局には病理が読める人が欠かせないということがわかってきました.私は細胞達との会話からそれらの意志を聞き取り,それを翻訳して主治医に伝えることができるような皮膚病理医を目指したいと思います.

脳内報酬系 石氏 陽三
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 私,音楽好きである.オールジャンル聴くが特にロックミュージックが好きである.中学生時代にJimi Hendrixに憧れ,将来,ギタリストになると決心した.しかし,ギターの腕も身長も伸びずに泣く泣く断念した.それでも,音楽好きは続き,大音量で音楽を聴いていたため,騒音性難聴にもなったこともある.ほぼ,毎日なんらかの音楽を聴き,頭の中では常に音楽が鳴っている.そのように音楽を聴いて心地良いと感じたときには,脳内で報酬系といわれている部位が活動する.音楽を聴いているとき,間違いなく私自身の報酬系も活発になっていると思っている.

 連日,外来でかゆみのある患者さんの診察をする.皮膚病変はそれほど重症でないにもかかわらず,かゆみが強い患者さんがいる.また,かゆい部位を引っ掻くと気持ち良く感じるため,掻破行動を止められない患者さんもいる.近年,脳機能画像研究が進み,この掻くと気持ち良く感じているときに,脳内の中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area:VTA)や側坐核(nucleus accumbence:NAc)などのドパミン神経を中心とした報酬系と呼ばれる部位が主要な役割を果たしていることが明らかにされた.これは,私が音楽を聴いているときと類似した脳の状態であると言える.また,薬物,アルコール,ギャンブルや過食など他の中毒も同様に報酬系が関与していることが証明されている.患者さんにとっての掻破は,私にとっての音楽かもしれない.「音楽を聴くな」と言われるのは私自身とても辛い.

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 私は現在,皮膚外科を専門分野の1つとして診療や手術を行っている.近隣のクリニックや病院の先生より患者さんを紹介いただく機会も年々多くなり,皮膚科医としての成長につながる貴重な経験を積み上げることができるありがたい状況である.

 紹介していただいた患者さんに最良の医療を提供できるよう,自分が努力することは当然だが,外来では“紹介状の返事,経過や病理結果報告を詳細に行う”ことを留意している.

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 悪魔の証明とは,中世ヨーロッパの法学者がローマ法解釈において用いた言葉が起源とされ,ある事実が全くないことを証明するのが非常に困難であることを言います.私にとって,皮膚科における悪魔の証明は真菌検査(いわゆるKOH検査).それは日々の診療の中で頻繁に起こる,私にとっての小さな試練です.この臨床所見なら真菌がいるはずだ,でもいない.プレパラート中を隈なく探すも見つからず,申し訳なさそうに患者さんにお願いします.「もう一回,こすらせてもらえませんか?」

 いっそのこと「5分探していなければ真菌陰性」というルールを作ってくれないかしら,と若い頃は真剣に思っていました.いないはずはない,そう信じ込んでしまってから覗く顕微鏡は毎回,悪魔の証明の始まりです.そんなKOHが苦手な私もすっかり中堅の域に達し,研修医に指導することも増えました.「真菌いません」との報告に「どれどれ」と先輩づらして観察してみるも,果たして私に真菌がいないことを証明できるのか.「やっぱりいないね,念のためもう一回検体取り直してみて」しばらくすると「先生,真菌いました」との声.あ,やっぱりいたんだ,と思いながら顕微鏡を覗くもそれは靴下の繊維.臨床は白癬,でも顕微鏡では見つからず.かくして悪魔の証明は今日も繰り返されるのでした.

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 近年の生物学的製剤の出現により,皮膚科領域の中でcommon diseaseであり二大慢性疾患であったアトピー性皮膚炎と乾癬が注射1本で治る時代になった.医師になってから約20年になるが,20年前の研修医時代を思い起こすと隔世の感を禁じ得ない.私は滋賀医大皮膚科で2年間の研修を行ったが,当時上原正巳教授がアトピー性皮膚炎を,段野貴一郎助教授が乾癬を専門にされていたため,外来も病棟も重症のアトピー性皮膚炎および乾癬の患者でごった返していた.当時のアトピー性皮膚炎の治療は,重症例にはステロイドの短期内服を併用するものの,基本的にはステロイド外用剤が主体であった.入院患者の全身にステロイド外用剤を1日2回塗布することは研修医の重要な仕事の1つであった.乾癬の入院患者には1日1回のゲッケルマン療法(コールタール軟膏塗布+紫外線照射)と1日1回のステロイド外用剤あるいは活性型ビタミンD3外用薬の塗布を行っており,これも研修医の仕事であった.入院治療により軽快してもしばらくすると元通りになって再度入院する患者も多く,時には無力感にも襲われた.現在日常診療で生物学的製剤を投与する機会が増え,これらの2疾患が外来で比較的容易にコントロールできてしまう状況に驚嘆するとともに,時代の変遷/学問の進歩に思いを馳せている.ほぼ毎日汗だくになりながら外用治療を行ったあの泥臭い2年間は何だったのかと思ったりもするが,今から思えば,自ら毎日外用することで皮疹の経過をつぶさに観察することができ,皮疹を診る目は養われたように思う.このような経験を若き研修医時代にできたことには感謝している.同時に今後安易に生物学的製剤に頼るようになってしまうと,皮疹をじっくり診て皮疹の成り立ちや悪化原因などを深く考える機会が失われていくのではないかと危惧もしている.昔のほうがプロフェッショナルな鑑識眼を持つ皮膚科医が多かったように感じるのは偏見だろうか.

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 平成30年(2018年)度の診療報酬改定により「いぼ等冷凍凝固術」として,脂漏性角化症の液体窒素療法が保険収載されたのは記憶に新しい.治療前には悪性腫瘍のスクリーニングとしてのダーモスコピーはもはや必須であると思われる.境界明瞭な結節で臨床的に脂漏性角化症を疑う場合であっても,ダーモスコピーで青,黒色をいずれも混じた領域が病変の10%以上に及ぶ場合には結節型悪性黒色腫(メラノーマ)が疑われる(blue-black rule:感度78.2%)1).一般的なメラノーマのクライテリアでは結節型メラノーマの感度が43.6%と低いことにも留意する.一方で,増大傾向のある毛細血管拡張性肉芽腫に類似した病変にも注意を払う.同症ではダーモスコピーで観察される紅色の無構造領域は濃淡が少なく割合均一である.無色素性の結節型メラノーマにおいても紅色の無構造パターンがみられるが,色調は一様ではなく,乳白色〜暗紅色までの濃淡差がある.頻度は半数に満たないが,後者では淡い紅色調のラクナ様構造(pseudolacunas),紅色の無構造領域やイチゴミルク色を背景とする不明瞭な紅色小球・領域(milky-red globules/areas)に伴う多形血管なども特徴的な所見と考えられる2).これらの所見はいずれも画像を撮影して大きな画面に映したほうが確認しやすい.また,臨床像とダーモスコピー像に乖離がある場合,非特異的な所見の場合,メラノーマも念頭に置きつつ,全摘生検や対応可能な専門施設への紹介を検討する.

患者側の立場で 水谷 陽子
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 大学では乾癬外来,再診などを担当しているが,再診は患者数も多く,常に時間との戦いといった忙しさである.本来は予約制であるが,制限を超えて予約が入っていることも度々ある.さらに当日に予約なく受診する患者さんもいるため,予約制とは言いながら時に(しょっちゅう?)1時間以上待たせてしまうこともある.そんななか,多くの患者さんはクレームを言うこともなく,じっと待っていて下さる.医師側からすると,1人の患者さんはその日の多くの患者さんの中の1人であり,1人あたりにかかる診察時間を少なくして待ち時間を増やさないようにするため,少々雑な診察になるときがある.しかし,患者側からすると,受診はその日の大きなイベントである.常に患者側の立場,気持ちを考えて,患者の待ち時間が長くなっているときこそ,より丁寧に診察するよう心掛けている.

 他の病院では褥瘡ラウンドを行っているが,寝たきりで意思疎通のできない患者さんも多い.患部だけの診察になりがちであるが,このときもこの患者さんが自分の親だったら……と思って診察している.「○○さん,こんにちは」というと,意外に目をぱっと開けてくれたりして嬉しく感じる.最近は自分自身が歳を重ね,当然親も高齢となってきたため,寝たきりになる可能性も現実味を帯びてきており,このような患者さんを診るときに自分の親だったらと思うと,何とも複雑な気持ちになることがある.

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 医学部卒業後,研究や留学で数年間母校を離れたが,それ以外ずっと母校にいる.学生時代は「母校愛」という言葉とは無縁に過ごした.母校愛という言葉を意識するようになったのは,大学院時代と留学時代と記憶している.大学院進学など全く考えていなかったが,当時のボスから「大学院へ進んで博士号を取得し,その後も母校に残り医学発展に寄与してほしい」と言われた.学位取得後,学内の留学対象者向けの研究助成給付制度に応募したところ運良く獲得した.当時偶然医学部長とすれ違った際御礼を述べると「先生は母校にとって大切な人間だから,母校のためにも研究留学を頑張ってほしい」と言われた.恐らくこの2人の言葉が後に母校のために何かできればと思うきっかけとなった.

 留学から帰国後,医局長を約4年間経験した.医局長時代は女性医師の結婚,出産,育児という人生のライフイベント最盛期で,女性医師の働きやすい環境とは何かスタッフ一同試行錯誤しながら少しずつ整備した.医局長を終える頃,日本皮膚科学会東京支部のキャリア支援協力委員を任され,皮膚科医全体のキャリア支援について考えはじめた.皮膚科は女性医師が多く,男女共同参画については早期から取り組んでいる.しかし実際には大学勤務医はもとより常勤医として働いている女性医師が少ないのが現実だ.皮膚科医になるまで性別を意識したことはあまりなかったが,年齢を重ねるたびに,いろいろなキャリアを重ねるたびに,その現実と向き合う場面が増えたと思う.世間では「ダイバーシティ」という言葉がもてはやされ,その言葉だけが独り歩きしているように思え,皮膚科医にとって本当の意味でのダイバーシティとはいったい何だろうと考えてしまう.いつの日か男女問わず輝いて働ける環境が増えることを期待している.そのためにはわれわれ大学常勤医が後進の育成はもちろん,われわれ自身が楽しく働くことが大切だ.ピンチはチャンス!である.

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 30代まではワーク・ライフ・バランスという言葉を意識したこともなく,「努力は報われる(はず)」と言い聞かせて目の前の仕事に取り組んできました.米国留学中,ポスドク仲間に「お前の働き方はクレイジーだ」と言われていたことが懐かしく思い出されます.いつの間にか私も平均寿命の折り返し地点を過ぎてしまい,無尽蔵にあると思い込んでいた家族との時間も,子供の成長とともに実は残り少ないことに気づき,週末の夜中に一人でラボで仕事していると,「自分は何のために頑張っているのだろう?」と自問してしまうことがあります.

 振り返ってみると,私の場合は努力が報われなかったことのほうが多いようにも感じますが,かといって努力しないと何も起こらないのもまた現実で,仕事とプライベートの折り合いをつけるのはいつになっても難しいものです.その自問が浮かぶたびに(大体は実験の待ち時間)頭の中で堂々巡りをして,タイマーが鳴るとふと現実に戻り,「でも何とかやりくりするしかないか」と思い直して仕事をしています.「四十にして惑わず」の境地に達するのはまだまだ先のようです.

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 日常診療でいろいろな疾患を診ていると,患者さんの何気ない言葉から思いがけない疾患の特徴に気づかされることがある.それらは成書や文献に記載されていないこともあり,勘違いや間違っていることも多くあるが,自分の中で経験として積み重ねていくようにしている.同僚や他病院の医師とのディスカッションでも同様に思いもかけないことに気づかされることがある.それらを合わせて検討していくことで疾患などに対するちょっとしたコツができていき日常診療で大変役立っている.もちろん理論的かつ統計的裏付けは必要であるが,そこまでにまだ至っていないことでもこういったコツのようなものがいくつかできてくると診療が楽しく有意義なものに感じる.それらが研究などのテーマにつながることは意外とある.学会では総論的な教育講演があり新しいことをキャッチアップしていくために聴講をすることが多い.一方で学会の中や地方会,研究会などで1例報告もしくは症例をまとめた報告を聞いていると,自分の中で積み重ねてきた疾患に対する考えと重なることや関連したことに言及されることがある.学会や地方会の質問でともすると不明による見当違いの発言をして恥ずかしい思いをすることもあり,若いころはなかなか発言することに勇気が必要であった.今でも知らないことが多い中で発言してしまうこともあるが,それでもそこで演者とやり取りをすることで新しい発見があるため,中堅以降となった現在でも学会などで質問や自分の意見をぶつけるようにしている.

断らない力 安田 正人
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 先日の東部支部学術大会で勝間和代氏の講演を拝聴した.その講演内容とはあまり関係がないが,勝間氏の著作に『断る力』という新書がある.主体性を持って,仕事の取捨選択を行うことで,よりよい仕事が行えるという内容だ.断るリスクを恐れてはいけない,確かにそのとおりだろう.ただ,取捨選択の判断ができるようになるためには,我武者羅に仕事をする時期が必要だと思う.勝間氏自身も,20代は断ることなく仕事をこなしていたと述べている.

 私は2000年に群馬大学医学部を卒業し,皮膚科医となった.皮膚科医として何をしたいか,具体的に考えていたわけではなかったが,頼まれたことは断らないをモットーに働いてきた.その結果,今の私がある.大学院へ行き,その間に皮膚外科も修行し,そして,アメリカへ研究留学もした.現在,皮膚悪性腫瘍を中心に入院患者の手術を行うとともに,乾癬外来も担当している.与えられた異なる環境に身を置くことで,新たな出会い,学びがある.学生時代,授業にはほとんど出ず,ナースが怖くてオペ室が嫌いだった私が,よもや大学病院のオペ室で楽しく働き,各地で乾癬の講演をさせていただく日が来ようとは夢にも思わなかった.自分に何が向いているかなんて,自分自身ではわからないものだ.初めのうちは頼まれた仕事ができるか,できないかも自分ではわからない.やるか,やらないかだ.自分の可能性を自ら摘み取ることなく,若い先生にはぜひ「断らない力」を奮ってほしい.

乾癬の専門外来 小川 英作
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 私は2010年に信州大学に赴任しました.そして,乾癬の専門外来を新たに開設するように指示されました.それまでも,前勤務先で乾癬の治験などを行っていたため,乾癬の診療について少しずつ学んでいました.ただ,TNF-α阻害薬の治験が終わったばかりの頃であり,治療選択肢があまりなく,特に乾癬性関節炎や膿疱性乾癬の診療に慣れていない状況でした.今思うと,乾癬専門外来開設の主旨は,生物製剤治療と治験に対応することと,乾癬の臨床研究に適応することであったかと思います.実際,この後から治験が山のように舞い込んできまして,現在では,治験に取り組んだ製剤も含め7種類もの生物製剤が実際に使用できるようになりました.内服薬や混合の軟膏も登場しました.現在も乾癬の治験を実施しています.また,当科の乾癬臨床研究としてアンケート調査や,E-FABPと乾癬病勢の関連性の研究を行い,乾癬学会で演題発表することや論文にして成果を公表することもできました.治験などの乾癬診療やアンケート調査など臨床研究を通して,県内のさまざまな先生方との交流や病診連携を深めることもできました.現在,患者さんからの要望もあり,信州における患者会の創設に取り組んでいます.今後も乾癬診療に総合的に取り組んでゆき,この経験を生かして他の疾患でも同様のアプローチが取れたらいいのではと思っています.

井戸端会議的外来 岸部 麻里
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 井戸端会議とは,その昔,長屋の井戸の周りで,主婦が水仕事をしながら世間話や噂話に興じた様を言い,生活様式の変化した現在は主婦間の世間話を意味する.私は,皮膚科医だが,主婦でもあり,井戸端会議に若干の憧れがある.というのも,奥様方と顔を見合わせて話に興じる機会がほとんどなかったからである.子供の参観日は,親切なママ友からメールで様子を教えてもらうという横着ぶり.町内会の集まりでは,効率よく作業を終えることに集中するあまり,黙々と手を動かすのみ.人見知りもあって,世間話に混ざるのは敷居が高いと感じていた.

 しかし,最近ふっと「自分の外来って,井戸端会議っぽいかも」と思う.医師らしく見えないのか,女性だから気安いのか,世間話を振られたり,愚痴をこぼされたりすることが多い.一応,診察なので,時間的・金銭的負担に見合う何かを提供せねばと,会話を通して患者さんの求めるものを探っていく,いわゆるメディエーション的解決を試みてはみるものの,単なる雑談で終わってしまうことが多く,反省する毎日である.

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目次

欧文目次

あとがき 加藤 則人
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 平成元年に皮膚科医になってから丸30年が経ちました.いまや“平成おじさん”と呼ばれる小渕恵三官房長官(当時)が新しい元号が「平成」であることを発表した,あの瞬間を最近のテレビ番組で初めて見たという平成生まれの医師が増えてきています.最近,平成の30年間に起こったできことを振り返る企画がwebやテレビで多く特集されていますが,特に科学技術の進歩がわれわれの生活を大きく変えたことを痛感します.

 平成元年当時は,文献検索と言えば,ほこりっぽい図書館にこもって重くて分厚い医学中央雑誌やIndex Medicusを山積みにして,タイトルに含まれるキーワードを何時間もかけて調べ上げることでした.カルテは所見や処方,検査項目などを手書きし,その後に処方箋と検査箋にも(入院患者の場合はさらにナースへの指示簿にも)手書きしましたが,今やすべて電子カルテになっています.私も,最近では書類に署名のために4文字を書くことすら億劫になり,受験時代から続いたペンだこも平坦化しています.

基本情報

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臨床皮膚科
73巻5号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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