Derm.2019
断らない力
安田 正人
1
1群馬大学医学部附属病院皮膚科
pp.172
発行日 2019年4月10日
Published Date 2019/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205740
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先日の東部支部学術大会で勝間和代氏の講演を拝聴した.その講演内容とはあまり関係がないが,勝間氏の著作に『断る力』という新書がある.主体性を持って,仕事の取捨選択を行うことで,よりよい仕事が行えるという内容だ.断るリスクを恐れてはいけない,確かにそのとおりだろう.ただ,取捨選択の判断ができるようになるためには,我武者羅に仕事をする時期が必要だと思う.勝間氏自身も,20代は断ることなく仕事をこなしていたと述べている.
私は2000年に群馬大学医学部を卒業し,皮膚科医となった.皮膚科医として何をしたいか,具体的に考えていたわけではなかったが,頼まれたことは断らないをモットーに働いてきた.その結果,今の私がある.大学院へ行き,その間に皮膚外科も修行し,そして,アメリカへ研究留学もした.現在,皮膚悪性腫瘍を中心に入院患者の手術を行うとともに,乾癬外来も担当している.与えられた異なる環境に身を置くことで,新たな出会い,学びがある.学生時代,授業にはほとんど出ず,ナースが怖くてオペ室が嫌いだった私が,よもや大学病院のオペ室で楽しく働き,各地で乾癬の講演をさせていただく日が来ようとは夢にも思わなかった.自分に何が向いているかなんて,自分自身ではわからないものだ.初めのうちは頼まれた仕事ができるか,できないかも自分ではわからない.やるか,やらないかだ.自分の可能性を自ら摘み取ることなく,若い先生にはぜひ「断らない力」を奮ってほしい.
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