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皮膚病理が読める人,それは一家に一台,ならぬ一医局に一人欲しい存在であります.私はそれになりたい,と思うようになったのは皮膚科ローテート中,研修医のときでした.皮膚を診て,診断,治療するという自己完結性をもった科として皮膚科に興味を持ち皮膚科の門を叩いた私でしたが,顕微鏡を覗くとまた全く違う青と赤の世界の中で繰り広げられる生命活動に魅了されました.腫瘍細胞は自身の増殖のために必要な栄養を取り込むために周囲の血管を増殖させたり,生体側は腫瘍細胞の増殖を阻むかのように炎症細胞を向かわせる.というように細胞の集まりが組織として,まるで意志をもったかのように変化する,たった1cm程度の深さで繰り広げられる世界をもっと見たいと思うようになりました.大阪市立大学皮膚科入局後,鳥取大学皮膚科へ国内留学の機会をいただき,山元 修教授のもと「なぜそういう形態にならざるを得なかったのかを考える皮膚病理組織学」を学び,皮膚病理組織学会主催の講習会「皮膚病理道場あどばんすと」に開講以来すべてに参加,全国に沢山の病理仲間もでき,ついには中級以上の皮膚病理医の前で講師も務めることができました.今は近畿大学皮膚科で若手の先生達に皮膚病理を教えています.川田 暁教授,病理部の先生,私の3者がdiscussion顕微鏡で同時に診ながら病理診断をつけ,カンファレンスで臨床像と合わせて確定しています.上記の3者で病理を診るのは山本明美先生の調査1)によれば,全国80医局のうち7医局しかないとのことで貴重な経験をさせていただいております.
皮膚病理,暗く,泥臭く,地道な分野でありますが,日々の皮膚科診療において重要な立場にあります.患者さんのため,医学のため,医局には病理が読める人が欠かせないということがわかってきました.私は細胞達との会話からそれらの意志を聞き取り,それを翻訳して主治医に伝えることができるような皮膚病理医を目指したいと思います.
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