臨床皮膚科 73巻6号 (2019年5月)

  • 文献概要を表示

要約 43歳,女性.1か月前に肌ラボ®極潤美白パーフェクトゲルの使用を開始したところ,2週間後より両側眼囲に瘙痒感を伴う皮疹が出現した.近医でステロイド外用薬を処方され症状は一時軽快したが,再び増悪し顔面全体に拡大した.Kaposi水痘様発疹症を疑われバラシクロビル塩酸塩内服を追加されたが軽快しなかったため,当科を紹介された.現症として両眼囲から頰部にかけて浮腫性紅斑を認め,前額部には紅色丘疹が散在性に多発していた.接触皮膚炎を考え,化粧品をすべて中止し,外用薬を変更したところ皮疹は軽快した.パッチテスト:ジャパニーズスタンダードアレルゲン2015,歯科金属シリーズはすべて陰性,極潤美白パーフェクトゲルに強陽性.成分パッチテストを行い,アルブチンを原因物質と同定した.オールインワン化粧品にはさまざまな成分が含有されており,接触皮膚炎を生じた場合には成分パッチテストによる原因物質の同定が不可欠である.

  • 文献概要を表示

要約 63歳,女性.初診の約3年前に不安定狭心症に対して経皮的冠動脈形成術(percutaneous coronary intervention:PCI)を計3回施行.PCI施行後約1年半が経過し,右背部に軽度瘙痒を伴う紅斑が出現した.皮疹は徐々に拡大,表皮は菲薄化し皮下は硬化した.中央には潰瘍が出現した.近医にて外用加療を受けたが改善せず当科を受診した.PCIによる放射線皮膚潰瘍と診断し,中央の潰瘍部のみ切除生検するも創が哆開し治癒が遷延した.その後,潰瘍周囲の紅斑部と皮下が硬化した部分までの広範囲のデブリードマンおよび分層植皮術を施行し一部にびらんを呈したが,大部分では生着し上皮化した.外科的治療はこのように正常な組織が露出するまで可能な限り十分なデブリードマンをする必要がある.またPCIによる放射線障害は特徴的な部位にできるが,遅発性障害で照射後時間が経ってから生じ,罹患した冠動脈枝や患者の体厚の影響もあり正確な知識と解釈が必要と考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 60歳,女性.当科初診の2か月前から軀幹・四肢に瘙痒を伴う皮疹が出現し,近医皮膚科で抗ヒスタミン薬,漢方薬,ステロイド外用薬で加療されたが改善せず,当科に紹介され受診した.軀幹・四肢に拇指頭大から鶏卵大までの瘙痒を伴う環状紅斑が多発し,辺縁部の内側に落屑を認め,中心治癒傾向があった.病理組織では表皮には軽度の過角化と海綿状態を認め,表皮真皮境界部には液状変性,真皮浅層の血管周囲にリンパ球浸潤を認めた.表在型の遠心性環状紅斑と診断した.足白癬を合併していたため,テルビナフィン内服治療を試み,体幹の紅斑に対し外用剤を中止し経過をみたところ,内服開始2週間後から体幹の環状紅斑は退色し,色素沈着となった.テルビナフィンを16週内服し,終了後も環状紅斑は再発しなかった.環状紅斑は原因不明とされるが,感染症や内臓悪性腫瘍などに伴うことがあるとされ,基礎疾患の治療により環状紅斑が消失する可能性がある.

  • 文献概要を表示

要約 69歳,女性.9か月前から臀部に紅斑が出現し,5か月前にはびらんを伴い拡大増数した.初診時,軀幹,四肢に手掌大までの鱗屑を伴う紅斑が不規則に散在し,一部にびらんを伴っていた.びらんは主に腋窩・鼠径など間擦部に分布しており,眼囲,鼻翼にも湿潤性紅斑が見られた.組織学的には棘融解細胞を伴う表皮内水疱で,蛍光抗体直接法では表皮細胞間にIgG,C3の沈着がみられた.抗デスモグレイン1抗体は3,710U/mlと上昇.以上より落葉状天疱瘡と診断し,プレドニゾロン40mgから投与開始し軽快した.長期臥床に伴う拘縮に起因するニコルスキー現象によって,間擦部主体の特異な分布になり,さらに慢性の擦過と局所の細菌感染により遷延する湿潤性紅斑を呈し非典型的な分布と臨床像をとったと考えられ,診断時に個々の患者の状態を勘案することも肝要であると考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 糖尿病治療薬であるdipeptidyl peptidase(DPP)-4阻害薬を内服中に発症した水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)5例を報告する.当院で発症した最近11年間のBPを検討した結果,DPP-4阻害薬とBPには関連性があることを追認した.最近の論文の多くで,DPP-4阻害薬を使用中に発症したBPには軽症例が多いとされるが,自験例5例のうち3例は軽症とは思えない経過をたどった.これら3例はステロイド内服を漸減すると容易に水疱が再発し,通常型のBPよりむしろ重症な経過をたどった.DPP-4阻害薬は低血糖症状を起こしにくいため,2型糖尿病の主流な治療薬となっているが,副作用としてBPが発症する報告が相次いでいる.特に重症型のBPでは治療に長期間のステロイド内服療法を糖尿病患者に行うことになり,事態は深刻である.DPP-4阻害薬に伴うBPには軽症ではない症例があることを念頭に置く必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 症例1:14歳,男性.6歳頃より掌蹠の多汗,12歳頃より指趾末端肥大,爪甲変形,下腿の腫脹,膝関節痛を自覚していた.症例2:15歳,男性.幼少時より爪甲肥大を自覚していた.両自験例とも頭部脳回転状皮膚は明らかでなかったが,3主徴であるばち指,骨膜性骨肥厚,皮膚肥厚を認めたこと,前額部皮膚からの生検組織において本症に特徴的な真皮の浮腫,ムチン沈着,弾性線維変性,脂腺過形成,線維化がみられたことより,不全型肥厚性皮膚骨膜症と診断した.2例ともSLCO2A1遺伝子変異を同定した.症例1では関節痛に対して選択的Cyclooxygenase 2(COX2)阻害薬が有効であった.本症は消化器潰瘍などの合併症を起こしうるが,最も若年で発症するばち指を見逃さずに本症を疑い,特徴的な病理組織像から早期に診断し,適切な治療介入を行うことが重要である.

  • 文献概要を表示

要約 68歳,女性.右第3趾爪囲の結節を主訴に当院を受診し,切除したところ病理診断は被角線維腫であった.右第1趾爪囲にも第3趾と似た皮膚腫瘍があり,既往歴に多発腎血管筋脂肪腫があったため結節性硬化症を疑い,全身検索を施行した.体幹部に5mm以上の複数の白斑を認め,また画像検索にて両側肺野にすりガラス様のびまん性結節影,縦郭部の神経原性腫瘍を認めた.診断基準と照らし合わせ結節性硬化症と診断,足趾爪囲の結節もKoenen腫瘍と診断した.肺病変は25年前の乳癌術後より画像上指摘されており,肺転移と診断され長期間抗癌剤治療されていたが著変なく,結節性硬化症に伴う病変と考えられた.以前からさまざまな画像所見上の異常を認めていたにもかかわらず,結節性硬化症の診断に時間を要した1例であった.結節性硬化症における個々の皮膚所見は比較的珍しくはないが,問診や既往歴も踏まえて結節性硬化症を疑うことが重要と考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 70歳,男性.初診の3日前から右鼻背部,眼瞼,側頭部に有痛性皮疹が出現し,2日前から眼瞼浮腫のため開眼困難となった.同部に紅暈を伴う小水疱が集簇していた.眼科診察では角膜潰瘍,結膜充血を認めた.ビダラビンを5日間点滴し皮疹は痂皮化した.ビダラビン投与終了8日後に,眼瞼浮腫はやや改善し開瞼障害が明らかとなり,上転・下転・内転障害と縮瞳異常を認めた.MRIでは下直筋に信号上昇を認めた.メチルプレドニゾロン1gを3日投与し,続けてプレドニン50mg内服とし,適宜漸減し54日間で終了し神経症状は改善した.帯状疱疹に伴う外眼筋麻痺では,早期から麻痺が併存し眼瞼浮腫などで症状がマスクされている例もあり慎重な診察と十分な経過観察が必要である.また,開眼困難例では,動眼神経麻痺による眼瞼下垂の可能性も考慮し,眼球運動障害の有無を積極的に調べる必要がある.

  • 文献概要を表示

要約 77歳,男性.眉毛部の紅斑を主訴に受診.ステロイド外用にて治療開始したが,紅斑が増悪した.眉毛のKOH直接鏡検より菌糸を認め,顔面白癬と診断した.妻にMicrosporum canisによる顔面白癬で,テルビナフィン内服による加療歴があり,また敷地内に野良猫が複数おり容易に接触できる環境であったためM. canisによる顔面白癬を疑った.一方で患者の足趾爪甲に白濁病変があり,鏡検にて菌糸を認め爪白癬と診断した.顔面白癬の原因菌を同定するため,眉毛および爪から培養したところ,同様の集落を形成し,菌学的検査にて両者ともTrichophyton rubrumと確定した.顔面白癬の感染経路として,動物や柔道・レスリング選手同士などでの感染が報告される一方で,爪白癬などによる自家播種も考慮すべきであり,感染源特定に培養同定検査が有用であった1例を報告する.

  • 文献概要を表示

要約 87歳,男性.20年前より左踵に数mm大の結節を自覚していたが,放置していた.数年前より徐々に増大し,歩行時痛を伴うようになり受診した.左踵に長径1.7cm大,境界は比較的明瞭,ドーム状に隆起する弾性硬の結節を認めた.皮膚表面は常色で,一部白色の内容物が透見された.局所麻酔下に単純切除した.病理組織像では真皮浅層から脂肪織にかけて線維性被膜に包まれた境界明瞭な結節性病変を認めた.結節内には大小の石灰化組織を認め,石灰化組織の周囲の一部に小型で円形あるいは裂隙様の血管腔を取り囲むように,紡錘形細胞の増殖を認めた.石灰化を伴った血管平滑筋腫と診断した.術後1年の現在,再発は認めていない.血管平滑筋腫のうち,特に足周囲に発生したものに石灰化を伴うことが多く,石灰化の要因として荷重や摩擦,外傷,血流うっ滞が考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 59歳,男性.8年前に右頸部に自覚症状を伴わない大豆大の黄色結節が出現した.徐々に増大し胡桃大程度となり,6年前に他院で切除術を受け黄色肉芽腫と診断された.2年前より顔面,右前腕,両手指に大豆大までの半球状に隆起した黄色小結節が計10個多発.いずれの切除標本でも病理組織学的に真皮内に組織球を中心とした細胞が結節状に浸潤し,泡沫細胞が密に増生,Touton型巨細胞も多数みられた.増殖細胞はCD68陽性,第XIIIa因子が一部陽性,CD1a,S100蛋白は陰性であり黄色肉芽腫と診断した.成人性黄色肉芽腫は単発が多いとされるが,本邦報告例131例を検討すると実際には32%が多発性であった.多発性の成人性黄色肉芽腫のうち12%に白血病を,14%に脂質異常症の合併がみられ,単発性と異なり合併症に注意する必要があると考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 41歳,女性.初診1年前から左季肋部に結節を自覚した.妊娠15週頃から急速に増大し,妊娠17週時に当科を受診した.初診時,表面に紫斑を伴う4cm大の弾性軟の腫瘤を認めた.超音波検査で血管に富む境界明瞭な腫瘤であり,血管腫を疑い局所麻酔下で全摘術を行った.病理組織学的に,真皮から皮下に境界明瞭で血管に富む腫瘍を認めた.構成する細胞は紡錘形の細胞で,花むしろ状配列をなしてびまん性に増殖していた.核の大小不同や分裂像は目立たなかった.免疫組織化学染色ではCD34陽性,FISH法で第17染色体COL1A1遺伝子座と第22染色体PDGFB遺伝子座の転座が示唆された.隆起性皮膚線維肉腫と診断し,妊娠24週時に全身麻酔で筋膜を含め追加切除した.この腫瘍は以前にも妊娠中に急激に増大する腫瘍として報告されている.経過観察中に増大すると手術の侵襲が大きくなることや,転移の可能性もあるため,妊婦に生じた腫瘤における重要な鑑別疾患と考えられた.

  • 文献概要を表示

要約 61歳,男性.初診3か月前より発熱,咽頭痛を自覚し,四肢に紅斑が生じた.前医で好酸球数増加を指摘され,持続する発熱と紅斑を主訴に当科を紹介され受診した.紅斑からの病理組織では真皮から脂肪織の血管周囲に好酸球とリンパ球が浸潤していた.経過中,多発性単神経炎と紫斑が生じ,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症が疑われた.その後,項部に丘疹が新生し,同部位からの病理組織で真皮全層に異型なCD4陽性T細胞が増生しており,T細胞受容体β鎖の遺伝子再構成を認めた.FDG-PETでは全身のリンパ節,肝実質,両側肺野への集積亢進を認めた.末梢性T細胞リンパ腫,非特定型と診断した.好酸球数増加をきたす疾患としてリンパ増殖性疾患は鑑別に挙がるが,多彩な臨床症状を呈し,診断が困難なことがあり,異なる皮疹が出現した場合は繰り返し生検を施行する必要がある.

マイオピニオン

  • 文献概要を表示

 皮膚腫瘍を専門にしてはや20有余年が過ぎた.当初は幾分成り行きで決めた専門であったが,やってみるとなかなか面白く,やりがいもあり,また少しばかり重宝がられて今日に至っている.皮膚腫瘍を診療の中心に据えた契機は,虎の門病院で働く機会を得たことであり,当時の部長であった大原國章先生の教えを受けたことであった.虎の門病院に行くかどうかについては一晩考えてから決めた覚えがあるが,折角なので手に職でもつけておこうくらいの気持ちだったような気がする.

 虎の門病院ではさまざまな症例を経験した.それまでは腫瘍は何となく,切って,貼っておけば良いといった程度の認識しか持っていなかったが,腫瘍は1例1例が微妙に異なり,ちょっとした工夫で,結果が大きく変わってくるということは非常に驚きであった.また,臨床や病理の写真を撮るのも奥深いことがわかり,ただ単に撮るだけでは不十分で,撮影の目的を明確にし,できるだけ同じ角度で背景にも配慮して,撮影することなどを学んだ.ちょうどレーザー治療が盛んになりつつあった頃で,今では骨董品になってしまったルビーレーザーやダイレーザーを駆使したのも新鮮であった.こうして,同じ志を持った仲間と切磋琢磨する日々は自分にとって大変貴重なものであった.

連載 Clinical Exercise・141

Q考えられる疾患は何か? 加藤 則人
  • 文献概要を表示

症例

患 者:71歳,女性

既往歴:嚢疱性膵腫瘍,嚢疱性膵腫瘍の術後に生じた1型糖尿病,高血圧症

現病歴:初診の約2週間前から左大腿後面に紅色丘疹が出現し,徐々に拡大して潰瘍を形成した.近医を受診し,塩酸セフカペンピボキシル300mg/日の内服を行ったが改善せず,潰瘍は増大し続けたため,当科を受診した.また,初診の3か月前から下痢,血便が持続していた.

現 症:左大腿後面に直径約5cm大の穿屈性潰瘍を認めた.潰瘍の辺縁は紫紅色でやや堤防状に隆起し,中央部は黄色の膿状壊死物が固着していた(図1).潰瘍は多量の滲出液を伴っていた.自発痛は軽度であった.発熱や関節痛,筋肉痛などは認めなかった.

--------------------

目次

欧文目次

文献紹介

次号予告

あとがき 戸倉 新樹
  • 文献概要を表示

 2020年の日本皮膚科学会総会でデルマトオーケストラとその合唱団がベートーヴェンの第九をやる.それでオケの第1回目の練習を高円寺の貸ホールで行った.この地には私にとって忘れることができない喫茶店がある.その経緯は本誌2018年11月号の「あとがき」を読んでいただきたい.意外と何人かの読者から良かったとお褒めの言葉を頂戴した.老齢のメイドカフェ風女主人が酸っぱいカレーを馳走するのである.カフェ名は書きたいが個人情報になるかもしれずグッと我慢する.それで,練習の昼食時にクラリネットのS先生とY先生と,またその店を詣でた.居た居た,この女主人である.しかし服装は前回ほど華やかでなく,常識的である.今日は派手な格好ではないですね,と言うと,前回はどうでした?,と言われ,メイドカフェみたいな,と正直に答えた.注文は何にされます?,(もちろん)カレー.カッコ内は心の中で強調した.前回と同じように民家の御不浄をお借りし,店の置物や自家製パンを眺めながらカレーを待った.半ば酸っぱいことを期待していた.来た来た,食べてみて,ウン?おかしい,酸っぱくない,美味しい.それなら前回のあの酸っぱいカレーは何だったのか.隠し味に酢を少々入れたと説明を受けたが,本当は腐っていたのかもしれない.サラダも前回のコンニャクではなく至極真っ当だ.女主人は70代,外で働いていたが10年くらい前にこの喫茶店を親から継いだらしい.高円寺に来た理由は,皮膚科医のオケの練習だと言うと,ヘエ忙しいでしょうにねえ,どこで本番?,京都,京都のどこ?,国際会館,と思いがけず興味を示してくれた.インテリジェンスも高い.会話を交わしている間,店のガラス窓からは小さな庭を行き交うアゲハチョウが何匹も見える.恐らく蝶道になっているのだろう.店を出るとき,清々しい空気と光を感じた.その春陽は木々の間からキラキラと細かく漏れ出しており,この店の名前にぴったりであった.

基本情報

00214973.73.6.jpg
臨床皮膚科
73巻6号 (2019年5月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月8日~7月14日
)