Derm.2019
皮膚科における悪魔の証明—KOH検査
大塚 篤司
1,2
1京都大学医学部外胚葉性創薬医学講座
2京都大学医学部皮膚科
pp.117
発行日 2019年4月10日
Published Date 2019/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412205721
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悪魔の証明とは,中世ヨーロッパの法学者がローマ法解釈において用いた言葉が起源とされ,ある事実が全くないことを証明するのが非常に困難であることを言います.私にとって,皮膚科における悪魔の証明は真菌検査(いわゆるKOH検査).それは日々の診療の中で頻繁に起こる,私にとっての小さな試練です.この臨床所見なら真菌がいるはずだ,でもいない.プレパラート中を隈なく探すも見つからず,申し訳なさそうに患者さんにお願いします.「もう一回,こすらせてもらえませんか?」
いっそのこと「5分探していなければ真菌陰性」というルールを作ってくれないかしら,と若い頃は真剣に思っていました.いないはずはない,そう信じ込んでしまってから覗く顕微鏡は毎回,悪魔の証明の始まりです.そんなKOHが苦手な私もすっかり中堅の域に達し,研修医に指導することも増えました.「真菌いません」との報告に「どれどれ」と先輩づらして観察してみるも,果たして私に真菌がいないことを証明できるのか.「やっぱりいないね,念のためもう一回検体取り直してみて」しばらくすると「先生,真菌いました」との声.あ,やっぱりいたんだ,と思いながら顕微鏡を覗くもそれは靴下の繊維.臨床は白癬,でも顕微鏡では見つからず.かくして悪魔の証明は今日も繰り返されるのでした.
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