臨床皮膚科 73巻4号 (2019年4月)

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要約 72歳,女性.初診の約3か月前より仙骨部に皮下腫瘤を自覚し来院.仙骨部に約4×4cmでドーム状に隆起する弾性軟,表面常色〜やや淡紅色調の皮下腫瘤がみられた.骨盤腔MRIで,仙骨部背側の皮下にやや扁平化した囊腫がみられ,診断目的に皮膚生検を施行した.病理組織学的に,内壁が1層の滑膜被膜細胞で構築された囊胞性病変で,その周囲に線維芽細胞と豊富な微小血管の増生がみられた.以上より滑液包炎と診断した.仙尾部に生じた滑液包炎は,1983年から現在まで自験例を含め24例と比較的稀である.患者背景として,円背姿勢が7例と最多であり,その他基礎疾患による臀部の筋萎縮や仙骨,尾骨の病的突出,長時間の坐位による仙尾部への慢性的な刺激が誘因と考えられる.本症は特に皮膚科領域からの報告は少ないが,臀部の皮下腫瘤または難治性の褥瘡を見た場合には,鑑別疾患の1つとして考える必要がある.

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要約 23歳,女性,冷たい物が接した部位に一致し膨疹が出現するようになった.同居者がマイコプラズマ肺炎に罹患した後より咳嗽,発熱とともに膨疹が拡大してきたため,精査目的に当科に入院した.Ice cube test陽性であり,寒冷蕁麻疹と診断した.また入院中に撮影した胸部CT検査所見から非定型肺炎と診断された.抗ヒスタミン薬,抗菌薬による治療で自覚症状は軽快した.寒冷蕁麻疹の発症機序はいまだ不明であるが,非定型肺炎が増悪因子の1つとして考えられるため,精査を行う際には,頻度の高いマイコプラズマ感染を念頭に置く必要があると考えられた.

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要約 44歳,女性.蕁麻疹様血管炎を疑い処方されたジアフェニルスルホンの内服3週間後より全身の紅斑,39℃の発熱,リンパ節腫脹,肝機能障害が出現した.病理所見でリンパ球様細胞の著明な浸潤を認め,CD8優位でMIB-1 indexが70%と高値であり悪性リンパ腫を鑑別に考えたが,当院におけるDIHS7例の病理検体でリンパ球解析を行ったところ,CD8優位のリンパ球浸潤が目立ち,MIB-1 indexが高い傾向にあることがわかり,薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)に矛盾しない所見であると結論した.入院2か月後にHHV-6の再活性化を認め,診断基準のすべてを満たし,DIHSと診断した.メチルプレドニゾロン1,000mg/日パルス後にPSL 60mg/日を継続したが改善に乏しかった.入院3か月後に全身の紅斑,肝機能障害が再燃し,免疫グロブリン大量点滴静注療法(intervenous immunoglobulin:IVIG)20g/日を5日間施行したところ改善傾向となり,入院5か月後に退院となった.ステロイド抵抗例や,慢性期における再燃時には,IVIGの投与を考慮すべきである.

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要約 57歳,男性.2年前から右耳前部に皮膚結節が出現した.初診時,右耳前部に2.0×1.5cm大,弾性硬で常色の皮内から皮下の結節を認めた.病理組織では結節は粘液様の間質を背景に断頭分泌を示す管腔と類円形腫瘍細胞が胞巣状に増殖する部分,陰影細胞が腫瘍塊を形成する部分および角質囊腫を中心に毛芽・上部毛包・下部毛包への分化を示す部分の3つから構成されていた.毛包分化を示す部位とアポクリン分化を呈する部分とに連続性はなかったが,本症例はアポクリン型皮膚混合腫瘍が一部で毛組織への分化を示したと考えた.アポクリン型皮膚混合腫瘍は毛包脂腺アポクリンユニットに由来するとされ,毛包への分化傾向を示すことがある.しかし,本症例のように多彩な毛組織への分化を示した症例の報告は稀と考え報告した.

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要約 30歳,女性.15年前より左第1趾側縁部に褐色斑があった.初診時,9.6×9.9mm大の表面に鱗屑を付し,中央部が軽度隆起する褐色局面がみられた.ダーモスコピーで趾腹側辺縁部では二本点線亜型の皮溝平行パターンがあり,趾背側では境界明瞭な色素小球,中央では無色素領域があり,赤色小湖や糸球体状血管がみられ,全体的には多構築パターンを呈していた.3mmマージンで全摘手術を施行した.病理組織学的所見では,表皮真皮境界部から真皮乳頭層にかけて左右対称な縦長で境界明瞭な胞巣が規則正しく配列し,経表皮排出を伴う.真皮内胞巣を構成する細胞は好酸性の細胞質に富み,深部にいくほど小型化し,maturationがみられた.以上からSpitz母斑と診断した.足趾のSpitz母斑は稀であり,趾腹と趾背にまたがるため,多構築パターンを呈し悪性黒色腫との慎重な鑑別を要した.

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要約 60歳,女性.左乳癌切除術後.初診3か月前より左乳房下縁に瘙痒を伴う皮疹が出現し,当科へ紹介された.初診時,左乳房下縁に16×11mm大の発赤と圧痛を伴う皮下硬結を認めた.画像所見では診断確定できず,炎症性乳癌型の再発乳癌を疑い皮膚生検を施行した.病理組織学的に,顆粒細胞腫と診断し,単純切除術を施行した.顆粒細胞腫はSchwann細胞に由来する良性腫瘍と定義され,乳房での発生頻度は4〜6%と報告されている.本邦では乳癌と鑑別を要した症例の報告は比較的多くあり顆粒細胞腫は鑑別疾患として常に考慮するべきと思われるが,自験例では乳癌原発巣近傍に生じた皮下硬結であったことから再発性乳癌以外の腫瘍の可能性は低いと考えていた.改めて常に鑑別診断を挙げることの重要性を実感した.また,顆粒細胞腫には悪性転化や再発例もあるため,自験例では乳癌再発のリスクと合わせ長期間にわたって経過観察が必要であると思われる.

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要約 87歳,女性.約10年前から左前腕伸側に結節を自覚.初診約1年前より増大したため精査加療目的に当科を受診した.初診時,左前腕に直径2.5cmのドーム状に隆起した結節を認め,中心部は波動を触れた.周囲組織を含め全切除した.病理組織学的に,真皮内に短紡錘形細胞と組織球が増殖し,その中に不整形な血管増生を認め,hemangiopericytoma-like patternを呈していた.Factor XIIIa染色陽性,その他の特殊染色陰性の結果からhemangiopericytoma-like dermatofibromaと診断した.なお,臨床的に波動を伴い,急速に増大したのは,腫瘍中央に存在した汗囊腫によると考えた.通常dermatofibromaでは肥満細胞の浸潤は稀とされるが,自験例では肥満細胞浸潤がみられた.過去のhemangiopericytoma-like dermatofibromaの報告では,肥満細胞を認めた例が少なくなく,hemangiopericytoma-like dermatofibromaと肥満細胞の関連につき考案した.

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要約 87歳,男性.受診2か月前に右頰に潰瘍が出現し,外用剤で加療するも改善しないため当科を受診した.初診時,右頰に直径9mm大,打ち抜き様の潰瘍を認めた.ダーモスコピー所見では色素性病変はみられず,ulceration, arborizing telangiectasias, short fine superficial telangiectasiasがみられた.皮膚生検を行い,無色素性基底細胞癌と診断した.自験例は無色素性基底細胞癌のダーモスコピー所見で高率にみられるarborizing vesselsを欠いており,打ち抜き様の潰瘍を呈した点において非典型的で臨床診断が困難な症例であった.結節を認めない潰瘍病変を呈する皮膚悪性腫瘍は,有棘細胞癌だけではなく基底細胞癌も鑑別となる.

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要約 20歳,ノルウェー在住のベトナム人女性,初診の5か月前から外陰部に疼痛を伴う皮疹を自覚した.短期留学のためノルウェーから来日した際に当科を受診した.初診時,大陰唇内側に大小の紅色小丘疹が多発・散在し,大陰唇全体は軽度腫脹を伴っていた.肛門周囲は全周性に紅色小丘疹が散在していた.病理組織像では,真皮内にリンパ球,好酸球,組織球からなる多彩な細胞浸潤がみられた.また,コーヒー豆様核を有するやや大型の組織球様細胞が多数浸潤していた.免疫染色では,大型の組織球様細胞は,CD1a,S100蛋白,Langerin(CD207)に陽性であった.以上より,Langerhans細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)と診断した.全身精査では異常はみられなかった.帰国までの間ステロイド外用を行ったが,一時的な改善がみられるのみであった.自験例はLCHを疑っていなかったため,当初診断に難渋したが,成人の外陰部の病変で,組織球様細胞を含む多彩な細胞浸潤を示す場合,本症も疑うべきと考えた.

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要約 81歳,女性.2年前に胃癌に対し胃全摘術と術後化学療法を施行された.好中球減少により化学療法は中止されたが,好中球減少はその後も持続した.初診前日に腹痛と左下腿の痒みを自覚し,翌日高熱,左下腿の発赤・疼痛・腫脹を認めた.近医で蜂窩織炎と診断され,当科を紹介された.血液検査でWBC 2,400/μl,Plt 11.2×104/μl,CRP 14.3mg/dl,CK 106U/l,PCT 4.9ng/ml,FDP 34.7μg/dl,D-dimer 19.6μg/ml,PT-INR 1.28でdisseminated intravascular coagulation(DIC)と診断した.入院時の血液培養と創部培養からVibrio furnissiiが検出された.抗菌薬による点滴加療を行ったが,第8病日に左下腿前面に皮膚壊死が生じた.試験切開を施行し,多量の排膿を認め,第9病日に筋膜までデブリードマンを施行した.病理組織学的には筋膜に高度な好中球浸潤を認め,V. furnissiiによる壊死性筋膜炎と診断した.術後は壊死の進行はなく全身状態も改善した.V. furnissiiによる壊死性筋膜炎は極めて稀であるが,胃切後の免疫機能低下患者において発症する可能性があるため注意が必要である.

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要約 77歳,女性.左耳後部から後頸部にかけての皮疹を主訴に当科を初診した.受診時,痂皮を付し中央部より排膿を認める紅色結節が多発していた.結節部の生検標本の病理組織像では,中心部に乾酪壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫を認めた.クオンティフェロン(QFT)と病変部組織の抗酸菌培養はともに陰性であったが,病変部由来DNAのPCR法による解析でMycobacterium tuberculosisのDNAを検出した.画像上,頸部リンパ節の腫脹があり,皮膚腺病と診断した.イソニアジド,リファンピシン,エタンブトール,ピラジナミドの4剤併用療法を開始し結節は平坦化した.過去に報告された多発病変をもつ皮膚腺病症例の多くは高齢者であった.自験例では汎血球減少,CD4,CD8陽性T細胞数の減少があったことを合わせて考えると高齢者では相対的免疫低下状態にあり,通常は単発例が多い皮膚腺病が多発病変を呈する可能性を考えた.

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要約 20歳,女性.初診の3か月前より皮疹が出現した.初診時,顔面・体幹・上肢に紅色充実性丘疹が環状に配列しながら融合し,同心円状や一部連圏状を呈しており,陰部には湿潤傾向のある扁平隆起性丘疹を認めた.採血にて梅毒血清反応はTP抗体471 C.O.I,カード法32倍と陽性だった.病理組織所見においては,真皮浅層血管内皮細胞の肥厚および血管周囲に小型リンパ球と形質細胞を中心とした稠密な細胞浸潤を認めた.以上より環状丘疹型梅毒疹および扁平コンジローマを呈する第2期梅毒としてアモキシシリン水和物1,500mg/日を開始したところ,1週間で皮疹はほぼ平坦化し褐色調となった.非典型的な環状皮疹をみた際,梅毒にも留意した問診,検査が必要と考える.

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要約 91歳,女性.初診3か月前から,両手掌と両足底に限局し,瘙痒・疼痛を伴う緊満性血疱が出現した.病理組織像は,表皮下に裂隙形成があり,真皮浅層にリンパ球主体の血管周囲性細胞浸潤と赤血球の血管外漏出を認めた.また表皮直下に好酸性の球状沈着物を多数認め,コンゴーレッド陽性および免疫グロブリンλ鎖陽性だった.血液,尿ともに抗軽鎖λ抗体で沈降線を形成し,骨髄生検では形質細胞が39%と増加しλ型軽鎖を認めた.以上より,皮膚病変を水疱性アミロイドーシスと診断し,多発性骨髄腫によるALアミロイドーシスに伴ったものと考えた.ALアミロイドーシスは,易刺激性の紫斑,丘疹,結節,爪変形など多彩な皮膚症状を呈する.緊満性の水疱という記載があり,稀に血疱を呈する症例の報告もあるが,自験例は掌蹠に限局した点が特異である.臨床症状が水疱性類天疱瘡に似るため,高齢者の水疱や血疱の診断に際して,水疱性類天疱瘡以外にALアミロイドーシスも鑑別する必要があると考えた.

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要約 神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease:NIID)は病理学的にエオジン好性の核内封入体を中枢および末梢神経系の神経細胞およびグリア細胞,諸臓器の細胞の核内に認める神経変性疾患である.この核内封入体はユビキチン染色で陽性を示す.本症はこれまで剖検により診断されていたが,近年皮膚生検で核内封入体を検出することで診断が可能となった.それに伴いNIIDと診断される症例が増加しているが,皮膚科領域からの報告は少ない.われわれはNIIDを疑われた症例において大腿からの皮膚生検で核内封入体を検出し確定診断をすることができた.自験例において汗腺,線維芽細胞,脂肪細胞における核内封入体の陽性率を比較した結果は,汗腺が観察面積あたりの細胞密度が最も多く観察対象として優れていた.NIIDの診断で皮膚生検を行う際は,脂肪組織とともに汗腺を得るために,汗腺の多い部位から組織を採取する必要があると考えた.

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 「ハゲタカジャーナル」と呼ばれる,いわゆる詐欺雑誌が話題になっている.

 掲載料を得るために査読もせずに掲載し,アクセプト後に高額な掲載料を請求し,さらにその結果,根拠の乏しい「疑似科学」を世に出していることが問題視されている.私の所属している新潟大学からも,「新潟大学における粗悪学術誌に対する方針」が出され,例えば,そのジャーナルを知っているか,そのジャーナルの最新論文を容易に見つけられるか,出版社を容易に特定し連絡をとることができるか,など「ハゲタカジャーナル」のチェックリストの使用を喚起している.

連載 Clinical Exercise・140

Q考えられる疾患は何か? 小川 陽一
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症例

患 者:57歳,男性

主 訴:両下腿難治性潰瘍

家族歴・既往歴:Monoclonal gammopathy of undetermined significance(MGUS),真性多血症

現病歴:X年冬より足趾に紫斑が出現した.X+3年には下腿潰瘍が出現するようになった.以後,他院整形外科にて加療を受けていたが,潰瘍が上皮化することはなかった.X+6年に同院にて左第2〜5趾,右第1,2,5趾を壊疽のため切断した.X+7年に難治性下腿潰瘍の診断,治療のため,当科へ紹介され入院した.

現 症:左第2〜5趾,右1,2,5趾はX+6年の切断術のため欠損しており,右第3趾も黒色に変化しており,壊死しつつあった.両下腿に小豆大から手拳大までの潰瘍が多発し,激痛を伴っていた.腱が露出している部分も認めた(図1).下肢以外には潰瘍はなく,これらの潰瘍は冬に増悪するとのことであった.足部には冷感はあったが,足背動脈は触知可能であった.

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目次

欧文目次

文献紹介

次号予告

あとがき 朝比奈 昭彦
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 私の自宅は,緑が多く残る神奈川県の住宅地にある.しかし,職場のある都心までの通勤時間が長い上に,学生のころ経験したラッシュに比べればましになったとはいえ,電車が非常に混む.そのため,平日には自宅に戻らずに職場の近くで暮らすようにしている.ところが日夜,高層ビルと人に囲まれていると,体は少し楽になっていても,心がなかなか休まらない.目の前の仕事で手一杯で生活に余裕もなくなり,気分転換ができないまま時間ばかりが早く流れていく.もちろん私に限らず,特に都市部の環境で働くような医師の中には,同じような思いをしている人も少なくないはずである.医師だけでなく,私が診察する患者さんたちも,誰もが時間に追われて忙しいようで,手帳やスマホを真剣に見つつ,次の診察予約さえもなかなか決まらない.慢性蕁麻疹やアトピー性皮膚炎,乾癬などの慢性疾患は,ストレスや疲労によって症状が悪化することが十分に考えられ,そうした患者さんの中には,休息をしっかりとって気分転換するだけでも症状の改善につながる人が少なからずいることと思う.自分の幼少時には,1日や1年間がとても長かった.毎日,たくさんの新しい刺激を受けていた.大人になって,1年があっという間に漫然と過ぎてしまうのは,日々のトキメキがなくなっているからだと,テレビ番組で見たことがある.患者さんも,またわれわれ医師も,一度,せわしない日常生活から立ち止まってみれば,心に余裕が生まれ,ビル群ではなく草木をぼんやり眺めるだけでも何か新しい発見ができるはずである.自らがこれを継続的に実践できるかは,はなはだ心もとないが,ぜひともそうありたいと願っている.

基本情報

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臨床皮膚科
73巻4号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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