皮膚科の臨床 59巻6号 (2017年5月発行)

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疾患別• 知っておきたい皮膚科の検査とその評価法

1 接触皮膚炎矢上　晶子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.695-702

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皮膚科医は，接触皮膚炎に日常的に遭遇する。その代表的な検査法としてパッチテストがある。専門的な知識と技術が必要となる検査であるが，適切な基剤および濃度で貼布し判定基準に従って判定すれば，安全に，正確な結果が得られ，患者を根治に導くことができる。近年はReady-to-use 製品であるパッチテストパネル®（S）が薬価収載され，簡便に貼布できるようになった。

2 アトピー性皮膚炎田中　暁生 59巻6号 , 2017年5月 , pp.703-709

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アトピー性皮膚炎（AD）の診断や重症度は，経過と視診・触診による皮膚症状の評価がベースとなる。しかしながら，より正確に病勢を把握し治療を評価するためには，種々のバイオマーカーが参考になる。AD の病勢を反映するマーカーには，短期的な指標として血清TARC 値や血中好酸球数，血清LDH 値があり，長期的な指標としては血清総IgE 値がある。また，悪化因子の探索目的に，特異的IgE 抗体価を測定することもある。

3 蕁麻疹・アナフィラキシー千貫　祐子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.711-722

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蕁麻疹の大半を占める特発性蕁麻疹は特別な検査を要しないが，アレルギー性の蕁麻疹では，原因抗原（アレルゲン）と抗原特異的IgE 抗体の反応により，しばしばアナフィラキシーを発症するため，原因を突き止めることがもっとも重要である。原因を突き止める方法には血清中抗原特異的IgE 検査，皮膚テスト，負荷試験などがあり，おのおのの検査の感度・特異度を知り，安全で的確な診断を行う必要がある。

4 血管性浮腫猪又　直子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.723-729

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血管性浮腫の検査として，マスト細胞メディエーター起因性が疑われる場合は，I型アレルギーのほか，非ステロイド性抗炎症薬不耐症，非アレルギー性の血管性浮腫の鑑別ないし原因検索のために特異的IgE 抗体測定や皮膚テスト，除去試験・負荷試験などを行う。一方ブラジキニン起因性が疑われる場合，遺伝性血管性浮腫のスクリーニング検査として，血清中のC4 および補体第1 成分エステラーゼ阻害因子活性を測定する。またアンギオテンシン変換酵素阻害薬などの薬剤性も鑑別する。

5 自己炎症症候群（Schnitzler症候群，クリオピリン関連周期熱症候群）神戸　直智 , 西小森　隆太 59巻6号 , 2017年5月 , pp.731-738

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自己炎症症候群は，反復もしくは遷延する発熱を特徴とし，一見すると感染症を思わせる特徴的な臨床症状を呈するものの，感染病原は検出されず，遺伝子の異常などによって自然免疫系が破綻することが疾患の基盤になっていると考えられている。その遺伝子診断は，研究班のホームページなどを通じて，実際には京都大学の小児科が検体受入窓口となり，また原発性免疫不全症候群のデータベースを診療情報登録の窓口として，これまで提供されてきた。しかし診療報酬の改定に伴い遺伝学的検査として，クリオピリン関連周期熱症候群などに関しては，地方厚生局長などに届け出た保険医療機関で行われる場合に限り，という条件の下ではあるが，遺伝子診断を保険請求できるようになった。今後はこの制度を活用して円滑に遺伝子診断を提供できるようにと考え，現在体制の整備が行われている。

6 壊死性遊走性紅斑稲沖　真 59巻6号 , 2017年5月 , pp.739-741

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壊死性遊走性紅斑は，グルカゴノーマ症候群の皮膚症状として報告された。グルカゴノーマは膵腫瘍であり高グルカゴン血症，超音波検査，造影CT，MRI などの所見により診断し，適応があれば外科的に切除し病理診断を行う。壊死性遊走性紅斑のなかにはグルカゴノーマを伴わず栄養障害により生じる症例もある。その場合，血漿アミノ酸の低下がみられるので，できれば栄養素の補充前に測定する。

7 Behçet 病・Sweet 病中村　晃一郎 59巻6号 , 2017年5月 , pp.743-749

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B ehçet 病は，再発性口腔内アフタ・外陰部潰瘍に結節性紅斑などの皮膚症状を示し，Sweet 病は高熱と有痛性隆起性紅斑などを示す炎症性疾患である。いずれも末梢血検査で白血球の増加，CRP 値亢進，赤沈亢進など炎症反応を認める。診断はこれらの臨床症状に加えて病理組織学的所見，血液検査などを組み合わせて行う。遺伝学的検査としてBehçet 病ではHLA-B51 が，またSweet 病ではHLA-A26 が陽性になることが多い。HLA 検査はそれのみでは診断確定には至らないが，診断の根拠や確認のうえで有用である。また臨床症状の揃わない症例でHLA 検索は診断の一助となる。針反応は好中球機能亢進を反映しBehçet 病で認められるが，Sweet 病でも陽性になることがある。

8 ANCA 関連血管炎川上　民裕 59巻6号 , 2017年5月 , pp.750-759

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抗好中球細胞質抗体（ANCA）陽性を特徴とする血管炎をANCA 関連血管炎（AAV）という。Wegener 肉芽腫症，Churg-Strauss 症候群，顕微鏡的多発血管炎が相当する。血管炎研究の中心はAAV であり，ANCA の疾患特異性と病勢との関連が重要視されるに従い，ANCA 測定法の改良が進んでいる。それに呼応して，血管炎病因の解明も進み，好中球細胞外トラップ（NETs）の関連も指摘されつつある。後半では，皮膚科の検査からみたANCA やAAV に関して言及した。

9 閉塞性動脈硬化症・糖尿病性壊疽沢田　泰之 , 加藤　恒平 59巻6号 , 2017年5月 , pp.760-767

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閉塞性動脈硬化症（ASO）などの重症虚血肢（CLI）の診断には触診が重要である。冷たいと感じたらCLI を考える。皮膚科医が行うもっとも有用な検査は，外来で行う超音波検査である。超音波検査で血流速波形に異常があればCLI を疑い，ABI やSPP を行う。3D-MDCT アンギオグラフィはCLI に対する検査のgolden standard である。腎機能障害や造影剤が使えない症例では非造影のMRA か，血管検査技師による超音波検査で診断する。ASO を伴わない糖尿病性壊疽ではMRI で骨髄炎を，CT でガス像を確認する。

10 深部静脈血栓症・うっ滞性症候群八代　浩 59巻6号 , 2017年5月 , pp.768-776

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深部静脈血栓症やうっ滞性症候群を正確に診断するためには，その病態の理解が必要不可欠である。個々の下肢静脈の解剖と生理が，その病態悪化を大きく左右する。特に急性の深部静脈血栓症は，肺血栓塞栓症を併発することがあり，早急な診断と治療が必要である。診断は問診と視診・触診が基本であり，D—ダイマーとドプラ聴診器でのスクリーニング検査を始めとして，侵襲のない超音波検査，低侵襲である造影CT・MRI や侵襲的な静脈造影検査などの画像検査の選択と読影が診断の鍵となる。

11 褥瘡門野　岳史 59巻6号 , 2017年5月 , pp.777-783

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多職種連携が不可欠の褥瘡治療においては，褥瘡を客観的に評価するツールが必要であり，本邦ではDESIGN-R® が広く用いられる。DESIGN-R® は7 つの評価項目すなわち①深さ，②滲出液，③大きさ，④炎症／感染，⑤肉芽組織，⑥壊死組織，⑦ポケットより構成される。DESIGN-R® では深さを除いた6 項目の合計点数を算出するが，その点数は褥瘡の重症度や治癒までの日数をよく反映する。また，褥瘡対策には，局所治療に加えて，予防，圧再分配，栄養も重要であり，種々のリスクアセスメント・スケールや栄養評価法を用いる。

12 光線過敏症森脇　真一 59巻6号 , 2017年5月 , pp.785-793

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光線過敏症は決してまれな疾患ではなく，日常の皮膚科診療の場では常に鑑別疾患として考える必要がある。外出後に皮疹が生じたという皮疹の出現経過，皮疹は顔面・手背など露光部に限局しているという特徴的な皮疹分布から，皮疹の発症要因に紫外線などの光線の関与が疑われれば，光線照射試験，光貼付試験，誘発試験などを適切に，かつ積極的に実施し，患者QOL を損なう光線過敏症の確定診断を行うことは，皮膚科専門医の重要な責務のひとつである。

13 色素性乾皮症中野　英司 , 錦織　千佳子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.794-800

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色素性乾皮症はDNA 修復障害を病因とする遺伝性疾患であり，紫外線によるDNA損傷が蓄積し，露光部に皮膚がんが多発する。皮膚症状としてサンバーンの増強が目立つタイプと色素異常が目立つタイプがあり，日本では皮膚症状と原因不明の進行性神経症状を伴うA 群が半数以上を占める。診断はDNA 修復能検査や遺伝子検査を組み合わせて行うが，病因に沿った検査法およびその評価を理解し，早期診断によって皮膚がん発症を予防することが重要である。

14 薬疹渡辺　秀晃 59巻6号 , 2017年5月 , pp.801-806

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薬疹において原因検索は，被疑薬・禁忌薬を同定すること以上にその患者が引き続き安心して治療を受けることができるかどうかという観点からも重要である。本稿では薬剤添加リンパ球刺激試験および再投与試験について概説するが，薬疹型により方法や適切な施行時期，結果の解釈に違いがあることを知っておくことが必要である。

ワンポイントアドバイス　1　HHV-6 検査の実施と解釈（血清抗体，PCR）橋爪　秀夫 59巻6号 , 2017年5月 , pp.807-811

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ヒトヘルペスウイルス（human herpesvirus，以下HHV）‒6 感染症は，初感染である伝染性紅斑や再活性化を生じる薬剤性過敏症症候群（drug-induced hypersensitivity syndrome，以下DIHS またはdrug rash witheosinophilia and systemic symptoms；DRESS）など皮膚疾患に関連することから，その評価法を正しく知ることは，皮膚科医にとって重要である。HHV‒6 感染は，初感染，潜伏感染，再活性化のほか，inherited chromo s o m a l l y i n t e g r a t e d H H V‒6（以下ciHHV‒6）という特殊な感染状態が存在するため，目的によってHHV‒6 検査を選択しなければならない。本稿は，種々の検査法とその解釈について解説してまとめた。

15 自己免疫性水疱症山中　美佳 , 立石　千晴 , 鶴田　大輔 59巻6号 , 2017年5月 , pp.812-821

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自己免疫性水疱症は，免疫学的異常により患者血清中の自己抗体が標的抗原と反応し，水疱を生じる疾患群である。臨床所見より自己免疫性水疱症を疑った場合，まずは病理組織学的所見を確認し，次に血清学的診断法を用いてさらなる分類や評価を行う。自己免疫性水疱症の検査と評価方法について，血清学的診断法を中心に解説する。

16 表皮水疱症石河　晃 , 吉田　憲司 59巻6号 , 2017年5月 , pp.822-829

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表皮水疱症は新生児期から水疱，びらんの形成を繰り返す遺伝性皮膚疾患である。重症度，合併症は多彩であり，正確な病型診断は重要である。診断は皮膚生検による病理組織学的な検討と遺伝子検査による。前者はHE 染色に加えて，蛍光抗体法による基底膜構成蛋白の免疫染色，電子顕微鏡観察が必要である。これによりほとんどの病型は診断可能であるが，重症型の場合，予後予測，遺伝相談，出生前診断の適応の検討のため遺伝子検査を行うことが勧められる。

17 掌蹠角化症乃村　俊史 59巻6号 , 2017年5月 , pp.830-836

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掌蹠角化症の病型診断には，臨床所見の正確な解釈が何よりも重要である。まず掌蹠の皮疹の分布を，①びまん性，②限局性，③点状の3 つに分類する。その後，①については皮疹の掌蹠外波及の有無を，②については線状皮疹の有無を，それぞれ確認する。多くの場合，これだけで病型診断が可能であるが，発症年齢・遺伝形式・病理組織学的所見・随伴症状とあわせて病型を確定する。さらに，遺伝子診断を行えば診断の妥当性を確認することができ，正確な遺伝カウンセリングを行うことが可能である。

18 乾癬：重症度評価法梅澤　慶紀 , 朝比奈　昭彦 , 中川　秀己 59巻6号 , 2017年5月 , pp.837-846

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乾癬患者の重症度を判断する場合，皮疹の評価法として，PASI（psoriasis area andseverity index）が頻用されていたが，最近はもっと簡便なBSA（body surfacearea）やPGA（physician’s global assessment）／IGA（investigator’s global assessment）が用いられることが多くなった。また，難治部位である爪や頭の乾癬の評価法として，NAPSI（nail psoriasis severity index），PSSI（psoriasis scalp severity index score）が用いられる。QOL 評価ではDLQI（dermatology life quality Index），PDI（psoriasisdisability index）が頻用される。また乾癬性関節炎では，qCR，HAQ，BASDAI，PASE，汎発性膿疱性乾癬では，GPP 重症判定が用いられる。これらの指標を用いることで，個々に合った重症度判定が可能となる。

19 乾癬：生物学的製剤治療多田　弥生 59巻6号 , 2017年5月 , pp.848-854

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日本皮膚科学会からの「乾癬における生物学的製剤の使用指針および安全対策マニュアル」をもとに，生物学的製剤投与前後で必要なチェックポイント，検査について簡単にまとめた。投与禁忌となる患者像，B 型肝炎の再活性化対策，結核などの呼吸器疾患，抗核抗体と薬剤誘発性ループスについて主に取り上げた。一方で，生物学的製剤を安全に使用するために，特に重要なのは臨床症状である。

ワンポイントアドバイス　2　免疫抑制療法時のB型肝炎ウイルス検査黒崎　雅之 59巻6号 , 2017年5月 , pp.855-861

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一旦完治したと考えられていたB 型肝炎が，リウマチ疾患に対する免疫抑制療法や悪性リンパ腫などの悪性腫瘍に対する化学療法によって体の免疫が低下したことをきっかけに，再発することがある。これがB 型肝炎ウイルスの再活性化である。再活性化による肝炎は重症化しやすく，一旦劇症肝炎を発症すると死亡率が極めて高いため，劇症肝炎を発症する前に対応することが重要である。免疫抑制・化学療法を行う際の基本的な再活性化対策が，日本肝臓学会からガイドラインとして示され，Web で公開されている（https:／／www.jsh.or.jp／medical／guidelines／jsh_guidlines／hepatitis_b）1）。このガイドラインに基づき，免疫抑制療法を施行する際には適切にB 型肝炎ウイルス検査を行うこと，そしてB型肝炎の再活性化の際には迅速に肝臓専門医と連携して治療をすることが必要である（図1）。本稿では，B 型肝炎の再活性化をいかに予防し，一旦発症した際にどのように対応すべきかについて，ガイドラインに記載されている内容を解説する。

20 関節症性乾癬山本　俊幸 59巻6号 , 2017年5月 , pp.862-866

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関節症性乾癬は皮膚（乾癬）と関節に病変をきたすので，皮膚科，リウマチ科あるいは整形外科でみていくことが多い。特に，関節症状に先行して乾癬がみられることが多いため，皮膚科医も従来以上に関節症状に着目する必要がある。皮膚科医にとって関節症状の見方は不慣れであるが，関節症性乾癬は末梢関節を侵すことが多いので，末梢関節炎の見方についてある程度知っておくことが望ましい。本稿では，関節症性乾癬における関節症状の評価法について概説した。

21 全身性強皮症濱口　儒人 59巻6号 , 2017年5月 , pp.867-874

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全身性強皮症（SSc）における代表的な自己抗体は抗セントロメア抗体，抗トポイソメラーゼⅠ抗体，抗RNA ポリメラーゼ抗体の3 つであるが，それ以外にも抗U3RNP 抗体や抗Th／To 抗体を含め10 種類以上の自己抗体が報告されている。SSc でみられる自己抗体は特徴的な臨床像と関連しているため，SSc の診療において自己抗体を同定することは重要である。

22 皮膚筋炎吉岡　華子 , 藤本　学 59巻6号 , 2017年5月 , pp.875-880

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近年，筋炎に特異性の高い新たな自己抗体が同定され，抗体の臨床的意義の解析が進んだ。抗アミノアシルtRNA 合成酵素（ARS）抗体に次いで，2016 年10 月より抗melanoma differentiation-associated gene 5（MDA5）抗体，抗Mi—2 抗体，抗transcriptional intermediary factor—1（TIF1）γ抗体の3 つが保険承認された結果，現在，皮膚筋炎患者のうち7 割以上で筋炎特異抗体が陽性となる。そのため，皮膚筋炎の自己抗体測定は，日常診療における診断，病型分類や治療方針の決定にますます重要な役割を担っていくことが予想される。先に保険収載されている抗ARS 抗体を含め，これら4 つの筋炎特異的自己抗体について，それぞれの抗体とその臨床的特徴との関連を中心に解説する。

23 エリテマトーデス小寺　雅也 59巻6号 , 2017年5月 , pp.881-888

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全身性エリテマトーデス（SLE）は，全身の諸臓器が侵されることで多彩な症状を呈する慢性自己免疫性炎症性疾患である。特定の病因が確定していないため，1つの確定的因子によって診断することはできず，臨床所見や検査所見の組み合わせによる分類や診断が必要である。現在はsystemic lupus international collaborating clinics（SLICC）分類基準2012 が広く使用されるようになっており，SLICC のSLE 分類において皮膚症状が重要視されている。SLEの重症度判定にはsystemic lupus erythematosusdisease activity index，皮膚エリテマトーデスやSLE の皮膚病変の評価にはcutaneous lupus erythematosus disease area and severity index が使用されている。血清学的検査はSLE の診断をより確実にする。抗核抗体は，HEp2 細胞を用いた蛍光抗体間接法での検査が望ましい。また抗DNA 抗体の測定方法はradioimmunoassay とenzyme-linked immunosorbent assay があり，それぞれ利点・欠点があるため解釈に注意が必要である。SLE では抗リン脂質抗体症候群の合併率が高く，SLE 患者の30〜40％で抗リン脂質抗体が検出され，現在，抗CL 抗体，抗CLβ2GPⅠ抗体，ループスアンチコアグラント，抗PS／PT 抗体などが一般的に測定可能である。

24 抗リン脂質抗体症候群長谷川　稔 59巻6号 , 2017年5月 , pp.889-895

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抗リン脂質抗体症候群は，血液中に抗リン脂質抗体が存在し，血栓症あるいは不育症などの妊娠合併症を呈する疾患である。皮膚にも，網状皮斑をはじめとした血栓に伴うさまざまな病変が生じうる。しかし抗リン脂質抗体の多様性のために，その測定や解釈は容易ではない。実際の日常診療で，どのように抗体の検索を進めて判断すればよいのか，抗体の検査を中心に抗リン脂質抗体症候群全般に関して概説した。

25 クリオグロブリン血症齊藤　典充 59巻6号 , 2017年5月 , pp.897-902

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クリオグロブリン血症を診断するためには血清中のクリオグロブリンを証明する必要がある。クリオグロブリンは低温で血清中に沈澱する異常蛋白である。しかしこの疾患を疑うためにはクリオグロブリンが増加する病態や基礎疾患，臨床症状や病理組織学的所見を理解することが大切である。本稿ではクリオグロブリンの検出法を中心にクリオグロブリン血症の病態や臨床所見，病理組織学的所見なども併せて述べる。

26 ポルフィリン症中野　創 59巻6号 , 2017年5月 , pp.903-908

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遺伝性ポルフィリン症は現在9 病型に分類されているが，臨床症状のみで病型診断を行うのは難しいため，各種ポルフィリン検査と遺伝子診断が必要になる。定性的ポルフィリン体検査は病院レベルで行えるものがあるので試みる価値が高い。定量的ポルフィリン体検査は委託業者に外注できるが，血液，尿を検体として複数の項目をセットで測定する必要がある。最終的に確定診断を得るために，遺伝子診断が積極的に行われるべきである。

27 ビタミン欠乏症（ペラグラ・ビオチン欠乏）川村　龍吉 59巻6号 , 2017年5月 , pp.909-915

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ビタミン欠乏症では食餌性欠乏や吸収不全，代謝異常などが原因となり特定のビタミンが欠乏する。前2 者によるものでは，複数のビタミンの欠乏あるいは他の栄養素の欠乏が複合して生じることが多いため，その診断には原因として疑う特定のビタミンの適切な検査法の選択とその評価が必須となる。本稿ではビタミンの検査・評価法に焦点をあてて，ペラグラやビオチン欠乏症など特徴的な皮膚症状を呈するビタミン欠乏症について概説する。

28 先天性色素脱失症岡村　賢 , 鈴木　民夫 59巻6号 , 2017年5月 , pp.916-921

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先天的に皮膚の色素脱失を呈する疾患には，眼皮膚白皮症をはじめとして，いくつかの疾患があげられるが，そのうち，眼皮膚白皮症，Waardenburg 症候群，まだら症，結節性硬化症はメンデル遺伝性疾患であり，各原因遺伝子に病的変異が同定されれば診断が確定される。一方，脱色素性母斑やhypomelanosis of Ito は白斑の分布，性状，合併症の有無など，主に臨床症状に基づいて診断される。本稿は，先天性色素脱失症における遺伝子検査を中心に解説する。

29 神経線維腫症1 型吉田　雄一 59巻6号 , 2017年5月 , pp.922-925

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神経線維腫症1 型（NF1）はカフェオレ斑，神経線維腫という特徴的な皮膚病変を生じる遺伝性疾患である。成人であればあまり診断に迷うことはないが，家族歴のない小児では臨床診断（特にレジウス症候群との鑑別）は困難である。本稿では，NF1 の早期診断に必要な検査法について，遺伝子検査を中心に述べる。

30 結節性硬化症新井田　要 59巻6号 , 2017年5月 , pp.926-931

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結節性硬化症の国際診断基準が改定され，遺伝子検査単独で確定診断をつけることが可能となったが，臨床的診断基準を満たさない孤発例で遺伝子変異が同定される可能性は低い。結節性硬化症の診断は臨床診断が基本となるが，おのおのの皮膚症状の発症には年齢依存性や部位特異性が存在することに留意する。一方で遺伝子検査は，発端者に変異が同定された場合の家系内の軽症患者の診断や，患者に挙児希望がある際，子供に遺伝したときの知的予後の推定に役立つ。

31 日光角化症丸　裕吾 , 外川　八英 59巻6号 , 2017年5月 , pp.932-938

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日光角化症は有棘細胞癌への進行のリスクを有する前癌病変であり，肉眼的所見のみに基づく日光角化症の診断は正確さを欠く。ダーモスコピーは日光角化症の診断に非常に有用であり，その感度と特異度はそれぞれ98.7％と95.0％である。また，日光角化症の進行度の判断にも有用である一方，黒い色調の色素性日光角化症と悪性黒子の鑑別は困難な場合がある。

32 隆起性皮膚線維肉腫佐伯　秀久 59巻6号 , 2017年5月 , pp.939-943

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隆起性皮膚線維肉腫（DFSP）は，中間悪性型に属する皮膚悪性腫瘍で生命予後は比較的良好だが，線維肉腫（FS）様病変を含むDFSP（DFSP-FS）は悪性度が高く，遠隔転移の頻度も高まる亜型と考えられている。診断に迷うDFSP 症例では，COL1A1—PDGFB 融合遺伝子を証明することで確定診断できる。DFSP-FS を含む進行したDFSP 症例（全例でCOL1A1—PDGFB 融合遺伝子を確認）に対するイマチニブメシル酸塩の有効性を示す臨床試験の結果が報告された。

33 悪性リンパ腫新井　栄一 59巻6号 , 2017年5月 , pp.945-955

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悪性リンパ腫の診断に関して，一般皮膚科診療で診断の決定，治療の選択に用いられている検査のうち，主に免疫組織化学染色（免疫染色）検査について解説し，さらに併用されている検査についても付記する。良性の皮膚リンパ球増殖疾患（いわゆる偽リンパ腫）と悪性リンパ腫との鑑別，皮膚悪性リンパ腫をB 細胞系，NK／T 細胞系，組織球系に分類するにあたって重要な項目を網羅している。

34 悪性黒色腫：ダーモスコピー・超音波検査緒方　大 59巻6号 , 2017年5月 , pp.956-965

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ダーモスコープは現在では広く普及し，皮膚科医個人での所有が可能な重要な検査法のひとつとして定着してきている。超音波機器も以前に比べ機器の改良・小型化が進み，診療所レベルでも徐々に普及しつつある。いずれも侵襲性が低く，簡便な検査法であるという利点があり，ダーモスコピーは診断に，超音波検査は初期治療に際して方針を決めるための非常に重要な検査法であると考える。

35 悪性黒色腫：BRAF 変異の検出宇原　久 59巻6号 , 2017年5月 , pp.966-971

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BRAF変異の有無は，BRAF阻害薬とMEK阻害薬の適用を決めるために必須の情報である。本邦では，コバス®BRAFV600変異検出キットとTHxID BRAFキットが保険収載されている。前者はV600Eの検出を目的とするが，変異DNA が多ければV600KあるいはD も検出される。変異の種類は同定できない。後者はV600EとV600Kを区別して検出できる。将来，新規の分子標的薬の出現も予想されるため，患者の手術検体は遺伝子変異のみならずバイオマーカー検索のための重要な資料となる。適切な固定（脱灰をしない）と保管が重要である。

36 Merkel 細胞癌清水　晶 59巻6号 , 2017年5月 , pp.972-975

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Merkel 細胞ポリオーマウイルス（MCPyV）は，Merkel 細胞癌の約8 割に検出される癌ウイルスである。皮膚に常在するウイルスである可能性が高いが，日光照射，免疫低下などによりMCPyV が宿主に組み込まれ，変異を有するlarge T 抗原が発癌に関与するとされる。Large T 抗原に対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織学的染色のほか，組織からMCPyV DNA をpolymerase chain reaction により検出する。

37 脱毛症乾　重樹 59巻6号 , 2017年5月 , pp.976-982

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脱毛症の診断にはまず臨床像を観察し，診断の予想をつけ，トリコスコピーによって確認するという方法を提案する。もし予想と合わなければ，臨床像とトリコスコピー所見とを再考する。円形脱毛斑では円形脱毛症を，パターン化脱毛では男性型脱毛症を考え，トリコスコピー所見から確認する。帯状脱毛ではオフィアシス型円形脱毛症，frontal fibrosing alopecia が鑑別となる。びまん性脱毛ではびまん性の円形脱毛症，女性型脱毛症，休止期脱毛症の頻度が高い。

38 多汗症・無汗症藤本　智子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.983-987

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発汗検査は，発汗の症状（多汗〜低汗〜無汗）や，発汗の範囲（全身または神経走行に一致の有無または局所），発汗の場面（温熱負荷時や運動負荷時）など，被験者の症状に適した方法をとることが病態の理解につながる。試験法は発汗の分布や，発汗の有無を大まかに捉える定性的発汗試験と，測定部位を決めて発汗量を詳細に調べる定量的発汗試験に分けられる。また，発汗誘導を促す方法も複数あり，被験者の症状に応じた選択をする必要がある。

39 単純疱疹・帯状疱疹渡辺　大輔 59巻6号 , 2017年5月 , pp.988-994

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単純疱疹・帯状疱疹はともに典型例では臨床的に診断可能な疾患であるが，診断のための検査として，Tzanck 試験，蛍光抗体法，免疫クロマトグラフィ法によるHSV 抗原の迅速抗原検出法，血清学的診断（CF 法，NT 法，EIA/ELISA 法など），核酸増幅検査（PCR 法，real-time PCR 法，LAMP 法），ウイルス分離・培養，病理組織学的検査および免疫組織染色がある。ヘルペスウイルスは宿主に潜伏感染や再活性化するという特殊な生活環をもつウイルスである。この特性を踏まえたうえで，本稿では各検査につき目的，有用性，解釈の仕方や限界について解説したい。

ワンポイントアドバイス　3　日常診療でできる簡単なギムザ染色五十嵐　敦之 59巻6号 , 2017年5月 , pp.995-997

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ギムザ染色とはもともと血液標本染色法のひとつで，マラリア原虫の染色法として開発されたものである。原法はスライドに塗抹した血液などの検体を風乾させ，メタノールで固定した後，ギムザ液（メチレンブルー，アズールブルーなどの塩基性色素とエオジンの酸性色素との混合液）で染色し，軽く水洗後，再び風乾して封入後観察するものである。ギムザ染色では一般に細胞核は赤紫，細胞質は青に染色されるが，核や細胞質を鮮明に染色できHE染色より観察がしやすいとされ，また最近はヘリコバクターピロリ菌の観察にも使用される。

40 EＢウイルス感染症・サイトメガロウイルス感染症三宅　智子 , 平井　陽至 , 濱田　利久 , 山本　剛伸 , 岩月　啓氏 59巻6号 , 2017年5月 , pp.998-1004

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EBウイルスやサイトメガロウイルスは，初感染後に生体内で潜伏感染しているウイルスである。初感染時は不顕性のこともあるが，再活性化し，さまざまな臨床症状を引き起こす。臨床症状からこれらの感染症を考えた場合は，血清学的抗体検査，抗原血症法やreverse transcriptase-polymerase chain reaction（RT-PCR）法による遺伝子産物の同定，real-time PCR 法によるウイルスDNA 量の測定や病理組織学的検査を行う。これらの検査は，診断や病勢の判定に有用なこともある。本稿では，それぞれの検査の特徴に関して述べる。

41 ウイルス性疣贅三石　剛 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1005-1012

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本稿ではヒト乳頭腫ウイルス（HPV）遺伝子型同定検査とスクーリング検査を中心に論述した。これまでHPV の遺伝子検査ではα属に位置する子宮頸癌の原因遺伝子型に着目され，新規の型同定検査やスクリーニング検査が導入されてきた。近年，β属感染症である後天性疣贅状表皮発育異常症の出現から，未知のHPV 遺伝子は主にβ属から発見されている。HPV 遺伝子検査の進歩から，HPV 感染症である尋常性疣贅，扁平疣贅，疣贅状表皮発育異常症の診断が容易になりつつある。また脂漏性角化症などHPV 感染症でない他疾患との鑑別には，病理組織学的検査はもちろんのこと，HPV 遺伝子検査は診断学的に極めて有用である。

42 デング熱・ジカ熱忽那　賢志 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1013-1018

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近年，デング熱やジカ熱を始めとした蚊媒介感染症が社会問題となっている。デング熱は蚊に媒介される感染症であり，2014 年に日本国内でも流行がみられたことは記憶に新しい。発熱，頭痛，関節痛といった非特異的な症状を呈し，解熱期に皮疹がみられることがある。神経合併症としては脳炎，脳症などが報告されている。国内で承認されたデング熱ワクチンはなく，予防は防蚊対策が中心となる。ジカ熱もデング熱と同様に蚊媒介感染症である。臨床像はデング熱と似るが，軽症例が多い。神経合併症としてGuillain-Barré 症候群の症例が多く報告されている。性交渉による感染が報告されており，また妊婦が感染することによって胎児が小頭症になるリスクが高くなる。

43 溶血性連鎖球菌感染症日野　治子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1019-1026

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A群β溶血性連鎖球菌は，膿痂疹，丹毒，蜂窩織炎，さらには劇症型A 群溶連菌感染症（TSLS），菌体外酵素による一般的に猩紅熱と称される全身性感染症，アレルギー機序といわれる腎障害，血管炎なども生じ，その病態は多彩である。的確に診断し，早期に感受性のあるペニシリン系抗菌薬などの治療を始めることが必要であるが，菌の培養では日数がかかるため，近年，迅速診断用抗原検査キットが使用可能になっている。迅速キットを上手に使うことは早期診断・早期治療に有益である。

44 壊死性筋膜炎是枝　哲 , 小山　貴 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1027-1031

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壊死性筋膜炎は，皮下組織から筋膜に及ぶ感染症で，急速に進行して全身状態が重篤に陥る疾患である。そのため，早急かつ確実に診断するために各種検査が必要であるが，なかでもCT およびMRI などは病変の拡がりを客観的に評価する画像検査として非常に重要である。CT では病変部は層状の濃度上昇域として描出され，MRIの場合，T1 強調画像では高信号を呈する脂肪織に対して著明な低信号を呈する。また，脂肪抑制T2 強調画像では病変部が高信号に映る。

45 皮膚結核・非結核性抗酸菌症石井　則久 , 宮本　友司 , 四津　里英 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1032-1038

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皮膚結核と非結核性抗酸菌症の診断には菌の同定が重要であるが，最近ではpolymerasechain reaction 法や分子生物学的方法による同定が主体になってきた。また結核の検査では，細胞性免疫を利用したインターフェロン-γ検出系を用いたT-SPOT とQFT—3 G が開発された。ツベルクリン反応とは異なり，BCG 接種に左右されないin vitro の検査である。接触者検診や生物学的製剤使用前の結核スクリーニングに有用性が示されている。皮膚結核における検査法としての有用性は今後の課題である。

46 爪白癬：白癬菌抗原キット常深　祐一郎 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1039-1043

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白癬菌抗原キットは，白癬菌の細胞壁に存在する多糖類に反応するモノクローナル抗体を使用してイムノクロマト法の原理で検体中の白癬菌抗原を検出する。臨床研究から本キットは爪白癬診断において利用価値が高いが，足白癬診断ではあまりメリットがないことが判明したため，爪白癬の体外診断薬として開発を進め，独立行政法人医薬品医療機器総合機構（PMDA）の審査を経て体外診断用医薬品として承認された。本キットの抽出液は爪検体から短時間に効率よく抗原を抽出できる。爪白癬を疑うも鏡検で菌要素を見つけられないときに，本キットによる検査を行って陽性であれば再度鏡検を行うことで見落としを少なくすることができる。また，鏡検ができない現場でも本キットで陰性の場合は白癬治療を行わないようにすれば，無駄な治療や医療費を減らすことができる。本検査法はあくまでも従来の真菌検査法を補完するもので，最終的には鏡検による形態学的確認を要する。鏡検と本キットを組み合わせることで，爪白癬診断の精度が高まることが期待される。

47 頭部白癬比留間　淳一郎 , 原田　和俊 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1044-1050

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本邦ではMicrosporum canis，Trichophyton tonsurans による頭部白癬が増加しており，その対策が必要である。診断はKOH 法による菌の証明と真菌培養を行う。培養はマイコセル平板寒天培地でヘアブラシを用いるのが簡単で確実である。治療として抗菌薬入りシャンプーで洗髪し，抗真菌薬を内服する。本症では家族内感染，クラブ内集団発生があるので，患者のみを治療するのではなく，積極的に集団検診とその陽性患者の治療が必要である。

48 マラセチア毛包炎・癜風・脂漏性皮膚炎清　佳浩 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1051-1055

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マラセチア毛包炎・癜風・脂漏性皮膚炎それぞれでみられる菌要素はみな形や大きさが異なる。マラセチア毛包炎では，正常の毛孔漏斗部に存在する胞子がそのまま増殖するため，球形で大型の胞子だけが認められる。癜風では，毛孔から皮表に菌糸系で増殖する。脂漏性皮膚炎では主に小型で楕円形の胞子が多数みられることが特徴となる。

49 疥癬和田　康夫 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1056-1060

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疥癬の診断は，ヒゼンダニを見つけることである。ヒゼンダニを見つけるには，疥癬トンネルを探すとよい。疥癬トンネルはヒゼンダニの生涯の住み家であり，その先端に虫体が見つかる。ヒゼンダニは口器・前脚が黒いため，ダーモスコピーで観察すると微細な黒点として見える。注射針を用いると虫体を掘り出すこともできる。角化型疥癬のときには，KOH 法でもよい。

50 ツツガムシ病・日本紅斑熱松本　和彦 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1062-1069

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ツツガムシ病・日本紅斑熱は，Orientia tsutsugamushi，Rickettsia japonica をそれぞれ起因菌とするリケッチア感染症である。確定診断には，抗体検査あるいは病原体検査が必要である。ツツガムシ病の抗体検査では，診断用抗原としてKato，KarpおよびGilliam の標準型に加え，Kuroki，Kawasaki，Shimokoshi 型を用いることが推奨される。また，日本紅斑熱の抗体検査ではRickettsia japonica を抗原として用いるが，輸入感染症を含めたすべての紅斑熱群リケッチア症が陽性となる。日本紅斑熱と確定診断するには病原体検査がさらに必要である。病原体検査はどちらの疾患も血液あるいは血痂からDNA を抽出し，polymerase chain reaction 法により検出する。

51 梅毒尾上　智彦 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1070-1074

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梅毒はTreponema pallidum（TP）の感染による全身性・慢性の性感染症であり，近年本邦における報告数が急増している。梅毒血清学的検査にはカルジオリピンを抗原とする抗体価測定法とTP を抗原とする抗体価測定法があるが，前者は治療の効果判定にも利用される重要な指標である。近年カルジオリピンを抗原とする抗体価測定法は，目視を必要とする旧来の方法から自動分析器で測定可能な新しい方法（自動化法）に変遷している。自動化法について，旧来の方法との違いや治療の効果判定などに関して解説した。

ワンポイントアドバイス　4　皮膚生理機能検査菊地　克子 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1075-1079

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皮膚の生理機能には，①外界と生体の隔壁（バリア）として働くバリア機能，②角層水分保持機能，③体温調節機能，④知覚機能，⑤発汗ならびに皮脂の分泌機能，⑥ビタミンD3合成機能などがある。皮膚の生理機能検査，とりわけ機器を用いた検査の多くは，保険点数を算定することができない研究目的で行われている。それぞれの機能に関係した評価指標が得られる（表1）。

ワンポイントアドバイス　5　顔画像解析システム（VISIAⓇ）山本　有紀 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1081-1083

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皮膚科診療では，鮮明な写真が必須である。特に日光（性）黒子，シワなどの美容皮膚科診療では，治療効果を前後で比較・確認し，患者へ説明しなければならない。一般のカメラ撮影では，再現性のある撮影は不可能であり，当科では美容皮膚科外来設立当時より，顔面の画像解析システムを導入した。そのシステムにより，前後比較が容易であり，現在も診療前日に経過を確認しつつ治療方法の決定を行っている。

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はしがき 59巻6号 , 2017年5月 , pp.691-691

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目次 59巻6号 , 2017年5月 , pp.692-693

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奥付 59巻6号 , 2017年5月 , pp.1084-1084

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基本情報

皮膚科の臨床
59巻6号
(2017年5月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0018-1404 金原出版

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