皮膚科の臨床 67巻2号 (2025年2月発行)

←前の号

選択した文献の文献概要を表示する書誌情報をダウンロードする

すべて選択

特集　代謝異常症

無疹部の皮膚生検から診断し得た全身性アミロイドーシスの1例野田　佑奈 , 西山　幸佑 , 坪田　ゆかり , 下松　達哉 67巻2号 , 2025年2月 , pp.133-136

PDF(760KB)

有料閲覧

文献概要を表示

58歳，男性。両側手根管症候群を発症し，その後，右下肢の筋力低下と両下肢の振動覚低下が出現した。全身性アミロイドーシスが疑われ，腹壁脂肪吸引や消化管生検が行われたが有意な所見は得られず，無疹部の皮膚生検でのみアミロイドの沈着を認め診断に至った。皮膚生検でのアミロイド検出率は他と比較しても同等かそれ以上と報告されている。さらに皮疹を呈していない症例においても，無疹部からの皮膚生検によりアミロイド沈着を認めた報告は医学中央雑誌で渉猟し得た限り7例ある。その全症例で腹部を生検されており，またアミロイドの沈着は真皮深層から皮下脂肪織に多いため，検出率を高めるためには十分な深さの検体を採取することが重要である。

再発性多発軟骨炎との鑑別を要した硬化性粘液水腫の1例大筋　由里桂 , 淡路　健太郎 , 太田　行紀 , 杉本　映綺 , 秋山　佑子 , 久住　藍 , 三宅　知美 , 山下　尚志 , 佐藤　伸一 67巻2号 , 2025年2月 , pp.138-139

PDF(471KB)

有料閲覧

文献概要を表示

現病歴　当科初診1年前より，両耳介の紅斑腫脹が始まり，その後，鼻にも同様の症状が出現した。半年後に近医皮膚科を受診し，両耳介，鼻尖部，眉上部の浮腫性紅斑から再発性多発軟骨炎が疑われ，皮膚生検が施行された。生検検体に軟骨は含まれていなかったものの，軟骨に接する皮膚でリンパ球浸潤がみられ，造影MRIで両耳介の高信号を認めたことから再発性多発軟骨炎と診断された。プレドニゾロン（PSL）30mgの内服を開始し，一時的に紅斑，腫脹は改善したが，PSL 20mgに漸減すると皮膚症状が再燃した。シクロスポリン（CyA）200mgが追加されたが改善に乏しく，PSLを30mgに再増量した。当科初診1カ月前に前医内科を紹介受診し，全身精査が行われたが臓器障害はなく，CyAを中止しアダリムマブが開始された。しかし，PSLを20mg程度まで減量すると皮膚症状が再び悪化した。既存の皮疹に加え，手背の丘疹や手指のソーセージ様腫脹も出現したため，当科を初診した。

デルゴシチニブ軟膏外用がリポイド類壊死症に有効であった1例田中　弘子 , 吉崎　麻子 , 佐藤　伸一 67巻2号 , 2025年2月 , pp.141-143

PDF(771KB)

有料閲覧

文献概要を表示

59歳，女性。初診10年前より両下腿に紅褐色斑を生じ，前医でリポイド類壊死症と診断された。ステロイド外用と紫外線療法を1年間行ったが改善せず，皮疹は拡大傾向であったため当科を受診した。初診時，両下腿には辺縁が堤防状に隆起し，中心は萎縮傾向のある紅褐色局面が散在していた。病理組織学的には，真皮全層に膠原線維の変性とその周囲にリンパ球，組織球，多核巨細胞からなる肉芽腫を認め，リポイド類壊死症と診断した。デルゴシチニブ軟膏外用で10日後には辺縁の隆起が軽快し，色調も減退した。リポイド類壊死症はまれな疾患で治療法が確立していないが，治療選択肢のひとつとしてデルゴシチニブ軟膏の有効性が示唆された。

M蛋白血症，補体異常を伴った正脂血性びまん性扁平黄色腫の1例藤野　久実佳 , 梅本　尚可 , 福井　伶奈 , 賀古　真一 , 出光　俊郎 67巻2号 , 2025年2月 , pp.145-148

PDF(762KB)

有料閲覧

文献概要を表示

72歳，女性。初診8カ月前，頸部，前胸部の黄色斑を自覚した。黄色斑は徐々に拡大した。頸部，前胸部，腋窩，上腕にほぼ左右対称に平坦で比較的境界明瞭な黄色斑が多発した。血液検査で総コレステロール，中性脂肪は基準値範囲内であったが，免疫電気泳動でIgG-λ型M蛋白陽性，C4，C1インアクチベーター，CH50は低値であった。黄色斑の病理組織像は真皮上層から中層の血管周囲に泡沫細胞が浸潤し，M蛋白血症を合併した正脂血性びまん性扁平黄色腫と診断した。正脂血性びまん性扁平黄色腫は高頻度に造血器疾患を合併するため，基礎疾患の精査が必要である。

脂質異常症，糖尿病の診断契機となり良好な経過をたどった発疹性黄色腫の1例山本　美月 , 木村　由紀 , 伊藤　晴菜 67巻2号 , 2025年2月 , pp.149-152

PDF(819KB)

有料閲覧

文献概要を表示

49歳，男性。1カ月前より四肢と体幹に軽度の圧痛を伴う淡紅色～黄白色の丘疹が出現した。病理組織像にて真皮浅層から深層にかけ，泡沫細胞の巣状の浸潤を認めた。採血にてHbA1c 15.6％，TG 1,001mg/dl，T-Chol 897mg/dlと著明な脂質異常症と糖尿病を認め，各種所見より発疹性黄色腫と診断した。食事療法による血中脂質の低下により皮疹は色素沈着を残して平坦化した。発疹性黄色腫は高トリグリセリド血症に伴って出現し，糖尿病を伴うことが多いとされる。糖尿病や脂質異常症は初期症状に乏しく，見逃されていることも少なくない。内科疾患を発見し，治療契機を設けるためにも，発疹性黄色腫はデルマドロームとして重要な皮膚所見である。

新型コロナウイルス感染症流行に伴う体重増加とともに発症した発疹性黄色腫の1例長島　朱里 , 濱田　利久 , 伊藤　一真 , 乗松　雄大 , 赤塚　太朗 , 森村　壮志 , 小無田　美菜 , 林　雄一郎 , 山賀　政弥 , 菅谷　誠 67巻2号 , 2025年2月 , pp.153-157

PDF(991KB)

有料閲覧

文献概要を表示

43歳，男性。新型コロナウイルス感染症流行に伴って身体活動量が低下し，2年間で20kg体重が増加した。初診1カ月半前から，躯幹四肢に5mm程度までの表面平滑な黄色調の丘疹が多発したため当科を受診した。生検で真皮浅層から中層に泡沫細胞が多数浸潤し，CD68陽性であり，発疹性黄色腫と診断した。血液検査でトリグリセリド238mg/dl，総コレステロール594mg/dl，HbA1c 9.9％であった。薬物療法，食事療法を開始し，データの改善とともに丘疹は消退しつつある。発疹性黄色腫は高脂血症に伴って発症するため，代謝異常の精査加療を速やかに行うことが重要である。

Castleman病として治療されていたFabry病の1例竹下　八菜 , 沖山　奈緒子 67巻2号 , 2025年2月 , pp.158-161

PDF(763KB)

有料閲覧

文献概要を表示

30歳，男性。6歳より全身の発汗低下を自覚していた。15歳頃から頭痛，発熱，倦怠感が出現し，関節痛とCRP高値に対し，Castleman病との診断でステロイドや免疫抑制薬内服，トシリズマブ投与が行われていた。無汗の精査・加療目的に受診した。腹部，膝，手掌に血管腫を認め，腎不全の家族歴があった。ミノール法による温熱性発汗試験では全身が無汗。白血球中αガラクトシダーゼA活性低下がありFabry病と診断した。本症は20歳台以降腎症状や心血管症状が顕在化するが，発作性四肢末端疼痛や発汗低下は幼少期から出現するため，Fabry病を念頭に置き家族歴，微小な血管腫の確認，尿中マルベリー小体の検出を行うことが有用と考えた。

亜鉛欠乏の関与が考えられた難治性アフタ性口内炎の1例中野　純二 , 上田　茜 , 兒玉　正明 67巻2号 , 2025年2月 , pp.162-164

PDF(399KB)

有料閲覧

文献概要を表示

79歳，女性。初診の2カ月前より頰粘膜，舌，下口唇にアフタ性口内炎が多発した。抗ヘルペスウイルス薬，ステロイド内服，外用療法等で加療されるも難治，疼痛により嚥下困難となったため紹介受診した。血清亜鉛値低下が認められ，酢酸亜鉛水和物（ノベルジン^®錠）100mg/日の投与を開始したところ，口内炎は劇的に改善した。亜鉛は多くの酵素の活性化や細胞分裂，核酸代謝等に不可欠な必須微量元素である。亜鉛欠乏が皮膚・粘膜に与える影響を考慮すると，各種皮膚・粘膜疾患において，亜鉛の関与も念頭に置くことは，日常診療上，重要と考えられる。

骨・関節破壊を伴った多発性痛風結節の1例松本　洸 , 大石　泰史 , 山本　明美 67巻2号 , 2025年2月 , pp.165-168

PDF(1193KB)

有料閲覧

文献概要を表示

55歳，男性。初診の2年ほど前から手指・手・足関節部に骨様硬～弾性硬の結節が出現したが放置していた。結節は徐々に増大・多発し体動困難となり救急要請され当科を受診した。高尿酸血症を認め，皮膚生検，X線所見より多発骨・関節破壊を伴う痛風結節と診断した。入院しフェブキソスタット投与，連日シャワー浴後に尿酸結晶を圧排することにより結節は縮小したが関節の可動障害は残存した。痛風結節は高尿酸血症を長年放置することで出現し，不可逆的な骨・関節破壊をおこすこともあるため，早期の治療介入が重要である。

食事摂取量の低下と偏食で生じたペラグラの1例和田　澄華 , 桒井　匠 , 足立　英理子 , 松井　美萌 , 小野　通夫 , 齋賀　一歩 67巻2号 , 2025年2月 , pp.169-172

PDF(1053KB)

有料閲覧

文献概要を表示

58歳，男性。約2年間で13kgの体重減少があり，当院内科を紹介受診した。数カ月前から1日1個の菓子パンのみの食生活であった。露光部の両頰部や手指に紅斑や潰瘍，痂皮の付着を伴っており，当科を紹介受診した。下肢のしびれがあり，末梢神経障害を合併していた。血液検査にてニコチン酸の低下と，亜鉛やアミノ酸など多栄養素の低下を伴っていた。ニコチン酸アミド，亜鉛製剤，ビタミン類の投与で速やかに症状は改善し，ペラグラと診断した。現代においても偏食からのペラグラを生じることがあり，皮膚症状から疾患を推察し早期改善を図ることができた症例であった。丁寧に問診することと，食生活や生活環境を整えることが重要である。

巻頭言

青でも止まり，赤でも進む中井　浩三 67巻2号 , 2025年2月 , pp.131-132

PDF(205KB)

有料閲覧

文献概要を表示

結婚披露宴での父の言葉でした。「医師は青信号でも止まらねばならないときがあり，赤信号でも進まねばならないときがある。」わかるようなわからないような名言，または迷言で，今でも事あるごとにこの言葉が脳裏をよぎります。今更，耄碌した父に問い質したところで，ろくな答えも返ってきそうにないですし，発言したことすら覚えていないかもしれないですし，まあずっと疑問のままも一興と思い，そのままにしています。

Clinicolor

Castleman病として治療されていたFabry病の1例竹下　八菜 , 沖山　奈緒子 67巻2号 , 2025年2月 , pp.129-130

PDF(187KB)

有料閲覧

文献概要を表示

現病歴　6歳時より全身の発汗低下を自覚していた。15歳頃から発作的に頭痛，発熱，倦怠感が出現し，関節痛とCRP高値に対し，Castleman病の診断でステロイドや免疫抑制薬内服，トシリズマブ投与が行われていた。発作的な手足の痛みが出現するようになったこと，発汗がほとんどなく体温調節が困難で生活に支障をきたすことから精査・加療目的に受診した。

Ackermanの『診断病理学の実践哲学』を読む

Ackermanの『診断病理学の実践哲学』を読む（35）斎田　俊明 67巻2号 , 2025年2月 , pp.173-175

PDF(424KB)

有料閲覧

文献概要を表示

Ackermanの著書『A Philosophy of Practice of Surgical Pathology：Dermatopathology as Model（皮膚病理学を範型とする診断病理学の実践哲学）』（Ardor Scribendi，1999年）には医の倫理から皮膚病理診断の具体的知識までが魅惑的な文体で綴られている。本連載では全44章で構成される本書の各章を「本文概要」としてまとめ，さらに二人の皮膚科医（斎田俊明・赤須玲子）の対談によって内容を敷衍し，議論を深めることとする。

症例

新型コロナウイルス感染後に生じた成人Still病の1例新安　祥也 , 高橋　英至 67巻2号 , 2025年2月 , pp.177-180

PDF(710KB)

有料閲覧

文献概要を表示

54歳，女性。新型コロナウイルスワクチンは3回接種済みであった。受診の3週間前に発熱があり，新型コロナウイルスPCR検査陽性であったが，対症療法で解熱した。受診の1週間前に嘔吐，関節痛，発熱，皮疹が出現した。胆管炎の診断で抗菌薬点滴治療を開始するも解熱せず，当科を紹介受診した。持続性紅斑を認めたため，成人Still病と診断した。ステロイドパルス療法，シクロスポリン投与にて治療し，軽快した。新型コロナウイルス感染症と成人Still病が同じ臨床的な特徴を有しているとの報告があり，両者の病態解明に役立つと考えられるため，今後も症例の集積・研究が求められる。

マスク紐によると考えられたGranuloma Fissuratumの1例中澤　亜美香 , 梅林　芳弘 67巻2号 , 2025年2月 , pp.181-183

PDF(573KB)

有料閲覧

文献概要を表示

38歳，男性。気管支喘息にて終日マスクを着用している。2カ月前から，両耳介上部後面に中央亀裂を伴う隆起性病変が出現した。亀裂はマスク紐の接触部に一致していた。耳介上部のgranuloma fissuratumの原因は眼鏡のフレームの刺激とされているが，マスク紐により発症した症例は報告がない。

ニボルマブ開始6年後に発症した水疱性類天疱瘡の1例菅原　依理子 , 越後貫　慧 , 比畄間　佳奈 , 佐藤　勘治 67巻2号 , 2025年2月 , pp.185-188

PDF(716KB)

有料閲覧

文献概要を表示

82歳，女性。2017年6月より肺腺癌に対してニボルマブを継続投与していた。初診8カ月前から瘙痒感を自覚し，初診3週前から紅斑や水疱を伴ってきたため，2023年6月当科を受診した。体幹四肢主体に瘙痒を伴う不整形紅斑と水疱，びらんが多発しており，病理所見で好酸球浸潤を伴う表皮下水疱を認めたことから，水疱性類天疱瘡と診断した。腫瘍マーカーや画像所見では，肺癌の増悪や他の腫瘍病変は認めず，ニボルマブによる水疱性類天疱瘡と診断した。ニボルマブ投与後に発症した水疱性類天疱瘡の症例を集計したところ，投与回数や期間，癌種はさまざまであったが，遅発性にみられる水疱性類天疱瘡は抗BP180抗体価が低い傾向があり，そのために症状が軽く発見が遅くなっている可能性がある。

下腿にリポイド類壊死症様皮疹を呈し，難治性潰瘍を形成したサルコイドーシスの1例松岡　廣 , 盛山　吉弘 67巻2号 , 2025年2月 , pp.189-192

PDF(1243KB)

有料閲覧

文献概要を表示

64歳，女性。初診14年前に下肢の褐色局面を自覚した。初診6カ月前から左下腿に潰瘍が出現し，増大したため当科を受診した。初診時，両下腿に不整形の褐色局面が散在しており，左下腿には拇指頭大と米粒大の潰瘍を伴っていた。病理組織像で，乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認め，潰瘍型皮膚サルコイドーシスと診断した。心電図で完全房室ブロックを認め，肺，眼合併症はなかった。ステロイド外用薬と抗潰瘍薬による治療に反応せず，潰瘍は手拳大までに拡大した。プレドニゾロン30mgを開始後，1年以上潰瘍処置を継続し，潰瘍は上皮化した。潰瘍を伴うサルコイドーシスはしばしば難治であり，ステロイド全身投与を積極的に考慮する必要がある。

脂腺および汗管への分化を呈した巨大脂漏性角化症―分割切除術を施行した1例― 赤須　里沙子 , 内山　真樹 , 大庭　華子 , 絹川　典子 , 杉谷　雅彦 , 泉　美貴 , 出光　俊郎 67巻2号 , 2025年2月 , pp.193-196

PDF(1187KB)

有料閲覧

文献概要を表示

77歳，女性。30年前より背部に黒色斑があり，徐々に拡大した。初診時，背部右側に径6cm大の巨大黒色結節を認めた。脂漏性角化症を疑い隆起部から生検したところ，脂漏性角化症の一部に脂腺や汗管の細胞への分化がみられ，「脂腺および汗管への分化を呈した脂漏性角化症」と診断した。当初combined adnexal tumor of the skinの可能性を考えたが，脂漏性角化症の組織が優位であったことから，最終的に上記と診断した。脂漏性角化症は，多数の組織型に分類されるが，脂腺や汗管への分化を示すことはまれである。巨大なため外来にて分割切除を行ったが，術後17カ月の現在，局所再発はみられていない。

多発する脂腺系腫瘍から診断されたMuir-Torre症候群の1例阿部　桂奈 , 楠谷　尚 , 前川　直輝 , 住谷　茉帆 , 今西　明子 , 深井　和吉 67巻2号 , 2025年2月 , pp.197-200

PDF(782KB)

有料閲覧

文献概要を表示

83歳，女性。既往歴に直腸癌，尿管癌，大腸癌，ケラトアカントーマがあった。母，弟3人に大腸癌があった。初診1年前より左鼻翼部の黄色結節，鼻背部の暗赤色結節，また数カ月前から胸部の紅色結節を自覚した。単純切除を行い顔面の腫瘍は脂腺腫，胸部の腫瘍は脂腺腺腫の病理診断であった。後日，顔面に複数の皮膚結節が新たに出現し，切除で脂腺腺腫と病理診断された。多発する脂腺系腫瘍，多発内臓癌の既往よりMuir-Torre症候群と診断した。マイクロサテライト不安定性検査，MSH2等の免疫組織化学染色は本人の同意が得られず施行しなかった。脂腺系腫瘍の患者で，消化器癌の家族歴や既往歴を有する場合は本症を念頭に置くべきである。

乳癌に対する化学療法後に生じた多発性エクリン汗孔腫の1例野田　佑奈 , 鎗山　あずさ , 村垣　泰光 , 下松　達哉 67巻2号 , 2025年2月 , pp.201-203

PDF(590KB)

有料閲覧

文献概要を表示

71歳，女性。50歳時に左乳癌に対して術前化学療法と乳房切除＋腋窩リンパ節郭清術，さらに術後化学療法を受け再発なく経過していた。65歳時に他院で右胸部，右大腿部の皮膚腫瘍を切除されエクリン汗孔腫であった。70歳時に左上腕の紅色結節を自覚し当科を受診した。右下腿にも同様の結節を認め，全摘したところいずれもエクリン汗孔腫であった。悪性腫瘍に対する治療後に生じた多発性エクリン汗孔腫はこれまでにも複数報告があるが，その多くが造血器悪性腫瘍の症例である。近年，乳癌の術後化学療法後に生じた報告も散見され，癌種によらず化学療法などに伴う免疫抑制状態が多発性エクリン汗孔腫の発症に関与すると思われる。

蚕食性の皮膚潰瘍を呈した肺扁平上皮癌の直達浸潤による皮膚転移の1例瀨川　康二朗 , 芳賀　貴裕 67巻2号 , 2025年2月 , pp.205-207

PDF(653KB)

有料閲覧

文献概要を表示

75歳，男性。左肺尖部肺扁平上皮癌を指摘され，化学放射線療法が行われていた。経過中に胸骨および肋骨への転移を認め，胸部正中に蚕食性の潰瘍を生じた。皮膚生検の結果，肺扁平上皮癌の直達浸潤による皮膚潰瘍と診断した。肺癌の皮膚転移はさまざまな臨床所見を呈することがあるが，潰瘍を呈するのはまれである。内臓悪性腫瘍の位置から離れた皮膚にも遠隔転移をきたす可能性があるため，担癌患者で不明な皮膚病変を認めた際は皮膚転移の可能性を考慮する必要があると考えた。

Merkel細胞癌が疑われた前額部肺癌皮膚転移須長　幸嗣 , 須山　孝雪 , 横山　恵美 , 五明　美樹 , 片桐　一元 , 森　愛里 67巻2号 , 2025年2月 , pp.209-212

PDF(1647KB)

有料閲覧

文献概要を表示

79歳，女性。右前額部に3mmの紅色丘疹が出現した。前医での生検でMerkel細胞癌と診断されたが，腫瘍径が小さく転移性皮膚腫瘍も疑われた。追加の免疫組織化学染色，CT，血清学的検査でProGRP高値などの所見より小細胞肺癌の皮膚転移と診断した。その後，右頸部にも紅色丘疹が出現し，病理組織学的検査，免疫組織化学染色の結果から，こちらも小細胞肺癌の皮膚転移と診断した。Merkel細胞癌と小細胞肺癌皮膚転移の鑑別にはCK20，thyroid transcription factor-1を中心とした免疫組織化学染色が有用である。また，自験例での2カ所の小細胞肺癌皮膚転移巣は病理組織像と免疫組織化学染色の結果が異なり，病理組織学的に多様性がみられた。

関節エコーにより評価した多中心性細網組織球症の1例木村　彩萌 , 保科　大地 , 大谷　ひろみ 67巻2号 , 2025年2月 , pp.213-216

PDF(823KB)

有料閲覧

文献概要を表示

54歳，女性。初診2年前に自覚した手指の皮疹と関節痛，1カ月前に出現した右内眼角部の皮疹を主訴に当科を受診した。手指の関節エコーで骨びらんと滑液貯留を認め，皮疹部の病理検査で真皮内に組織球・多核巨細胞からなる炎症細胞浸潤を認めた。免疫染色はCD68陽性，S-100蛋白およびCD1a陰性であり，多中心性細網組織球症と診断した。メトトレキサート4mg/週を開始し，1カ月後に6mg/週へ増量して5カ月後に皮疹・関節痛は改善した。関節エコーは関節の構造的変化に加え炎症の程度も評価可能である。過去に同検査による多中心性細網組織球症の関節病変を評価した症例は少なく，文献的考察を加えて報告した。

IgA血管炎様紫斑を呈した急性骨髄性白血病の皮膚浸潤の1例黒木　千晶 , 永井　貴子 , 西尾　紀一郎 , 占部　和敬 67巻2号 , 2025年2月 , pp.217-220

PDF(883KB)

有料閲覧

文献概要を表示

83歳，女性。2カ月前に急性骨髄単球性白血病と診断され，化学療法中，下肢に皮疹が出現し当科を紹介受診した。下腿伸側・腹部に浸潤を触れる点状紫斑が多発し，IgA血管炎様であった。病理組織像で真皮内の血管，付属器周囲ならびに膠原線維間に，大型の腫瘍細胞が巣状や索状に浸潤していた。赤血球の血管外漏出を認めたが，血管炎の所見はなかった。免疫染色ではCD34，TdTいずれも陰性であり，急性骨髄単球性白血病の皮膚浸潤と診断した。点状紫斑の特異疹を認めた症例は本邦で3例のみであり，いずれも出現部位は伸側であった。また，皮疹の出現と予後との関連はなかった。

多発転移に対しアベルマブが著効したMerkel細胞癌の1例杉本　映綺 , 永井　幸司郎 , 船水　薫 , 高岡　真梨子 , 淡路　健太郎 , 尾松　淳 , 三宅　知美 , 宮川　卓也 , 佐藤　伸一 67巻2号 , 2025年2月 , pp.221-224

PDF(942KB)

有料閲覧

文献概要を表示

79歳，男性。初診1年前より左眉部に皮膚腫瘍が出現した。前医の生検にてMerkel細胞癌と診断され，拡大切除，術後放射線照射が施行された。切除7カ月後，左耳下腺から頸部にリンパ節転移が出現し当院を紹介受診した。頸部リンパ節郭清，術後放射線照射を施行したが，術後3カ月に縦隔リンパ節，腹腔内脂肪，側胸部皮下組織に多発転移を認めた。アベルマブ投与が開始され転移巣はいずれも著明に縮小した。Merkel細胞癌の遠隔転移例，根治切除不能例に関して，2017年に免疫チェックポイント阻害薬であるアベルマブが保険適用薬として承認され，進行期Merkel細胞癌への治療が劇的に変化し奏効率も向上した。

頭頂部Merkel細胞癌に有棘細胞癌が合併した症例に対してアベルマブが著効した1例田中　沙季 , 石黒　暁寛 , 岩下　宣彦 , 渡辺　大輔 67巻2号 , 2025年2月 , pp.225-228

PDF(1383KB)

有料閲覧

文献概要を表示

84歳，女性。頭頂部に23mm大の紅色結節が出現し，皮膚生検にてMerkel細胞癌と診断した。拡大切除の組織像はMerkel細胞癌と有棘細胞癌が合併しており，センチネルリンパ節は陰性，Merkel細胞ポリオーマウイルス（MCPyV）は陰性だった。術後2カ月時，右耳介後部に皮下腫瘤が出現し，造影CT検査で右頸部などに多発転移を認めた。放射線治療は希望されず，アベルマブ単独療法を開始した。投与5回目にはCTでリンパ節転移は縮小し，10回目投与で終了した。その後再発はない。有棘細胞癌合併例はMCPyV陰性例が多く，陽性例と発生要因が異なる紫外線発癌と考えられる。MCPyVの陽性例と陰性例について病因やアベルマブの奏効率などを過去の報告を含めて比較し考察した。

当院で経験したMycobacterium marinumによる皮膚非結核性抗酸菌症の2例大谷地　慶太 , 中村　かおり , 福田　知雄 67巻2号 , 2025年2月 , pp.229-233

PDF(775KB)

有料閲覧

文献概要を表示

症例1：47歳，男性。左前腕に紅色結節が出現し上行性に皮疹が増加した。症例2：47歳，女性。右示指の後爪郭が腫脹し，抗菌薬内服にても改善しなかった。2例ともに熱帯魚飼育があり，生検組織を用いた抗酸菌培養では淡黄色コロニーが確認され，質量分析法にてMycobacterium marinumと菌種同定した。類縁菌との鑑別を要したが，症例2はT-スポット^®. TB陽性でMycobacterium marinumと診断し，症例1ではT-スポット^®. TB判定不可であったが，治療経過からMycobacterium marinumと判断した。両者ともにミノサイクリン，クラリスロマイシンの併用療法により治癒した。本症の治療においては，正確な菌種同定に基づいた治療が基本であり，治療効果が思わしくない場合には薬剤感受性試験を行うことが必要であると考える。

Thymoma-Associated Multiorgan Autoimmunity（TAMA）の2例長谷川　あづき , 柴田　知之 , 内田　理美 , 大嶋　雄一郎 , 都築　豊徳 , 渡辺　大輔 67巻2号 , 2025年2月 , pp.234-237

PDF(906KB)

有料閲覧

文献概要を表示

症例1：85歳，女性。既往歴に前縦隔腫瘍あり。重症筋無力症発症後，前縦隔腫瘍は胸腺腫と推定し，免疫グロブリン大量静注療法などで加療した。初診時，四肢体幹に爪甲大の鱗屑を伴う紅斑が散在していた。皮膚病理組織所見にて表皮の個細胞壊死，表皮基底層にinterface changeがみられた。症例2：77歳，女性。重症筋無力症の診断で胸腺腫摘出術を施行したが，その後胸腺腫の再発があり，経過観察となっていた。初診時，全身に鱗屑を伴う紅斑や紫斑が散在していた。皮膚病理組織所見にて表皮の個細胞壊死と表皮基底層にinterface changeがみられた。TAMA（thymoma-associated multiorgan autoimmunity）は，過去の報告では予後不良例が多く，統一された治療方法がなく，可能であれば胸腺腫への積極的治療介入が望まれる。

臍部子宮内膜症に対し手術療法を行った2例瀨川　優里恵 , 秋野　萌子 , 谷田　宗男 , 岩間　憲行 , 中山　文恵 67巻2号 , 2025年2月 , pp.238-241

PDF(1090KB)

有料閲覧

文献概要を表示

症例1：41歳，女性。初診2年前より月経時に出現する臍周囲の痛みを自覚するようになった。初診1年前より臍部が黒褐色調に変化し，硬結が出現した。皮膚生検を行い，子宮内膜症の診断となった。手術で全摘術を行い，今後は婦人科でホルモン療法を予定している。症例2：48歳，女性。初診3カ月前より臍部皮下に時々痛みを伴う腫瘤が出現した。表皮囊腫の疑いで切除を行ったところ，子宮内膜症の診断となった。現在は婦人科でホルモン療法を行い，再発なく経過している。臍部子宮内膜症は手術治療を第一選択とし，特に若年発症の場合は再発の可能性を考慮しホルモン療法を検討すべきである。

憧鉄雑感

第155回　選定療養制度下保湿薬也安部　正敏 67巻2号 , 2025年2月 , pp.243-243

PDF(232KB)

有料閲覧

文献概要を表示

時代に合わせて医療保険制度は変化する。しかし，最近の後発医薬品のある先発医薬品の選定療養制度は，湿布薬や保湿薬がメインターゲットと思われる節があり皮膚科医は大変である。

MiniReport

自然排出された陳旧性石灰化上皮腫（毛母腫）の女性例前田　学 , 阿南　隆 67巻2号 , 2025年2月 , pp.244-245

PDF(312KB)

有料閲覧

文献概要を表示

現病歴　2カ月前より背部左側に痤瘡様の皮疹が出現し，化膿し疼痛を伴うこともあったが，自然治癒すると考え放置していた。3日前よりこの腫瘍部から硬い内容物が排出したので持参して来院した。

神経線維腫の下に食道癌の皮膚転移を認めた神経線維腫症1型の1例佐藤　真由 , 平岩　朋子 , 山本　俊幸 67巻2号 , 2025年2月 , pp.246-247

PDF(749KB)

有料閲覧

文献概要を表示

現病歴　生下時より体幹四肢にカフェオレ斑を認め，遅れて神経線維腫が多発し，NF1と診断されていた。当科受診の約1年前に消化器内科で進行性食道扁平上皮癌と診断され放射線治療中であった。約2週間前より腰部の皮下結節に気がついた。消化器内科で施行されたCT検査で多発性皮下結節を認め，診断目的に当科を紹介受診した。

--------------------

目次 67巻2号 , 2025年2月

PDF(228KB)

フリーアクセス

英文目次 67巻2号 , 2025年2月 , pp.125-125

PDF(39KB)

フリーアクセス

投稿規定 67巻2号 , 2025年2月 , pp.126-127

PDF(209KB)

フリーアクセス

著作財産権譲渡同意書 67巻2号 , 2025年2月 , pp.128-128

PDF(62KB)

フリーアクセス

次号予告 67巻2号 , 2025年2月 , pp.176-176

PDF(131KB)

フリーアクセス

編集後記 67巻2号 , 2025年2月 , pp.248-248

PDF(218KB)

フリーアクセス

基本情報

皮膚科の臨床
67巻2号
(2025年2月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0018-1404 金原出版

お気に入り登録(雑誌)
お気に入り登録(号)
最新号をみる

バックナンバー ( 閲覧可 )

文献閲覧数ランキング(
2月10日～2月16日
)

第1位無疹部の皮膚生検から診断し得た全身性アミロイドーシスの1例野田佑奈,西山幸佑,坪田ゆかり,下松達哉皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 133-136 (2025年2月1日) 金原出版
第2位 Castleman病として治療されていたFabry病の1例竹下八菜,沖山奈緒子皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 158-161 (2025年2月1日) 金原出版
第3位デルゴシチニブ軟膏外用がリポイド類壊死症に有効であった1例田中弘子,吉崎麻子,佐藤伸一皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 141-143 (2025年2月1日) 金原出版
第4位骨・関節破壊を伴った多発性痛風結節の1例松本洸,大石泰史,山本明美皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 165-168 (2025年2月1日) 金原出版
第5位再発性多発軟骨炎との鑑別を要した硬化性粘液水腫の1例大筋由里桂,淡路健太郎,太田行紀,杉本映綺,秋山佑子,久住藍,三宅知美,山下尚志,佐藤伸一皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 138-139 (2025年2月1日) 金原出版
第6位亜鉛欠乏の関与が考えられた難治性アフタ性口内炎の1例中野純二,上田茜,兒玉正明皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 162-164 (2025年2月1日) 金原出版
第7位経管栄養剤によるアレルギーが疑われた1例曽遥,植木理恵,清水智子,長谷川舞皮膚科の臨床 64巻 9号 pp. 1492-1495 (2022年8月1日) 金原出版
第8位新型コロナウイルス感染症流行に伴う体重増加とともに発症した発疹性黄色腫の1例長島朱里,濱田利久,伊藤一真,乗松雄大,赤塚太朗,森村壮志,小無田美菜,林雄一郎,山賀政弥,菅谷誠皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 153-157 (2025年2月1日) 金原出版
第9位食事摂取量の低下と偏食で生じたペラグラの1例和田澄華,桒井匠,足立英理子,松井美萌,小野通夫,齋賀一歩皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 169-172 (2025年2月1日) 金原出版
第10位当院で経験したMycobacterium marinumによる皮膚非結核性抗酸菌症の2例大谷地慶太,中村かおり,福田知雄皮膚科の臨床 67巻 2号 pp. 229-233 (2025年2月1日) 金原出版

投稿規定

年間購読申込