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ステロイド外用薬の強さはランク表を見て判断すればよいですよね?
ステロイド外用薬の強さはランク表を見て判断すればよいですよね?
ランク表は何を基準にして作成されたものかを理解したうえで参考にするといいよ。ステロイド外用薬の特性は各薬剤の構造式を見ると理解しやすいよ。
ステロイド外用薬の力価分類について
1952年Sulzbergerらは,湿疹,皮膚炎に対する副腎皮質ステロイド外用薬[ステロイド外用薬(topical corticosteroids;TCS)]の有効性を初めて報告し▲1)▲,皮膚科学の分野は画期的な進歩を遂げた。ステロイド外用薬は,抗炎症作用,免疫調節作用,抗増殖作用,鎮痒作用,血管収縮作用などの作用を有する。ほかの治療薬とは異なり,その力価によってランク付けされている。ステロイド外用薬の力価は,1962年にMcKenzieらによって発表された血管収縮試験に基づいており,さまざまな希釈度のステロイド外用薬をヒト皮膚に塗布して血管が収縮することによる皮膚の白色調変化の程度を測定するものである▲2)▲。白色変化の評価は,血管収縮がない状態から強い状態までの4段階に分けられた視覚的な尺度を用いて,調査員が行う▲3)▲。これまで,ステロイド外用薬の白斑形成能の比較について多くの論文が発表され,現在のステロイド外用薬の力価分類が確立された▲4)▲。
McKenzieらが初めてステロイド外用薬の浸透性とその白色調変化について記述した後,ステロイド外用薬の最初の力価分類が匿名で報告された▲5)▲。
ステロイド外用薬の力価を皮膚色で主観的に判断する際の再現性を考慮して,近年では正確な皮膚の色を客観的に測定するために色差計を使用するようになった。米国食品医薬品局(food and drug administration;FDA)は,同じ方法を異なるステロイド外用薬の生体利用効率や生物学的同等性を評価する手段として採用している。この血管収縮反応は臨床成績,特に抗炎症作用と良好な相関があることが提唱されてきた▲6)▲。一方でこの相関はおおよその近似値であることに留意する必要がある。実際,大量の強力なステロイド外用薬を塗布しても白色調変化を示さない患者がいる。血管収縮ランキングは,経皮吸収を予測することはできても,臨床効果を確実に予測できるものではないことが明らかである。Hepburnらは,ステロイド外用薬の臨床効果と血管収縮反応の間に不一致があると報告した▲7)▲。臨床的な反応の不均一性は,ステロイド外用薬の力価ランキング方法が標準化されていないことに起因する。例えば,米国では7クラス分類を採用しているが,英国やフランスでは4クラス分類を採用し,本邦では武田の分類を改変したランク表に基づき,ステロイド外用薬をストロンゲスト,ベリーストロング,ストロング,ミディアム,ウィークの5段階に分類しているため,各国間で強さを比較することはできないのである▲8)▲。
このように現行の力価評価は皮膚炎症に対するものではない。ステロイド外用薬の真の抗炎症効果を評価するためには,臨床試験や◆in vitro◆,◆ex vivo◆のモデルによって客観的に評価する必要がある。
ステロイド外用薬の経皮吸収
現状,ステロイド外用薬の生理的な活性の強さを参考にして効果や副作用の出やすさを予測するしかない。この血管収縮反応はステロイド外用回数に比例して減弱するうえ▲9)▲,外用薬の経皮吸収率の高い部位と低い部位とでは効果や副作用出現頻度がステロイド外用のランク表によらない可能性がある(図1)▲9)10)▲。基剤の影響も受け,軟膏よりもクリームのほうが経皮吸収が高い▲8)▲。ステロイド外用薬のランクが強いものを12カ月以上使用し,急に中断すると発赤浮腫,膿疱多発などの離脱症状が生じることに留意する▲11)▲(表1)。
ステロイド外用薬の構造式
ステロイド外用薬の構造式には,その外用薬の性質や特徴が現れている。図2にステロイドの炭素骨格を示す。図3のコルチゾールとヒドロコルチゾン(外用薬)の構造式の違いを見ると,ヒドロコルチゾンは皮膚との親和性を高めるためC17位がエステル化されている。C21位のエステル化も皮膚の親和性に関わる。ステロイド外用薬では共通してこれら炭素がエステル化されている。C6位とC9位がフッ素付加(ハロゲン化)されているステロイド外用薬もある(図4)。C6位のハロゲン化により分解されにくく安定となり,抗炎症作用も増強する▲12)▲。C9位がハロゲン化されるとその作用が増強する。ステロイド外用薬は皮膚で脱エステル化されることで代謝されるが,ハロゲン化ステロイドは脱エステル化に抵抗を示すため,ステロイドの活性が長時間維持される。非ハロゲン化のステロイド外用薬でも,C1~2位の二重結合(デヒドロ化)があると糖質コルチコイドとしての作用が増強する▲12)▲。C6/C9位のハロゲン化とC1~2位の二重結合化は長時間にわたり高い抗炎症作用や糖質コルチコイド活性を発揮する。このように構造式を見て効果や副反応を予測して臨床使用することも検討してみるとよいだろう。
ステロイド外用薬の強さが血管収縮機能を基準に決められていることに新鮮な驚きがありました。塗布後,紅斑が消えて見えるのは一時的に血管が収縮しているためで,炎症が改善したかを判断するには,触診を含む丁寧な診察が必要そうですね。外用する部位の吸収率や,急に外用を中断することのないように指導することにも気をつけたいと思います。構造式の見方はとても興味深く,薬剤のインタビューフォームを見るのが楽しみになりました。
文 献
1)Sulzberger MB, Witten VH:J Invest Dermatol, 19:101-102, 1952
2)McKENZIE AW et al:Arch Dermatol, 86:608-610, 1962
3)Görne RC et al:Skin Pharmacol Physiol, 20:133-140, 2007
4)Haigh JM et al:Int J Pharm, 19:245-262, 1984
5)Anonymous:Drug Ther Bull, 15:5-8, 1977
6)FDA:Topical Dermatologic Corticosteroids:In Vivo Bioequivalence, 2022
https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/topical-dermatologic-corticosteroids-in-vivo-bioequivalence-0(2023年4月25日アクセス)
7)Hepburn DJ et al:Pediatr Dermatol, 13:239-245, 1996
8)佐伯秀久ほか:日皮会誌,131:2691-2777,2021
9)片山一朗:アレルギー,55:1279-1283,2006
10)Feldmann RJ, Maibach HI:J Invest Dermatol, 48:181-183, 1967
11)Hajar T et al:J Am Acad Dermatol, 72:541-549, 2015
12)Katz M, Gans EH et al:J Pharm Sci, 97:2936-2947, 2008
表1 ステロイド外用薬のランク
ストロンゲスト(Ⅰ群)
0.05% クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート▲®▲)
0.05% ジフロラゾン酢酸エステル(ダイアコート▲®▲)
ベリーストロング(Ⅱ群)
0.1% モメタゾンフランカルボン酸エステル(フルメタ▲®▲)
0.05% ベタメタゾン酪酸プロピオン酸エステル(アンテベート▲®▲)
0.05% フルオシノニド(トプシム▲®▲)
0.064% ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロン▲®▲-DP)
0.05% ジフルプレドナート(マイザー▲®▲)
0.1% アムシノニド(ビスダーム▲®▲)
0.1% ジフルコルトロン吉草酸エステル(テクスメテン▲®▲,ネリゾナ▲®▲)
0.1% 酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン(パンデル▲®▲)
ストロング(Ⅲ群)
0.3% デプロドンプロピオン酸エステル(エクラー▲®▲)
0.1% デキサメタゾンプロピオン酸エステル(メサデルム▲®▲)
0.12% デキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ▲®▲,ザルックス▲®▲)
0.12% ベタメタゾン吉草酸エステル(ベトネベート▲®▲,リンデロン▲®▲-V)
0.025% フルオシノロンアセトニド(フルコート▲®▲)
ミディアム(Ⅳ群)
0.3% プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル(リドメックス▲®▲)
0.1% トリアムシノロンアセトニド(レダコート▲®▲)
0.1% アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ▲®▲)
0.05% クロベタゾン酪酸エステル(キンダベート▲®▲)
0.1% ヒドロコルチゾン酪酸エステル(ロコイド▲®▲)
0.1% デキサメタゾン(グリメサゾン▲®▲,オイラゾン▲®▲)
ウィーク(V群)
0.5% プレドニゾロン(プレドニゾロン▲®▲)
(2021年3月現在)(文献8)より引用改変)
図4 非ハロゲン化/ハロゲン化,C1~2位の二重結合化をもつ代表的な構造式
図3 コルチゾールとヒドロコルチゾンの構造式の比較
図2 ステロイドの炭素骨格
図1 ステロイド外用薬の経皮吸収
前腕腹側を1.0としたときの吸収率を示す。
(文献10)をもとに作成)
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