産婦人科の実際 66巻11号 (2017年10月)

ガイドラインのすき間を埋める! 臨床医マエストロの技

企画者のことば
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「医療崩壊」という言葉が世間に浸透し始めてからすでに10 年以上になるのではないだろうか。産婦人科領域で最も医療崩壊という言葉を象徴するもの,そして,大きな転機になったのは大野病院事件であることは論を俟たない。この事件の報道などを通じて我々産婦人科医が知ったのは,産婦人科医療に対する世間の認識とのギャップであった。また,裁判の判決では,科学的な根拠ではなく,裁判官が考える社会通念が重要であることを知った。

目次

周産期領域 扉

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妊娠中期に実施される経腟超音波の普及により,頸管長が短縮する段階で治療的頸管縫縮術(本稿での『緊急頸管縫縮術』)が行われている。また,胎胞視認症例などにも治療的頸管縫縮術が行われているが,それら緊急頸管縫縮術の適応については「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」に記載されているものの,一定の見解には至っていない。また,その手術手技についても統一した手技はなく,術者および施設の判断に任されているのが実情である。本稿ではこれらの『すき間』について最新の文献的考察を加えて述べたい。

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妊娠中期に実施される経腟超音波の普及により,頸管長が短縮する段階で治療的頸管縫縮術(本稿での『緊急頸管縫縮術』)が行われている。また,胎胞視認症例などにも治療的頸管縫縮術が行われているが,それら緊急頸管縫縮術の適応については「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」に記載されているものの,一定の見解には至っていない。また,その手術手技についても統一した手技はなく,術者および施設の判断に任されているのが実情である。本稿ではこれらの『すき間』について最新の文献的考察を加えて述べたい。

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切迫早産に安静(ベッド上安静,行動制限)が有効であるかを考えるにあたり,以下の点を考慮する。

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わが国では頸管熟化目的でのプロスタグランジン製剤の経腟的投与が未承認であり,吸湿性頸管拡張材および材質や用法の異なる様々なメトロイリンテルを用いた器械的頸管熟化法が行われている。頸管熟化は頸管構造の大部分を占める細胞外マトリックスのリモデリングであり,局所の構成細胞や遊走細胞が関与し,炎症カスケードのなかで進行する。頸管熟化の分子メカニズムに基づいて器械的頸管熟化処置の作用機序をとらえることにより,内診所見にあった頸管熟化処置の選択・使用方法がみえてくる。なお,わが国で行われている器械的頸管熟化処置は,いずれも効果と安全性についての検証が不十分であり,施行にあたっては,コンセンサスに基づいて作成された産科婦人科診療ガイドラインの遵守が求められる。

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妊娠高血圧症候群は,臨床の現場でしばしば遭遇する。母体のみでなく,胎児予後にもかかわってくるため,慎重な管理が求められる。病因,病態が徐々に解明されてはいるが,いまだ不明な点が多い。根本的な治療は妊娠の終結でしかない。そのため,予防や早期発見が重要であり,患者背景を知りリスク因子を抽出すること,定期的な評価を行うことが求められる。

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悪阻軽減するためには体内で不足したNa,Cl,K,Mg の摂取が必要である。真水の飲水は症状悪化の可能性があり控えるようにする。Cl は炭水化物の消化に必要である。悪阻の強い時期にはCa を多く含む食品の摂取は控える。腹帯,少量の冷えた炭酸水は腸蠕動低下を改善する。副交感神経活性優位な状態は塩飴摂取などにより持続的に血糖値とインスリン値を上げることにより改善が見込めるが,全身入浴や緑茶摂取により悪化の可能性があるので,シャワー浴とし,緑茶摂取は控える。

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超音波機器の進化に伴い,妊娠初期の小さな胎児でも詳細な画像が得られるようになってきた。また,nuchal translucency での染色体異常のリスク判定を行う検査が諸外国では普及し,それに伴い,形態異常の評価も行われるようになってきている。診断できる疾患は限られているが,それらの理解が必要である。

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妊娠中後期における胎児の循環器のスクリーニングは,出生後の対応を考慮すればその重要性は言うまでもない。先天性心疾患は胎児の先天性疾患のなかでも最も頻度の高い疾患群であり,可能な限り出生前にスクリーニングないし診断が行われることが産科,新生児科,小児循環器科等による周産期管理を円滑にする上でも肝要である。しかし,わが国においてはコンセンサスの得られたスクリーニングガイドラインはなく,世界的な現状との間に大きな解離がある。本稿では胎児心臓の世界潮流に鑑みて解説を行う。

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心臓の位置異常を正確に判断するためには,正確な四腔断面像を描出する必要がある。心臓が正中より左右に偏位しているときは,胸腔の占拠性病変を疑う。占拠している組織に囊胞構造があれば先天性横隔膜ヘルニアや先天性肺気道奇形(CPAM)を疑い,占拠性病変が高エコーであればmicro-cystic type のCPAM,気管支閉鎖,肺分画症などを疑う。胸腔内が正常であることを判断するためには,胸腔内にある正常な構造とそのサイズ,エコー像を知らなければならない。また,先天疾患がエコーでどのように描出されるかを知ると,エコーの異常像に気がつきやすい。

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胎児中枢神経のエコー検査に関して完成された共通の観察項目,いわゆるスクリーニング項目はないといってよい。一方で,ある程度共通のスクリーニング項目が日常臨床現場においては必要となる。このような状況から日本産科婦人科学会周産期委員会から胎児形態異常観察項目が公示され,産科診療ガイドライン2017 においてもその内容が盛り込まれた。海外では国際産婦人科超音波学会からも妊娠中期胎児中枢神経スクリーニングに関しての観察項目が示されており,これら2 つを参考に施設ごとにあった独自のスクリーニングが行われているのが現状と思われる。本稿ではこれら2 つのスクリーニングの違いやスクリーニングを行う際のknacks and pitfalls(要点と盲点)について述べる。

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胎児腹部エコー検査で,生命にかかわる診断の1 つとしては腎無形成もしくは無機能腎がある。長期の羊水過少症により肺の低形成をきたす,いわゆるポッター症候群は致死的な胎児病として考えられてきた。しかし新生児期の腹膜透析がうまくいくと,腎移植を踏まえた長期管理ができる可能性が出てきている。当院では人工羊水注入療法を行うことで,少なくとも肺低形成を予防する試験的治療を開始した。いまだに生後管理は決して容易とはいえないが,小児医療の発展に伴い,胎児期管理の最前線に一石を投じたいと考えている。

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胎児超音波検査のなかで長管骨計測は必ず行われる評価項目であるが,短縮の有無の評価がメインで,短縮の程度や骨の形状,さらにほかの長管骨の評価はあまり注目されていない。しかし,長管骨の短縮や変形をきたす疾患のなかには胎児骨系統疾患のような予後不良疾患が含まれており,これらは胎児期から診断する必要のある疾患である。胎児期からの評価によって出生までの管理や家族への対応,また出生後の治療へとスムーズにつなげることができるだろう。

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周産期医療では主に超音波断層法が使用されるが,その精査においてはMRI も使用することも多い。MRI は骨以外の組織に対してコントラストおよび分解能が優れており,骨系統疾患などを除く胎児疾患や癒着胎盤などの診断に有用である。本稿ではMRI の原理,安全性,一部の胎児疾患や癒着胎盤を疑う所見について概説する。

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遺伝カウンセリングは,単なる情報提供だけでなく,クライエントがそれらを十分に理解した上で自らによる意思決定ができるように援助する医療行為である。したがって,周産期診療では,突然,遺伝カウンセリングが必要となることも多い。産科初診時の妊娠歴,家族歴を確認し必要があれば遺伝カウンセリングを考慮する。もちろん妊娠中に出生前遺伝学的検査を考慮する場合や,後期流産に終わった場合,何らかの先天性疾患を持つ児を分娩した場合なども対象になりうる。

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子宮内で亡くなっても,両親にとって大切なわが子であることに変わりない。子の喪失を乗り越えてゆくことは感情に蓋をして忘れようとするのではなく,しっかりと悲嘆(グリーフ)を感じ,子の死の意味を感じてゆくプロセス(グリーフワーク)を通して,新たな物語を紡いでゆけるようになることであろう。悲嘆には個別性がありマニュアル対応はできないが,産婦・家族のわが子との出会いを受容的な姿勢で見守れることが,よりよいグリーフワークへつながるケアとなる。

婦人科領域 扉

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ピルの中止を考慮しなければいけないときは,① 有害事象が発生したとき,② 禁忌項目に抵触したとき,のいずれかである。服用中止理由の約5 割が,マイナーな副作用によるものであるが,中止する前に有害事象に応じた対処を考慮する。最も注意を要する重篤な有害事象は静脈血栓塞栓症(VTE)である。D-dimer 測定はVTE 症状があるときに行う。VTE が疑われる場合には,OC・LEP ガイドライン2015 のアルゴリズムに示された手順に従ってピルを中止する。ピル継続に際しては,OC・LEP ガイドライン2015 の慎重投与・禁忌の表を常に手元に置いて参照することが望ましい。禁忌項目に抵触したときは,ただちに投与を中止する。閉経前であっても50 歳までに投与を中止する。

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婦人科腹腔鏡下手術は一部の悪性腫瘍およびほとんどすべての良性疾患の治療に用いられる。そのなかでも子宮筋腫の核出術と子宮全摘術の実施頻度が高い。巨大子宮筋腫は難度が高く,一般的には専門医と専攻医の境界は500 g 程度と考えられる。婦人科腹腔鏡下手術の適応範囲を拡大し,専門医と専攻医のすき間を埋める手術手技として筆者は,腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM)を提唱している。ここではその手技の実際を提示する。また筋腫核出や子宮全摘がバーチャルリアティー(VR)の応用により,安全で容易になりうることを紹介する。

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子宮鏡手術は手術侵襲が軽度で術後回復も社会復帰も早い。患者への負担が少ないが大きな効果が期待できるため年々増加している。しかしながら,術者1人で行う手術のため手技が習得しにくく,手術合併症も毎年ほぼ一定の割合で発生する。そのため,本術式の発展には手術適応および手術方法の深い理解と合併症対策が急務である。本稿では診断・手術適応,術前療法の選択,子宮粘膜下筋腫に対する手術の考え方などを記述した。本術式を高度かつ安心・安全に実施する一助になれば幸いである。

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挙児希望のある女性の筋腫核出術については,腫瘤が“真に良性の平滑筋腫なのかどうか”をMRI 検査で確認することが大前提となる。良性との確信が得られれば,診療ガイドラインに沿って,患者とよく話し合いながら,手術適応に関する合意を形成していく。症候性の筋腫に対して核出術を行うこと,無症候性の小さな筋腫を経過観察することには異論がない。問題は無症候性でも長径が5〜6 cm を超える場合の対応であり,様々な身体的,社会的状況を十分に勘案しながら,適応と手術時期を考える。手術方法(開腹術か腹腔鏡手術か)の選択については,現在,腹腔鏡手術後に妊娠し子宮破裂や穿通胎盤をきたす頻度が予想以上に高いことが判明しており,十分な注意が必要である。最後に,びまん性子宮平滑筋腫症に対する筋腫核出術について私見を述べたい。

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卵巣子宮内膜症性囊胞は卵巣癌に悪性転化することがあるため,癌との鑑別は極めて重要である。癌の疑いがあれば積極的に摘出術を考慮する。癌の疑いがなければ,妊娠希望の有無,年齢,囊胞径の大きさから手術を判断する。手術を選択せず,妊娠希望がなければ薬物療法の対象となり,長期投与可能な内分泌療法が中心になる。本稿では卵巣子宮内膜症性囊胞を長期管理する上で有用な各薬剤の特徴と使用法の工夫についてジエノゲストを中心に,臨床経験に基づく個人的見解を述べたい。

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子宮頸部細胞診異常例に対する取り扱いやCIN の管理は,ベセスダシステムや産婦人科診療ガイドライン(婦人科外来編)の整備で統一された基準で運用されるようになってきた。しかし,細胞診・コルポスコピー・組織診の診断精度が良好でなくては,優良なガイドラインも適切に運用することは叶わない。コルポスコピストには最強病変を的確に見極め,細胞診・コルポスコピー・組織診の結果を統合して評価する役割が求められる。

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浸潤子宮頸がん患者に対する妊孕性温存療法である子宮頸部摘出術の需要は年々増してきている。円錐切除術では根治性が保証されない微小浸潤がん症例には子宮頸部摘出術が適応となるが,画一的に広汎術式を行うのではなく個々の症例に対する正確な進行期診断の下,準広汎あるいは単純子宮頸部摘出術を適切に適用していくのが肝要と思われる。本術式はまだ30 年ほどしか歴史のない比較的新しい手術療法であるため,今後も慎重に症例を重ね,エビデンスを高める必要がある。

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乳癌患者が増加し,タモキシフェン(TAM)の適応症例と投薬期間が拡大しており,産婦人科にて乳癌治療後の子宮内膜の検査を求められる機会が増えている。TAM は子宮に対しては弱いestrogenic agonist として働き,子宮内膜ポリープ,子宮内膜増殖症,子宮体癌,子宮肉腫の発生率が上昇する。経腟超音波検査以外に,必要に応じて内膜細胞診,内膜組織診,子宮鏡検査,ソノヒステログラフィなどでサーベイしていく必要がある。

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遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)は,BRCA1 またはBRCA2 の生殖細胞系列変異を原因とする,常染色体優性遺伝の遺伝形式をとる癌の易罹患性症候群である。日本人では約400 人に1 人がこれに該当するとされており,日常診療で遭遇しうる集団である。

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近年行われている前向きランダム化比較試験(EORTC55971 試験,CHORUS 試験,JCOG0602 試験)の結果,PDS に比較して低侵襲であるため,NAC-IDS を標準治療の1 つの選択肢とする意見もある。そのため,NAC-IDS を行っている施設も多く存在するのではないかと思われる。NAC-IDS 後の問題点としては,抗がん剤に曝露されることにより薬剤耐性細胞の出現が懸念されることである。しかし,NAC-IDS 後にレジメンを変えるべきか否かを唱えているものは,現状では存在しない。

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進行卵巣癌では極力腫瘍量を減らすoptimal surgery が予後を改善することが示されている。しかし,腹腔内全体に広がった腫瘍を摘出するためには,長大な切開創が必要となり,手術侵襲も大きい。一方,術前化学療法の後にoptimal surgery を行っても予後は同等とされる。化学療法で大網をはじめとして腫瘍が縮小してしまえば腹腔鏡でも十分に摘出が可能となり,大幅に侵襲を減らすことができる。腹膜外法によるリンパ節摘出では更に侵襲は減少し,腹膜の切除も容易となる。これらの手技により進行卵巣癌でも腹腔鏡手術は治療の選択肢の1つとなりうる。

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深部静脈血栓症(DVT)は,静脈内から血栓が進展・遊離すると肺血栓塞栓症(PE)が発症し,両者は併せて,静脈血栓塞栓症(VTE)と呼ばれている。現在DVT の診断は,その簡便性・低侵襲性から下肢静脈エコーで行われることが多い。一方,PEの診断は,海外では肺換気・血流シンチグラムを用いることが多いが,わが国では胸部造影CT で行われることが多い。DVT の治療方法としては抗凝固療法が第一選択であり,その治療目標は血栓症の進展・再発の予防と肺血栓塞栓症の予防にある。ほかに,血栓の広がりや患者の全身状態を考慮して,血栓溶解療法,カテーテル治療や下大静脈フィルターなどを用いる。

生殖領域 扉

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血液凝固異常と不育症との関係は広く知られており,後天的な血栓症素因(thrombophilia)としては,抗リン脂質抗体が最も重要なものの1 つであると位置づけられている。最近,抗フォスファチジルエタノールアミン(PE)抗体,第 因子欠乏症,プロテインS 欠乏症などが注目されており,それぞれの不育症との関係が示唆されている。今回これら血液凝固異常における病原性,低用量アスピリン+ヘパリン療法の適応についてエビデンスに基づき概説する。

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早発卵巣不全(POI)は,40 歳未満の卵巣性無月経により診断される。卵巣内の卵胞が何らかの理由により急激に減少する,または原始卵胞形成不全により生下時からすでに卵胞数が少ないため,卵胞が発育しなくなり閉経する。POI の最も有効な治療法は提供卵子を用いた体外受精胚移植である。自らの卵子で妊娠するために様々な薬物療法が試みられてきたが,その効果は限定的であった。われわれは,卵巣内に残存する体内では発育不能な卵胞に着目し,それを人為的に活性化して発育を誘導する卵胞活性化療法(in vitro activation;IVA)という新たな不妊治療法を開発し,世界初の妊娠・出産例を報告した。本GQ では,POI の病態を解説した上で,POI の不妊治療としての薬物療法とIVA を紹介し,その比較を行った。

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精液パラメーターから適切な治療法を選択するが,精液パラメーターの検査ごとのバラツキがあることと精液検査自体が精子の受精能・妊孕能を直接表していないことに留意する。精液パラメーターについて,自然妊娠の限界はWHO の基準値と考える。もちろん,不妊治療として考える場合には,さらに女性の年齢を考慮して治療を選択する必要がある。AIH を実施するためには精液の運動精子数が5×106〜10×106個以上必要と考えられている。そして,IVF では総運動精子数が1×106個以上必要と考えられ,それを満たさない場合はICSI の適応となる。さらに,臨床の場では,膿精液症例,不動精子例,精子死滅症例,無精子症例,精巣腫瘍合併例,奇形精子症例などへの対応も考えておかなければならない。

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われわれはI VF 不成功例に対してサプリメント投与,低反応レーザー治療(LLLT)と統合医療プログラムを行い,その有用性について検討した。L—カルニチン(1,000 mg/day)投与後良好分割期胚率(54.1% vs 60. 3%,p<0. 05),胚盤胞到達率(32. 0% vs 52.3%,p<0.01)が有意に増加した。メラトニン(3 mg/day)投与後,良好分割期胚率(48.7% vs 58.5%,p<0. 01),胚盤胞到達率(25. 6% vs 52.0%,p<0.01),良好胚盤胞到達率(25.9% vs 51.2%,p<0.01)が有意に増加した。LLLT 施行後,成熟卵数,受精卵数が増加した(成熟卵数1.7 vs2.0,p<0.05,受精卵数1.6 vs 1.7,p<0.05)。ホルモン補充凍結融解胚移植周期において妊娠率が向上した(分割期胚移植5.7% vs 17. 1%,p<0. 01)。統合医療プログラム施行後妊娠率が改善した(9.7% vs 26. 9%,p<0. 01)。

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2014 年の日本産科婦人科学会の報告では45 歳から総治療数あたりの生産率が1%を割り,流産率が65%を超え,総治療周期数あたりの移植周期が40%を割っている。このあたりがART の限界と考える。しかし日本では1 年間にART により45 歳を超えても1%未満の生産率ではあるが,126 人が出産している。厚生労働省の報告では同年45〜49 歳で1,214 人,50歳以上で58 人出産しており,海外での卵子提供によるものと推測される。一方,周産期の立場からはリスク(妊娠高血圧症候群,前置胎盤,常位胎盤早期剝離など)が加齢とともに増加することも留意してART を実施する必要がある。

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生殖補助医療において,良好胚選別のための胚評価は必須であり,われわれの開発したhigh resolution time-lapse cinematography は,ヒト胚の動的解析を可能とし,胚発生過程における種々の新たな現象を見出し,胚培養法の改良ならびに胚発育の再評価に大きく貢献した。本稿では,われわれの動的解析により得られた情報をもとに,従来の形態学的評価法を改変した内容と,TLC を用いた評価基準について,ヒト胚の品質評価につながる知見を解説する。

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近年,がんサバイバーの増加に伴い,がんサバイバーのQuality of lif e(QOL)の向上を目指す動きが高まっている。特に若年がん患者の場合,化学療法や放射線療法といったがん治療に伴った不可逆的な妊孕性の障害や早発卵巣不全および無精子症といった,妊孕性を喪失する可能性あることが問題となっており,治療開始前の妊孕性温存療法が重要となる。今回,妊孕性温存療法として ① 卵子凍結,② 卵巣組織凍結,③ 精子凍結,④ 精巣組織凍結について解説する。治療開始前の限られた時間のなかで,がん治療の内容や患者の年齢,またパートナーの有無など,各患者の置かれた状況に合わせ,最良の妊孕性温存療法を提供することが,われわれ産婦人科医の責務であると考える。

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胚移植カテーテルの挿入が困難なことを想定し,経腟超音波断層ガイド下ピンポイント胚移植法を考案した。挿入できないときは胚移植を中止する。胚はまだ庫内にあり傷まない。麻酔も使う。パラサービカル・ブロック麻酔も翌朝の絶食,静脈麻酔下胚移植もある。ポリープは除去して胚保存を選択する。カテーテル外筒にスタイレット(矯正歯科用の針金)を入れて子宮頸管の屈曲の形状を保ち挿入する。円錐切除にはシリコンフランジでカテ先端過侵入を防ぐ。頸管通過がまったく不可能な症例には経子宮筋層(TM)で行う。ヒューバーバックカット採卵針と持続硬膜外麻酔(硬麻)チューブを組み合わせ硬麻同様子宮内膜腔にカテを這わせると妊娠しやすい。

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子宮内膜症性囊胞合併不妊では,生殖補助医療(ART)が適応となる症例は多い。この場合,海外の多くのガイドラインでは,妊娠率の向上に寄与しないことを理由に事前の手術療法を推奨していない。しかし,実際の臨床現場では,囊胞の存在のために卵胞穿刺が困難となったり,囊胞を穿刺したために腹膜刺激症状や感染を起こしてしまったりすることがありうる。また,少なからず存在する悪性病変の診断やQOL 改善目的では手術療法に一日の長がある。一方でやみくもに手術を行うことは,妊孕性の低下を招く可能性があることも事実である。したがって,実際の状態と目的とを総合的に勘案した上での,手術療法の適応ならびに術式の決定が重要となると考えられる。

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ART が日本で開始されてから34 年が経過し,日本は世界一のART 大国となっている。社会情勢の変化や晩婚化によりART に携わる医師にとってpoor responder 対策が最大の課題である。排卵誘発の基本は通常刺激法をまず選択し,3 個以上の卵子が得られなかった症例では,次回からはクロミフェンなどを併用したいわゆる低刺激法を用いる。それでも卵子の得られない症例には,純粋自然周期(排卵誘発剤をまったく用いない)を用いる。通常刺激法を用いる最低基準はAFC が総数4 個以上(AMH 値にかかわらず)あり,採卵周期の基礎FSH が20mIU/ml 以下としている。AMH よりAFC を重視する。一度の採卵で複数受精卵の得られない症例では凍結胚を貯胚し,凍結融解胚移植にて複数胚移植を実施する。胚盤胞の得られない症例については分割胚2 個移植を行う。

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自然周期およびクロミフェンクエン酸塩(クロミフェン)をベースとした低刺激周期法(mildstimulation)は,下垂体抑制を行わず内因性のゴナドトロピンを利用するため,排卵誘発剤の大量投与が不要で重大な副作用もなく,患者の身体的・経済的負担の少ない優れた卵巣刺激法である。

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PGD に用いられる技術は,生殖補助医療技術と遺伝子診断技術に大別され,排卵誘発,顕微授精,胚生検,胚凍結を含む先進的技術のすべてを用いる。遺伝子増幅法としてnestedPCR 法と全ゲノム増幅法が担う。遺伝子増幅の際に生じるリスクも一定の確率で生じる可能性がある。遺伝子解析の方法として,遺伝子型に応じて対応する各解析法に加え新たな技術としてマイクロアレイ法の導入がなされ,着床前遺伝子スクリーニングへの応用が急速に脚光を浴びるようになった。社会倫理的な課題は,生命の新たな選択につながる可能性を危惧する考え方などから,対象疾患は重篤な遺伝性疾患に限られていることである。クライエントの要望があれば,いかなる事例に対しても対象とすべきであるかについては議論がある。PGD およびPGS は,なお,安全性やその意義などの検証を必要とするため臨床研究として取り扱われ,各倫理指針,ガイドライン,個人情報保護法のもとに行われることが必要である。クライエントへの支援として,難病対策に対する政策的な対応も次第に向上しているが,PGD に対する社会の支援や仕組みが構築されているとはいえないのが課題である。

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生殖医療における技術的進歩には目を見張るものがあるが,不妊患者に対するメンタル・サポートは諸外国に比べて遅れていると言わざるをえない。不妊症は個人に不安や混乱,苦悩を与え,不妊カップルにその経験の共有をもたらす。難治性不妊症の場合,特に治療期間が長期化するほどカップルに社会的,経済的,情緒的な混乱とストレスを感じさせる。このような状況を軽減し治療に前向きになれるように認知行動療法やマインドフルネス療法が取り入れられている。メンタルと身体の両面から相関性を検討して,健康的で妊娠しやすいライフスタイルを選択させ,マインド・ボディ・テクニックと情緒面でのサポートを組み合わせることで心と身体のバランスが整い,治療における妊娠・出産の機会を高める可能性がある。

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産婦人科の実際
66巻11号 (2017年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0558-4728 金原出版

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