臨床皮膚科 74巻5号 (2020年4月)

増刊号特集 最近のトピックス2020 Clinical Dermatology 2020

1.最近話題の皮膚疾患

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Dermatoporosisは加齢や紫外線曝露およびステロイド,抗凝固薬の長期使用が原因となり発症し,四肢に紫斑,潰瘍や血腫の形成,創傷治癒遅延を引き起こす状態を表すもので,「Osteoporosis(骨粗鬆症)」を参考に2007年にKaya and Sauratらが提唱した疾患概念である.皮膚萎縮,表皮剝離などの皮膚の変化は老化現象(生理現象)として捉えられてきたが,皮膚機能不全,脆弱症として対策をすべきという考えに基づいている.Deep dissecting hematoma(深在性解離性血腫)は本疾患の最重症型で,微小な外力により血腫を形成し,進行すると広範な組織壊死をきたすため,早急な診断と血腫除去が必要となる.高齢者では本疾患の有病率は約30%といわれており,高齢化の進行に伴い今後さらに増加すると考えられる.皮膚科医としてもこのような概念を念頭に置き診療にあたることが重要と思われる.

Semicircular lipoatrophy 原 肇秀
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50歳,女性.初診の4か月前に右大腿伸側の陥凹を自覚した.徐々に陥凹は目立つようになり,当科を受診した.右大腿伸側に横方向に長い陥凹を認めたが,皮下腫瘤や周囲の硬結ははっきりしなかった.血液検査では膠原病をはじめとする異常所見はなく,同部位からの病理組織像では皮下脂肪織隔壁の線維化を認めた.MRIでは明らかな皮膚や筋肉の異常信号や腫瘍は認めなかった.臨床像からsemicircular lipoatrophyを考え,外傷,下着による締め付け,洗面台による圧迫などの誘因がないか問診したが,その時には特に思い当たる誘因はみつからなかった.約1か月後に本人から連絡があり,別邸の台所のシンク下の取手に寄りかかって家事をしていたことが誘因となっていたことが判明した.

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骨髄性プロトポルフィリン症(erythropoietic protoporphyria:EPP)は幼小児期以降に光線過敏で発症する疾患であり,フェロケラターゼ(FECH)をコードするFECH遺伝子が原因遺伝子である.ポルフィリン代謝経路において,FECHの活性が低下することによりプロトポルフィリンⅨが蓄積するために生じる.EPPはFECH遺伝子変異単独では発症せず,遺伝子多型ⅣS3-48T/C(wild typeはⅣS3-48T/T)を同時に持つことで酵素活性が低下しEPPが発症する.しかし,われわれはFECH遺伝子変異がなくとも,遺伝子多型ⅣS3-48C/Cにより軽症のEPP(不全型EPP)を生じることを見出した.不全型EPPでは軽度の光線過敏症状を呈し,少数の蛍光赤血球,血中プロトポルフィリン値の軽度上昇がみられる.さらに,不全型EPP患者の光線過敏症状は年齢とともに改善がみられた.遺伝子多型ⅣS3-48C/Cは日本人では欧米人と比較し約10倍頻度が高い.このため,これまで診断がつかずに見逃されていた幼児,小児における不全型EPP患者が日本人には潜在的に存在している可能性も考えられる.

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メトトレキサート(MTX)は,半世紀以上前に開発された葉酸代謝拮抗剤に分類される抗がん剤である.低用量・間欠的使用による免疫抑制作用を利用して関節リウマチで頻用されている.また,本邦でも乾癬に使用できるようになった.一方,MTX投与中の患者に悪性リンパ腫を発症しうることが,1990年代より報告されるようになり,MTX関連リンパ増殖異常症として疾患概念が確立している.WHO分類では,他の免疫抑制剤によるものも含め,「他の医原性免疫不全関連リンパ増殖異常症」として記載されている.本邦で発症頻度が高いとされ,皮膚など節外性病変として発症することも多く,Epstein-Barr(EB)ウイルスが関連しうること,MTXの中止のみでも自然消退する場合があるという特徴がある.本疾患は皮膚病変として発症しうることから,われわれ皮膚科医もこの疾患を認識し,適切に診断・フォローアップできるよう理解を深めておくことが必要と考えられる.

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制御性T細胞(regulatory T cell:Treg)は末梢性免疫寛容を担う主要な細胞であり,その機能不全は様々な自己免疫疾患と関連すると考えられている.最近Tregの機能不全により,類天疱瘡抗原であるCOL17とBP230に対する自己抗体がマウス(Scurfyマウス),ヒト〔immune dysregulation polyendocrinopathy, enteropathy, X-linked(IPEX)症候群〕のいずれにおいても生じることが示された.また,マウスにおいては自己反応性T細胞がこれら類天疱瘡抗原に対する自己抗体産生を誘導することが示唆された.制御性T細胞を利用した治療も期待されるが,水疱性類天疱瘡においていまだ臨床試験は始まっていない.同じ自己免疫性水疱症である天疱瘡群においてはTregを投与するPhase 1試験が始まり,全身性エリテマトーデスなどの膠原病ではIL-2補充療法の効果が報告され,無作為化比較試験施行が期待されている.今後Tregを利用した水疱性類天疱瘡治療の発展を期待したい.

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皮膚は,最大の臓器であり,個体と外界との境界においてバリアとして働き,その生命を維持するうえできわめて重要な役割を果たしている.表皮においては,表皮幹細胞がバリア機能を担う角化細胞を生み出し続け,その新陳代謝と維持における要となっている.しかし,表皮幹細胞の実体や長期に渡って維持される仕組み,さらに皮膚の老化との関連については,いまだ十分には理解されていない.最近,われわれは表皮内で表皮幹細胞同士が互いに競り合い,「細胞競合」と呼ばれる現象を引き起こすことによって,長きにわたり表皮幹細胞が維持されるが,継続的な細胞競合を経て最終的に競合不全をきたすことで,皮膚の老化が顕在化することを見出した.本稿では,われわれの最近の研究成果とその臨床的意義についても紹介したい.

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アトピー性皮膚炎は表皮バリア機能異常やIL-4,IL-13をはじめとしたTh2系サイトカインの増強がみられるアレルギー疾患である.われわれはallelotyping解析という手法により表皮バリア機能や免疫に関連する26遺伝子のうちkeratinocyte proline-rich protein(KPRP)というバリア機能関連の蛋白遺伝子がアトピー性皮膚炎に関与していることを明らかにした.KPRPは表皮の顆粒層で主に発現しているが,健常人と比較してアトピー性皮膚炎患者の病変部では発現が低下しており,その局在はloricrinの発現場所と組織学的に一致していた.KPRPのホモおよびヘテロのノックアウトマウスを作成してさらなる分析を行ったところ,KPRPが欠損しているとデスモソームの構造異常が生じ,角質層が剝れやすいことが明らかになった.

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汗孔角化症は,メバロン酸経路の酵素をコードする遺伝子MVK,MVD,FDPS,PMVKのいずれかの変異により生じる優性遺伝性疾患である.これらの遺伝子はいずれも常染色体上に位置しており,患者は正常アレルと病原性アレルとを1つずつ持つ(変異をヘテロ接合性に持つ).今回われわれは,汗孔角化症の皮疹の1つ1つは,正常アレルにセカンドヒットが生じて両アレル欠損となった細胞がクローン増殖することで生じることを見出した.セカンドヒットが胎生期に一度だけ生じると,そのセカンドヒット細胞がBlaschko線に沿って皮疹を形成し線状汗孔角化症となる.一方,セカンドヒットが成人後に身体のあちこちで独立に生じると,播種型の汗孔角化症となる.日本人のおよそ400人に1人がMVDに共通の病原性変異を有しており,潜在的な汗孔角化症患者が相当数存在する可能性がある.本発見は,汗孔角化症の治療戦略を考える上で基盤となるものである.

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近年,慢性蕁麻疹の病態と血液凝固異常の関係が指摘されているが,組織損傷などなしに局所で血液凝固反応が亢進する機序と,それに次ぐ膨疹形成機構は明らかにされていない.われわれは局所における外因系凝固の引き金となる組織因子(Tissue factor:TF)に着目し,慢性蕁麻疹の増悪因子の1つである感染に関与する細菌由来成分(lipopolysaccharide:LPS)とヒスタミンによる,血管内皮細胞のTF発現と血管透過性に対する影響について検討した.その結果,これらの分子が単独で血管内皮細胞に作用した場合に比べ,同時に作用することで血管内皮細胞上のTF発現が相乗的に増加した.さらに,相乗的に血管内皮細胞上に高発現したTFは,血漿中の凝固因子を活性化し,それらが血管内皮細胞に働くことで血管透過性が亢進し,蕁麻疹の発症に寄与し得ることを示した.

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高齢者に多く発症する水疱性類天疱瘡は強いかゆみを伴う.かゆみの制御は水疱性類天疱瘡の治療の目的の1つであるが,水疱性類天疱瘡におけるかゆみの病態は未解明であり,治療に難渋する.水疱性類天疱瘡の皮膚組織を用いて病理組織学的にかゆみメディエータの発現を検討したところ,かゆみの程度は病変部の浸潤好酸球数,好塩基球数,substance P,neurokinin 1R,IL-31RA,OSMR,IL-13,ペリオスチンの発現と有意に相関し,IL-31発現とも関連していた.興味深いことに,IL-31陽性細胞ならびにneurokinin 1R陽性細胞の大多数は好酸球であった.また,IL-13やペリオスチン,好塩基球は,好酸球を活性化することが知られている.好酸球を中心に,これら多因子のかゆみメディエータが水疱性類天疱瘡のかゆみに関与しており,治療の有用なターゲットとなる可能性がある.

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Stevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)/中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)は代表的な重症薬疹であり,眼や呼吸器などの後遺症を残すだけでなく,死亡率もいまだ高い.病初期に治療を開始することが患者の予後を左右する一方,病初期の臨床像は多形紅斑などの通常型の薬疹と鑑別が困難である.これまでgranulysinやsFasLなどがSJS/TENの発症早期から上昇し,特にgranulysinは早期診断のバイオマーカーとして有用とされたが,実際は薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)などの他の薬疹や急性肝炎,移植片対宿主病などでも同様に検出される.最近われわれは新たに疾患特異的なバイオマーカーとなりうるgalectin-7とRIP3を見出した.稀な疾患ではあるが致死的となりうる重症薬疹の診断において有用と考えられるこれらのバイオマーカーの今後の臨床応用が期待される.

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魚アレルギーは頻度が高く,診断や治療に難渋する症例も多い.魚アレルギーの主要抗原はパルブアルブミンなどがよく知られているが,必ずしも抗原が特定できないこともあり,未知の抗原が関与している可能性があった.われわれは,サケ蛋白抽出液を粗抗原としてウエスタンブロットを施行し,魚アレルギー患者6例中5例に共通して約230kDaの蛋白質に血清IgEが結合することを見い出した.質量分析によりこれをmyosin heavy chain(MYHC)と同定した.リコンビナントサケMYHC蛋白は患者の末梢血好塩基球を活性化することより,抗原特異的IgEの結合のみならずアレルギー反応を誘導することを確認した.また,これらの患者はすべてアトピー性皮膚炎を有していたことより,皮膚バリア機能の障害が高分子量のMHYCに感作されるリスクを高めた可能性を考えた.

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歯科金属アレルギーは扁桃病巣や喫煙と並んで掌蹠膿疱症の発症要因の1つとされるが,歯科金属を除去しても症状が改善しない症例がある.われわれは金属パッチテストを実施した掌蹠膿疱症257例を対象に歯科金属除去と金属含有食品の摂取制限の効果について,歯性病巣や扁桃病巣治療の影響も併せて調査した.歯科金属除去例に治癒した症例はなく,パッチテスト陽性金属を含む補綴物を除去せずに治癒した症例があった.治癒例のほとんどが歯性病巣の治療を受け,半数近くは扁桃を摘出した.歯科金属除去後に著明改善または改善した症例も,その多くが歯性病巣を同時に治療された.歯科金属除去群と非除去群で皮膚所見の改善度に有意差はなく,歯科金属除去を検討する前に病巣感染の治療を優先して良いと結論した.ただしニッケル(Ni)については,Ni含有歯科金属の除去やNi含有食品の摂取制限が有効な症例があり,病巣を除いた上でNi除去を検討して良いと考える.

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ダーモカメラ「DZ-D100」はレンズ交換なしに通常の(臨床)写真とダーモスコピー画像の撮影ができる,重さ400g弱のコンパクトなデジタルカメラである.画角が広く,撮影画像の辺縁までLEDライトの照射ムラがなく明るさが一定で,歪みもなく,近い将来のAI(artifical intelligence)による自動診断への利用が期待される.さらに偏光・非偏光・紫光(紫外光に近い405nmの可視光)の各画像がワンボタンでズレなく3連写が可能であり,撮影画像はカメラのモニター上で大きさの計測ができるため,短時間で素早く必要な情報を収集できる.撮影画像はWi-FiでPC端末に自動転送が可能であり,無料の画像管理ソフト上でIDごとに画像を自動振り分けするなど,診断のみならず画像整理の効率も改善される.近い将来AIによる診断サポートが予定され,ドクターニーズに答えたまさに次世代型のダーモスコピー専用カメラである.

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掌蹠において,色素細胞母斑の典型的なダーモスコピー所見は皮溝平行・格子様・細線維状パターンであり,悪性黒色腫(以下,メラノーマ)は皮丘平行パターンである.ダーモスコピー所見の違いにより,7割程度の病変はダーモスコピー検査のみで良悪性が判断可能である.典型的なダーモスコピーパターンを示さない病変において,メラノーマを疑う手がかりになるダーモスコピー所見は,不規則に分布する青白色ヴェールや色素小点・小球,血管所見,過角化や潰瘍,である.皮丘平行パターンは検出されないが,これらの所見を伴う病変ではメラノーマの可能性が高いので注意する.また,肢端黒子型メラノーマは高齢者と足底荷重部に好発する.典型的なダーモスコピーパターンを示さないもののうち,これらの臨床条件を満たす症例では,メラノーマの可能性をより慎重に検討する.

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免疫チェックポイント阻害薬である抗PD1抗体は,根治切除不能悪性黒色腫の治療に幅広く使用されている.抗PD1抗体は,従来の治療薬と比べ一定の奏効率は得ることができるものの,本邦における製造販売後調査では奏効率が22.2%と臨床試験のデータと比較して低いため,治療効果増強のための併用薬が必要となるが,現在使用可能なニボルマブ+イピリムマブ併用療法は重度の副作用の発症を伴うため,単剤での治療効果を予測するバイオマーカーの開発が重要である.それゆえわれわれは,腫瘍随伴性マクロファージ(TAMs)が,抗PD1抗体により活性化した時に産生するsCD163と関連ケモカインを患者血清中で測定することにより,根治切除不能悪性黒色腫に対する抗PD1抗体の効果を予測するシステムを開発するに至った.

4.皮膚疾患治療のポイント

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薬剤性過敏症症候群は,何も治療を要さない軽症例から,致死的な合併症を発症する難治例まで極めて幅広い病態を呈し,初期の対応の間違えが,致命的な結果をもたらす.少数の経験例を元にさまざまな治療法が提唱されているが,多数例の後ろ向き解析から治療の予後について論じた研究はない.われわれは10年間にわたり,初期の段階から軽快後も1年以上経過を観察できた55症例を詳細に検討し,通常外来で得られる臨床情報をもとに臨床スコア(早期,後期)を作成した.その早期スコアに基づき,初期に軽症(1>),中等症(1〜3),重症(4<)に層別化することで,後で生じる合併症や難治例のほとんどは予知できること,しかも合併症のほとんどにはCMVの再活性化が関与しており,抗CMV治療を早期に行うことで救命しうることを明らかにした.急性期に有用と思われたステロイドパルスは,長期予後から見て好ましくないことも明らかになった.

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Behçet病(以下,ベーチェット病)(Behçet's disease)では,口腔内アフタ性潰瘍は必発で,長年にわたり患者を悩ませる症状である.この症状に対して,経口投与可能な低分子薬であるアプレミラストが,日本人患者を含む国際共同第Ⅲ相臨床試験において,ベーチェット病患者の口腔内潰瘍数と口腔内潰瘍疼痛VASスコアを有意に低下させた.口腔内潰瘍の適応のみであるが,2019年9月に保険収載され,『ベーチェット病診療ガイドライン2020』にも取り上げられている.副作用として下痢,悪心,頭痛などを認めるため,アプレミラスト投与開始時はスターターパックを用いて漸増投与を行う必要があるが,これまでに重篤な合併症は報告されていない.アプレミラストは,ホスホジエステラーゼ4(PDE4)を阻害し,炎症性サイトカインを制御することで抗炎症作用を示すが,この作用機序から考えれば,口腔内潰瘍以外への効果も検討する価値がある.

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ジェイス®は国内で唯一の自家培養表皮シート製品であり,本邦では重症熱傷および先天性巨大色素性母斑の切除後皮膚欠損に対して保険診療として承認されている.2019年7月に,ジェイス®が表皮水疱症に対して適用拡大された.表皮水疱症は皮膚構造蛋白をコードする遺伝子の変異による先天性疾患である.そのため自家培養表皮は根本的な治療にはなりにくいが,難治性潰瘍に対して一時的な創閉鎖としてのquality of life(QOL)改善が期待できる.一方,後天的に遺伝子異常が消失する復帰変異モザイクを採皮部に設定することで,自家培養表皮が長期間有効な治療効果をもたらす可能性がある.

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亜鉛欠乏は多彩な病態を惹起するが,亜鉛が多く存在する皮膚では皮膚炎・脱毛・口内炎などを呈し,亜鉛欠乏診断の機縁となることも多いため,亜鉛の知識は皮膚科日常診療に必須と思われる.亜鉛欠乏の病態研究により,皮膚では表皮細胞からのATP放出が皮膚の被刺激性を亢進させることで一次刺激性接触皮膚炎を起こすことが示された.また亜鉛は創傷治癒のほぼすべての過程で枢要な機能を果たしているため,亜鉛欠乏は褥瘡・皮膚潰瘍の難治化を招来する.亜鉛欠乏食を用いたマウスの虚血再灌流褥瘡モデル研究で亜鉛補充の有用性が実証されたこと,褥瘡における亜鉛補充療法の有用性の臨床報告などから,褥瘡・難治性皮膚潰瘍患者に遭遇したら一度は亜鉛欠乏を疑い血清亜鉛濃度を測定することは理にかなった選択肢である.低亜鉛血症が認められた際には保険適用があるノベルジン®による亜鉛補充療法が推奨される.

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2019年の話題として,厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業の自己免疫疾患に関する調査研究班と日本リウマチ学会が合同で,それに日本小児リウマチ学会,日本腎臓学会,日本皮膚科学会,日本臨床免疫学会が協力して,全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)診療ガイドラインが作成されたことが挙げられる.注目すべき点として,あらゆる臓器病変に対して,全身療法としてはまず禁忌事項に注意してヒドロキシクロロキン(HCQ)の内服を考慮することが提唱されている.皮膚病変についても,ステロイドやタクロリムスの外用で効果不十分な場合には,全身療法としてHCQの内服を考慮し,それでも難治性の場合は,プレドニゾロンの内服などを検討することになる.このような治療以外にも,CLASIが皮疹の活動性評価に重要かどうか,ループスバンドテストが診断に有用かどうかなどが記載されている.ガイドラインの内容を中心に,エリテマトーデスの皮膚病変の治療に関して解説した.

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乾癬は鱗屑を伴う紅斑を呈し,生活の質(quality of life)を著しく障害する.近年の治療の進歩は著しく,現在乾癬に対する治療選択肢は多彩である.その中でも生物学的製剤は高い効果と高い安全性を示し,乾癬治療にパラダイムシフトを起こした.生物学的製剤の1つであるリサンキズマブは,IL-23p19に対するモノクローナル抗体であるが,年4回の投与で,中等症から重症の患者の約6割に皮疹のない状態をもたらすことができる低侵襲で効果が高く安全性の高い薬剤であり,乾癬治療に大きなインパクトを与えた.本稿では,リサンキズマブの効果,安全性などの特徴を述べるとともに,乾癬の治療目標や治療の実際について述べる.

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顆粒球・単球が無菌性に活性化し,炎症や組織障害を引き起こす病態が数多く知られている.皮膚症状を呈する疾患としては膿疱性乾癬,Behçet病,壊疽性膿皮症などが挙げられる.顆粒球単球吸着除去療法(granulocyte and monocyte adsorption apheresis:GMA)はこれらの疾患の原因となっている顆粒球・単球の除去とその細胞機能の制御を目的として開発された体外循環療法で,皮膚科領域では膿疱性乾癬に対する治療として2012年に保険適用が承認された.その後,乾癬性関節炎に対する多施設共同試験が実施された.有効性はACR基準に基づいて評価された.ACR20の達成率は65%で,圧痛関節数,腫脹関節数,被験者による疼痛評価,被験者および医師による疾患活動性全般の評価,医師による身体機能性評価の6項目で有意な改善がみられた.重篤な副作用はなかった.本試験でGMAの有効性と安全性が示され2019年6月10日に保険適用が承認され,同年11月1日に保険収載された.

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2019年から,再発性の口唇ヘルペスおよび性器ヘルペスについて,抗ウイルス薬(ファムシクロビル)を前もって患者に処方しておき,再発の初期症状(前兆)を感じた時点で患者の判断で内服を開始して,治療に要する期間を短縮させるpatient-initiated-treatment(PIT療法)が使用可能となった.今回認可された治療法は通常のepisodic treatmentに使用する1日量よりも多量の抗ウイルス薬を短期間で2回のみ内服するone-day-treatmentであり,症状の軽症化と治癒までの期間の短縮を図ることができる.再発を繰り返す単純ヘルペスの患者では日常のquality of life(QOL)が低下しており,この治療法はその改善に向けた本邦では新しい予防的な治療法として,その効果に期待できるものと思われる.

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帯状疱疹関連痛(zoster-associated pain:ZAP)は主として急性期疼痛にみられる,皮膚および神経の炎症による痛み(侵害受容性疼痛)と,主として帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia:PHN)でみられる,神経変性による痛み(神経障害性疼痛)から構成されている.神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第2版では,プレガバリンなどのカルシウムチャネルα2δサブユニットリガンドは第一選択薬のグループに含まれており,特にアロディニア要素の強いPHN患者に対しては,良い適応になる.新規カルシウムチャネルα2δサブユニットリガンドであるミロガバリンは,動物実験でプレガバリンより高い安全係数を持ち,第3相臨床試験でもPHN患者に対して短期,長期試験で有効性を示した.実臨床では少量から漸増すること,傾眠,浮動性めまい,体重増加といった副作用があること,腎機能患者では適切な減量が必要なことに注意が必要である.

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現在進行期悪性黒色腫で用いられる免疫チェックポイント阻害薬は海外第III相臨床試験にてその有効性が確認され,本邦でも日常診療で用いられている.一方で,実臨床では海外臨床試験ほどの効果は得られないことを実感する.これは欧米と本邦を含めたアジア諸国での悪性黒色腫の病型の割合の違いによると推察されている.そこで,多施設共同研究により効果が低いと考えられている末端黒子型黒色腫を193例集積し,抗PD-1抗体の効果につき後ろ向きに検討した.奏効率は16.6%,全生存期間中央値は18.2か月とやはり海外の成績には及ばず,かつ爪部と掌蹠発生例を比較したところ,爪部発生例にて有意に奏効率および全生存期間が低かった.爪部発生例での抗PD-1抗体効果には限界があり,今後複合免疫療法を含めた新たな治療の開発が急務と考えられる.

5.皮膚科医のための臨床トピックス

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本研究では,加水分解コムギ含有石鹸による経皮感作小麦アレルギー患者を対象として関連する遺伝要因の解明のために全ゲノム関連解析を行い,6番染色体のHLA-DQ領域と16番染色体のRBFOX1領域の2領域に疾患感受性領域を同定した.今後はこれらの遺伝情報を活用した病態解明と新たな治療法の開発が期待される.

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アトピー性皮膚炎の発症要因の1つとしてフィラグリン遺伝子の機能喪失変異が挙げられる.フィラグリンは皮膚バリア機能を担っており,フィラグリン機能喪失変異による皮膚バリア機能の低下が,アトピー性皮膚炎の発症に寄与していると考えられている.われわれはフィラグリン機能喪失変異によるアトピー性皮膚炎発症への影響は,乳幼児期に特に顕著であることを見出した.フィラグリン機能喪失変異の保有者には特に出生後早期のケアによる予防が効果的であることが示唆される.遺伝子型に基づく個別化医療はメンデル遺伝病やがんにおいて近年注目されているが,今後は多因子疾患にも拡大していくことが期待される.

デュピルマブと顔面紅斑 片岡 葉子
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デュピルマブは重症アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis:AD)患者の皮膚症状およびquality of life(QOL)の改善を可能にする有力な薬剤である.しかし,顔面病変に対する効果の発現は他部位に比し遅い傾向があり,時に投与前にみられなかった皮疹の出現を認めることもあり,治療継続の判断に影響する.デュピルマブ投与後の顔面皮膚症状の変化を,速やかに改善,元来の紅斑が残存・持続(うち緩徐に改善・持続・難治性紅斑),悪化または投与前になかった皮疹が出現(うち外用薬等併用薬の急な中断・接触皮膚炎の合併・酒皶類似の病態の出現)に分類し各病変の臨床的特徴と対応について述べた.成人ADの顔面病変およびデュピルマブ投与後の反応は多彩である.これはADの顔面皮膚症状の病態が複雑であることを反映している.本剤投与にあたっては,全身の皮膚炎の病勢とともに,個々の病態を正確に把握しそれぞれに応じた併用薬の要否,本剤の投与間隔を含めた適切な薬剤投与選択の判断が求められる.

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成人小麦アレルギーの症状抑制における抗IgE抗体療法(オマリズマブ)の有用性を,好塩基球活性化試験によって検討した.その結果,オマリズマブ3回投与4週後に,小麦蛋白質添加による好塩基球の活性化は有意に抑制されたが,12週後には再上昇した.

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EGFR阻害薬・マルチキナーゼ阻害薬による皮膚障害の現状を明らかにし,皮膚障害による中止例を最小限にすることを目的に調査を行った.方法:2015〜2017年度に国内12施設で経験した484事象を収集した.皮膚障害を理由とした中止率は全体の8.3%で中止全体の1/3を占めていた.中止の判断は主治医(処方医)が行っていた.患者自身の希望,選択が重視されることから症状の軽減に対する皮膚科医の関与や専門看護師の手厚いケアにより,中止率低減の余地があると考えられた.手足症候群の中止率が14.8%と最も高く,治療開始前の角質除去フットケアや免荷などの予防指導が十分とは言えない現状が明らかになった.新規治療薬の開発も急務である.痤瘡様皮疹へのミノマイシン予防投与は15/170例に施行され,うち4例にMRSA等耐性菌が検出された.痤瘡様皮疹への長期間にわたる抗菌薬内服,ステロイド薬の長期外用は避けるべきである.

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Stevens-Johnson症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS)/中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)は,時に生命を脅かす重症薬疹である.SJS/TENの初期の皮膚症状を播種状紅斑丘疹型や多形紅斑型薬疹などの通常薬疹と区別することは難しい.ディープラーニングは,近年の人工知能(artificial intelligence:AI)ブームを支える基盤技術の1つであり,画像識別において時に人間を凌駕する性能を発揮する.われわれは,ディープラーニングを応用し,紅斑の個疹画像をもとにSJS/TENと通常薬疹を判別する画像診断プログラムの作成を試みた.本稿では研究成果の一部を紹介したい.

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皮膚筋炎は,近年同定された筋炎特異的自己抗体によってサブグループ分類され,間質性肺炎や悪性腫瘍の合併などの臨床像のみならず,皮膚症状も各群に特徴的な徴候があり,その病理学的特徴も異なっている.われわれが行った多施設共同研究である,皮膚筋炎の指の皮疹の病理組織学的解析では,抗ARS抗体陽性例では,苔癬反応のみならず湿疹反応や乾癬様皮膚炎の特徴を混じ,I型インターフェロン反応性蛋白myxovirus resistance A(MxA)の表皮発現がみられなかった.一方,抗MDA5抗体陽性例では,血管傷害が特徴で,MxAを高発現する.抗TIF1γ抗体陽性例では空胞変性を伴う苔癬反応が目立ち,表皮MxA発現がみられる.これらの所見は,末梢血や筋生検組織像解析とも合致していて,各グループの病態を反映しており,特異的治療法開発へ結びつくものと期待される.

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抗transcriptional intermediary factor(TIF)1-ß抗体は皮膚筋炎(dermatomyositis:DM)患者で検出される稀な自己抗体の1つである.免疫沈降法およびウェスタンブロット法により同定された抗TIF1-ß抗体単独陽性7例の臨床的特徴を検討した.7例中6例がDMと診断された.6例中2例は筋力低下なく,血液検査上CK値の上昇もなかったため,clinically amyopathic DMと診断した.残り4例では筋力低下がみられたが,うち3例でCK値は正常であった.皮膚症状はGottron兆候,爪囲紅斑,爪上皮出血点,顔面の紅斑がそれぞれ86%,57%,86%,71%でみられた.7例中1例で虫垂癌があった.間質性肺炎を合併した症例はなかった.抗TIF1-ß抗体は筋炎特異的自己抗体の1つであり,間質性肺炎の合併のないclinically amyopathic DMまたは軽症の筋炎との関連が示唆された.

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われわれは,5-aminolevulinic acid(ALA)を用いた光線力学療法(PDT)で,MRSAおよび緑膿菌感染マウス皮膚潰瘍を治療し,殺菌および創傷治癒促進作用があることを報告した.今回,倫理委員会の承認のもと,ヒトのMRSA感染皮膚潰瘍に対してALA-PDTを行ったところ,明らかな有害事象を認めず速やかな上皮化により,治癒させることができたので報告する.

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乾癬性関節炎は乾癬患者の10〜15%にみられ,関節変形を防ぐため早期診断と適切な治療を必要とする.現状では疾患についての啓発や対応が不十分であり,今回,皮膚科医を中心に診療に関わる複数科で,本邦の実情を考慮した診療ガイドラインを策定した.本文では,その病態の本質が付着部炎であることと,末梢関節炎だけでなく体軸関節炎,付着部炎,指趾炎,爪病変,皮膚病変といった複数領域の病変を生じる多彩な臨床像を述べ,疫学やリスク因子,診療の流れと検査のポイント,関節リウマチや変形性関節症などとの鑑別を解説した.治療はエビデンスレベルと推奨度を付してclinical question(CQ)で解説し,各製剤の治療上の位置付けを記した.中等症以上には生物学的製剤の使用も考慮し,現時点で効果のエビデンスが最も高い生物学的製剤はTNF(tumor necrosis factor)阻害薬,次いでIL(interleukin)-17阻害薬である.実臨床における治療薬の選択については,症例ごとに個別の状況を踏まえて決定することが望まれる.

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尋常性疣贅の治療は多種多様であり,エビデンスレベルも明らかではなかった.近年英国のガイドラインなども発表されたが,本邦独自の治療法も多く,実臨床に即したガイドラインが求められてきた.2019年に日本皮膚科学会から新たに「尋常性疣贅診療ガイドライン2019(第1版)」が出版された.総論と各論の構成で,治療は機序別に4つのカテゴリーに分類され,推奨度,手技や注意点が記された.章末のアルゴリズムでは通常の尋常性疣贅に加え,足底疣贅,多発性疣贅,小児の疣贅などの治療に難渋する症例に対する具体的なアプローチも示された.待望のガイドラインの発表により,難治例に対するエビデンスに基づいた治療法の選択が可能となった.本稿では新しいガイドラインのエッセンスを解説したい.

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 皮膚科医になってこの年度末に23年が経とうとしている.自分が皮膚外科に興味を持ちはじめたのは,わずか1年目(その頃はローテート制度がなく,医師1年目)のときである.形成外科の先生方がされていた手術に魅了され,2年間大阪大学形成外科関連病院で研修させていただく機会を得たのが始まりであり,そのとき教えていただいた知識や技術,心得が今でも大きく活かされていると感じる.皮膚科医が外科治療を行う上でやはり皮膚悪性腫瘍の診療は欠かせない領域であり,その患者さんの診断から手術を含めた抗癌治療を一貫して自分でできることは,この上なく魅力的だと確信している.このように感じるのは少数派なのだろうか.皮膚科に入局される先生方に「なんで皮膚科を選んだん? ほかどの科と迷った?」などと尋ねると,「皮膚科は内科と外科両方兼ね備えているから.形成外科と迷いました」という嬉しい返事をもらえることがしばしばある.自分なりに,皮膚腫瘍の正しい診断をつけふさわしい治療に結びつけることの魅力を伝え,「先生なかなか器用やねえ,しっかり研修すればこんな手術もできるよ!」とオペ場で話す.また,どこまでの手術ができるようになりたいか達成目標を尋ね,そのためのトレーニングを提案している.ただ,手術の勉強・基礎研修を行った上で皮膚腫瘍外科を専門にしたい,と思う後輩がそれほど増えない.その理由として指導法の問題以外,地域性,勤務皮膚科での手術の必要性・症例数,手術によるリスクなどさまざまな課題があるかもしれない.

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 若年層を中心に女性医師の数は増加傾向にある.平成30(2018)年の厚生労働省の統計では,女性医師は全体で21.9%(71,758人)であるが,年代が低くなるほど比率は高くなり,29歳以下では35.9%を占める.皮膚科は女性医師にとって働きやすい診療科とされ,同じ統計でも,病院で勤務する医師のうち,皮膚科は,「女性の数が男性を超える」唯一の診療科となっている.私は当科の医局長を務めているが,こうした女性医師が,専門医取得後や出産などを契機に,退職するケースを多く経験してきた.医師になるために6年,初期研修に2年,専門医取得に最低5年を要し,13年以上を経て一人前の皮膚科医になった女性医師が,退職を選択するのは,女性が働きづらい日本文化や,それに基づく社会制度・福祉によるところが大きいと考えられるが,もったいないことである.一方当科では,アレルギー・腫瘍・発汗異常・フットケア等の多数の専門外来を設けており,それらを,多くの女性医師たちが支えている.育児をしながら常勤で勤務していくことが難しい女性医師も,非常勤という形で,自分が最も関心を覚える分野において,長く研鑽を重ねていく.私自身も,皮膚アレルギーという軸足を持ち,夫の転勤など家庭の事情で常勤勤務が難しいときは,非常勤に転じ,それを細々と続けてきた.サブスペシャリティーが,女性医師のキャリア形成において軸足となり,勤務を継続していくことのモチベーションになることを感じている.

覚悟を決めて 竹尾 直子
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 最近,大学から県内の中核病院に異動しました.皮膚科は4人体制です.育児中のため,何年もの間,大学では急な呼び出しのない外来診療や先の予定が立ちやすい研究を中心に仕事をしていたので,臨床メインの病院に異動の話があったときに,その場でかっこよく,任せてくださいとは,とても言えませんでしたし,本音を言えば,逃げ出したかった.けれど,医局は慢性的な人手不足で,年々,女性医師の割合が増加しています.子供にある程度,手がかからなくなれば,再び,通常の人事異動の中に戻らなければ,後輩達はさらに大変になります.私は覚悟を決めて異動の話を引き受けました.

専門分野は突然に 柳下 武士
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 一世風靡した「ラブ・ストーリーは突然に」という歌はご存知だろうか.大ヒットドラマの主題歌だが熱く語ると世代がばれそうなので話を進めます.

 皮膚科を数年経験すると,「自分の専門分野を持ちなさい」,「サブスペシャリティーを何にするのか?」を問われるようになる.若い先生には少し経験を積んで上のレベルに上がれた気分にもなるし,逆にどうしたらいいのか頭の痛い問題なのかもしれない.明確に専門にする分野を決めている場合を除いて,多くの方が悩まれるのではないだろうか.専門分野を持つ意味は何か? 皮膚科をジェネラルに一通り診療できるという目安が専門医の資格とするなら,反対に専門分野を持つということはかなりコアなエリアを突き詰めることになり,深いコアコンピテンシー(資質と能力)を身につけることができるかを問われているのかもしれない.

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 2006年に虎の門病院皮膚科の国内留学を経て帰局し,大学での腫瘍外来を担当して15年が経過した.その間に皮膚悪性黒色腫の治療は,2012年の免疫チェックポイント阻害薬の登場,それに続く分子標的薬の参入により大きく変化した.その結果,以前の抗癌剤やインターフェロン主体の治療と比較して,腫瘍制御,予後の延長は改善している.しかし,ほかの皮膚癌の治療は依然として,15年前と大きな変化はなく,病期Ⅳ期となった患者の予後の改善は難しい.予後の改善に見込みのない患者や,病期の進行した患者に対する自分の診療姿勢に,大学で腫瘍外来を始めた頃と比較して,15年間に多くの患者の治療に携わったことにより,最近変化を感じている.

広く浅く 岡田 悦子
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 エキスパートの技は優雅で美しく,流れがわかりやすい.説明の名手は,ゆっくりはっきり,冗長すぎず明解である.病理供覧では,顕微鏡が意思を持って細胞に呼ばれたように動くことがある.私が師事した皮膚外科の指導医は,手技が優雅で術野は整然と美しく,助手という特等席で立ち会った多くの手術に感動した.しかし助手の立場で明瞭に理解できたつもりでも,自らの執刀では視界も流れも悪く,術中に何度も絶望したものである.なんとか執刀医の経験を積んで,若い先生達の指導をしつつ助手をすることが増えた.彼らは今にも顔が付いてしまうほど術野に近づいて,一生懸命に一点のみを突き進んで,層を見失ってしまう.同じ経験があるからこそ,あえて口出しをする.「広く浅く,術野全体を均等に切って.」広く浅く,では,物事を極めるにふさわしくないかもしれないが,多くの視点を持ち,弱拡大と強拡大を自由に行き来できるのがエキスパートへの第一歩だろう.進むときは全体像を考え,浅いときには最終の目標を見据えて,そしていつか,深く極めることを目指す.手術のみならず,美しく深い技に到達するために,広く浅く,と自分にも言い聞かせながら,修業の道はまだ長く続いていくだろう.

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 大学の初診外来には自分の専門としている蕁麻疹,アナフィラキシー,発汗異常症などの患者さんがよく紹介されてくる.外勤先での外来と比べると,これらの疾患の患者の診察をしていると原因検索や全身性疾患との鑑別作業が必要となることが多く,皮膚科診療として何か違和感を感じることも多い.「この違和感は何だろう」と考えていたとき,診察時に皮疹が出現していない疾患が自分の専門分野になっていたことにBSL学生さんからの指摘で気づかされた.そのためこれらの疾患では皮膚科医の基本診察である視診はそれほど重要ではない.皮膚科診察技法の中心である発疹学を学ぶのに不向きな対象疾患であることについては,実習に来ている学生さんに対して申し訳なく思っている.一方では,これらの疾患では患者さんとのコミュニケーションを通じた問診作業が診察上非常に重要であり,総合内科における診察と類似した要素があるのではないかとも感じている.

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 当科には脱毛症専門外来があり,私も担当医としてさまざまな脱毛症の診断,治療を行っております.外来では円形脱毛症の患者が多い中で,男性型脱毛症患者の診察も行っております.治療法としては,患者の金銭的な条件が合えば,5α-レダクターゼ阻害薬を処方(自費)することが多いのですが,元通りに回復する訳ではなく,その治療効果に疑問を持たれる方もおられます.

 ある70歳台の患者も長期にわたって同薬剤を内服しておられましたが,長期間内服していても開始前に期待(?)していたような効果が得られず,通院加療に疑問を持ちはじめていた様子.ところが,ある日久しぶりに同窓会に出席したところ,周囲の同窓生から「なんで,お前だけそんなにふさふさなんや?」と羨望の的だったそうです.

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 現在,私は日常診療に加えて強皮症センターと乾癬センターでの診療に当たっている.強皮症センターでは治験外来を主として担当しており,乾癬センターではセンター長として生物学的製剤治療に注力している.乾癬に対する生物学的製剤治療は,乾癬の病態を改善するのみならず,多くの示唆をわれわれに与える.乾癬に用いられる生物学的製剤の効果はマウスにおいて見出された.しかしながら,ヒトに対する有効性と安全性については,たとえ治験で担保されたとしても,治験集団はあくまでも組み入れ基準に合致した症例であるため,日常診療で出会う多様な患者集団に対する有益性は,薬剤が上市されリアルワールドでの使用経験が蓄積されるまで,広く証明されたとは言えない.このことは,薬剤の真の特性は日常臨床の中で明らかになる,と言い換えることができる.これまでに乾癬に対する生物学的製剤は,絶え間ない開発推進によって9種類が使用可能となっている.これらの多くの薬剤を使用するなかで,期せずして他の疾患を合併している乾癬患者に出会うことがある.強皮症センターでは,年間1,000例を超える強皮症患者を診療しているため,強皮症を合併した乾癬患者に出会う機会は確率論的に多くなり,このような患者へ生物学的製剤が必要となる局面に出会うことがある.そのような際に,われわれは鷹の目になって,皮疹のみに捕らわれずに全体を注意深く観察している.そして,そこから得られた経験をきっかけとし,新たな強皮症治療戦略が生まれることがある.このような実臨床から得られた気付きをマウスモデルに立ち返って確認し(reverse translational study),さらに治験を組み立て,効果が実証されれば患者さんへ還元する(translational study)という一連のサイクルは,臨床医と研究者の2足の草鞋を履くものとして,目指すべき終着点の1つであると考えている.

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 「皮膚症状がないから感染症科でお願いします.」

 絶対にそんなことを言ってはダメですよ!! 梅毒は皮膚科が診るべき疾患であり,皮膚科のオリジンでありアイデンティティでありフィロソフィーでもあるのです!…すみません,のっけから興奮しすぎてよくわけがわからないことを言ってしまいました.

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 外勤先の病院には長年お世話になっている.古い都営住宅の目の前で外来患者の8割は高齢者.老老介護や独居が多い.皮膚疾患では自己処置が必要なことが多いが,高齢者になるとできないことが多い.元の生活に戻れなくなるリスクを考えると,皮膚の処置目的に入院させたくはない.

 ここで頭を使う.患者さんの性格,居室の間取り,家族や人との関係を確認し,患者さんの日常へと想像を巡らせる.介護保険は使えるのか,無理のない通院頻度はどのくらいか,お風呂はいつどこでどんなふうに入るのか,誰がいつ処置できるのか,必要な物品はどうするか.なるべくお金の負担,携わる人の負担は少なくしたい.方法は簡便に,頻度は最低限にする.

薬剤名と薬疹 藤山 俊晴
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 内服薬を処方する時,問診票の薬剤アレルギー「なし」に〇がつけてあっても,つい聞いてしまう.「薬のアレルギーはないですか?」と.薬疹を診療する手前,自ら薬疹を発生させてしまうなんて…,という変なプレッシャーもないわけではない.突っ込んで聞くと「風邪で複数の薬を飲んで発疹が出た」とか「昔,何かの薬を飲んだら発疹が出たが,もうわからない」等の答えが返ってくることもある.

 薬疹の既往があって,原因薬剤をはっきり答えられる患者さんは,ある意味かなり優秀だと感じる.自分が薬疹を診断しても,必ずしも正確に原因薬剤を特定できず,曖昧に終わらせることも少なくないだけに,過去に診療した医師のことも責められない.私の場合,本人の記憶だけでは心配で,家族にも薬剤アレルギーの内容を覚えておいてもらうように指導しているが,効果があるかわからない.

電子カルテの功罪 加藤 威
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 私が勤めている病院でカルテが完全電子化されてからもうすぐ10年になる.導入前は紙カルテと比べると入力に時間がかかったり,シェーマが書きにくかったりなど,1回の診療記録における情報量が減るのではないかと危惧していたが,慣れた今では手で書くよりもキーボードで打つほうがよほど早くなった.さらに紙カルテの頃には,達筆(?)な先生のカルテが読めなかったり,時には自分で自分のカルテが読めなかったりすることもあったが,電子カルテでは時に誤字脱字や変換間違いはあるもののとりあえずは読むことができ,読めないカルテを前に途方に暮れることもなくなった.紙カルテの頃にはその都度カルテを探し出して記載していたが,電子カルテの現在は端末さえあればどこからでもカルテ記載や内容参照ができるのは非常にありがたい.さらに,データウェアハウスを利用することで患者情報を横断的に検索することができるようになったというのは,臨床研究をするうえで大いに力になっている.

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 スーパーローテート研修を終え,皮膚科に入って以降,留学していた2年強を除いて,ずっと皮膚リンパ腫の患者さんの診療を続けてきました.年齢の割には,そこそこ多くの患者さんを見てきたつもりです.しかし,最近,とある患者さんに「リンパ腫になる患者には,共通の性格などありますか?」と聞かれ,「うーん」とうなってしまいました.思い起こしてみましたが,個人的には,特に傾向はないような気がします.こと細かに病気のことを何度も確認し,時には質問状を用意してくる早期菌状息肉症の患者さんもいれば,皮膚に腫瘤や潰瘍を作っているのに,毎回のように「私の病気は悪性なんですかね?」と聞いてくるような患者さんもいました.同じ言葉をしゃべっても,患者さんによって受け取り方は全く変わってしまいます.菌状息肉症の患者さんの多くは予後良好ですが,かと言って悪性疾患でないと言うと嘘になりますので,「悪性だけど進行は遅いから心配しなくていいですよ」という趣旨の説明をするわけですが,「悪性」という単語に注目する人もいれば,「心配しなくていい」に注目する人もいます.ただ,心配性の方でも,外来の度によくお話を聞き,丁寧に説明を繰り返すことで,「先生とお話をすると安心します」と仰っていただける方が多い気がします.この個々の患者さんに真摯に向き合い,診療に当たるという態度は,リンパ腫診療の師匠である菅谷誠先生(現 国際医療福祉大学皮膚科教授)が口を酸っぱくして仰っていたことになります.今後もこの姿勢を忘れずに,皮膚リンパ腫患者さんの診療を続けていきたいと思っています.まだまだ若輩者ですが,皮膚リンパ腫の患者さんでご相談がありましたら,メールでも結構ですので,ご連絡下さい.

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 大学で専門外来を担当していると,どうしても患者さんの待ち時間が長くなってしまう.大変申し訳ないと思いつつも,なかなか短縮できない.いまでこそ蕁麻疹外来には多数の患者さんが受診されるが,7年前に始めたときは週に1,2名ほどであった.私自身,蕁麻疹なんかで患者が来るのだろうかと思っていた.紹介されてくる患者さんが増えるにつれて,蕁麻疹でも生活の質が悪くなっていることを思い知らされた.蕁麻疹により受験,仕事,介護などに影響がある患者さんが来院される.職業によっては軽症でも生活の質が著しく障害されることもあるし,受験生などは人生にかかわるかもしれない.患者さんは原因精査を求めて悲壮な覚悟を持って来院されるのだが,残念ながら慢性蕁麻疹のほとんどは原因不明の特発性蕁麻疹である.したがって特異的な検査はない.とはいえ治せる疾患でもある.患者さんには「原因不明だけど,治せる疾患ですから安心してください」と伝えている.どうしても治療期間が長くなるため,患者さんとの信頼関係が重要となる.問診,治療の説明に時間がかかるのは言うまでもなく,患者さんのストレスの原因を聞いたり,疑問点に答えるうちにみるみる時間は経っていく.かくして私の外来は待ち時間が長くなる.それでも待っていてくれる患者さんには頭が下がる思いである.慢性特発性蕁麻疹に生物学的製剤が使用できるようになったときは,これで外来の待ち時間も減らせるかなと期待していた.しかし,高価な薬剤を使うのに費用効果なども説明しなければならないため,余計時間がかかるようになってしまった.朝から晩までしゃべりっぱなし,患者さんには「先生ご飯食べてるの?」など心配される.それでも治療がうまくいって生活の質が改善されると初診時は表情が暗かった患者さんに笑顔が戻ってくる.今日もこの笑顔に癒されて,長い診療に耐えるのであった.

+αを考えながら 宮野 恭平
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 大学では初診,再診,乾癬外来の他,外来手術を週1回担当している.その中で,ほぼ毎週神経線維腫症1型の患者さんの腫瘍切除を行っている.大半の切除オーダーは『●の部位の腫瘍を1時間で可能な範囲切除』(故 倉持朗教授はいつもこのオーダーでした)と,シンプルかつざっくりしたものである.患者さんの立場からすると,手術は希望したものとはいえ,苦痛な時間となる.そのような時間の中でも,より満足してもらうには,丁寧に,かつなるべく多くの腫瘍を切除することではないだろうか.普段,私は『+αを考えながら』診療を行うよう心がけている.終了予定時間になっても(後に控える患者さんの手術内容にもよるが),「あともう少し,この部分だけ切除して終わりにしましょうか」と提案すると,断る患者さんはまずいない.むしろ,1か所でも多く切除できたことに感謝される.大したことをやっているわけではないが嬉しく思う.

 乾癬やアトピー性皮膚炎のように,生物学的製剤の登場により劇的な改善が期待できるようになった疾患もある一方で,いまだ経過を慎重に診ていく以外ない疾患もまだまだ多い.このような患者さんを前に歯痒い思いをすることもある.自分が患者さんの立場であれば,どのような診療をされたら,またどのような“+α”があれば,前向きになり嬉しい思いをするだろうか.

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 常々,バランス感覚のある医師になりたいと思って働いてきた.臨床・研究と教育,先輩と後輩,医療スタッフと患者,仕事とプライベートなど,医師としてバランス感覚を求められる局面は多々訪れる.ただ,バランスの良さを重視してきた一方で,この言葉にはどことなく物足りなさを感じ,バランスがとれていれば良いわけではないなと思う機会も増えた.与えられた環境の中で,という受動的な印象を受けることがあるからか.または,職業柄バランスよくさまざまな疾患を診ることの重要性と別に,一貫した専門性の必要性を感じることも多いからか.

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 今年で皮膚科医になり20年が経った.20年前と比べ,皮膚科診療は大きな変化を遂げたことを実感する.フィルムカメラはデジタルカメラに変わり,紙カルテが電子カルテに変わった.フィルムカメラ時代は,暗幕のあるカメラ部屋で臨床写真を撮影し写真台帳に患者番号,患者氏名,臨床診断名,そして撮影者名を記載.フィルムが現像から帰ってくると,上手に撮れているかなあとドキドキしながらスライドを確認していたことを思い出す.取り直しが効かないので,現在のデジタルカメラよりも一枚一枚構図やピントぼけがないよう細心の注意を払って撮影していたように思う.紙カルテのころは外勤先に行くと通院歴の長い患者さんのカルテを見ると,記載してある筆跡からいろんな先生が診てこられていたんだなあということが一目でわかった.20年前は,処方薬の日数についても14日が最長で,14日ごとに患者さんが受診していたことは今では考えられない.治療に関しても,疥癬は安息香酸ベンジルローションを顔以外の全身に隈なく刷毛で外用していたが,塗るほうも塗られるほうも大変でしたね.尋常性乾癬や悪性黒色腫に対する抗体製剤の有効性は画期的だが,乾癬においては,病歴が長くこれまで数々の治療を受けてきた患者さんの中には,どうせそれほど効かないでしょ,と,治療効果に懐疑的な方や,安くて効く薬なら使いたいけど,などと乗り気ではない方も.治療や社会が進歩し,価値観の多様化により医療従事者に求められることも変わっていく部分もあるかもしれないが,病態解明や治療方法がわかっていない疾患は多数あり,患者さんに対して最適な治療を考え,説明し納得したうえで治療を開始する,ということは変わらないはずと心に留めて日々仕事に向かいたい.

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 2003年に当院に赴任して以来皮膚外科一筋である.土日以外はほぼ毎日ヒトを切っている.僕が常勤になる以前は中央手術室での手術(基本的に全身麻酔や脊椎麻酔などの麻酔科管理下の手術)が年間100件ほどであったが,昨年は350件ほどまで増えている.我ながら頑張っているほうではないかと思う.だが,当然のことながら,手術だけやっていれば良いというわけにはいかない.

「シュハリ!」 梅垣 知子
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 私がこの言葉に出会ったのは,ある小説の中である.高校剣道部に所属する2人の女子高生が,自分の剣道とは何か,武士道とは何かを問いながら,剣風の異なるお互いを意識して切磋琢磨し成長する,爽やかな青春物語である.

 守破離(しゅはり)は,日本の武道や芸道における修業の過程を示したもので,そのプロセスを「守」「破」「離」の3段階で表しているという.「守」は,師や流派の教えを徹底的に守る.それが身についたら,自分なりのやり方を試してみる.つまり最初の教えを「破って」みる.最後に自分なりのオリジナルを創出して,師から「離れて」いく.(誉田哲也の「武士道エイティーン」より引用)

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 当科の美容皮膚科外来は,2001年から始まり,瘙瘡や瘙瘡瘢痕,日光黒子等の色素病変,皺,腋窩多汗症に対して,ケミカルピーリングや各種機器・薬物療法の診療を行ってきた.当初は,同期や数年下の女医たちが本外来でご活躍され,また引きこもりの私を外界へ連れ出してくれて,プライベートでも大変お世話になった.喜ばしいことだが,ほぼ皆様が寿で異動となり,負け組の私は寂しい余生を過ごしている.

 その後,しばらく新しい人員が途絶えた状況であったが,2019年より若手女医2名が美容皮膚科に興味を持ち,頼もしい限りである.この医師が美容皮膚科医を目指すには,①環境,②基礎,③資格の大きく3つが必要である.

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目次

欧文目次

あとがき 渡辺 大輔
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 今年もこの増刊号「最近のトピックス」をお届けできる季節となった.編集委員が昨年からネタ探しをし,多数の先生方に原稿をご依頼し,出来上がったゲラを一通り読むと,改めてこの1年の皮膚科学の進歩を実感できる.毎年,この増刊号は,年度も改まった爽やかな春にふさわしいものであると思っていた.しかし,今年は桜も咲きはじめたのに全く心が晴れない.これを書いている4月初頭現在,武漢から広がった新型コロナウイルス感染症は全世界に拡がり,まさにパンデミックの状態であり収束の気配はいまだ見えない.わが国でも,首都圏をはじめとして緊急事態宣言が出され,まさに正念場である.われわれの周囲でもさまざまな学会,研究会が中止や延期となり,また感染が身の回りで現実のものとなると,すべての方々が自分や家族,医局員や職員の生活がどうなるのか,さまざまな不安や葛藤の中で春を迎えているのではないだろうか.

 世間では時差出勤やテレワークが盛んに推奨されているが,大学においても,新学期を迎えるにあたり学生教育をどのように行うかの議論のなかで,ICT(information and communication technology)を用いたビデオ講義を採用するところも多いと聞く.是非はともかく,テレワークとともにビデオ講義,会議,診療などの技術の発展はパンデミック対策の一環を担うものであるし,もっと本質的には,個々の症例を重ねた上での診断技術,治療技術の向上,そしてワクチンの開発へと,時間はかかるかもしれないが人類の英知の結集により,このパンデミックは乗り越えられるものと信じている.

基本情報

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臨床皮膚科
74巻5号 (2020年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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