臨床皮膚科 74巻4号 (2020年4月)

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要約 64歳,男性.3年前から全身に強い瘙痒を伴う皮疹が出現したため,近医を受診し治療を受けたが,難治だった.内科で膵酵素上昇と膵臓の腫瘤を指摘され,精査の結果IgG4関連疾患が疑われた.皮疹について当科に紹介された際には両眼瞼が腫脹しており全身に痒疹様丘疹が多発していた.生検で真皮内に多数のIgG4陽性形質細胞の浸潤を認め,IgG4関連疾患包括診断基準に照らし合わせ,IgG4関連疾患に伴う皮疹と診断した.プレドニゾロン内服にて皮疹と膵臓の腫瘤は速やかに消退し,ステロイドを緩徐に減量しているが,再燃は認めていない.IgG4関連疾患として痒疹様の皮疹がみられた症例がいくつか報告されている.IgG4関連疾患の初発症状として難治な痒疹様の皮疹を認める場合がある.痒疹を診察した場合に皮膚生検や全身検索を行いIgG4関連疾患を鑑別することは有用であり,早期に確定診断に至る一助となりうる.

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要約 26歳,男性.1か月前より右上口唇に自覚症状のない紅色結節が出現した.初診時,右上口唇に1cm大の弾性軟で境界明瞭な半球状に隆起する紅色結節があった.病理組織では真皮全層にわたって好中球,好酸球,リンパ球,組織球など多彩な細胞が密に浸潤しており,臨床像と併せて顔面肉芽腫と診断した.ステロイド外用による治療を行ったが効果が乏しかったため,ジアフェニルスルホン(DDS)75mg/日内服へ変更したところ,結節は徐々に平坦化した.自験例のダーモスコピーでは毛包の開大,毛包周囲のwhitish halo,毛細血管拡張があり,背景は黄色調を呈していた.過去における本症報告例のダーモスコピー所見では毛包の開大,毛細血管拡張が高率でみられ,自験例は典型像と考えられた.自覚症状のない顔面の紅色結節のダーモスコピーで,これらの所見を見た際には顔面肉芽腫を鑑別として考える必要がある.

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要約 59歳,男性.発作性心房細動に対して全身麻酔下でカテーテル治療が行われた.麻酔導入時に筋弛緩薬のロクロニウムを,手術終了時には筋弛緩回復薬のスガマデクスを投与された.スガマデクス投与直後に全身の潮紅と血圧低下が出現し,同剤によるアナフィラキシーが疑われた.スガマデクス単独,スガマデクス・ロクロニウム混合液について,プリックテストと皮内テストを施行したところ,スガマデクス単独のみ陽性であった.スガマデクスによるアレルギーはスガマデクス単独に対するアレルギーだけでなく,近年スガマデクス・ロクロニウム複合体に対するアレルギーも報告されている.臨床使用の増加に伴って報告が増加しており,周術期アナフィラキシーの原因として注意が必要である.

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要約 75歳,男性.肺腺癌Stage Ⅳに対するペムブロリズマブ初回投与3週間後に,免疫関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)としてのGuillain-Barré症候群のため当院内科に入院した.プレドニゾロン60mg/日が開始され,入院9日目に皮疹が出現し,当科に紹介された.体幹に暗赤色の紅斑,丘疹が散在し,左腰腹部で皮疹が密に集簇し,irAEの皮膚障害や鑑別に他剤での薬疹も疑った.神経症状に対するステロイドパルス療法が開始されたが入院16日目に体表面積当たり10%のびらんが出現し,皮膚生検で表皮の広範な角化細胞壊死を認め,中毒性表皮壊死症と診断.入院19日目より免疫グロブリン大量静注療法の併用で皮膚症状は改善し,入院42日目にびらんは上皮化した.irAEの皮膚障害と他の薬剤による中毒性表皮壊死症には共通した病態があり,両者の鑑別は困難である.irAEのリスクがある患者に皮疹が出現した場合,特に病初期では急激な病勢増悪がないか慎重に評価し,迅速な重症度に応じた治療介入が必要である.

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要約 68歳,女性.2017年6月頃より前胸部や下腿に水疱が出現し,口腔内にも水疱が出現するようになり,当科受診した.病理組織像は表皮下に裂隙形成があり,リンパ球を主体とする炎症細胞浸潤を認めた.ELISA法で抗BP180NC16A抗体は陰性で,蛍光抗体直接法で表皮基底膜部にIgG,C3のみ沈着していた.免疫ブロット法でlinear IgA bullous dermatosis antigen-1(LAD-1)に対するIgG抗体のみを認め,同抗体による水疱性類天疱瘡(bullous pemphigoid:BP)と診断した.治療としてはニコチン酸アミド内服とステロイド外用で皮疹は軽快した.口腔内のびらんは時々単発するが,自覚症状は軽微である.抗LAD-1 IgG抗体のみ陽性のBP患者の報告例をまとめると,浮腫性紅斑が少なく,治療反応性が良い傾向がみられた.BPは抗体プロファイルにより治療反応性が異なり,抗体プロファイルを調べることは予後の予測に有用である.

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要約 73歳,女性.初診4か月前から四肢にみられる軽度の瘙痒を伴う環状の角化性局面を主訴に受診した.臨床像と病理組織学的所見より日光表在播種型汗孔角化症と診断した.初診1か月後より瘙痒が増悪し,汗孔角化症の皮疹に一致して紅斑が出現した.初診3か月後に再度施行した皮膚生検では,苔癬型組織反応と好酸球性海綿状態を認めた.ベタメタゾン0.25mg/日および抗ヒスタミン薬の長期内服を行い,紅斑はほぼ退色し,軽度の角化を残すのみとなった.苔癬型組織反応や好酸球性海綿状態を認める汗孔角化症の報告は多数あるが,両者の併存が記述されている報告は調べえた限り自験例が3例目であった.汗孔角化症の経過中に,苔癬型組織反応による急な炎症が引き起こされる場合があり,それにより,自然消退することを念頭に置くべきと考えた.

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要約 77歳,女性.2015年8月頃から腋窩,乳房下,鼠径部など体幹の間擦部に多発する自覚症状のない褐色斑に気付いた.病理所見では,表皮の菲薄化と表皮基底層の液状変性,真皮上層のメラニン滴落とメラノファージ,リンパ球主体の細胞浸潤を軽度認めた.皮疹の分布と病理所見からlichen planus pigmentosus-inversusと診断した.金属と内服薬のパッチテストは陰性.レボチロキシン以外の内服薬を中止としたが,皮疹は増悪した.2017年11月頃より右下顎部,右鼻翼の陥凹部に沿って線状に並ぶ褐色斑が新たに生じた.病理所見は体幹に生じた皮疹と類似していたが,皮疹の分布と線状に並ぶことよりlinear lichen planus pigmentosusと診断した.自験例ではlichen planusと比較し真皮内の炎症細胞浸潤が乏しく,炎症期を経ずに色素沈着へ移行する点が特徴的であった.

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要約 70歳,女性.5年前より自覚症状のない腰部の腫瘤が出現し,最近になり急速に増大したため当科に紹介され受診した.左腰部やや後面に45mm大,暗紫色,表面平滑で一部びらんのある,弾性硬,可動性良好な隆起性腫瘤を認めた.局所麻酔下に全摘術施行した.病理組織学的には腫瘤内部に多房性の囊腫を有し,囊腫壁内腔にtrichilemmal keratinizationを認めた.また腫瘤被膜を超えて核異型のある腫瘍細胞の浸潤を認めたことから,悪性化したproliferating trichilemmal tumor(PTT)と考えた.また第4版WHO分類ではPTTの範疇にmalignant proliferating trichilemmal tumor(mPTT)も含まれるため本症例の診断名はPTTとした.術後9か月,局所再発およびリンパ節腫脹はなく,PET/CTで再発所見はない.自験例のように急激な拡大を伴うPTTは,囊腫壁外の浸潤や転移の恐れがあるため,早期に切除を検討する必要がある.また腰部に発症したPTTの報告は本邦4例目であり,稀な症例と考えた.

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要約 87歳,女性.14歳頃に急性虫垂炎の手術歴があり下腹部に術後瘢痕があった.当科初診2か月前より瘢痕部に紅色皮疹が出現し,初診時には同瘢痕部に14×18mm大の鱗屑や痂皮を付着し一部隆起する紅色局面を認めた.皮膚生検にてBowen病と診断し,紅色局面より4mm離し腫瘍を切除した.本邦における術後瘢痕部に皮膚悪性腫瘍が生じた症例と,瘢痕部にBowen病が生じた症例をまとめたところ,術後瘢痕部にBowen病が生じた症例は自験例のみであった.瘢痕形成後長期間経過していること,同部への慢性的な物理刺激の存在はBowen病が生じた一因と考えられた.これまで熱傷瘢痕部に生じた皮膚悪性腫瘍が多数報告されているが,それ以外の慢性的な物理刺激や張力が存在する瘢痕部であっても,皮疹が出現した際は皮膚悪性腫瘍を疑いなるべく早期に精査する必要がある.

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要約 48歳,女性.初診2年前,左手掌の褐色結節を自覚し,増大傾向にあるため当科を受診した.左手掌に直径20mm大のドーム状に隆起した弾性硬の灰色の結節を認めた.病理組織学的に表皮との連続性はなく,真皮浅層から皮下組織に紡錘形から多角形で淡明な細胞質と明瞭な核小体を有する淡明な核からなる腫瘍細胞の増殖を認めた.腫瘍細胞はS100蛋白,HMB-45,Melan-Aが陽性であり,EWSR1転座を認めたため,明細胞肉腫と診断した.同腫瘍を20mm離して切除し,内側足底皮弁にて再建した.術後1年経過した現在,遠隔転移や再発を認めていない.明細胞肉腫は,悪性黒色腫と病理組織学的所見や免疫組織学的所見が類似しているため,鑑別が問題になることがある.確定診断のためにはEWSR1/ATF1遺伝子の転座を検索することが有用である.また,明細胞肉腫の予後は良いとは言えず,術後29年で遠隔転移を認めた報告もあることから,長期間の経過観察が必要である.

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要約 95歳,男性.前立腺癌に対しプレドニゾロン内服中,数週間の経過で左前胸部と左前腕の皮下腫瘤が出現し,その後増大した.左前腕部の生検時に多量の排膿があった.膿培養で生えたコロニーの質量分析によりNocardia farcinicaが同定され,皮膚以外に明らかな感染部位はなく,同菌による皮膚リンパ型ノカルジア症と診断した.感受性のあったスルファメトキサゾール・トリメトプリム合剤とミノサイクリンで治療し再燃認めていない.免疫抑制状態の患者の皮膚病変は,ノカルジア症を含む日和見感染症の可能性を考え各種培養とその感受性試験を提出することが大切である.特にNocardiaは菌種により薬剤感受性が異なることから,菌種まで同定し,その感受性試験が出るまでの間は,疫学的な薬剤感受性を考慮した抗菌薬の選択を行うことが重要である.

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要約 74歳,男性.栃木県那須町在住.2018年9月初旬,両下肢と腹部に瘙痒を伴う皮疹が出現.約1か月間,ステロイド外用を行ったが症状の改善を認めず当院を受診した.腹部,下肢に粟粒大から米粒大の紅色丘疹を多数認めた.靴下上の虫体を採取して顕微鏡で観察したところ,3対6脚を有しており,形態からマダニ幼虫による刺咬症を疑った.用手的な摘除が困難であったため,フェノトリン5%液を外用し,1週間後に症状改善を認めた.その後,顕微鏡による観察から,フタトゲチマダニ幼虫と同定した.フタトゲチマダニ幼虫は全国に広く分布し,時に多数刺咬例が報告されている.摘除困難な多数刺咬例には,フェノトリン5%液が治療選択肢となることが示唆された.また,フタトゲチマダニ刺咬症は日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群などのダニ媒介性疾患の原因となる可能性が高いため,今後も注意が必要である.

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要約 46歳,男性.初診6年前に潰瘍性大腸炎と診断され,メサラジン内服にて加療中.約3か月前より腸管症状の増悪と関節痛あり,3週間前からプレドニゾロン40mg/日(≒0.5mg/kg/日)内服し症状は緩和したが,プレドニゾロン30mg/日に漸減したところ,発熱と陰茎基部に拇指頭大の有痛性潰瘍,右膝部に発赤,腫脹,疼痛が出現し,徐々に拡大した.血液検査にて著明な炎症反応の上昇があったが,創部細菌培養は陰性であった.病理組織標本では,真皮全層に好中球を主体とする稠密な炎症細胞浸潤を認め,壊疽性膿皮症と診断した.顆粒球吸着療法を導入したが,腸管,皮膚症状の改善に乏しく,右膝部は自壊し潰瘍化した.アダリムマブを投与したところ腸管,皮膚症状ともに改善し,約3か月後に潰瘍部はすべて上皮化した.ステロイド抵抗性の壊疽性膿皮症に対するアダリムマブの適応拡大を視野に入れた症例の蓄積が望まれる.

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 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical devices Agency:PMDA)は厚生労働省所管の独立行政法人として2004年に設立された本邦の薬事規制当局である.私は2016年度からの3年間PMDAに出向する機会をいただき,皮膚科領域を中心に医薬品承認の審査業務に携わった.折しも皮膚疾患に対する新薬が多数承認され,薬剤を違った角度から見つめ直す貴重な体験をさせていただいた.本稿では薬事の視点で見た薬剤の開発と,皮膚科領域で新薬が多数承認されている背景について述べさせていただく.

連載 Clinical Exercise・152

Q考えられる疾患は何か? 氏家 英之
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症例

患 者:49歳,男性

主 訴:体幹,上肢の皮疹

既往歴:特記すべきことなし.

現病歴:初診の約10年前から背部に瘙痒を伴う皮疹が出現し,寛解と増悪を繰り返しながら徐々に軀幹全体に拡大した.初診の4か月前から皮疹が増悪し,当科を受診した.

現 症:軀幹部,両上腕に境界明瞭な類円形から不整形の径10〜30mm大の紅斑が多発し(図1a),紅斑上には径1〜5mm大の小水疱の集簇を認めた(図1b).強い瘙痒を伴い,搔破痕が混在していた.顔面,臀部,下肢には皮疹を認めなかった.粘膜疹は認めなかった.消化器症状は認めなかった.

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目次

欧文目次

文献紹介

文献紹介

書評

書評

次号予告

あとがき 玉木 毅
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 今回の診療報酬改定では,ダーモスコピーで4か月一連の「疾患」縛りが「病変」縛りに,多血小板血漿処置の新設,長波中波紫外線に円形脱毛症が追加,Qスイッチヤグレーザーの収載,皮膚切開術の増点,デブリードマン手術の増点と壊死性筋膜炎での縛りの緩和,センチネル生検に乳房外パジェット病が追加,爪甲除去手術の増点,Tzank(細胞診)でヘルペスが追加等々,日本皮膚科学会・日本臨床皮膚科医会を通じた地道な要望が実を結んだ感がある(形成外科などからの要望もあるが).しかし,皮膚病像撮影料や爪甲肥厚症/鉤彎症への爪甲処置は依然認められず,100cm2未満の皮膚科軟膏処置は基本診療料に包括されたまま,爪甲除去処置も200床以上の病院では外来診療料に包括されたままのタダ働きで,今後も粘り強い要望が必要である.

 一方,病院の立場からすると近年においては,こうした個々の項目の保険適用や点数の増減よりも,7:1入院基本料に踏みとどまるか10:1に転落するか,さらに大学本院以外のDPC病院では,特定病院群(Ⅱ群)に入るか標準病院群(Ⅲ群)に入るか,加えていかに基準をクリアして機能評価係数を重ねられるかが重要になってきている.7:1の医療・看護必要度の要件がどんどん厳しくなるのは,医療費抑制一筋の為政者や保険者の意向だが,現場からすれば個々の患者の真の必要度は,あんな基準で割り切れるほど単純ではない.

基本情報

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臨床皮膚科
74巻4号 (2020年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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